◆原告第25準備書面
第2 平成26年南丹市避難計画の問題点について

原告第25準備書面
-南丹市避難計画の問題点について- 目次

2016年(平成28年)9月8日

第2 平成26年南丹市避難計画の問題点について

1 基本方針について

平成26年南丹市避難計画は、避難に当たっての基本方針を次のように定めている(甲286号証[7 MB]3頁)。

「2,避難に当たっての基本的方針

(1)緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)内の全住民を重複なく、それぞれいずれかの施設に収容できるように避難所を指定する。

(2)いずれの住民も、高浜発電所及び大飯発電所から遠ざかる方向に移動するように配慮する。

(3)住民に対する避難先での行政サービスの提供を考慮し、南丹市内の公共施設への避難を基本とする。

(4)屋内退避及び避難等の防護活動の実施にあたっては、原子力発電所における事故等の状況に応じ、SPEEDIネットワークシステムや放射線環境モニタリングの結果により、実情に即して、柔軟に対応する。」

しかし、これらの基本方針については、下記のとおり問題がある。

 

2 避難所まで避難すること不可能である

平成26年南丹市避難計画は、「IV 避難誘導及び住民の輸送 1,緊急避難場所・避難先等」をさだめ、住民輸送の手段として「災害対策本部が輸送バスを準備する。」としている(甲286号証[7 MB]21頁から22頁)。

しかし、美山町は、集落によれば高齢化率60%を超える地域もあり、避難行動要支援者、特別養護老人ホーム、病院の入院患者等、避難が困難な者が多数いるのであり、4372人もの住民をバスで緊急避難させること等現実には不可能である。加えて、美山町は、昨年78万人を超える観光客が訪れているが、観光客の避難対応については、具体的対策が記載されていない。

このように平成26年南丹市避難計画は、美山町の地域特性を全く無視した内容となっている。

 

3 SPEEDIネットワークシステムについて

平成26年南丹市避難計画は、「SPEEDIネットワークシステムや放射線環境モニタリングの結果により、実情に即して、柔軟に対応する。」ことを基本計画としている。

しかし、これまで、原告が繰り返し主張してきたとおり、SPEEDI自体、電源が無くなった場合、放出された放射線の種類・量を把握できず、放射性物質の拡散状況などの適切なデータ解析ができないものである。さらに、そもそもSPEEDIはあくまでもシュミレーションにすぎないのであるから、SPEEDIがあるからといって物質の拡散状況が確実に把握できるというわけではない。そして、そもそも国や事業者が迅速・的確な情報を伝達すること自体、何ら担保のないものである。したがって、住民が迅速的確な情報を得られる確実性が全くないことは明らかである。

 

4 道路の問題について

平成26年南丹市避難計画は、「3、輸送計画及び輸送経路(2)輸送経路」を府道19号園部屋平線道路としている(甲286号証[7 MB]24頁)。

さらに同計画は、

「※ ただし、府道19号園部平屋線が何らかの事象によって通行不可能な場合は、他のルートを選定する。

《補完ルート》
▽国道162号を利用し、京都市右京区京北町から南丹市日吉町へ
▽府道綾部宮島線から国道27号、国道9号経由で南丹市園部町へ」

として、補完ルートについても定めている。

しかし、府道19号線が、何らかの事象によって通行不可能な場合に国道162号及び国道27号、国道9号が通行可能であることは全く担保されていない。これらの道路に避難住民が殺到した場合避難出来ない事態が十分に想定される。

2016年8月29日午後4時25分頃、京都市北区中川川登国道162号でマイクロバスが電柱に衝突し、電柱が倒壊したことにより、倒れた電柱が道路をふさぎ、約5時間にわたって通行止めとなった(甲287号証[62 KB])。

このように、国道162号は、電柱の倒壊によって通行止めとなってしまう道路であり、補完ルートとしての役割を果たすことなど出来ない。