◆高浜原発再稼働を許すな!

【2017年4月22日,京都キンカンで配布。】

高浜原発再稼働を許すな!

◆去る3月28日、大阪高裁は、高浜原発3.4号機の運転停止仮処分の抗告審で、関電の主張のみを追認し、高浜原発運転差止め決定をくつがえしました。圧倒的多数の脱原発、反原発の民意を踏み躙る決定です。関電の主張では、原子力規制委員長までもが「安全を保証するものではない」と言う“新規制基準”を「安全基準」とし、原発に「絶対的安全性を求めるべきではない」とし、また、「原発は安全であるから、“新規制基準”に避難計画は不要」としています。「新安全神話」を作ろうとするものです。関電や原発産業の利益のために、人の命と尊厳をないがしろにするものです。

◆今、ほとんどの世論調査で、脱原発、反原発の声は原発推進の声の2倍を超えています。国際的にも、イタリア、ドイツに続いて、リトアニア、ベトナム、台湾が脱原発を決意し、アメリカも原発縮小に向かっています。それは、スリーマイル島、チェルノブイリ、福島の大惨事を経験して、原発は、科学技術的に人類の手に負えるものでなく、経済的にも成り立たないことを悟ったからです。

原発は、現代科学技術で制御できない

◆高浜原発再稼働の風雲が急を告げる今、原発は現代科学技術で制御できず、人類の手に負える装置でないことを再確認するために、人類の手に負える装置でないと考える理由を再度整理してみました。

1. 核反応エネルギーは化学反応エネルギーの100万倍

◆人類の生存している環境は化学反応で維持され、化学反応はeV(エレクトロンボルト)という単位のエネルギーのやりとりによって生じる。例えば、石油を燃すと最高で数1000℃を得ることが出来るが、これがeVの世界である。生体内化学反応の多くは0.1 eV 以下の世界、すなわち100℃までの世界で、たとえば、たまごのタンパク質は70℃前後で固まる。

◆一方、核反応ではMeV(M(ミリオン)=100万)という単位のエネルギーがやりとりされる。例えば、プルトニウムは約4 MeVのエネルギーを持つアルファ線を出すが、原理的には、これによって100万℃に近い温度が得られる。これがMeVの世界である。

◆このことは、核反応1反応によって100万に近い化学反応が生じることを意味し、核反応は化学反応によって簡単に制御できないことを意味する。したがって、原子炉は大量な水で冷やし続けなければならず、水がなくなると、あっという間に核燃料や原子炉構成材料が溶融する。体内で放射線が出る内部被曝では、1000万に近い生体内結合が切断されることになる(実際には、核反応エネルギーの一部しか結合切断に使われないので、もっと少ない)。

◆核反応エネルギーを閉じ込めて置くことは極めて困難で、一つ間違えば、大惨事になる。重大事故時には、膨大なエネルギー(核反応熱 崩壊熱)によって核燃料や被覆材などの原子炉材料の熱溶融、水素ガスの発生・爆発あるいは水蒸気爆発を引き起こし、大惨事(メルトダウン、メルトスルー)に達しかねない。化学反応エネルギーでは、このような事態にはならない。

2. 原発事故の特徴;瞬時に進行し、時間的にも、空間的にも通常事故とは桁違いに深刻な被害

◆1で述べたように、核反応は膨大なエネルギーを出すので、原発で冷却水が途絶えると、瞬時に(火災などとは比較にならない速度で)重大事故に至る。そのように瞬時に進行する事故への対応は至難で、進み始めた事故を止めることは極めて困難。いわゆる「人為ミス」は避けえない。

◆放射性物質による被害は長期におよぶ。火事は長くても数日で消火できるが、放射性物質は、半減期に従って消滅する[放射線を出して他の物質(核種)に変わる]まで放射線とそれによる熱を発生し続ける。代表的な放射性物質の半減期は、プルトニウム239で2万4千年、ネプツニウム237で214万年、セシウム137で30.7年、ストロンチウム90で28.8年、ヨウ素131で 8.02 日。放射性物質は、1半減期で1/2に、半減期の10倍で約1/1000、13.3倍で約1/10000、20倍で約1/100万に減少する。例えば、プルトニウム239を1/10000に減少させるには約32万年かかる。半減期の短い物質は早く崩壊するから、物質の量が同じであれば、時間当たりにすれば多くの放射線を出す。

◆放射性物質による被害は長期におよぶから、原発事故では長期の避難を強いられ、住民は故郷を奪われ、家族のきずなを断たれ、発癌の不安にさいなまれる。通常の災害では、5年も経てば、復興の目途はある程度立つが、原発事故は、生活再建の希望も奪い去る。福島事故では、4年経った1昨年から、絶望のために自ら命を絶たれる避難者が急増していると報道されている。

◆放射性物質は長期にわたって放射線を出し続けるから、高放射線のために事故炉の廃炉は困難を極める。また、放射線による熱発生のため、冷却水が途絶えると、核燃料が再溶融し、再臨界に達する可能性もあり、長期間冷却水を供給し続けなければならない。

◆重大事故によって放出された放射性物質は、事故炉近辺を汚染させるだけでなく、風によって運ばれた後、雨によって降下するから、汚染地域は極めて広範囲に広がる。福島事故でも、約50 km 離れた飯舘村も全村避難になり、約200 km 離れた東京や千葉にも高濃度の放射性物質が降下した。チェルノブイリ事故では、日本でも放射性物質が検出されている。海に流出した放射性物質は海流に乗って広範囲の海域を汚染する。福島の放射性物質はアメリカ西海岸にも到達しようとしている。

3. 原発は、長期保管を要する使用済核燃料、放射性廃棄物を残す

◆原発を運転すると、核燃料の中に運転に不都合な各種の核分裂生成物が生成する。したがって、核燃料は永久に使用することは出来ず、一定期間燃焼させると新燃料と交換せざるを得なくなり、そのため、使用済み核燃料がたまる。現在、日本には使用済み核燃料が17,000 トン以上たまり、原発の燃料プールや六ケ所村の再処理工場の保管場所を合計した貯蔵容量の73%が埋まっている。原発が順次再稼働した場合、数年後には満杯になる。使用済み核燃料を消滅させる方法はない。

◆ところで、国の計画では、全国の使用済み核燃料は再処理して、ウラン、プルトニウムを取り出し、再利用することになっていた。しかし、再処理工場の建設はトラブル続きで、すでに2兆2千億円をつぎ込んだにもかかわらず、完成の目途(めど)は立っていない。危険極まりないこの工場の運転は不可能と言われている。

◆福井県にある原発13基が持つ使用済み核燃料貯蔵施設の容量は5,290トンであるが、その7割近くがすでに埋まっている。高浜、大飯、美浜の原発が再稼働されれば、7年程度で貯蔵限度を超え、原発の稼働は出来なくなる。なお、使用済み核燃料貯蔵プールは脆弱(ぜいじゃく)で、冷却水を喪失し、メルトダウンする危険性が高いことは、福島第1原発4号機の燃料プールから冷却水が漏れ、核燃料溶融の危機にあった事実からでも明らかである。

◆一方、日本には、低レベルおよび高レベル放射性廃棄物が200リットルドラム缶にしてそれぞれ約120万本および約1万本蓄積されているが、その処分は極めて困難で、永久貯蔵はおろか中間貯蔵を引き受ける所もない。

◆数万年を超える長期の保管を要する使用済み核燃料、放射性廃棄物の蓄積の面からも、原発は全廃しなければならない。

4. 原子燃料は無尽蔵で、燃料枯渇が原発廃止の理由にならないから厄介

◆地球表面の土壌・岩石中のウラン、トリウムの平均濃度は1 ppm ( 1 t に 1 g)であり、富鉱では、0.3~0.7% (1 t に 3~7 kg)である。このように、核燃料物質は大量に存在する。ただし、ウラン[238U(約99.3%)、 235U(約0.7%)]を使用するには、膨大な費用を要する同位体濃縮(235U濃度を高めること)が必要である。

◆一方、原発を運転すれば、プルトニウムが生成する。プルトニウムは、放射性物質として、化学物質として、極めて危険な元素であるが、被曝、被毒(避けられない)を覚悟すれば、使用済み核燃料から容易に分離抽出でき、核燃料を安上がりに製造できる。したがって、政府、財界、電力は、さらに運転が難しく厄介なプルサーマル炉を求め、プルトニウムを作り、取り出す高速増殖炉と再処理工場が必要と考えている(化学、化学工学は、高速増殖炉、再処理工場を操業できるほど発達していない!)。

◆このように、核燃料は無限と言って良いほど存在する。したがって、燃料枯渇が原発廃止の理由にならない。

◆エネルギーは麻薬のようなものであるから、それを欲する限り、麻薬の製造装置である原発から脱却できないだけでなく、上限なしに原発を増設することになるから、厄介である。

この意味で、
原発製造企業=麻薬生産者、
電力会社=麻薬の売人、
原発賛成の人=麻薬患者である。

書評

『なぜ、「原発で若狭の振興」は失敗したのか』
(著者:山崎 隆敏)を読んで

橋田 秀美(若狭の原発を考える会)

◆若狭を隈無く歩いてアメーバデモやチラシ配布をしながら、「原発のない若狭をめざしましょう」と訴えてきた私は、この本の題名に非常に惹かれて一気に読んだ。

◆「国策である原発を受け入れたのは苦渋の選択だった」と若狭の首長たちは口をそろえて言う。故に「原発マネーで生活が良くなるだろうし、そうであって当たり前。」そう期待していた。それがどうだろう、若者はいなくなり、箱物ばかりが建設されるが観光客はどんどん減っていき維持費に窮している。自立できる産業は衰退の一途。なぜこのような事になったのか、著者はいろんな観点から読み解いている。若狭の各自治体の財政を数字で表し、決して原発マネーで財政が潤うわけではないことを見える化して示しているのは説得力がある。

◆「15基もの原発を造らせた福井県は愚かなのか?そうではない」と、原発立地住民の抵抗の歴史も紹介しているが、高浜の漁村の区長さんの言葉が胸にしみる。「今のままで十分暮らしていける。平和な村を壊してくれたら困る。土地を売って金をもらっても一時的なもの・・・結局は生活基盤を失くすだけ。こういった投機的な火遊びを取り除くために、今こそ立ち上がって反対しよう。」この論理が明快ですごく倫理的であるとの指摘はまったく同感だ。経済や科学ばかりが主張されるが、そこに人の命や生活がある以上、倫理的な面からの考察が絶対必要だと思う。

◆そして、「私たちは、どんな社会、どんな国をめざすのか未来を語らなければならない。」と提言している。これは、反原発運動のみならず、私たちが生きていく社会生活において常に基本として問われる姿勢ではないだろうか。

◆原発全廃をめざす者にとって、これからの運動へのヒントが盛りだくさんに示されている。若狭を愛してやまない筆者の熱い思いも感じられる渾身の1冊である。

集会・デモの呼びかけ

◆大阪高裁の不当決定を受けて、高浜原発再稼働の風雲が急を告げています。その状況の中で、4月2日、緊急に「高浜原発再稼動阻止行動についての相談会」が原子力発電に反対する福井県民会議の呼びかけで開かれ(於;京都)、下記の緊急行動を、「高浜原発うごかすな!」実行委員会の主催で行うことが決定されました。

なお、5月のリレーデモ、福井集会の詳細は変更されることがあります。今後の情報にご注意ください。

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4月27日(木)大阪行動

[1]「4.27高浜原発うごかすな!関電包囲全国集会」

◆日時;4月27日(木)16時30分より18時まで
◆場所;大阪関電本店前(大阪市北区中之島)
◆関電への申入れも行います。

[2] 御堂筋デモ

◆集会終了後、「うつぼ公園(大阪市西区)」に徒歩で移動し、18時30分にデモに出発、20時前に終了予定。
当日は週日ですから、集会に間に合わない方も多数あると考えられます。デモへの途中参加、大歓迎です。

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5月7日(日)高浜行動

[1] 高浜原発ゲート前抗議行動

◆日時;5月7日(日)12時、高浜原発先の展望台に集合。
◆高浜原発ゲート前にデモで移動の後、12時30分より抗議行動(関電への申入れ)。
◆後、高浜町文化会館へ移動。
当日9時頃、京都駅、大津駅、神戸駅、福井駅などからバス配車の予定。乗車ご希望の方は早めにお申し込みください(4月25日一次締め切り、4月末日締切)。東京からも別途バスが出ます(6日発)。

[2]「5.7高浜原発うごかすな!現地集会」

◆日時;5月7日(日)14時より15時30分まで
◆場所;高浜町文化会館

[3] 高浜町内デモ

◆集会終了後、15時50分に高浜町文化会館より高浜町内デモに出発、16時50分頃、JR若狭高浜駅前で終了予定。
◆その後、高浜駅2階で意見交換会(お時間のある方は、ご出席ください)。
7日は、65人分の宿泊を予約しています。
翌日(8日)のリレーデモへの参加などのために、宿泊ご希望の方は早めにお申し込みください(4月25日一次締め切り、4月末日締切)。

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5月8日(月)~12日(金)
高浜~おおい~小浜~若狭~美浜~敦賀~越前~福井
リレーデモ

◆5月 8日(月)9時高浜町申し入れ 9時20分デモ出発 13時おおい町申し入れ 16時小浜市申し入れ 17時終了
◆5月 9日(火)9時小浜市役所からデモ出発 11時若狭町申し入れ 14時美浜町申し入れ 16時原子力規制委員会(敦賀)申入れ 17時終了
◆5月10日(水)9時敦賀市申し入れ 9時20分デモ出発 11時南越前町申し入れ 16時越前市申し入れ 17時終了
◆5月11日(木)9時越前市役所からデモ出発 11時池田町申し入れ 16時鯖江市申し入れ 17時終了
◆5月12日(金)9時鯖江市役所からデモ出発 11時越前町申し入れ 15時福井市入れ 16時福井県申し入れ
下記「5.12高浜原発うごかすな!福井集会」に合流

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5月12日(金)福井行動

[1]「5.12高浜原発うごかすな!福井集会」

◆日時;5月12日(金)18時より19時まで
◆場所;福井市中央公園

[2] 福井市内デモ

◆集会終了後、7時に福井市中央公園より県庁包囲デモに出発、20時前に西武デパート前で終了予定。

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◆バス乗車や宿泊の申込みは「高浜原発うごかすな!」実行委員会・橋田(090-5676-7068)まで

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大阪高裁で逆転されたからと言って、
大津地裁の大英断を無駄にしてはなりません。
重大事故が起こってからでは遅すぎます。
原発全廃の行動に今すぐ起ちましょう!

2017年4月22日発行

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)