- 救援新聞 京都版No.1365 2019年5月25日
橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)
裁判は少数者の救済のためにある
大飯原発差止京都訴訟第23回口頭弁論
◆京都などの住民3323人が関西電力と国に大飯原発差止や慰謝料などを求めた訴訟の第23回口頭弁論が、5月9日、京都地裁(第6民事部合議は係・藤田昌宏裁判長)101号法廷で開かれました。
◆傍聴席(88席)と原告、被告140人余りで満席となった法廷では、原告側弁護団の出口治男団長が自らの胆管癌手術からの復帰の経験にふれ、「多くの人の友愛に支えられた。この友愛こそ人として幸福を追求する基盤をなすもの、平和に生きる人権として保障されなければならない。原発は一旦事故が起これば、友愛を破壊して取返しのつかない被害をもたらす。裁判所のこの間の原発稼働への判断は、残念ながらこの人権救済から目を背けてきたと言わざるを得ない」と国民の人権に向き合うよう求めました。(→こちら)
◆つづいて、谷文彰弁護士が一般建築物での耐震性のレベルは原発よりはるかに大きな地震に耐えられるよう設計されている、原発はその社会通念にすら達していないと三井ホームや住友林業、積水ハウスなどの具体的事例を示して批判しました。
◆また、渡辺輝人弁護団事務局長は、社会通念について、「司法の役割は少数者の人権を救済するところにあり、社会通念一般に解消されるものではない」と、裁判所の注意喚起を促しました。
◆最後に、南丹市園部町に住んでいる原告の石井琢悟さんが意見陳述。要旨次のように述べました。
◆大飯原発から52キロ南に住み畑を借りて作物をつくっている。原発からの距離は福島第一原発から飯館村と福島市の中間に位置する。福島のその地を訪ねたら深刻な汚染地域になっていた。大飯原発で事故になれば深刻な放射能汚染を受ける確率が高い。将来子どもたちが大人になりこの地に来て作物づくりをすることも描いている。このかけがえのない土地を渡してやるのも私たちの責務。大飯原発はそれを不可能にする危険な存在そのものだ。もし、事故が起これば避難は到底できない。電気が止まれば電車は動かず、車だけが移送手段となる。北が原発、東は山、西か南へ逃げるしかない。西の兵庫へ逃げるイメージは普段の生活から浮かばない。国道9号線を南に向かうことになるが、母が大津市に住んでいるので一旦母を助けての避難になり、そうすると京都縦貫道が考えられるがトンネルや高架が多く崩落の恐れもある。幹線道路は現在でも渋滞している。原発事故発生時は避難者が殺到して動けなくなることが想定される。福島の例からも放射性ブルームに覆われ被ばくのリスクがきわめて高い。そうすると安定ヨウ素剤の常備も必要となるが、南丹市はその備蓄がない。原発は、生活や人生を破壊し得る技術のまま稼働している。私の住む地域で事故が起きた時の避難・防護の方法は用意されていない。これは将来にわたって健康に生き続ける権利の侵害である。
◆次回第24回口頭弁論は、8月1日(木)午後2時30分から、同法廷で。