- 救援新聞 京都版No.1351 2018年12月15日
橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)
原発事故の避難はできない
大飯原発差止裁判で病院・特養勤務の原告陳述
◆京都などの住民3,323人が関西電力と国を相手に起こした大飯原発差止京都訴訟の第21回口頭弁論が、11月20日、京都地裁(第6民事部・藤岡昌弘裁判長)101号法廷で開かれました。今回も原告席や傍聴席(88席)は満席。原告弁護団の森田基彦、大河原壽貴、井関佳法の各代理人弁護士、さらに病院・特別養護老人ホームのスタッフの原告・西川政治さんが、提出した準備書面の要旨を次々陳述しました。
◆森田弁護士は、第54準備書面について陳述。「福島第一原発の事故をふまえて原子力等規制法が改正され、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全が加えられた。そのため住民の権利保護の目的が明確になった。大飯原発を運転しうる状況におくことは、原告らに常に生命・身体・健康等に甚大な被害が発生するかわからない差し迫った具体的危険性を強いるものであり、これを規制して、住民が自由に幸福を追求する権利(人格権)や生存権を守るべき義務が国にはある」と訴えました。
◆大河原弁護士は、第55準備書面で、今年7月4日名古屋高裁金沢支部が出した判決(福井地裁が大飯原発3・4号機の運転差し止めを命じた判決を破棄し稼働を容認した逆転判決)を批判。「新規制基準に合格していることを安易に安全とし、関電の主張をそのまま採用したもので、裁判所自らが主体的に原発の安全性・危険性について判断したものではない。福島原発の事故の原因や実相をも全く考慮していない、本判決は司法の判断を放棄した不当判決。当裁判所ではこのような電力会社の主張引き写し、立法・行政に追随するような判断に逃げない判断を」と迫りました。
◆井関弁護士は、第56準備書面を陳述。「原発立地の地域特性を原告側が過去にも基準値振動を超える地震が起きていて今後も発生する危険があると主張したことに対して、関電が地域特性は十分に把握できていて基準値振動超えの地震はおきないという。しかし、原告らの地盤調査や専門家の意見をふまえれば、大飯原発の敷地は、断層やずれ、傾き、歪みがある不整地盤にある。固い岩盤の上にあるとの主張も誤りで、はぎとり解析結果では、やわらかい表層地面内にあることが判明している。基準値振動超えの地震の危険性が一層明らかになった」と指摘しました。
◆原告の西川さんは、京丹後市網野町の丹後ふるさと病院、たちばな診療所を運営する特定医療法人・三青園常務理事兼事務局長、また特養「ふるさと」の経営責任をもつ理事も兼ねていること、その立場から、多くの患者、入所者、職員などが、大飯原発で事故が起こった場合どうなるのか、第57準備書面で次のように陳述しました。
◆「病院、特養ホームなどの患者、入所者、職員合わせて258人ほどがいる計算になる。大飯原発とは41.9キロ圏に位置する。前の国道178号線は海抜3~4メートルで津波の危険がある地震の避難路としては使えない。今年5月時点でストレッチャー移動患者・入所者91人、車いす移動155人、一人での歩行不能246人が存在している。自治体の救急車などでは到底避難させることはできない。福島のような原発事故が起これば多くの犠牲者が生まれる。これらの、われわれ大人が解決すべきツケを全部次世代に残して若者たちは希望がもてるのか。科学が経済成長戦略に屈するのか。このような事態にならない世の中をつくらなければならない」
◆次回第22回口頭弁論は、1月31日(木)午後2時30分から、同法廷で。傍聴券抽選の整理番号リングの交付は、1時50分頃から行われます。