◆5月1日に行った関電との話し合いの記録

関電側;広報担当者ほか2名。
使い捨て時代を考える会;4名。

今回は以下の質問書を提出し、話し合いました。
質問書
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  1. 去る3月28日の大阪高裁決定により、貴社は高浜原発3、4号機の再稼動を進めておられますが、これについて質問します。
    • ①免震棟(あるいは耐震棟)ができていない中で事故が起きたらどう対処するのですか。
    • ②福島原発事故では多くの東電社員と下請け労働者が被爆したと伝えられていますが、職員の安全の確保はできますか。
    • ③ベント付フィルター装置もまだできていないと聞きますが、もし重大事故が起きたらどのように対処するのですか。
    • ④再稼動するにあたっての住民の避難計画を提示してください。
    • ⑤六ヶ所再処理工場の完成は2018年と言われています。さらに伸びる可能性もあると言われています。使用済み核燃料の再処理の見通しが立たないのになぜ再稼動するのですか。
    • ⑥1月に起きたクレーン倒壊事故は全く人為的なミスでした。今後このような事故が起きないと断言できますか。
    • ⑦なぜ、再稼動を急ぐのですか。命よりもお金を重視した経営と思わざるを得ません。なぜそのような経営方針を取るのですか。
  2. 電力自由化によってこれまで他社に切り替えた消費者はどのぐらいの割合ですか。また高浜原発の再稼働に踏み切られた時には、貴社から他社へ切り替えるという消費者も多数います。今後も増加するでしょう。消費者は原発に依存しない電力会社を望んでいるからです。貴社の経営には深刻な影響があると思われますが、そのことについてどのように考えられますか。
  3. 原発事故処理費用のうち、賠償分について、「本来過去に積み立てておくべきであった費用」を、原発の電気を拒否する新電力も含めて、託送料金に上乗せして、2020年から40年間徴収する方針が出されていますが、福島原発事故の教訓があるというのに、さらに原発の再稼動を行って、それらが事故を起こした場合の賠償費用を新電力からもとろうというのは納得できません。貴社のお考えをお聞かせください。

以上
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話し合いの内容(Q;こちら側の発言  A;関電の発言)
Q 質問書にひととおり答えてください。
A(1-①)耐震棟というか緊急時対策室が、1.2号機の間にある。1.2号機が動くなら使えなくなるので別の所に作る。
(1-②)当然だが線量管理をし、訓練している。
(1-③)フィルター付ベントは猶予期間があるが、それまで他の対策をしている。福島で起きた水素爆発が起きないように水素を軽減する装置がある。炉内が高温にならないような対策もしている。
(1-④)避難計画は自治体がやっていて、当社としてはやっていないが、丸投げはしていない。協力できる部分は協力する。たとえばスクリーニングとか。
(1-⑤)六ケ所の再処理がいつ始まるかは言える段階ではない。中間貯蔵計画も進めていく。
(1-⑥)クレーン倒壊はお詫びをする。ちゃんと手を打たないといけないので、調査して手を打った。3月末に動かしていいことになったが、(対策していたので)5月再稼動になった。
(1-⑦)(再稼動を)急いでいるわけではない。慎重に工程を進めている。
A(質問2について)電力自由化で切り替えた割合は一般(小規模)で72万件だ。当社のグループ会社に切り替えた例もあるが、割合としては5%。切り替えた理由は価格、電源構成など。しっかりと考えていきたい。

Q 今後も関電離れは続くと思う。子どものときからお世話になっているので、義理はないけど、こういう事態は気になる。
A 電源構成でも(切り替えに)動くということは承知している。

Q それでも再稼動するのか。新電力に変えた人で、原発が嫌いな人は客としていらないということか。
A 5%は重大な割合なので必死で考えている。原発がいらないという人を切り捨ててよいとは思っていない。

Q 避難計画が作られても、仮に避難ができたとしても、大事故が起きれば何年も避難しなくてはならなくなることは明らかだ。それにもかかわらず再稼動するのか。再稼動は危険だ。何故いそぐのか。
A 当社としても安易に再稼働を進めれば会社として成り立たない。安全性を確認しながら一歩ずつ進んでいる。

Q 東電は批判にさらされている。東電は破産状態だが国に守られている。国に守られているから、いくら安全第一と言っても口先で言っているとしか思えない。
A(質問3について)福島の賠償金を託送料金に乗せるということは議論されている。意見書が出された段階だ。福島の分だけで、これから再稼動する分については対象外だ。

Q そのことはどこで確認できるか。
A 委員会報告で出されている。機構法(原子力損害賠償・廃炉等支援機構法)が福島の事故が起きる前にはちゃんとできていなかった。福島事故は機構法ができる前の事故だ。

Q モラルハザードではないか。決済済みの取引を遡るのは理不尽だ。それでは決済がいつまでも終わらない。モラルがなさすぎる。
A 過去分について、その分も見積もって考えていく。被害者の賠償を先に考えていく。

Q 東電では始末ができない。事故を起こした当事者責任をだれもとっていない。国の問題でもある。事故を起こしたら現場検証するが、炉心に近寄れないから今でもできていない。そのことは警告されていたのに安全と押し通してきた。当たり前のように進んできたことに我慢がならない。
A さまざまな意見があるが福島事故の被害者がきちんと賠償されればいいということしか言えない。

Q 福島事故では賠償を軽く見積もっていた。これからもどんどん増えるだろう。浪江町では高汚染地帯で山火事が起きた。今も想定外の事が起きている。(これからも起きることを)関電は今の時点で想定して進めているとは思えない。賠償額を現時点では見積もれないし、積み立てられないだろう。そうすれば関電は事故費用を負担できないのではないか。それなのになぜ再稼動するのか。
A 東電の概算は甘かったかもしれない。福島と同じことが起きることがないように、起こさない基準を敷いている。事故に至らない対策をしている。

Q 福島原発も多重防護で絶対に大丈夫だと言っていたのにあんな事故が起きた。関電は大丈夫と言う根拠はない。関電の経営はとても厳しい。しかしその出口を原発に求めることに経営の無能さを感じる。
A 原子力以外の取り組みもしている。

Q 現在発電していないのに3000億円も出費している。
A 原発を動かしたらどうなるか、動かすのにどれだけかかるかを考えて再稼動を決めている。

Q 原発を動かしたらどれだけ収益が上がるのか。収益で維持費を回収しようとしているのか。原発を再稼動しても100億円レベルの収益が出るだけだろう。40年超えの原発も含めて何基も再稼動して何とかしようとしているが、追いつかないだろう。
A 維持費の回収が再稼動の理由ではない。

Q 詳しい数字を知りたい。
A 経営上の戦略で出せない数字もある。

Q 関電は他社に比べて圧倒的な力を持っている。企業宣伝がいらないのに原発の宣伝までしてきた。その反省も無しに再稼動するのか。
A いまは総括原価方式の世界ではないので、状況が厳しくなっている。

Q 4号機をなぜ先に再稼動するのか。
A 作業工程の関係だ。3号機は一度再稼動したので、点検をしなくてはならないという法的制約があるが、4号機は動かしていないのでそれがいらない。

もう時間ですと立ち上がったが、ここで以下の「申し入れ書」を読み上げて提出した。

申し入れ書

高浜原発3、4号機を再稼動させないでください。
貴社は3月28日の大阪高裁の決定によって、高浜原発3・4号機の再稼動を進めておられます。大津地裁では、関電が2基の安全性の証明を尽くしておらず、地震・津波対策や避難計画にも疑問が残るなどと指摘し、滋賀県の住民が訴えた人格権の侵害の恐れを認めて稼働を停止するという判断でした。大阪高裁の判断はまったく大津地裁の判断を覆すものでした。このように正反対の司法判断が出た中での再稼動は無謀としか思えません。なぜ大津地裁のような判断が出されたのか、真摯に考えてみるべきです。
安全対策も道半ばで、住民の避難計画もなく、使用済み核燃料の処理についても全く見通しが立たないという中での再稼動はありえません。
貴社との話し合いでは、安全を最優先させているといつも表明されていますが、あまりにもミスが多すぎるのではないでしょうか。今年1月20日にはクレーンが倒壊し核燃料が保管されている建屋を壊すという考えられない事故を起こしました。フィルター付きベントもまだ取り付けられておらず、緊急時のための施設も完成していないということですが、再稼動は、安全より経営を優先させていると見受けられます。
今、私たちの最大の心配は、取り返しのつかない大事故が起きることです。
高浜原発3、4号機の再稼動を断念するよう強く申し入れます。