◆10月30日、京都府放射能拡散シミュレーションに関しての話し合い(第2回)報告

2020年10月30日

 使い捨て時代を考える会は、8月19日に京都府危機管理部原子力防災課に質問書を提出し、8月28日に話し合いの場を持ちましたが、納得のいく内容ではなかったため再度要望書を提出し、10月30日に話し合いました。今回は要望書への賛同を呼びかけ、18団体の連名で提出しました。 府側は危機管理部原子力防災課参事石山哲さん、危機管理部原子力防災課原子力防災係主幹兼係長津田聡雄さん(途中から)のお二人。 こちら側の参加は使い捨て時代を考える会3名(槌田・山田・西澤)、京都脱原発原告団(吉田)、北山の自然と文化をまもる会(榊原)の5名でした。

【質問および要望】 …………………………………………………………………………………………

1. この度のシミュレーションがわずか700万円の予算で、条件を替えたシミュレーションができなかったとのことですが、再度のシミュレーションを要望します。次のシミュレーションには強大な台風、地震や大雪など様々な気象条件を想定し、最悪の場合を考えた条件で行うこと、琵琶湖の汚染を視野に入れて検討すること、条件の設定について京都府民の意見を取り入れることを望みます。

2. 関電が原発にかける費用に比べ、700万円とはあまりにも少額です。しかも府民の税金が使われていることに大きな疑問を感じます。ほかにも避難所やスクリーニング場所の選定、避難受け入れ体制の検討なども府が行っていると聞きます。原発が稼働している限り府にはこのような余計な仕事があるのです。関電という一企業の収益事業のために、京都府が関電の仕事を肩代わりさせられているのではないでしょうか。通常は企業活動によって生じた被害は企業が後始末を行い、賠償等の負担も行います。同様に原発事故に関しても避難計画、事故処理などは企業負担にするべきです。このことについてどうお考えですか。原子力災害対策特別措置法で災害対策を自治体が行うことと定められているようですが、原発事故は自然災害とは全く異なる人為的な事象です。地方自治体として原発事故の災害対策に関する法改正を国に要求しても良いのではないかと思いますが、ご検討いただけますか。

3. マスメディアによって「避難の必要なし」と大きく報道されましたが、府としては避難については従来と変わらないとのことです。しかし「避難の必要なし」という報道によって、実際に事故が起きても避難せずに被曝することも考えられます。未必の故意ともいえる行為です。また福島事故で避難されている方々にも精神的に大きな影響を与えています。それどころか現在行われている避難者の裁判にも大きな影響を与えるのではないかと危惧します。前回のシミュレーションについて、再度発表しなおし、「シミュレーションの条件が一例にすぎず、ほかの条件での検証はしていない。一つの条件では“避難の必要なし”という結果であったが、条件を変えたら必ずしもそのような結果にはならない。報道を信じて“避難しなくてもよい”という判断をしないでもらいたい」という再アナウンスをお願いします。

4. もしこのシミュレーションに従うなら、屋内避難の方法を教えて下さい。具体的にどのような建物へ何日間の避難を想定されていますか。屋内避難の場合新型コロナウイルス対策はどのようにして実行されますか。

5. 関西電力は「避難のことは国や自治体が考えるもの」として、全く避難について考えていません。それどころか,40年を超えた高浜原発1号機,2号機,美浜原発3号機という老朽原発の再稼働を図っています。これでは原発の事故が発生する可能性は著しく高まると思われますし,避難の問題はますます深刻化します。関西電力に避難について検討することを促してください。シミュレーションの予算を請求しても良いのではないでしょうか。

6. 京都府は、事故時のリスクがあるにも拘らず、原発立地自治体ほどの権限がありません。現状の安全協定を見直して、関西電力に対してもっと影響力を持てるように再稼働同意権を含むような見直しを、電力会社に求めるお考えはありませんか。

以 上

【この要望書への賛同団体】

アジェンダ・プロジェクト京都、 ウチら困ってんねん@京都、 北山の自然と文化をまもる会、 京都循環経済研究所、 京都脱原発原告団、 京都・水と緑をまもる連絡会、 原発なしで暮らしたい宮津の会、 原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会、 原発をなくす向日市民の会、 市民環境研究所、 生活協同組合コープ自然派京都、 丹波自由学校、 使い捨て時代を考える会、 なくそう原発美山の会、 日本科学者会議京都支部、 ふしみ原発「0」パレードの会、 ヨウ素剤を配ってよ@京都、 若狭の原発を考える会

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【話し合いの概略】

京都府の発言(以下「府」) 府 最悪の想定として、京都府方向に風が吹き、広域に広く拡散するという京都府にとってシビアなケースでシミュレーションを行った。再度シミュレーションをするつもりはない。

要望書提出側の発言(以下「要」)  要 最悪の条件で行ったとは思えない。福島事故は深刻だった。若狭の原発は福島より危険ということを厳しく認識してもらいたい。BWR(沸騰水型)とPWR (加圧水型) では危険性が違う。温度と圧力が違い事故の起こり方が違う。スリーマイルはPWRだった。PWRでは福島事故より厳しいと想定してもらいたい。シミュレーションは甘い。事故が起きたら京都府は責任を問われる。再度のシミュレーションをしないというのは驚きだ。もっと厳しくきっちりシミュレーションをやってもらいたい。屋内避難で良いとは考えられない。

府 拡散の条件で最も京都府に拡散しやすい条件を選んだ。

要 拡散よりもどういう事故が起きるかということではないか。PWRでは福島事故の何分の一という予測では対応できない。

府 福島事故以降、規制委員会の基準が変わった。今の規制委員会の新規制基準でシミュレーションを行った。

要 規制委員会のではなく福島事故のレベルでやってもらいたい。福島事故以上を想定してもらいたい。

要 京都市も関電も福島事故を想定している。少なくとも福島事故レベルで行うべきだ。

府 あくまで今回は一定の条件にした場合のシミュレーションだ。厳しい状況を想定して避難計画を策定し、UPZ(概ね30キロ圏)内は避難すると考えている。

府 2について答えたい。避難計画策定の義務は自治体にあるが、国が交付金で全額負担している。人件費は出ないが経費はすべて出る。

要 シミュレーションにも再度出るのか?

府 必要性を吟味されて交付金が出る。

要 国の姿勢次第と思うが、府民が軽く扱われているのではないか。

府 実効性を高めるためのシミュレーションだ。どう拡散するかわかっていると避難計画に活かせる。

要 マスコミに出たから困っていると聞いたが、このシミュレーションは甘すぎる。

府 3について答えたい。「一定条件のシミュレーション結果で安心材料ではない」としている。記者に対してシミュレーションの説明は難しいが、丁寧に説明した。HPにも「一定の条件」と説明している。京都府に厳しい条件を選んだ。

要 なぜ福島事故以上の厳しい条件を選ばなかったのか。

府 福島事故で新規制基準ができた。その安全基準を守ってやった。

要 安全基準は福島以前から厳しかった。福島以上の事故が起こらないとしているのか。技術上何が起きるかわからない。

府 今回のシミュレーションの結果と避難計画は別だと考えている。避難計画ではUPZ内は避難するとしている。

要 京都は福井県よりUPZ内の人口が多く避難路が難しい。琵琶湖も汚染されたら飲み水がなくなる。そういうことも考えるべきではないか。

府 再シミュレーションの考えはない。

要 「避難の必要はない結果」というところにアンダーラインまで引いているではないか。 どう避難するかは切実だ。

要 人間は安全だと思いこみたいと思う。福島事故の時、関東にいたが、直ぐに水が汚染され飲み水さえなくなった。安全だと思い込むと避難のことも住民に聞いてもらえなくなるのではないか。福島並みのシミュレーションをして避難計画を作ってもらいたい。現在南丹市に住んでいるが、厳しい状態を想定してアナウンスしてもらいたい。内閣府は今年3月に「屋内退避は陽圧化されてない建物では低減効果が少ない」と発表した。

府 屋内退避はプルームから内部被ばくを避けることとして考えている。避難は1週間以内。その間自宅にとどまる。コロナのことがあるが基本的には自宅退避だ。木造家屋での退避と想定している。75%低減できる。 要 新しい知見が出たのだから、それを取り入れるべきだ。避難についても関電に責任ある態度を持ってもらいたいので、府からも強く言ってもらいたい。関電の態度は全く他人事のようにしか見えない。

府 6について。法的枠組みをきちんとして欲しいと国には求めている。 質疑は以上 …………………………………………………………………………………………

 府側出席者に次のスケジュールがあるそうでわずか30分の話し合いでした。府側は、たびたび質問書に沿ってこたえたいという意思表示をされましたが、それで時間をつぶそうと思われたのか。こちら側はとにかく言いたいことを伝えるために次々発言したのでだいぶ当惑気味でした。

 府側は,今回のシミュレーションはシビアなケースを想定していると言っています。しかし,福島なみの事故,最悪の事故は想定していないことは明白。そこを追及すると,マスコミ発表のように「避難しなくて良い」というのではなく,引き続き「避難計画の実効性を高めるようにする」とのことでした。 またこちらが「府民の税金700万円」と指摘すると,「国からの原子力防災費用交付金」で国が全額を負担したという。今回のシミュレーションは,国の指示,国の必要性により,国の期待にこたえるためのシミュレーションだったのか,という疑念を抱きました。老朽原発再稼働に猛進している国の政策の一環として,今回のシミュレーションがあったとも考えられます。 ちなみに,これまでのシミュレーションは,滋賀県(2011.11),京都府(2012.3),原子力規制庁(2012.10),兵庫県(2013.4)と行われています。その後は今回の京都府になりますが,どういう動機で急にシミュレーションをすること(させられること)になったのか,疑問は深まりました。