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◆大飯原発差止訴訟 第37回口頭弁論
 ~循環経済より

  • 循環経済 第156号 2023年6月15日
    原 強(京都循環経済研究所)

 6月1日、京都地裁で、大飯原発の運転差止を求め、3477名の市民が原告になって訴えている訴訟(2012年11月提訴)の第37回口頭弁論がありました。傍聴席がほぼいっぱいになる、多くの原告、市民が参加しました。原告団事務局によれば、準備した資料の数からいうと99名の参加があったとのことです。私も原告席で傍聴する機会をえました。

 今回は、担当裁判官の交代という事情のもとで、これまでの原告側の主張をまとめて弁論する「弁論更新」ということで、傍聴者にとってはわかりやすいものであったといえます。

 最初に、福島県南相馬市からの避難者である原告・福島敦子さんが陳述。

 福島さんは福島原発事故で避難を余儀なくされた事情、避難所での体験、京都に避難することになった経過などをのべたうえ、最後に、つぎのように訴えました。

「裁判長、こどもを守ることに必死な、懸命な母親たちをどうか救ってください。
こどもたちに少しでも明るい未来をどうか託してあげてください。
私たち国民一人ひとりの切実な声に、どうか耳を傾けてください。
大飯原発の再稼働は、現在の日本では必要ないと断罪してください。
もう、私たち避難者のような体験をする人が万が一にも出してはいけないからです。」

 つづいて弁護団の弁護士が以下のとおり原告側の主張のおもな論点について弁論。
・地震国ニッポンで原発稼働は無理(弁護士・谷文彰)
・関電の基準地震動の問題点―地域特性について(弁護士・井関佳法)
・深層防護総論(弁護士・大島麻子)
・避難計画の問題点(弁護士・大河原壽貴)
・避難計画の非現実性・各論(弁護士・岩橋多恵)

 以上のような原告側の弁論終了後、これからの訴訟の進め方を協議。次回は、9月21日(木)午後2時30分から、被告側の関電、国が「弁論更新」を行うことになりました。
今の時期に関電、国がどんな主張を行うのか、とても注目されます。

 このあと、京都弁護士会館に移動して「報告集会」がもたれました。

 原告陳述者であった福島敦子さんがあらためて訴え。

 つづいて、原告団事務局、弁護団事務局からの報告、「老朽原発40年廃炉訴訟市民の会(名古屋地裁)」からのアピールが行われました。

 国段階では原発への回帰政策がすすむなかで、脱原発にむけて、地域から市民が声を上げていくことがとても重要だと思いました。

(原 強)

◆9/9の第30回口頭弁論の報告
 ~救援新聞より

  • 救援新聞 京都版No.1436 2021年9月25日
    橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)

〝原発事故はすべてを奪う″

大飯原発差止京都訴訟第 30 回口頭弁論

◆関西電力と国を相手に京都などの 3,323 人の住民が起こした大飯原発差止訴訟の第 30 回口頭弁論が9月9日京都地裁(第6民事部池田知子裁判長)101 号法廷で開かれました。コロナ禍の入場制限がされるなか、原告弁護団 10 人、原告・傍聴人約 50 人で法廷にのぞみました。今回の裁判では、原告の吉永剛志さんの意見陳述と渡辺輝人弁護団事務局長が第 84 準備書面の要旨の陳述をしました。以下はその要旨。

若狭で原発事故が起これば・・・ 吉永剛志さん

 京都市下京区に住み、NPO法人「使い捨て時代を考える会」常任事務局、会がつくる有機農産物宅配会社、「安全農産供給センター」の役員をしている。会員 1500 人程度、有機農業生産者など農業従事者とよく会う。そこで、もし若狭の原発に事故が起こったらこの農業関係者はどうなるのか考える。

 有機農業は、無農薬・無化学肥料で、多品目の栽培をする農法。自然と人体に害を与える過度な農薬と化学肥料を極力減らして地球環境にも人にも優しい農業。1970 年に始まり、当初は「変わり者」扱いされたが、市民運動の力も借りて独自に市場と流通をひらいた。市民権を得て 21 世紀には有機農業推進法も制定、政府は今年になり、50年まで有機農業のシェアを現在の 0.5 パーセントから 25 パーセントにすると発表している。府内外から有機・自然農法に興味をもった若者もふえている。

 私は、原発事故直後、つきあいのある福島の有機農家を訪ねた。いままで築いた供給ネットワークが「安全ではないから」と半分以上失われていた。放射能検査をしているにもかかわらず。安全、安心なものをつくろうと人一倍努力してきた成果がこわされた打撃は大きかった。

 もし若狭で原発事故が起こり、琵琶湖が汚染され、京都の田畑が汚染されたらどうなるか。私の訪ねた福島の農家は原発から 60 キロ圏で、若狭の原発から私のいる距離と変わらない。苦労して育てた土壌を捨てて他で農業ができようか。土づくりまで数年を要し、毎日の土の手入れで土壌を育て、野菜を売る顧客を口コミで拡大するなど長年かけた信頼があってこその有機農業。これらがすべて失われ、「残念でしたね。避難してください。逃げてください。はい、逃げました」とできるのか。

 京都の有機生産者に福島の生産者たちと同じ思いを繰り返させたくない。原発に力を入れるよりも、有機農家が動きやすく、将来性ある環境をつくることの方がよほどこれからの社会のためになる。

〝画餅(がべい)″の避難計画・・・渡辺輝人弁護士

 舞鶴市は、市域をA~Fゾーンに分けて避難計画を策定している。そのDゾーンにある明倫小学校区は、緊急時防護措置準備区域(UPZ)とされ、避難する際は必ず「避難中継所」に立ち寄ることとされている。一度に多くの住民が避難すること自体が極めて困難だが、中継所に丹波自然運動公園を指定、ここで除染を行うこととされている。だが除染の準備は整っていない。中継所の機能そのものがない。風向きにより丹波自然運動公園が高濃度の汚染スポットになるリスクも十分あり得る。さらに福知山市の三段池公園、長田野公園体育館も同様だ。

 志楽小学校区(5592 人)についても、避難が可能だとして避難先を見るに、避難先が被災していないか、避難施設が受け入れ可能かを確認してからの避難実施となる。京都市東山区、北区、中京区の避難所に分散避難となるが、居住地域と避難先が対応していない。住民がバラバラに分断されてしまう可能性が高い。

 朝来(あさご)小学校区(3189 人)、大浦小学校区(2094 人)も同様である。避難での地域の一体性などは無視される。中舞鶴小学校区(9223 人)は、人口の多い東舞鶴駅周辺を含み、避難先は左京区の大型施設。自治会ごとの対応はほとんどなく、避難所に入れるかどうかも不明確。

 「避難者受け入れ」の京都市側にそもそもの準備ができていない。例えば、元立誠小学校、元清水小学校など避難所に指定されながら校舎が解体され敷地が民間のホテルに転用されていたり、校舎そのものがホテルになっていたりする。統廃合で施設も「子ども未来館」になったり、定員増で小学校として再度開校したりしている。避難先として使用できないところも多い。

 避難者は、UPZ(30㎞)圏内に限らない。福島の場合、自主避難者も多く、この避難者にどう対応するか、舞鶴市民の数倍に当たる避難が想定されるが施設は現実にない。施設は過密で非人間的でなく、感染症の予防にも対策を立てたものでなければならない。

 京都市は、舞鶴市などからの大量の避難者がやってきた場合の公共施設の使用と、それに伴って市民が使用できなくなる事態についてまったくといってよいほど説明していない。市民とのコンセンサスを得ようとの努力もみられない。京都市民自身が避難対象となる可能性すらあり、避難計画自体が画餅に等しい。

裁判報告集会で決意固め合う

 裁判終了後、京都弁護士会で報告集会が開かれました。ここでは、竹本修三原告団長のあいさつ(写真)のあと、出口治男弁護団長(写真右端)もあいさつし、「病気療養でしばらく休んでいましたが、復帰しました。久しぶりに、原告吉永さんの地に足をつけたお話は力強い訴えでした。みなさんと力を合わせてがんばりたい」と語りました。ひきつづき、主張と立証をつくして、脱原発のたたかいを広げていくことを誓い合いました。

◆次回口頭弁論期日は、11 月 16 日(火)午後 2 時 30 分から、101 号法廷で。

◆5/27の第29回口頭弁論の報告
 ~救援新聞より

  • 救援新聞 京都版No.1428 2021年6月15日
    橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)

避難計画なき原発稼働停止を!

大飯原発差止京都訴訟第29回口頭弁論

◆関西電力と国を相手に京都などの3,323人の住民が起こした大飯原発差止訴訟の第29回口頭弁論が5月27日京都地裁(第6民事部池田知子裁判長)101号法廷で開かれました。コロナ禍の入場制限がされるなか、傍聴券を求めて65人が参加。弁護団10人、原告席の7人とともに法廷での原告、弁護団の意見陳述を見守りました。弁護団は3通の準備書面を提出、要旨を渡辺輝人事務局長が述べました。

◆意見陳述に立った原告の西村敦子さんは、避難の困難性について、原発事故の際、京都市は舞鶴市からの避難者8万人を受けいれる計画をつくることになっているが、京都市内の実効ある避難計画ができていない。なのにどうやって避難を受け入れられるのか、避難など到底できないと、指摘し、「原発事故は自然災害でなく人災。原発を運転しなければ大事故の危険性はなくなる。大飯及び高浜原発の運転をただちにやめてもらいたい」と訴えました。

◆渡辺弁護士は、水戸地裁判決(3月18日、日本原子力発電株式会社に対し「避難計画の不備」を理由に東海第二原子力発電所の原子炉の運転中止を命令」を取り上げ、基準は大飯原発にも当てはまるとして、次のように述べました。
―深層防護第5レベル(原発事故を幾重にも想定してレベル毎の防護基準を定めてある)において、事故が起こった場合30キロ圏内(住民94万人)から避難することは困難であり、自治体において避難を実行する計画が整っていなければ、人格権侵害の具体的危険があるとした。大飯原発も実効性のある避難計画はないこと、京都府北部の、土砂崩れや道路寸断、集落の孤立などを準備書面で指摘してきた。政府、府、各自治体でのこれに対する防災計画が策定されておらず、海路で船舶が使用できないことも明白。水戸地裁基準での圏内を大飯原発に当てはめれば、16万人の生活区域になる。8万5千弱が京都府民、うち舞鶴市民が8万弱を占める。関東平野にある東海第二原発と違い、湾岸と山間の地域で経路も限られ、16万人の住民が整然と避難するなど到底不可能。自治体職員も対応できない。―

◆閉廷後、「弁護士会館」で報告集会が開かれ、弁護団からは準備書面の解説があり、原告団からは吉田明生事務局長が活動報告などを行いました(写真は報告する渡辺輝人弁護士。座っているのが中島晃弁護団長代行)。
 

◆次回30回口頭弁論は、9月9日(木)午後2時30分から、101号法廷で。

◆第9回原告団総会のおしらせ
7月3日(土)午後1時30分~
ハートピア京都ホール
地下鉄烏丸線「丸太町」下車すぐ
記念講演「地震大国日本と検証されない避難計画」
講師:池田豊氏(京都自治体問題研究所)
弁護団報告、原告団報告など

◆12/8の第27回口頭弁論の報告
 ~救援新聞より

  • 救援新聞 京都版No.1414 2021年1月5日
    橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)

火山噴火や避難の困難性など主張

大飯原発差止京都訴訟第27回口頭弁論

◆大飯原発の稼働差し止めと安全を脅かしている慰謝料の請求などを求めて京都などの住民3323人が、関西電力と国を相手に起こした裁判の第27回口頭弁論が、12月8日、京都地裁(第6民事部合議係・池田知子裁判長)101号法廷で開かれました。今回は裁判所が弁護団10席、原告を6席、傍聴席を44席(88席ある)に制限。原告の多くが抽選で傍聴席に座るなかでの進行となりました。法廷では、原告代理人の谷文彰弁護士が第72、岩橋多恵弁護士が第73準備書面の要旨を陳述。南丹市日吉町在住の原告・吉田邦子さんが避難の困難性についての意見陳述をしました。その大要は次のとおりです。

谷文彰弁護士―原子力規制庁が大山噴火の予想される噴出規模を5キロ立方メートル、大飯原発付近の降下火砕物は最大10センチ堆積としてきた基準を見直し、2019年5月29日、噴出規模11キロ立方メートル、降下火災物25センチメートルに改定し、許可基準は不適合となった。規制委員会は関電に設計変更をして許可申請をするよう命じた。関電は2019年9月26日、安全性に問題がないと許可申請をして審議中だが、許可が確認されないのに運転を続行している。ただちに停止すべきだ。さらに大型航空機の衝突などテロリズムによる重大事故に備え必要な機能が損なわれないよう対策施設の設置期限が22年8月24日に定められているが、設置完了のめどはたっていない。この許可基準規則に適合していなのだから運転をしてはならない。先の大阪地裁判決でも想定される基準値振動に適合していないことから運転を許可した違法を認定した。

岩橋多恵弁護士―東京電力福島第1原発の事故後、原子力規制委員会の「原子力災害対策指針」に基づいて、原発5キロ圏、30キロ圏自治体が「避難計画」を策定、大飯原発についても17年10月「緊急時対応」が策定され、20年7月改定された。しかし、原発事故の被害は同心円状にひろがるものではなく、30キロ圏内に区切れない。避難手段も、原則バス移動としているが、バス会社からの必要台数、運転手の確保の問題、道路の渋滞、さらには地震、津波による道路の寸断、家屋の倒壊、冬季の積雪も想定され、放射能汚染や密になることへの対策、移動先の確保などが欠落している。避難計画は「その時になってみないとわからない」というに等しい。30キロ圏内での屋内避難にしても、窓を閉めていれば安全が確保される根拠はない。内部被ばくの危険もあるし閉開時期の基準もない。地震が起きての屋内はより危険。すべての住民を安全に避難させる合理的で実効性のある具体的計画はとうてい無理。原発を稼働させず、すみやかに廃炉にすることこそが住民の安全を確保する道だ。

吉田邦子さん―南丹市日吉町に住んで50年。大飯原発から約45キロ、高浜原発から40キロ、山に囲まれた地域で多くの人は勤めながら
農業を営んでいる。四季折々の美しい豊かな自然を守りたいと思っている。しかし、原発が近くにある不安が去らない。地震による福島の原発のような事故が起こればどうなるか、南丹市のパンフレットに避難のこ
とが書かれているが、日吉町のような30キロ圏外の避難場所は書いてない。北からの風がよく吹くし、屋内避難をいつまでもできない。高齢者が多く車の運転のできない人も多く、避難も困難。田畑が放射能汚染されたら暮らせない。原子力災害は将来にわたって自然を破壊し回復できない被害を人にもたらす。再稼働中止、廃止を求める。

◆次回28回口頭弁論は、2月25日(水)午後2時30分から、101号法廷で。

裁判所周辺を脱原発デモ

◆裁判開始前の12時10分には、32人が京都弁護士会館前に集合。富小路通から丸太町通へ出て西へ、裁判所前を柳馬場通へ南下、夷川通を東へ、寺町通から丸太町通へ一回りするデモ行進で市民にアピールしました(写真)。「大飯はキケン、自然を守ろう、子どもを守ろう、老朽原発動かすな」などのコールを響かせました。

今後のたたかいへ―裁判報告集会

◆裁判終了後は鴨沂(おうき)会館で報告集会が開かれ約50人が参加しました。竹本修三原告団長のあいさつのあと、法廷で陳述した岩橋、谷両弁護士や吉田さんなどが感想と今後のたたかいへの思いを語りました。渡辺輝人弁護団事務局長は、裁判が大詰めを迎える段階に来たことを報告、これからは証人調べの計画を決めるとの見通しを示しました。また、改定前に裁判所内で、裁判内容を知らせる文書を配布していたら裁判所職員が文書を見せるよう要求し、配布をやめさせたこと(法廷の中で配布した)が出され、いままで自由にしてきたのに何を根拠にやめさせるのか、自由にできないのはおかしい、などの声もあがり、改めて申し入れをすることになりました。

◆5/9の第23回口頭弁論の報告
 ~救援新聞より

  • 救援新聞 京都版No.1365 2019年5月25日
    橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)

裁判は少数者の救済のためにある

大飯原発差止京都訴訟第23回口頭弁論

◆京都などの住民3323人が関西電力と国に大飯原発差止や慰謝料などを求めた訴訟の第23回口頭弁論が、5月9日、京都地裁(第6民事部合議は係・藤田昌宏裁判長)101号法廷で開かれました。

◆傍聴席(88席)と原告、被告140人余りで満席となった法廷では、原告側弁護団の出口治男団長が自らの胆管癌手術からの復帰の経験にふれ、「多くの人の友愛に支えられた。この友愛こそ人として幸福を追求する基盤をなすもの、平和に生きる人権として保障されなければならない。原発は一旦事故が起これば、友愛を破壊して取返しのつかない被害をもたらす。裁判所のこの間の原発稼働への判断は、残念ながらこの人権救済から目を背けてきたと言わざるを得ない」と国民の人権に向き合うよう求めました。(→こちら

◆つづいて、谷文彰弁護士が一般建築物での耐震性のレベルは原発よりはるかに大きな地震に耐えられるよう設計されている、原発はその社会通念にすら達していないと三井ホームや住友林業、積水ハウスなどの具体的事例を示して批判しました。

◆また、渡辺輝人弁護団事務局長は、社会通念について、「司法の役割は少数者の人権を救済するところにあり、社会通念一般に解消されるものではない」と、裁判所の注意喚起を促しました。

◆最後に、南丹市園部町に住んでいる原告の石井琢悟さんが意見陳述。要旨次のように述べました。

◆大飯原発から52キロ南に住み畑を借りて作物をつくっている。原発からの距離は福島第一原発から飯館村と福島市の中間に位置する。福島のその地を訪ねたら深刻な汚染地域になっていた。大飯原発で事故になれば深刻な放射能汚染を受ける確率が高い。将来子どもたちが大人になりこの地に来て作物づくりをすることも描いている。このかけがえのない土地を渡してやるのも私たちの責務。大飯原発はそれを不可能にする危険な存在そのものだ。もし、事故が起これば避難は到底できない。電気が止まれば電車は動かず、車だけが移送手段となる。北が原発、東は山、西か南へ逃げるしかない。西の兵庫へ逃げるイメージは普段の生活から浮かばない。国道9号線を南に向かうことになるが、母が大津市に住んでいるので一旦母を助けての避難になり、そうすると京都縦貫道が考えられるがトンネルや高架が多く崩落の恐れもある。幹線道路は現在でも渋滞している。原発事故発生時は避難者が殺到して動けなくなることが想定される。福島の例からも放射性ブルームに覆われ被ばくのリスクがきわめて高い。そうすると安定ヨウ素剤の常備も必要となるが、南丹市はその備蓄がない。原発は、生活や人生を破壊し得る技術のまま稼働している。私の住む地域で事故が起きた時の避難・防護の方法は用意されていない。これは将来にわたって健康に生き続ける権利の侵害である。

◆次回第24回口頭弁論は、8月1日(木)午後2時30分から、同法廷で。

◆11/20の第21回口頭弁論の報告
 ~救援新聞より

  • 救援新聞 京都版No.1351 2018年12月15日
    橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)

原発事故の避難はできない

大飯原発差止裁判で病院・特養勤務の原告陳述

◆京都などの住民3,323人が関西電力と国を相手に起こした大飯原発差止京都訴訟の第21回口頭弁論が、11月20日、京都地裁(第6民事部・藤岡昌弘裁判長)101号法廷で開かれました。今回も原告席や傍聴席(88席)は満席。原告弁護団の森田基彦、大河原壽貴、井関佳法の各代理人弁護士、さらに病院・特別養護老人ホームのスタッフの原告・西川政治さんが、提出した準備書面の要旨を次々陳述しました。

◆森田弁護士は、第54準備書面について陳述。「福島第一原発の事故をふまえて原子力等規制法が改正され、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全が加えられた。そのため住民の権利保護の目的が明確になった。大飯原発を運転しうる状況におくことは、原告らに常に生命・身体・健康等に甚大な被害が発生するかわからない差し迫った具体的危険性を強いるものであり、これを規制して、住民が自由に幸福を追求する権利(人格権)や生存権を守るべき義務が国にはある」と訴えました。

◆大河原弁護士は、第55準備書面で、今年7月4日名古屋高裁金沢支部が出した判決(福井地裁が大飯原発3・4号機の運転差し止めを命じた判決を破棄し稼働を容認した逆転判決)を批判。「新規制基準に合格していることを安易に安全とし、関電の主張をそのまま採用したもので、裁判所自らが主体的に原発の安全性・危険性について判断したものではない。福島原発の事故の原因や実相をも全く考慮していない、本判決は司法の判断を放棄した不当判決。当裁判所ではこのような電力会社の主張引き写し、立法・行政に追随するような判断に逃げない判断を」と迫りました。

◆井関弁護士は、第56準備書面を陳述。「原発立地の地域特性を原告側が過去にも基準値振動を超える地震が起きていて今後も発生する危険があると主張したことに対して、関電が地域特性は十分に把握できていて基準値振動超えの地震はおきないという。しかし、原告らの地盤調査や専門家の意見をふまえれば、大飯原発の敷地は、断層やずれ、傾き、歪みがある不整地盤にある。固い岩盤の上にあるとの主張も誤りで、はぎとり解析結果では、やわらかい表層地面内にあることが判明している。基準値振動超えの地震の危険性が一層明らかになった」と指摘しました。

◆原告の西川さんは、京丹後市網野町の丹後ふるさと病院、たちばな診療所を運営する特定医療法人・三青園常務理事兼事務局長、また特養「ふるさと」の経営責任をもつ理事も兼ねていること、その立場から、多くの患者、入所者、職員などが、大飯原発で事故が起こった場合どうなるのか、第57準備書面で次のように陳述しました。

◆「病院、特養ホームなどの患者、入所者、職員合わせて258人ほどがいる計算になる。大飯原発とは41.9キロ圏に位置する。前の国道178号線は海抜3~4メートルで津波の危険がある地震の避難路としては使えない。今年5月時点でストレッチャー移動患者・入所者91人、車いす移動155人、一人での歩行不能246人が存在している。自治体の救急車などでは到底避難させることはできない。福島のような原発事故が起これば多くの犠牲者が生まれる。これらの、われわれ大人が解決すべきツケを全部次世代に残して若者たちは希望がもてるのか。科学が経済成長戦略に屈するのか。このような事態にならない世の中をつくらなければならない」

◆次回第22回口頭弁論は、1月31日(木)午後2時30分から、同法廷で。傍聴券抽選の整理番号リングの交付は、1時50分頃から行われます。

◆6/5の第20回口頭弁論の報告
 ~救援新聞より

  • 救援新聞 京都版No.1336 2018年6月15日
    橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)

原発は差し止め廃炉しかない

大飯原発差止京都訴訟第20回口頭弁論

  • 大飯原発差止訴訟の第20回口頭弁論が、6月5日京都地裁(第6民事部・藤岡昌弘裁判長)101号法廷で開かれました。今回も原告席や傍聴席(88席)は満席。原告弁護団の3人が準備書面の要旨を陳述しました(下記要旨)。
  • 次回の裁判は、9月4日(火)午後2時から。

「廃炉の困難性について」川中 宏 弁護士

  • 福島第一原発の事故から7年がたつが、廃炉作業は遅々として進んでいない。原子炉や建屋が高濃度の放射能汚染のなかにあるからで、チェルノブイリの廃炉作業を見れば、その困難性が明らかだ。チェルノブイリでは、関連施設全体を、コンクリートやステンレスでおおう、石棺方式をとっているが、これは一定期間密閉して放射能の自然減衰を待つ方式、根本解決にはならない。
  • スリーマイル島の事故は、福島に比べればはるかに小規模な事故だが、それでも原子炉内に100トンのデブリが存在していた。このデブリ取り出しに11年を要した。福島の場合はこれとは比較にならないほど困難だと取り出しのスリーマイル島の指揮者は証言している。
  • 福島では原子炉に水を入れ続けなければならず、その汚染水対策として汚染水循環システム、除去装置での浄化、そして凍土壁をつくったが、維持費用年間10億円といわれ、効果に疑問が出ている。1号機から4号機の内部がどうなっているかよくわからない。2号機の外で531シーベルトのスポットがあるなど高放射線量で人の手が入りにくい。これからデブリを取り出すことになるが、この放射性物質で汚染された廃棄物をどこへ運搬し、どこで処分するのかいまだ具体的に決まっていない。2021年からデブリ取り出し、それから30年40年との廃炉マップを示してはいるが、問題を先送りしてごまかしているのではないか。
  • ドイツの場合は、わが国と全く逆。原発大国であったのが、福島の事故から国会で原発廃絶を決議、2022年までにすべての原発を停止・閉鎖する。日本のような科学技術大国で原発事故が起こったのだから、原発事故が避けられないとみて、原発ゼロ国家への転身をはかった。今度はわが国がドイツを教訓に原発ゼロをめざさなければならない。

「核のゴミ問題について」岩佐 英夫 弁護士

  • 原発の危険性の根源は放射性物質の核燃使用にある。その使用済み核燃料も極めて危険な放射性物質だ。原発稼働で生成する「核分裂生成物」は、原発運転の元々の燃料の濃縮ウランよりはるかに強く命に危険なもの「死の灰」と呼ばれる。この生成物とは別に、ウラン燃料に混在している「ウラン238が中性子を取り込んでプルトニウムに変化する。プルトニウムは、わずか100万分の1グラムを肺に吸い込んだだけで肺がんになるといわれる。1年間核分裂反応を続けた使用済み核燃料の放射能の強さは、使用前のウラン燃料の約1億倍になる。これら使用済み燃料棒は貯槽プールにむき出しのまま置かれている。津波がここに直撃すれば重大事故になる危険がある。
  • 2014年3月末現在、全国の原発の使用済み核燃料は1万4千330トンU(金属ウランに換算した重量)、六ケ所村の分を加えると、1万7千トンに達し、使用済み燃料プールも満杯に近づきつつある。使用済み燃料の再処理操業もめどが立ってない。姑息にも、国や事業体は燃料棒を収めるマスの感覚を狭める「リラッキング」でしのごうとしている。危険を増大するだけだ。中間貯蔵後の再処理工場のめどすら立っていない。「中間貯蔵施設」での「一時保管」が永久保管にならざるを得ない。
  • 日本政府の処理計画はガラス固体化したうえで深さ300メートルの地下に埋めるとしているが、処分地などこれも見通しが立っていない。しかもこの廃棄物が人体に影響なくなるのは10万年といわれ、今から10万年前はネアンデルタール人と共存していた時代で、10万年後がどうなるかわからない。それまでに火山、地震などで異変が起こる。地層処分は世界的にも破たんしている。核のゴミをこれ以上増やし、危険を将来世代に押し付けることは許されない。原発再稼働、新増設はただちに中止すべきだ。

「原発事故の関連死について」渡辺 輝人 弁護士

  • 福島第一原発事故に関連して亡くなった人は、福島県の1千605人(人口202万9千人)に対し、宮城県878人(234万8千人)、岩手県428人(133万人)。福島県の関連死が突出している。昨年9月時点で福島県は2千202人に達した。多くは65歳以上の高齢者が亡くなっている。
  • 原発事故が起こった時、がれきの下に埋められるなど行方不明者が多くいたが、原発事故の汚染で捜索が打ち切られ見殺しにされた人もいた。「がれきの下から助けを求める声をいくつも聞いた」との証言もある。病院に入院中に体調を崩して亡くなるケースも多い。数字もそれを示ししている。
  • 大飯原発は過酷事故を起こせば、直接大量の放射線被ばくがなくても、それを避けるために、移動の負担などで多くの人が亡くなるのが必然である。大飯原発は運転を差し止め、廃炉にするほかない。

◆1/16の第18回口頭弁論の報告
 ~救援新聞より

  • 救援新聞 京都版No.1325 2018年2月5日
    橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)

科学・司法の倫理が問われている

大飯原発差止京都訴訟第17回口頭弁論

  • 大飯原発差止京都訴訟の第18回口頭弁論が、1月16日、京都地裁(第6民事部・藤岡昌弘裁判長)101号法廷で開かれました。法廷には、原告や弁護団、支援の傍聴者など総勢120人余りが詰めかけ、原告代理人の渡辺輝人弁護士(弁護団事務局長)の第42準備書面(原発以外で政府が地震の予測不可能性を前提に最大規模の災害対策をしている問題を主張)、森田基彦弁護士が第43準備書面(「基準値振動は過小評価」として、地震学者・島崎邦彦氏や防災専門家の藤原広行氏などの証言を引き、大飯原発の基準値振動は過小評価の批判)、井関佳法弁護士は第44準備書面(「地域特性の補充」とのタイトルで、関電が表層のみの調査で地域特性が把握されていない上に大飯原発を建てた危険性を主張)について要旨を順次述べました。
  • つづいて、原告の高瀬光代さんが次のように(要旨)陳述しました。
    23年前、私は、神戸で阪神淡路大震災を体験した。当時、中学校で理科の教師をしていた。その経験から断言できるのは、学校は避難所とすべきでないということ。生活機能もプライバシーまったくない、弱者には最悪の環境。関西広域連合が策定したガイドラインでは、原発事故の避難が見込まれる25万人の避難先に多くの学校が指定されている。避難者はとても耐えがたいのではないか。原発事故が起きたら、私有財産も、移動の自由も、健康で文化的生活も、何故制限されなければならないのか。憲法は停止してしまうのか。関電が大飯原発を再稼働するというなら、事故が起きたらこれらの問題をどうするか、責任をもたなければならない。避難を余儀なくされた方々に、それまでと同等の生活環境を用意してしかるべきではないか。それができないなら稼働すべきではなない。
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  • この後、出口治男弁護団長が、本裁判で根本から問われているのは、科学技術や司法判断にたずさわるものの倫理である、として、老朽化した大飯原発1、2号機の廃炉が決定したものの使用済み核燃料の処分地も決まっていないこと、関電がデータ無視、隠蔽、改ざん、ねつ造、技術からの逸脱などやってはならないことをやっていること、などを指摘。裁判所は慧眼(けいがん)をもってこれらを判断していただきたい、まさに司法も倫理を問われていると迫りました。
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  • 次回第19回口頭弁論は、3月27日(火)午後2時から、101号法廷で。

◆7/21の第16回口頭弁論の報告
 ~救援新聞より

  • 救援新聞 京都版No.1310 2017年8月5日
    橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)

地震の危険隠しの関電を批判

大飯原発差止京都訴訟第16回口頭弁論

  • 大飯原発差止京都訴訟の第16回口頭弁論が、7月21日、京都地裁(第6民事部・藤岡昌弘裁判長)101号法廷で開かれました。法廷には、原告や弁護団、支援の傍聴者など総勢120人余りが詰めかけたなか、原告代理人の渡辺輝人弁護士(弁護団事務局長)の第37準備書面(07年新潟県中越沖地震のメカニズムについて他)、谷文彰弁護士の第38準備書面(上林川断層について)がそれぞれ要旨を陳述。原告・市川章人さんが意見陳述をしました。以下はその大要です。
  • 辺輝人弁護士
    ―2007年新潟県中越沖地震の際、東京電力柏崎刈羽原発に想定をはるかに超える地震動が発生し、東電は原因を地表ら4キロから6キロの深部地盤の傾き、地下2キロの褶曲構造からの、それぞれ2倍の波が集中したと後付けで説明したが、科学的な調査や再現性の検証もしていない。地震発生前に「揺れの少ない強固な岩盤の上に建てている」と安全を強調していたホームページの文章を削除した。このことを踏まえると、大飯原発の地盤の特性はほとんど把握がされていない。関電は大飯原発の地下500メートル程度までしか構造を把握していない。海域についてもせいぜい2、300メートルの断面でしか把握していない。こんなおざなりの調査や検証で大飯原発の危険な地盤を「特異な地盤特性は存在しない」などと評価することは到底できない。
  • 谷文彰弁護士
    ―京都府の北部、綾部市からは北東の大飯原発に向かって活断層(上林川断層)が走っている。関電は断層が明確な範囲は26キロだとして、大飯原発に近い福井県境で活断層が確認できないとしているが、断層が存在する可能性が残されている。明確な活断層でない派生のところでも熊本地震は発生した。
  • 市川章人さん
    ―69歳、京都市伏見区に家族4人で暮らす。大飯原発から66キロメートルに住む。原発事故と放射能被害への不安、恐怖から提訴。大学で原子物理学を学ぶ。実験中の被ばく事故に遭遇し、以来がんへの恐怖をかかえてきた。処理方法のない放射性廃棄物を大量に生む原発に疑問を持ち、今儲かりすればよい、あとは野となれ式の商業運転はやめるべきだと考えるに至った。その後の99年の東海村の臨界事故と国の対応はチェルノブイリにつづく日本の事故を予感させ、福島原発事故で的中した。福島の原発から61キロの、5人の子どもをかかえた親戚一家の話を聞いて放射能への恐怖を一層強くした。避難もかなわず、命と健康への恐怖、仕事を失うなどの被害、生活そのものが成り立たない現実がある。福島原発事故後、大飯原発の再稼働が認められた。避難計画も再稼働審査の対象には含まれず、活断層の集中する若狭湾ではいつ過酷事故が起こるかわからない危険におびえることとなった。滋賀県によるシミュレーションでも、66キロ圏は安定ヨウ素剤の服用が必要で、琵琶湖が汚染されたら放射性ヨウ素のために1週間水が飲めないという試算もある。しかし、京都市の避難計画にはそのような記載は一切ない。15年の原子力災害対策指針の改悪で不安はいっそう増した。避難より屋内退避を強調。情報も届かない中、自分で自分を守るしかない。私の大学の事故はコンクリートの壁を通して放射線をあびたもので、屋内退避など効果はほとんどない。とくに心配は、保育園の孫。保育園からきちんと避難できるか。京都市は具体的対策を記載していない。孫たちの命と未来を守るために、万が一の危険も冒すわけにはいかない。原発廃止こそ最大の安全対策であり、命と生活を最優先にした判断を裁判所がくだされるよう切に願う。
  • 次回裁判は、11月1日(水)午後2時から、京都地裁101号法廷で。

裁判前にはデモで市民アピール

  • 裁判が開始される前、12時10分には、原告や弁護団など40人が京都弁護士会前に集まり、横断幕やノボリなどを手に、市民にアピールする、デモ行進をしました。裁判所の周辺から、柳馬場通り、夷川通、寺町通、丸太町通りを一周し、「大飯は危険」「原発やめよ」「子どもを守ろう」「自然を守ろう」などとハンドマイクの声にあわせて訴えました。

◆【京都民報】5/9 第15回口頭弁論。原発直下地震は起こりうる

【京都民報 2017年5月21日号】

原発直下地震起こりうる、再稼働中止を 大飯差し止め訴訟口頭弁論 原告団長、被災者が主張

すべての原発をなくすことをめざす京都脱原発訴訟原告団・弁護団が取り組む大飯原発差し止め訴訟で9日、第15回口頭弁論が京都地裁で行われ、福島第一原発事故の被災者や研究者、弁護士らが再稼働中止を主張しました。

原告団長の竹本修三・京都大学名誉教授は口頭弁論で、巨大地震が日本全国どこでも起こりうる危険性を指摘し、原発直下地震が起これば過酷事故は避けられないと主張。「裁判官が自らの判断で原発の危険性、新規制基準の考え方について評価してほしい」と強調しました。

原告の福島敦子さんは、原発事故後に娘2人と福島県から京都に避難。車で必死に避難場所を探して逃げ続けたことや、京都へ移住後も不安な生活を続けていることを詳しく語り、京都に近い大飯原発の差し止めを強く求めました。

専門家や弁護士らが、巨大地震が原発周辺で起こる危険性や、新規制基準の問題点、避難計画に実効性がないことなどを主張しました。

裁判後に、報告集会が行われ、今後も法廷内外で原発運転差し止めの世論・運動を広げていくことを確認しました。