◆原告第14準備書面
第6 被告関電の津波高試算方法の問題(2)

原告第14準備書面
-津波の危険性について 目次

  第6 被告関電の津波高試算方法の問題(2)

 1 安全裕度(補正係数)を考慮した津波高

被告関電が寄って立つ「津波評価技術」が安全裕度(補正係数)を考慮していないという問題点は前述した。保守的に津波高を想定した場合、「倍半分」すなわち2倍の水位上昇(下降)があるものとして対策を行わなくてはいけないし、それを行わなかった東京電力は福島第一原発事故を招来したのである。

以下、被告関電の試算を「1.2」乃至「2.0」倍した場合、どのような津波高となるか試算する。
ここで、被告関電は、気象庁舞鶴検潮所のデータを元に、水位上昇側ではT.P+0.49m、水位下降側ではT.P.0.01mを使用しているため、水位上昇側において、[上昇時の津波水位T.P.+Am]と[T.P+0.49m]の差を[1.2]~[2.0]倍したうえ、T.P+0.49mに加える。水位下降側では[T.P-0.01m]と[下降時の津波水位T.P.+Bm]の差を[1.2]~[2.0]倍し、T.P-0.01mから引くものとする。

[甲211-128、129]より、関電試算における最大の水位上昇値及び下降値は「若狭湾海丘列付近断層」の地震と隠岐トラフ海底地すべりが重畳した場合の[T.P.+6.2]と[T.P.-4.6]である。

 2 水位上昇側

[T.P.+6.2]-[T.P.+0.49m]=5.71

この1.2倍は、6.852m、1.5倍は、8.565m、2.0倍は、11.42mである。
これと[T.P+0.49m]を足しあわせると、津波上昇側でT.P.+7.342m(「1.2」倍値、T.P.+9.055m(「1.5」倍値)、T.P.+11.91m(「2.0」倍値)となる。

 3 水位下降側

[T.P-0.01m]-[T.P.-4.6]=+4.59m

これの1.2倍は、5.508m、1.5倍は、6.885m、2.0倍は、9.18mである。
これを[T.P-0.01m]から引くと、津波下降側で、T.P.-5.518m(1.2倍値)、T.P.-6.895m(1.5倍値)、T.P.-9.19m(2倍値)となる。

危険水位 1.0倍 1.2倍 1.5倍 2.0倍
上昇側 T.P.+8.0 T.P.+6.2 T.P.+7.34 T.P.+9.05 T.P.+11.9
下降側 T.P.-2.62 T.P.-4.6 T.P.-5.51 T.P.-6.89 T.P.-9.19

 4 結論

関西電力の試算を前提としても、水位上昇時で1.5倍すれば海水ポンプ室前面のT.P.+8mを上回る津波高となる。水位下降時では1.2倍の積をとらなくとも取水口の位置T.P.-2.62mを下回る。

ここで、被告関西電力は、地震に関し、クリフエッジとして基準地震動Ssの1.8倍を設定しており、基準地震動を超過した場合であっても安全性を確保できるよう余裕を持たせている。1.8倍では不十分であるという点は措くとして、被告関西電力の立場によってもその程度の余裕は保持されなければならない。

しかるに津波に関して保持されている余裕は、地震の場合に被告関西電力が保持させているとする余裕に比べても非常に余裕が小さい。さらに深刻なことに、地震の場合、基準地震動を超える地震が発生したとしても、偶然の要素によって設備が破壊されないということがあり得るかもしれない(実際に被告関西電力は、そのような主張をしている)。しかし津波に関しては、例えばT.P.+8.0mを超える津波が到来した場合、海水ポンプ室が浸水するため直ちに冷却機能に支障が生じ致命的な事態が発生する。余裕を持たせる必要性は、地震よりも津波の方がより大きく、より重要になるのである。

以上より、大飯原子力発電所は津波に対して脆弱であり、津波による炉心損傷の具体的危険がある。