◆9/9の第30回口頭弁論の報告
 ~救援新聞より

  • 救援新聞 京都版No.1436 2021年9月25日
    橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)

〝原発事故はすべてを奪う″

大飯原発差止京都訴訟第 30 回口頭弁論

◆関西電力と国を相手に京都などの 3,323 人の住民が起こした大飯原発差止訴訟の第 30 回口頭弁論が9月9日京都地裁(第6民事部池田知子裁判長)101 号法廷で開かれました。コロナ禍の入場制限がされるなか、原告弁護団 10 人、原告・傍聴人約 50 人で法廷にのぞみました。今回の裁判では、原告の吉永剛志さんの意見陳述と渡辺輝人弁護団事務局長が第 84 準備書面の要旨の陳述をしました。以下はその要旨。

若狭で原発事故が起これば・・・ 吉永剛志さん

 京都市下京区に住み、NPO法人「使い捨て時代を考える会」常任事務局、会がつくる有機農産物宅配会社、「安全農産供給センター」の役員をしている。会員 1500 人程度、有機農業生産者など農業従事者とよく会う。そこで、もし若狭の原発に事故が起こったらこの農業関係者はどうなるのか考える。

 有機農業は、無農薬・無化学肥料で、多品目の栽培をする農法。自然と人体に害を与える過度な農薬と化学肥料を極力減らして地球環境にも人にも優しい農業。1970 年に始まり、当初は「変わり者」扱いされたが、市民運動の力も借りて独自に市場と流通をひらいた。市民権を得て 21 世紀には有機農業推進法も制定、政府は今年になり、50年まで有機農業のシェアを現在の 0.5 パーセントから 25 パーセントにすると発表している。府内外から有機・自然農法に興味をもった若者もふえている。

 私は、原発事故直後、つきあいのある福島の有機農家を訪ねた。いままで築いた供給ネットワークが「安全ではないから」と半分以上失われていた。放射能検査をしているにもかかわらず。安全、安心なものをつくろうと人一倍努力してきた成果がこわされた打撃は大きかった。

 もし若狭で原発事故が起こり、琵琶湖が汚染され、京都の田畑が汚染されたらどうなるか。私の訪ねた福島の農家は原発から 60 キロ圏で、若狭の原発から私のいる距離と変わらない。苦労して育てた土壌を捨てて他で農業ができようか。土づくりまで数年を要し、毎日の土の手入れで土壌を育て、野菜を売る顧客を口コミで拡大するなど長年かけた信頼があってこその有機農業。これらがすべて失われ、「残念でしたね。避難してください。逃げてください。はい、逃げました」とできるのか。

 京都の有機生産者に福島の生産者たちと同じ思いを繰り返させたくない。原発に力を入れるよりも、有機農家が動きやすく、将来性ある環境をつくることの方がよほどこれからの社会のためになる。

〝画餅(がべい)″の避難計画・・・渡辺輝人弁護士

 舞鶴市は、市域をA~Fゾーンに分けて避難計画を策定している。そのDゾーンにある明倫小学校区は、緊急時防護措置準備区域(UPZ)とされ、避難する際は必ず「避難中継所」に立ち寄ることとされている。一度に多くの住民が避難すること自体が極めて困難だが、中継所に丹波自然運動公園を指定、ここで除染を行うこととされている。だが除染の準備は整っていない。中継所の機能そのものがない。風向きにより丹波自然運動公園が高濃度の汚染スポットになるリスクも十分あり得る。さらに福知山市の三段池公園、長田野公園体育館も同様だ。

 志楽小学校区(5592 人)についても、避難が可能だとして避難先を見るに、避難先が被災していないか、避難施設が受け入れ可能かを確認してからの避難実施となる。京都市東山区、北区、中京区の避難所に分散避難となるが、居住地域と避難先が対応していない。住民がバラバラに分断されてしまう可能性が高い。

 朝来(あさご)小学校区(3189 人)、大浦小学校区(2094 人)も同様である。避難での地域の一体性などは無視される。中舞鶴小学校区(9223 人)は、人口の多い東舞鶴駅周辺を含み、避難先は左京区の大型施設。自治会ごとの対応はほとんどなく、避難所に入れるかどうかも不明確。

 「避難者受け入れ」の京都市側にそもそもの準備ができていない。例えば、元立誠小学校、元清水小学校など避難所に指定されながら校舎が解体され敷地が民間のホテルに転用されていたり、校舎そのものがホテルになっていたりする。統廃合で施設も「子ども未来館」になったり、定員増で小学校として再度開校したりしている。避難先として使用できないところも多い。

 避難者は、UPZ(30㎞)圏内に限らない。福島の場合、自主避難者も多く、この避難者にどう対応するか、舞鶴市民の数倍に当たる避難が想定されるが施設は現実にない。施設は過密で非人間的でなく、感染症の予防にも対策を立てたものでなければならない。

 京都市は、舞鶴市などからの大量の避難者がやってきた場合の公共施設の使用と、それに伴って市民が使用できなくなる事態についてまったくといってよいほど説明していない。市民とのコンセンサスを得ようとの努力もみられない。京都市民自身が避難対象となる可能性すらあり、避難計画自体が画餅に等しい。

裁判報告集会で決意固め合う

 裁判終了後、京都弁護士会で報告集会が開かれました。ここでは、竹本修三原告団長のあいさつ(写真)のあと、出口治男弁護団長(写真右端)もあいさつし、「病気療養でしばらく休んでいましたが、復帰しました。久しぶりに、原告吉永さんの地に足をつけたお話は力強い訴えでした。みなさんと力を合わせてがんばりたい」と語りました。ひきつづき、主張と立証をつくして、脱原発のたたかいを広げていくことを誓い合いました。

◆次回口頭弁論期日は、11 月 16 日(火)午後 2 時 30 分から、101 号法廷で。