関電側;広報担当前田氏、もう一人(氏名不明)
使い捨て時代を考える会;4名(中嶌、吉田、藤井、山田)
8月24日に行われた関電との話し合いの報告です。コロナ禍で対面での話し合いを拒否され、関電は電話で回答すると言い続けていましたが、あくまでも対面での話し合いをと要求し、1年9か月ぶりに開催しました。
なお、前回まで関電側は、関西電力送配電(株)の社員が出てきていたが、今回は、関電京都支社の所属ということで、より正常な面談の形に戻った形です。
話し合いは、前もって質問書を提出し、関電が準備した答えを読み上げていくなかで、こちら側から随時質問や意見を述べるという形で進みました。
事前に提出した質問書は以下の2通です。質問書の後に当日のやり取りの記録が載っています。
質問書1 は、中嶌哲演さんが地元福井県民という立場で昨2022年1月に提出されていたものです。質問書2 は、今回の面談に先立って、使い捨て時代を考える会として提出したものです。
★★★★★★★★★★★★★★★
*質問書**1***
1. 現在問題となっている原発マネー不正還流問題は、高浜原発に関わっているが、その歴史は長い。県内のメディアで扱われたのが1980年代だ。高浜3号機建設の際に9億円支払われ、町民や漁民に渡った。アンケートをとったら9億円と言うが、実際は25億円だという回答があった。そのお金は電気料金から支払われている。そのようなばらまきは、経済的合理性にかなうのか。過去にさかのぼって反省してほしい。地元ではいろいろと聞いたが、原発不正マネーに関電幹部までが関わっていることに唖然とした。消費者に対して、どう思うのか。
2. 美浜は4か月動かして23億kW発電し、10円/kWで計算すると230億円になる。巨費を投じても何とか勘定が合うという考え方なのか。美浜は廃炉に490億円、高浜は廃炉に900億円かかるという。健全経営のためにも原発に代わる方策を考えるべきではないか。
3. 安全対策工事と特定重大事故等対処施設(いわゆるテロ対策施設)の工事で、高浜では3000~4000人、美浜では2000人働いていたという。原発ゼロ法案の中身を見ていくと労働者のアフタケアはできると思う。だが原発ゼロ法案は自公が拒否した。問題にされないまま2020年9月に対策工事が完了したということで、猛烈な圧力で地元に同意を取り付けたが、高浜は、実は安全対策工事は完了していなかったことが2021年4月に判明した。高浜も美浜も、老朽原発を再稼働させることに、私たちは反対している。特定重大事故等対処施設(いわゆるテロ対策施設)については福井県の安全対策課にも内容がまったく知らされていない。高浜、美浜、大飯の各原発について、安全対策工事や特定重大事故等対処施設についてのコストと従事してきた労働者の数を知りたい。
4. 若狭の原発は、15基中11基が関電だ。その後、美浜1、2号機と大飯1、2号機が廃炉になり、11基のうち現在7基残っている。そのうち3基が老朽原発となっている。安全性の観点から見て、とくに老朽原発は思いとどまるべきではないか。
5. 若狭には11基の関電の原発があり、979万kWほどの設備容量をもっていたが、地元の住民が必要なのは6~7万kWだ。インフラ整備と引き換えに原発を受け入れたが、多くの若狭の住民は子孫に対して申し訳が立たないと思っている。原発ゼロ法案にあるように、若狭の次の産業を考えるべきだ。関電は若狭の地元で、原発に批判的住民との意見交換ができる場を作ってもらいたい。
6. 現在、福井県と国は「福井県・原子力発電所の立地地域の将来像に関する共創会議」をつくって議論を進めている。そして、関電もそのメンバー入っているが、関電がそのメンバー入っている目的は何か。また、立地地域の将来像についての関電のビジョンは、どのようなものか。
以上
*質問書**2***
1.企業倫理に関する質問
貴社はこの数年の間に、原発マネー不正還流事件、多額の金品の受領問題、役員報酬等の闇補填、貴社が中心となって結んだ大手電力会社同士のカルテル、新電力顧客情報の不正閲覧など大企業として恥ずべき行為を繰り返しています。不正行為を繰り返す貴社が、原発を動かすことに大きな不安を感じます。企業倫理に関してどのような見解をお持ちなのでしょうか。
2.老朽原発に関する質問
貴社は運転開始後45年の老朽原発美浜3号機を昨年8月に再稼働させ、運転開始後48年の高浜1号機を今年7月28日に再稼働させてしまいました。また運転開始後47年の高浜2号機を再稼働させる予定と聞いています。また、運転開始からまもなく40年になろうとする高浜3、4号機について運転期間20年間の延長を申請したと報じられています。しかし、貴社の原発ではトラブルが頻発しています。蒸気発生器伝熱管の損傷、電気ケーブルの接触不良による制御棒の異常挿入などは明らかに経年劣化による不具合ではないでしょうか。経年劣化が引き起こす重大事故が懸念される中での運転延長は無謀なことと思われます。なぜ危険をおかしてまで原発を動かさなければならないのか、理由をお聞かせください。
3.特定重大事故等対処施設に関する質問
貴社の原発の特重施設の設置状況及び運用開始について教えてください。
特重施設は「故意による航空機衝突やその他のテロリズムにより、炉心の著しい損傷が発生するおそれがある、または発生した場合に、原子炉格納容器の破損による放射性物質の放出を抑制するための施設」とありますが、ロシアのウクライナ軍事侵攻では攻撃の標的になり、今でも大変危険な状況が続いています。いかに特重施設ができようとも、原発は特重施設などで守れる施設ではないことも明らかになりました。最大の防御は原発のような核利用施設を持たないこと、作らないことです。これについての貴社の見解をお聞かせください。
4.MOX燃料・使用済核燃料に関する質問
貴社は昨年フランスから高浜発電所へMOX燃料を運び込みました。すでに運転に使用していて、使用済みMOX燃料の保管は100年以上とされていますが、どこに保管する予定でしょうか。他の使用済み燃料は現在どのぐらいありますか。
中間貯蔵施設を福井県外に作るという見通しは全く立たず、一部をフランスへ搬出するという計画を発表し、地元福井県からも反発を受けています。ごまかしとしか思えないプランを堂々と発表する姿勢は、大企業のやることとは思えません。使用済み核燃料の再処理はどうしますか。課題を未来につけ回しして、負担を将来世代に先送りするのを良しとするのでしょうか。
5.福島事故に関する質問
福島第一原発事故から12年が経ちました。いまだに溶け落ちた炉心には近寄ることもできず、汚染水はたまり続け、廃炉作業も全く進んでいません。故郷を奪われた人々も、汚染地域に残らざるを得なかった人々も、大きな苦しみを抱えています。また国は漁民の大反対を押し切って汚染水の海洋放出を決定しました。海が汚されようとしています。廃炉作業による原発労働者の被ばく、原発周辺地域の限りなく続く放射能汚染、このような現実をどうお考えですか。福島原発で私たちは原発事故の悲惨さを体験し、すぐにすべての原発を止めて安全なエネルギーに変えていくことが最善ということを知りました。これは常識だと思いますが、事故の危険・甚大な被害を見て見ぬふりをして原発に依存する理由が理解できません。原発を推進する理由は何ですか?
6.再エネ・契約離脱に関する質問
貴社からの契約離脱(低圧)は昨年末で累計350万件に達しましたが、その後逆に貴社に戻る消費者が増えてきました。大手電力による再エネ新電力への締め付けがあり、さらに顧客情報を不正閲覧するという、考えられないような行為での「成果」と思われます。日本が再エネへの取り組みが少ないことは国際的にも批判を受けています。これからの社会は再エネへ転換しないと持たないと言われています。安全確保のためとされる巨額な設備投資、保管するだけでも多大な費用が掛かり、処理・最終処分の見通しも経費の見通しも立っていない核廃棄物関連費用、技術的にも完成していない廃炉費用、動かしていない原発に必要な日常の管理・安全対策費用、日本原電などへの多額の出費、どれをとっても原子力発電に有利な条件はありません。貴社としても今すぐ原発への投資をやめて再エネへのシフトを図るべきではないでしょうか。なぜ原発に頼る経営をやめないのか、国の方針ではなく、貴社の経営姿勢としてお答えください。
以上
★★★★★★★★質問書はここまで
*話し合い記録***
*Q(こちら側の発言) A(関電の発言。ほとんど前田氏が答えた)*
A 文書回答はしないという会社の方針なので、回答を読み上げる。
Q 関西電力グループ行動憲章に「市民とのコミュニケーションを積極的にする」と書いてあるが、もっとコミュニケーションをゆたかにしてほしい。
A (質問1の1について)金品受取などについては社内のコンプライアンスなどを進めてきた。再発したことは組織風土の醸成が道半ばと痛感した。全社一丸となって取り組む。
Q 何十年も前から似たような体質だったのが、今回顕在化した。若狭の住民にとっては新しいことではない。老朽原発のことや、中間貯蔵施設のことなどなど、どこまで取り組んでいるか疑問だ。道半ばとはどういうことか。消費者に対してどう思っているのか。コンプライアンスというが、反省を踏まえているのか。
A (質問1の2について) 美浜3号機、高浜3号機は経済性があるという一定の見通しがある。
Q 本当に経済的なのか。使用済み核燃料の廃棄なども含めてそういうのか。
Q 原発は設備が膨大で点検しきれない。配線ほか老朽原発の設備すべてについて点検できていないではないか。
A 基準に合わせて点検している。
Q 点検ができていないところでトラブルが起きている。大きな事故につながることが心配だ。交換することができない個所がある。そういうところでトラブルが起きている。炉心部など高放射能の部分はじかに点検はできないではないか。
Q 送配電子会社が顧客情報を渡していた。
Q 老朽原発の稼働は経済性の問題というが、安全性や企業の倫理的責任はどう考えるのか。経済性を前面に出すことを恐れる。
Q 老朽原発の安全対策は高浜が3200億円、全体で1兆1900億円と、巨額のコストがかかっている。テロ対策で高浜1号機では山をくりぬいて工事をした。膨大な経費だ。
Q 工事が10%進んだ時に停止を要求した。廃炉と、巨額な経費をかけた時のコストはどうなるのか。ゼロ法案がでてきた時に検討する時間があったはずだ。
Q テロ対策費はどれだけかかっているのか。それでも経済的見通しがあるのか。
A 2021~2022年で7基1兆1400億円。
Q 高浜、美浜はそれぞれいくらか。
A 手元に資料がないのでわからない。
Q それは次回に答えてもらいたい。うやむやなまま老朽原発は動いている。
Q 原発を輸出しようとしていたが、世界で要求される安全性を満たそうとすると、経済性が合わなくてやめになった。安全対策をちゃんとしないと不安だ。安全対策費を抑制しているようだが軽視されているのではないか。コストが削減されていく中で老朽原発を60年以上運転するというのは怖い。勘定が合うというが、もっと対策費をかけないといけない。
Q そのように安全対策費などが膨大にかかる電源はおかしいのではないか。他の電源に代えてもらいたい。社員としてどう思うか。
A 個人的な考えは答えられない。
Q 市民の考えをきちんと社長さんに伝えてもらいたい。
Q テロ対策についてだが、以前はミサイルが撃ち込まれても大丈夫、航空機も大丈夫と言っていたが、規制委員会はどうなるかわからないと言っている。何らかの形で攻撃を受けたら大丈夫なのか。飛行機が落ちてきても本当に大丈夫なのか。ウクライナのように占拠されたらどうするのか。そこまでして原発が必要なのか。電源としてどういう意義があるのか。
Q (質問1の4について) 経済的見通しがあるからやっているというが、安全性の観点から見てどうなのか。特に老朽原発は思いとどまるべきだ。お金をかけたから大丈夫というのなら少しは納得するが、経済性から動かすというのは納得できない。安全性を自信をもって言えるのか。
A 日々の点検、1年ごとの定期点検、30年以降10年ごとに再評価、40年超えのモノについては、取り換えが難しいものの詳細な点検。S+3Eでやっている。
Q それは公式回答だ。去年の政府の方針転換に沿った回答だ。福島の事故を見ても明らかなように100%安全とは言えない。老朽原発はきっぱりと廃炉にするべきだ。原発全部を止めること、少なくとも老朽原発を止めることが、最大の安全だ。
Q 質問1の5,6 について聞きたい。
A 意見交換できる場をということについてはご意見として聞いておく。(6について)地域の皆さまの声は聞いている。
Q 汚染水の海洋放出についても地元の声を聴いていない。原発は事故がなくても地域社会を壊す。そのようなことまでして原発が必要なのか。
Q 上関町では中間貯蔵施設に対して住民が反対している。これには関電も関与していると報道されているがどうなのか。
A そういう情報は入っていない。
Q 原発を動かすと使用済み核燃料をさらに増やしていくことになる。そういうツケを上関町に押し付ける。住民の意見は聞いていない。住民は中間貯蔵ではなくそのまま最終処分場になることを恐れている。何よりも住民の意見を聞いてほしい。
Q 原発そのものも処分場も地域住民の分断を生む。受け入れ先がない嫌われる施設なのだ。とにかく原発はやめてほしい。
Q 核技術を福井県に持って行くことを懸念している。「共創会議」があって関電はそこに入っている。原発に頼らない新しい産業を考えているのか。原発が残るとは住民は思っていない。核を福井に留めることは疑問だ。
Q 「共創会議」では「原発に依存しない」と入れているが、真の目的は若狭をいつまでも原発に縛り付けるということではないか。原発に依存しない施策が進んでいない。
Q 地元住民の声を聴く場に出てきてもらいたい。
A 共創会議では水素アンモニアサプライチェーンなど大学などとマッチングして進めている。
Q 水素サプライチェーンだが、原発を動かしながら水素を作るとなっている。羊頭狗肉だ。
(ここから質問書2)
Q 株主総会に出たが、森本前社長などカルテルを主導した方が月額300万円ものお金をもらっている。高い電気料金の中で疑問だ。市民と感覚が違い過ぎる。
Q 脆性破壊が問題と思う。圧力容器の金属が緊急に冷やした時に破壊する可能性があると言われている。危険だ。安全性を最優先していない。この間の機器の損傷などは定期点検直後に起きている。大きな事故につながる前に止めてほしい。特に老朽原発は止めて。本当に経営の問題で動かしているのか。
Q 高放射能の部分の安全は確かめられない。
Q 関電は原発が電源構成の1/3ぐらいになるのではないか。他の電源はどうなのか。関電の電気=原発の電気しかも老朽原発の電気となっていないか。会社の将来はあるのか。原発比率を落としていく経営をするべきではないか。
Q コマーシャルで気候変動にからめて原発はCO2を出さないと宣伝している。放射能という環境負荷をかけているのに。コマーシャルはやめてほしい。
Q 運転するところだけを見ればCO2は少ないかもしれないが、安全対策費や設備建設、放射性廃棄物処理など全体としてはCO2をすごく出している。原発を動かすと核のごみを作り出す。環境負荷がすごく大きい。CO2を出さないという宣伝は不愉快だ。
Q こどもにはしっかり教えてもらいたい。CO2を出さないということなどを鵜呑みにして、原発は必要という若い世代が増えている。
A (質問2の4について) 貯蔵量のデータ(プリントを提示)はHPに出している。
Q 中間貯蔵もできないのに使用済み核燃料を増やすのか。
Q 再処理では放射能が出る。環境に負荷を与える。そういうことを前提に電力会社としてきちんと考えてもらいたい。企業の社会的責任だ。経済性だけで老朽原発を動かすことが、関電にとって、社会にとって良いことなのか、早く考えてほしい。気候危機対策も原発でできるわけではない。
Q 小浜市民として関電が上関町に中国電力と組んで中間貯蔵施設をつくることを申出たことは大変悲しい。心が痛む。小浜は原発建設も中間貯蔵施設も阻止した。福島事故が起きる1か月前にパブコメを出した。関電は大消費地への電気のために原発を若狭に押し付け、使用済み核燃料を六ヶ所に押し付けた。上関に押し付けることに耐えきれない。そういう議論を地元でしてきた。原発止めたら事故の心配もなくなるし、押し付け合いも必要なくなる。核のごみを増やすことはやめるべきだ。せめて老朽原発を止めてもらいたい。
Q 国の方針だからということではなく、企業としてどう考えるかだ。
Q 小浜は大飯原発の増設にも反対した。大飯原発に関してはいまだに小浜は排除されている。目先だけで原発を考えてはいけない。アンケートでは52%回収しそのうち反対が90%あった。小浜市民がどういう気持ちで過ごしてきたか考えてほしい。
A (質問2の6について) ゼロカーボン化にむけて検討している。再エネ比率を高めていく。
Q 原発やめることこそ健全経営につながる。
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久しぶりの話し合いであり、この間非常にたくさんの問題が出てきたので、言いたいことが多すぎて全体に少々散漫になりました。関電側は事前に「人数を少なく、時間を短く」と要求してきましたが、質問が多かったので1時間を超える話し合いとなりました。