◆11月6日に行った関電との話し合いの記録

関電側;広報担当者など3名。
使い捨て時代を考える会;4名。

事前に提出した以下の質問書にそって話し合いました。

質問書
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1.11月3日に貴社の原発がすべて停止の状態になりました。いま日本では玄海原発が動いているだけで、あとの原発はすべて止まっています。それにもかかわらず電気が不足するということはありません。原発は必要ないということではないでしょうか。危険な原発はこのまま止めて、安全なエネルギー源に変更していく方向に舵を切っていくべきと考えますが、貴社の見解をお聞かせください。

2.金品受領、役員報酬補填問題について貴社が旧役員に損害賠償を提訴すると報道されています。前回、社外の目を入れて、コンプライアンスを徹底し改革の取り組みを進めていくとのことでしたが、具体的にどのように改革が進んだかお答えください。「社員の生の意見を上げて活かしていく」「外部の人材を活用する」ともお聞きしましたが、実行できていますか。これらの問題はすべてが原発がらみです。汚れたお金で原発再稼働を進めていることは、安全第1ではありません。すべての事実関係が明らかにされるまで原発を動かすべきでないと考えます。貴社の見解をお聞かせください。

3.新型コロナウイルスの感染拡大が収まりません。新型コロナウイルスの脅威にさらされている状況においては、すべての原発を停止させるべきだと考えます。万が一事故が起きたら事故処理に当たる作業員も避難する住民も三密は避けられず、二次災害で感染が起きることは明らかです。コロナ禍が起きている中で、国は原発事故の際の避難所では換気しないという指針を出しました。放射能を防ぐために、コロナ感染防止をしないということです。このことについて貴社の見解をお聞かせください。6月に京都府はシミュレーションを発表しましたが、UPZ圏内(概ね30キロ圏内)でも屋内退避で良いということでした。これに対して府民はシミュレーションのやり直しを求めています。シミュレーションに関して貴社は関与されていないということですが、シミュレーションは貴社自身が行うことではないでしょうか。また避難計画は自治体が作成し、貴社は支援するということですが、どのような支援を実際に行っているのでしょうか。

4.40年越えの原発、高浜原発1号機・2号機、美浜原発3号機の再稼働を進めておられますが、現時点での再稼働のめどをお聞かせください。老朽原発の再稼働は不安です。ぜひ再稼働の撤回を決断してください。前回の話し合いで、安全対策工事費は2019年が1,937億円、累計で7,000億円とお聞きしました。今後の稼働次第では採算の取れない可能性もあると思われますが、それでも再稼働をするのでしょうか。

5.使用済み核燃料の処理についての見通しを述べてください。高浜では今後1/4までMOX燃料を使い、その場合MOX中のプルトニウムは1.7tと聞いていますが、最大でどのぐらいになるのでしょうか。また2018年度中に決めるとなっていた中間処理施設の見通しは立っていますか。北海道寿都町が高レベル廃棄物最終処分場の調査を受け入れると表明し、神恵内村が調査受け入れを検討中との報道がありました。文献調査応募によって国から20億円の交付金が得られるとのことです。原発関係の施設に関しては、多額の金銭が動き、地域コミュニティが破壊されるなど過去に様々な問題を起こしてきました。過疎の進む地域に原発のゴミを押し付けることについて社会的責任は感じませんか。

6.貴社の再生エネルギー開発について、2030年代には600万kW/時にする、現在400万kW/時持っており、200万kWの新規開発を進めていて、すでに390万kW/時できているというお答えでした。再エネへの投資が、2017年には7億円で、2018年には5億円となっていますが、安全対策費に比べあまりにも小さいのではないでしょうか。2017年から2018年に投資が減っているのはなぜですか。再エネへの取り組みが少ないことは国際的にも批判を受けています。コロナ禍のことも考えると、これからの社会は再エネへ転換しないと持たないと言われています。いますぐ原発への投資をやめて再エネへのシフトを図るべきではないでしょうか。

7.高浜原発で露見した汚職などで貴社に対する社会的信用は失墜し、貴社からの契約離脱は360万件を超えたと言われています。その状況下で電力販売量は落ちているにもかかわらず黒字決算となっているようですが、その収益の根拠は何ですか。発電部門ごとの発電量と部門支出を、福島原発事故前と事故後について年次ごとにお教えください。福島事故後、原発部門は会社にどの程度の貢献をしているのか教えてください。廃炉や使用済み燃料の後始末など技術的未解決課題が積み残されており、将来巨額の出費となるのではないでしょうか。原発推進によって経営破綻となるのではないでしょうか。
以 上
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話し合いの前に「11月3日に関電のすべての原発が止まった。これを機に絶対に再稼働しないでもらいたい」と口頭で申し入れた。

話し合い内容
Q(こちら側の発言)、A(関電の発言)

—–(質問1について)—–
A 11月3日に大飯原発4号機が定期検査に入り、すべて止まった。安全向上、安全優先でいく。国のエネルギー政策S+3Eに則り、バランスの取れたエネルギー体制をとっていく。資源の乏しい国として3Eの観点で原発の必要性は大きい。低炭素社会の実現に向けてやっていく。

 【注】S+3Eとは…安全性(Safety)、エネルギーの安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)

Q その説明は疑問だらけだ。安全第一なんて信じられない。

Q 大飯3号機の一次冷却水の配管が損傷しているのに次回の定期検査まで運転し続けようとしていた。危険だ。そもそも高浜原発3,4号機の蒸気発生器の細管が損傷し、その原因物質も特定できていないのに、動かしているなんて信じられない。関電のすべての原発が止まってほっとしている。

Q 安全第一でやっているというが保証はない。老朽原発は特に慎重にするべきだ。まっとうな点検をしているのか。もし事故が起きたら刑事訴追は免れない。

Q とても安全第一と思えない。規制委員会が止めてくれて助かった。どうしてそういうこと(配管が損傷しても動かすようなこと)をするのか。安全意識が低すぎる。高浜3、4号機も(細管の減肉の)原因不明のまま動かしていた。再稼働する条件はない。

A ご指摘のことはこれまでも聞いている。配管のことや規制委員会のことは事実だが、感覚的に判断しているわけではない。

Q 過去にもこういう事例はあったのか。

A BWR(沸騰水型)のほうで運用されている例があった。配管にひびがあった場合、技術基準がある。

Q どういう技術基準か教えてほしい。

A 規制庁のYouTubeに出ている。

Q 福島のあとの記述か?

A それはわからない。規制庁は止めたわけではなく、配管を切って知見を増やそうとなっていた。

Q 圧力が損傷個所に集中する。傷の形態は外から見てもわからない。「大丈夫」とよく言うと思う。

Q 応力腐食割れとのことだ。損傷のある一次冷却水配管をそのまま動かすなど危険すぎる。取り換えてもらわなければ困る。規制庁に止めてもらって助かっている。

Q とにかく安全第一で!

Q 取り換えることになったのは良かったが、取り換えるときの労働者が被ばくする。労働者の被ばくは大変だ。

Q 何に関しても拙速すぎる。経営を重視して無理をしているのではないか。

—–(質問2について)—–
A 10月13日に改善計画を経産省に報告した。計画していたことのうち従業員の研修体制だけきていないが、他は実施できている。

Q 株主総会での森本社長への不信任が多かった。なぜかというと原発推進だからだ。出席株主の発言を森本社長が制止した。橋下さんを(社外取締役に)入れることには問答無用で却下した。司会者をほったらかして森本さんが議事の進行をやっていた。社外の意見を聞くと言っているが考えられない。

A 重く受け止めている。(金品受領問題が)発覚したのは内部通報だった。コンプライアンス機能が発揮できた(???)。 物理的に執行と監査を分離した。ハード面で物理的に体制を作った。

Q なぜ橋下さんを入れなかったのかというと、原発賛成の人で固めたかったからだ。真剣に受け止めてくれないと「安全第一」は疑問だらけだ。コンプライアンスというが橋下さんが入っていたら納得できる。

Q お金が優先ということだ。安全第一とは思えない。

Q 関電は来年1月に国内老朽原発再稼働の最初となる美浜3号、3月に高浜1号を稼働したいという意向を持っているとのことだが、美浜は京都府は30キロ圏内に入っていないので直接は関係ないとなっているが、もし事故が起きたら30キロ圏は関係なく、京都府にも被害が及ぶのは明らかだ。京都府は金品受領問題があまりにも大きくて、老朽原発再稼働問題に入れないと言っていた。京都府とも議論していないのに、そういうなかで老朽原発を動かすつもりなのか。信じられない。

Q 1月~3月に再稼働と言われているが再稼働は絶対にやめてもらいたい。

A (老朽原発の)再稼働は未定だ。皆様のご理解が第一だ。京都府と地域協議会を開き金品受領問題のことを説明し、首長から意見をもらった。納得してもらえるようにしていく。

Q 美浜3号機が1月、高浜は3月と報道されているが実際はどうなのか。

A コンプライアンスを説明し、老朽原発の議論もしていく。1月再稼働は正式に決まっていない。安全対策工事は9月に終わっている。

Q 少なくとも金品受領問題がすべて明らかにならない限り動かしてはならない。

A 1月に動かすような前提で言われているようだが未定だ。信頼回復が先。1月に動かすという認識はない。

Q 1月には動かないということか。

A そうではない。「未定」ということで、いつ動かすかはわからない。

Q 1月に動かすこともありうるのではないか。未定と言いながら急に動かす可能性もあるから、不信感がある。

Q 国が地元を訪れて再稼働の要請をしている。地元の動きが急だ。高浜町と美浜町は今月中に再稼働してという決議を出すと聞いている。国が動いているのに関電が未定というのは考えられない。

A でも未定だ。

Q 報道では1月、3月とされている。金品問題も全く解決しない状態で、ありえない話だと思うが。

Q なにがあっても動かさないでほしい。すべてが明らかになるまで動かさないで。

Q 地元の請願には老朽原発の安全性のことは入っていない。拙速すぎる。地元の動きが心配だ。

Q 町の財政を原発で回してきた。その歴史がある。地元は深刻だ。お金という弱みに付け込むのは原発特有のことだ。中曽根さんの時代から何億という予算を付け、学者などを動かしてきた。強烈な不信感がある。

—–(質問3について)—–
A コロナ予防対策は国の支援を受けて自治体がやる。京都府内でも内閣府の要請を受けてやっている。当社では原子力事業本部に防災事業計画があり、計画の充実をはかっている。事業者として自治体と連携してやる。

Q 自治体とは協力し合わないとできない。京都府と会ったが、関電と協力して進めているとは思えなかった。どういう体制を作っているのか。シミュレーションは府がやったが、関電と相談なしにやっているのではないか。

Q 京都府は避難計画が全くやれていない。コロナ禍で避難所は2倍のスペースが必要になった。バスも2倍必要。こういうことが全くできていない。風向きによって2方向での避難所を確保しているのでいまのところ臨時で両方を一度に使おうとしているようだが、それでは避難にならない。避難場所がないというのに原発を動かすのか。そもそもコロナ以前からバスの運転手も確保できていない。動かせるはずはない。関電としてはどうするのか。

A 府の防災訓練に実務的にいろいろ協力している。コロナで2倍という話は知らなかった。

Q 知らないのはちゃんとやっていないからだ。今頃西脇知事に合うとは。コンプライアンスで大変で、避難計画に手が付けられないのでは。そういう状況下では動かさないでもらいたい。

Q 市議会議員がヨウ素剤をどうするのか京都市に質問したら、市は関電が持っているものを使うと言っていた。協力すると言っても進んでいないのではないか。

A 毎年の避難訓練で避難先のことやスクリーニングに協力し、ヨウ素剤も配布している。

—–(質問4について)—–
A 質問4に移りたい。

Q 安全性より再稼働優先か?動かすための議論がされていない。

Q 安全対策にお金をかけて採算撮れるのか。なぜ無理をするのか。

—–(質問5について)—–
A 高浜3,4号機のMOX燃料に含まれるプルトニウムが、想定の最大まで装填した場合1.7tというのはだいたいそうだ。核分裂性のプルトニウムとそうでないものがあり、1.7~1.8tとなっている。

Q 長崎原爆の290発分だ。日本は世界から核武装するのではないかと見られている。再処理している国は核兵器をもとうとしている国だ。日本はそうじゃないと言っているがそうは思われていない。そういうことを承知しているか。

Q 最終処分場の調査への20億円は一時的なお金だ。技術もできていない。何年かかるかわからない。

Q 再処理ができないと原発が止まるのではないか。設計段階でMOXを使うことは想定していなかった。だから危険だ。平気でMOXを使う電力会社の姿勢は疑問だ。

Q 中間処理施設も決まっていない。そのような状態では原発は止めるべきだ。

Q 処理技術がわかる人に教えてもらいたい。プルトニウムの大量保管は恐ろしい。福島第一原発ではMOX反対運動があってごく少数のMOX燃料が使われていただけだった。なのに福島市でプルトニウムが検出されて話題になった。炉心燃料を無理している。事故は取り返しがつかない。MOXを使うこと自体が「安全第一」でない。

Q 原発に関係した地元はどこも地域社会が壊されズタズタになっている。お金で地域を壊しているのだ。そういう話を社員のみなさんももっと知ってもらいたい。

—–(質問6について)—–
A 有価証券で再エネが7億円から5億円になったというが確認できなかった。

Q 部門発電費に再エネの数字が出ている。

A 見ておく。

Q 原発では3000億、火力は5000億円。それに比べて再エネは数億。どのぐらい本気で取り組んでいるか教えてもらいたい。再エネの資料はあるか。

A パンフレットがある。

Q 再エネの予算は少なすぎる。コロナ禍のことを考えると、原発事故は危険だから、もっと再エネにするべきだ。

Q 電力会社の中でお金と人を引き継いでやっているのは関電だ。本当に責任をもってやってもらいたい。このままでは自滅する。

—–(質問7について)—–
A 当社の個別電源の発電コストについては回答を控える。総合エネルギー分科会(総合資源エネルギー調査会を言い間違えたのか?)で出している。ネットで出せる。

A 2015年に原子力10.3円/kWh、LNG13.4円/kWh、石炭火力12.9/kWh、石油火力28.9/kWh、水力11.0/kWhで、2030年のモデルプラントとして試算している。

Q 原発は安くない。

Q 赤字が回復して黒字になったのに原発がどう貢献しているのか知りたい。関電からの離脱は原発再稼働と、不祥事で増えている。不信感は回復しない。離脱はまだ増えるだろう。経営は維持できないはずなのに黒字になっている。常識では理解できない。それでも原発推進なのか。一般職員は原発で割を食っているのではないか。困ると思っている社員がいるはずだ。

A 2020年四半期は減収減益だった。

Q それと赤字・黒字は関係ない。

A 連結決算で出している。

Q 私たちの知らないカラクリがあるのではないか。それが原発を支えているのではないか。

Q 原発にしがみついていたら関電は沈んでいく。社員も大変だ。消費者のことも考えていない。

A 社内の雰囲気のことをお答えしておくと、コンプライアンスの取り組みでは、役員と社員がひざ詰めで対話している。これまでで70回くらいになっている。役員の賞与への疑問なども出ている。

Q それは良い。ひざ詰め対話は今後もするのか。

A する

Q どのぐらいの頻度で行うのか。

A 月間10回弱だ。2万人ぐらいいるのでまだ巡回しているところだ。各部門で1回行われている。

Q 部門ごとのコストを出さないというが、はたして原発で利益が上がっているのかが根本的なところだ。そうでないと将来が切り開けない。

Q 立地対策費、補償費などは入っていない。廃炉費用はどのぐらいかかるかわからない額面以上の負担があるはず。今は見えていないが直面したら見えてくる。再稼働はやめて、経営の再建をしてもらいたい。

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 1時間30分に及ぶ面談となりました。このところ関電側が「もう時間ですから」とはいうものの面談を無理やり打ち切ることがないのです。これも不祥事のなせる業なのでしょうか。関電側の回答を聞けば聞くほど、「再稼働はあり得ない」という気持ちが強まります。話し合いは平行線ですが、市民の意見を伝える場として、同じことでも繰り返し伝えていきたいと思います。