◆12/8の第27回口頭弁論の報告
 ~救援新聞より

  • 救援新聞 京都版No.1414 2021年1月5日
    橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)

火山噴火や避難の困難性など主張

大飯原発差止京都訴訟第27回口頭弁論

◆大飯原発の稼働差し止めと安全を脅かしている慰謝料の請求などを求めて京都などの住民3323人が、関西電力と国を相手に起こした裁判の第27回口頭弁論が、12月8日、京都地裁(第6民事部合議係・池田知子裁判長)101号法廷で開かれました。今回は裁判所が弁護団10席、原告を6席、傍聴席を44席(88席ある)に制限。原告の多くが抽選で傍聴席に座るなかでの進行となりました。法廷では、原告代理人の谷文彰弁護士が第72、岩橋多恵弁護士が第73準備書面の要旨を陳述。南丹市日吉町在住の原告・吉田邦子さんが避難の困難性についての意見陳述をしました。その大要は次のとおりです。

谷文彰弁護士―原子力規制庁が大山噴火の予想される噴出規模を5キロ立方メートル、大飯原発付近の降下火砕物は最大10センチ堆積としてきた基準を見直し、2019年5月29日、噴出規模11キロ立方メートル、降下火災物25センチメートルに改定し、許可基準は不適合となった。規制委員会は関電に設計変更をして許可申請をするよう命じた。関電は2019年9月26日、安全性に問題がないと許可申請をして審議中だが、許可が確認されないのに運転を続行している。ただちに停止すべきだ。さらに大型航空機の衝突などテロリズムによる重大事故に備え必要な機能が損なわれないよう対策施設の設置期限が22年8月24日に定められているが、設置完了のめどはたっていない。この許可基準規則に適合していなのだから運転をしてはならない。先の大阪地裁判決でも想定される基準値振動に適合していないことから運転を許可した違法を認定した。

岩橋多恵弁護士―東京電力福島第1原発の事故後、原子力規制委員会の「原子力災害対策指針」に基づいて、原発5キロ圏、30キロ圏自治体が「避難計画」を策定、大飯原発についても17年10月「緊急時対応」が策定され、20年7月改定された。しかし、原発事故の被害は同心円状にひろがるものではなく、30キロ圏内に区切れない。避難手段も、原則バス移動としているが、バス会社からの必要台数、運転手の確保の問題、道路の渋滞、さらには地震、津波による道路の寸断、家屋の倒壊、冬季の積雪も想定され、放射能汚染や密になることへの対策、移動先の確保などが欠落している。避難計画は「その時になってみないとわからない」というに等しい。30キロ圏内での屋内避難にしても、窓を閉めていれば安全が確保される根拠はない。内部被ばくの危険もあるし閉開時期の基準もない。地震が起きての屋内はより危険。すべての住民を安全に避難させる合理的で実効性のある具体的計画はとうてい無理。原発を稼働させず、すみやかに廃炉にすることこそが住民の安全を確保する道だ。

吉田邦子さん―南丹市日吉町に住んで50年。大飯原発から約45キロ、高浜原発から40キロ、山に囲まれた地域で多くの人は勤めながら
農業を営んでいる。四季折々の美しい豊かな自然を守りたいと思っている。しかし、原発が近くにある不安が去らない。地震による福島の原発のような事故が起こればどうなるか、南丹市のパンフレットに避難のこ
とが書かれているが、日吉町のような30キロ圏外の避難場所は書いてない。北からの風がよく吹くし、屋内避難をいつまでもできない。高齢者が多く車の運転のできない人も多く、避難も困難。田畑が放射能汚染されたら暮らせない。原子力災害は将来にわたって自然を破壊し回復できない被害を人にもたらす。再稼働中止、廃止を求める。

◆次回28回口頭弁論は、2月25日(水)午後2時30分から、101号法廷で。

裁判所周辺を脱原発デモ

◆裁判開始前の12時10分には、32人が京都弁護士会館前に集合。富小路通から丸太町通へ出て西へ、裁判所前を柳馬場通へ南下、夷川通を東へ、寺町通から丸太町通へ一回りするデモ行進で市民にアピールしました(写真)。「大飯はキケン、自然を守ろう、子どもを守ろう、老朽原発動かすな」などのコールを響かせました。

今後のたたかいへ―裁判報告集会

◆裁判終了後は鴨沂(おうき)会館で報告集会が開かれ約50人が参加しました。竹本修三原告団長のあいさつのあと、法廷で陳述した岩橋、谷両弁護士や吉田さんなどが感想と今後のたたかいへの思いを語りました。渡辺輝人弁護団事務局長は、裁判が大詰めを迎える段階に来たことを報告、これからは証人調べの計画を決めるとの見通しを示しました。また、改定前に裁判所内で、裁判内容を知らせる文書を配布していたら裁判所職員が文書を見せるよう要求し、配布をやめさせたこと(法廷の中で配布した)が出され、いままで自由にしてきたのに何を根拠にやめさせるのか、自由にできないのはおかしい、などの声もあがり、改めて申し入れをすることになりました。