◆関電と原発 memo No.21–新しい安全神話

規制委,行政,電力会社がすがる
福島の事故の100分の1以下の事故しか起こらない
という新しい安全神話

 この新しい安全神話について,下記,Blogに的確な指摘がある。
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明日に向けて(1782)
長崎県の放射線観測データ偽造の背景に新規制基準による事故軽視がある!
守田敏也さん「明日に向けて」(2020-03-23)
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 長崎のデータ偽造の件は,上記の本文を読んでいただくとして,ここで注目したいのは,その背景に挙げられている下記の点にある。

 すなわち,規制委の新規制基準「実用発電用原子炉に係る炉心損傷防止対策及び格納容器破損防止対策の有効性評価に関わる審査ガイド」14ページに「想定する格納容器破損モードに対して,Cs-137 の放出量が 100TBq を下回っていることを確認する」とあり(福島事故では10000TBqだったのに),ここに「これからは福島の事故の100分の1以下の事故しか起こらない」という想定で良いでしょう,という根拠がある。行政,電力会社は,もう福島の100分の1という事故しか起こらない前提=安全神話で原発を推進している。

 以下,守田敏也さんのBlogを引用。

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●新規制基準が生んだ事故軽視の影のもとで・・・

 その点で思い出すのは川内原発が,およそ2年間続いた「原発ゼロ状態」に終止符を打つ形で,再稼働に漕ぎ着けた過程での,伊藤祐一郎鹿児島県知事(当時)が再稼働に同意した記者会見での発言です。(2014年11月7日)

 伊藤元知事は新規制基準を非常に高く評価した上でこう言ったのです。「もし福島みたいなことが起っても,放出量は5.6テラベクレル。そして5.5kmのところは5μシーベルト。もう,命の問題なんか発生しないんですよね。」

 ちなみに毎時5μの放射線はかなり危険なレベルですが,いまはそれは横におくとして,この発言の背景を読み解きたいと思います。

(なお伊藤知事の発言については以下の資料を参考のこと。哲野イサクさんが会見動画を保存し文字起こしもしてくださっています。)
<参考資料>川内原発再稼働“同意”記者会見―伊藤祐一郎鹿児島県知事2014年11月7日

 2013年7月から適用された新規制基準は,この間,繰り返し述べているように「シビアアクシデント」=過酷事故を前提としたものです。放射性物質が原子炉から漏れて環境中に出てしまう事態を容認しているのです。

 ただし漏れ出す放射性物質の量を減らしなさいとなっている。セシウム137だけで見積もっているのですが,福島原発事故で出たセシウム137を1万テラベクレルとした上で,その100分の1,100テラベクレル以下に抑えなさいと書かれているのです。

 しかも「格納容器破損モードにおいて」と書いてある。放射性物質を閉じ込める最後の砦の格納容器が壊れたときに,漏れ出す量を100テラベクレル以下にせよと言うのです。
(これは新規制基準の中の「実用発電用原子炉に係る炉心損傷防止対策及び格納容器破損防止対策の有効性評価に関わる審査ガイド」14ページに書かれています。)

 シビアアクシデントは,設計段階での想定を突破された事態です。しかしそのときの放射性物質の漏れを100テラにコントロールできるならそれはもう想定内です。

 いや格納容器がどう壊れるかすら分からないのに対処できるとするのがおかしいし,さらにその量を福島原発事故の100分の1にできるというのはあまりに根拠がない。

 そもそも福島原発はまだ放射線値が高くて内部に人が入れません。どこがどう壊れてだからどれだけの放射性物質がどのように出て行ったのか,実証できない段階なのです。それでどうして対策がたてられるのか。

 にもかかわらず九州電力は「5.6テラベクレルに抑えます」と言ったわけですが,一体なんの根拠があるのでしょうか。

 しかしこれが独り歩きしだし,伊藤元知事の「もう,命の問題なんか発生しない」という発言につながったわけです。

 「もう福島の事故の100分の1以下の事故しか起こらない」・・・この新たな安全神話が放射線計測の仕事を著しく軽視することにもつながっているに違いないと僕は思います。
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事故は100万年に1回
事故が起きても避難する必要はない
避難計画が実際に発動されるケースはない

川内原発再稼働 “同意” 記者会見より
伊藤祐一郎 鹿児島県(前)知事 2014年11月7日
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  • 要するに今回の制度設計というのは100万年に1回の事故を想定するわけですよね。そしてその時は100テラベクレル。それが同じ条件で同じうような事故が川内に起こった時にどうなるのかっていうのは,実は5.6テラベクレル。そうすると炉心から5.5キロのところは毎時5μシーベルトなんですよね。5μシーベルトというのは,20(μシーベルト)でもって初めて避難ですから。動く必要がない。家の中にいてもいいし,普通に生活していても良いという。そのレベルの,実は,放射能しか,人に被害が起こらない。5μシーベルトというのは一週間ずっと浴び続けて胃の透視の3分の1ぐらいの放射能ですね。実はそこまで追い込んだ制度設計をしているので,時間もあるし,避難計画が実際にワークする,そういうケースもほとんどないだろうし,まずそれがたぶん,あと川内原子力発電所10年,そうすれば止まるかもしれませんが,において考えると,だいたいそれでカバーできるのかなと内心思ってます。
  • 私は規制委員会というあれだけ素晴らしい方々が集まった組織,やはりあの組織も自分の任務に極めて忠実で,相当時間をかけてですね,原発の再稼働についてその安全性を徹底的に追究したと思うんです。その数字の結論が先ほど言った数字です。もし福島みたいなことが起っても,放出量は5.6テラベクレル。そして5.5kmのところは5μシーベルト。もう,命の問題なんか発生しないんですよね。

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福島事故後でもこんな認識で
川内原発再稼働に同意している!
一つだけコメント → 毎時5µSvは年間被曝線量で33mSv。防護服なしでいられない数値