◆原告第40準備書面
第3 過酷事故対策を怠る関電に、原発を再稼働させてはならない

2017年(平成29年)10月27日

原告第40準備書面
-過酷事故における人的対応の現実と限界-

目次


第3 過酷事故対策を怠る関電に、原発を再稼働させてはならない

  1.  上記で指摘してきたマニュアルのない危機的状況に陥った際に、事故現場、政府等で情報が錯綜し、指揮命令系統が不分明な混乱状況におちいる危険性という、福島事故で得られた人的対応における現実と限界に、被告関電はどう対応するのか。本訴訟ではその点が全く明らかになっていない。
  2.  例えば、福島第一原発事故においては、全電源喪失が問題となったにもかかわらず、新規制基準における外部電源の耐震重要度がCであり、また単一故障事故しか想定していないことは、被告関電も認めるとおりである。したがって、過酷事故対策においては、非常用電源の確保が重要課題の一つである、この点ですら、被告関電の対策は十分と言い難い。
    すなわち、被告関電が証拠として挙げる丙第67号証における全交流動力電源喪失の対策は下記の様なものである((丙67・8-1-146~148)。・非常用電源として、ディーゼル発電機及びその附属設備を各々別の場所に2台備える。
    ・7日分の容量以上の燃料を敷地内の燃料油貯蔵タンク及び重油タンクに貯蔵し、タンクローリーにより輸送する。
    ・夜間の輸送実施のため、ヘッドライト等の可搬照明を所定の場所に保管する。
    ・タンクローリーについて、地震時においても保管場所及び輸送ルートの健全性が確保できる場所を少なくとも4箇所選定し、各々1台を配備するとともに、竜巻時においては、緊急安全対策要員によりトンネル内にタンクローリー4台を待避させる運用とする。タンクリーリーは4台(3号・4号共用)。
    ・アクセスルートが寸断され、タンクローリーがディーゼル発電機燃料油貯蔵タンクに近づくことが出来ない場合は、延長用給油ホースを取り付け・使用する。しかしながら、タンクローリーの運転や発電機への給油、延長用給油ホースの取り付け、可搬照明の運搬設置など、全てにおいて人的対応が必要にもかわらず、具体的な作業手順はもちろん、作業員の安全対策については曖昧なままである。また、国会事故調アンケートであげられていた、作業員間の情報伝達をどうするのか、また必要な線量計、マスク、食料、水等をいかに備蓄し、その後調達し続けるのかという問題も残されている。
    もちろん、タンクローリーや貯蔵用タンク、可搬照明、延長給油ホースそのものが地震によって破損されるリスクもある。
    また、被告関電は、3号炉及び4号炉同時の重大事故等対策時においても、必要な要員は46名と算定している(丙67・10-7-44)。しかしながら、これもまた、福島第一原発事故の現実及び佐藤氏の指摘からみて、過少すぎるというべきであろう。
  3.  以上のとおり、被告関電が未だに「安全神話」を振りかざし、深層防護における第4・第5層の問題を争点から外そうとするのは、第4・第5層の安全対策が不十分であるからにほかならない。大飯原発第3号機及び4号機において、ひとたび過酷事故が発生すれば、事故収束作業は混乱に陥り、原告らの生命身体の安全が侵害されるのは必至である。こうした現実から目をそらし、福島第一事故以前の「安全神話」に逆戻りした審理がなされることのないよう、原告らは強く求めるものである。

 

以上

ページトップへ