◆10月停止の老朽原発・美浜3号機をそのまま廃炉に

【2021年8月27日,京都キンカンで配付】

トラブル、不祥事、約束違反続きで、
企業倫理に欠ける関電が運転する老朽原発
10月停止の老朽原発・美浜3号機をそのまま廃炉に追い込み、
原発全廃に前進しよう!

原発は老朽化すると危険度が急増
全原発の40年超え運転は法令違反

 福島原発事故から10年半になりますが、この事故は、原発は事故の確率が高く、現在科学技術で制御困難な装置であることを、大きな犠牲の上に教えています。その原発を長期間運転すれば、危険度はさらに高くなります。したがって、政府は、2012年6月の原子炉等規制法の改正で「原発の運転期間は40年とし、例外中の例外として20年の運転延長を一度だけ認める」と規定しました。「原発の運転期間・40年以内」は、法律で定められているのです!

 そのため、40年超えの原発は老朽原発と呼ばれています。2021年8月現在、高浜原発1号機(46年超え)、2号機(45年超え)、美浜原発3号機(44年超え)、東海第2原発(42年超え)が老朽原発です。

 原発が老朽化すれば、交換することのできない圧力容器(原子炉本体)などが脆化(ぜいか;もろくなること)し、配管が腐食などによって減肉(げんにく;やせ細ること)あるいは応力腐食割れ(腐食と引っ張る力の相乗効果で生じる亀裂)などが生じます。

 また、老朽原発では、建設時には適当とされたが、現在の基準では不適当な部分が多数あります。しかし、その全てが改善されているとは言えません。例えば、地震の大きさを過小評価していた時代に作られた構造物、配管の中には交換不可能なもの(圧力容器など)があります。

 それでも、原子力規制委員会(規制委)は、2016年、関西電力(関電)の老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機の運転を、拙速審議(時間、回数は通常の約半分)によって認可しました。また、2018年、日本原子力発電(日本原電)の東海第二原発の運転を認可しました。全ての40年超え老朽原発の運転認可は、明らかに法令違反です。

トラブル、人身事故、不祥事、
約束違反続きの関電が原発を運転

 関電が運転する若狭の原発では、トラブル、人身事故が頻発し、原発マネーに関わる不祥事、使用済み核燃料中間貯蔵地に関わる約束違反、などが発生・発覚しています。その中の多くは、規制委による再稼働認可審査の過程では想定されていなかったことです。

 原発の運転が、人の命や尊厳を軽視し、企業倫理をないがしろにして画策され、無責任な規制委がそれを認可していることを示しています。

 以下は、一昨年以降に発生したトラブル、人身事故、不祥事、約束違反の例です。

①トラブル

  • 高浜4号機で1昨年10月に、高浜3号機で昨年2月に、蒸気発生器伝熱管(直径約2.2cm、厚さ約1.2mm)の外側が削れて管厚が半分程度に減少していることが見つかりました。関電は、混入した「異物(金属片)」が配管を削ったためとしました。
  • 高浜4号機では、昨年11月にも蒸気発生器伝熱管の外側からの減肉・損傷が発覚しました。関電は、この減肉・損傷は、伝熱管外側に自然発生した鉄さびの塊がはがれて、伝熱管を削って生じたとしました。
  • 大飯3号機では、昨年9月、原子炉と蒸気発生器をつなぐ配管から枝分かれした直径約11cm、厚さ約14mmの配管(加圧器スプレー配管)の溶接部に、深さ約4.6mm、長さ約6.7cmの亀裂が発覚しました。原因は応力腐食割れとされています。この配管は、伝熱管に比べて格段に大きいため、破断すれば、伝熱管破断の場合よりはるかに急速、深刻な冷却材喪失を引き起こします。
  • 6月23日に再稼働した老朽原発・美浜3号機では、7月2日、緊急時に蒸気発生器に給水するタービン動補助給水ポンプの点検中に、同ポンプに大きな圧力がかかるトラブルが発生しています。関電は、「ポンプ入り口にあるフィルターに鉄さびが詰まったことが原因」としています。老朽原発を全国に先駆けて動かそうとして準備してきたにも拘らず、鉄さびによる目詰まりにも気づかなかった関電と規制委のいい加減さを物語ります。
  • 7月3日に再稼働し、7月30日に本格運転に入った大飯3号機でも、8月4日、タービンを回した蒸気を冷やす復水器に海水を送る配管から水漏れが見つかりました。2系統中の1系統の空気抜き弁枝管の付け根付近が雨水によっ腐食し、直径4cmの穴が開いていたのです。

 上記の数々の配管トラブルは、若狭の原発の配管は相当危険な状況にあることを示します。老朽原発だけでなく、運転開始後40年に満たない原発(例えば、大飯原発3号機は運転開始後29年の原発)でも重大事故を起こしかねません。老朽原発の運転など、もってのほかです。

 なお、配管トラブルの中でも、高温(約320℃)、高圧(約160気圧)の一次冷却水が流れる蒸気発生器配管の損傷は深刻です。この配管が完全に破断すれば、冷却水が噴出し、原子炉が空焚きになる可能性があるからです。

②人身事故

  • 1昨年9月、高浜1、2号機の特重施設建設用のトンネル内で溶接作業にあたっていた9人が一酸化炭素中毒で救急搬送されました。事故の起こったトンネルには外気を取り込むダクトが設置されていなかったそうです。
  • 昨年3月には、高浜原発1、2号機の敷地内にある掘削中のトンネルで、発破作業の安全監視中であった協力会社社員が、火薬を運ぶために後退してきたトラックにはねられ、亡くなられました。この社員は耳栓をし、トラックに背を向けていました。
  • その他、脚立や足場からの転落事故も多発しています(1
    昨年9月、美浜3号機:昨年4月、高浜原発1号機など)。

 これらの内、高浜、美浜の事故は、老朽原発再稼働準備中に起こったものです。老朽原発を無理矢理動かそうとして、安全な労働環境づくりを怠ったために起こった事故です。

③不祥事

 1昨年9月、関電が支払った原発関連工事費が、多額の金品として関電幹部に還流されたことが暴露され、昨年3月には、電気料金値上げ時にカットした役員報酬や役員が追加納税した税金を、退任後、関電が補填していたことが公表され、多くの怒りを買っています。しかも、これらの不祥事に関与した関電幹部のほとんどは、原発の推進に奔走した人たちです。「原発マネーの垂れ流しの中でしか維持できない原発」の全廃を求める声はさらに拡大しています。

 関電は、原発マネーに関わる不祥事発覚後も、原発の運転を継続し、危険極まりない老朽原発まで再稼働させました。関電は、不祥事を反省して役員人事を刷新したとしていますが、関電が企業体質を抜本的に改善したとするには程遠い状態にあります。例えば、関電は、去る2月、「競争入札を経ない発注(特命発注)により、地元企業の活用に努める」として、美浜町長の美浜3号機再稼働への同意を取り付けました。これは、関電の経営体質は、「人事刷新」によても全く変わっていないことを物語るものです。公共性が高く、税金に準じる性質を持つ電気料金で運営される電力会社が、特命発注の乱発など許されるはずがありません。

④約束違反

 関電は、2017年11月「2018年末までに、使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を福井県外に探す」と明言し、西川前福井県知事の大飯原発再稼働への同意を取り付けました。しかし、関電は、この約束をホゴにし、候補地提示期限を「2020年末まで」と再約束して、原発の運転を継続し、使用済み核燃料を増やし続けました。

 さらに、関電は、本年2月、再約束期限を2023年末へとまたも先送りし「この期限が守られなければ老朽原発を停止する」として、老朽原発再稼働への福井県知事の同意を取り付けました。この先送りは、むつ市の中間貯蔵施設の共同利用の可能性を拠り所にしたものですが、宮下むつ市長はこれを否定し、猛反発しています。

 このように、関電は、何の成算も無く「空約束」し、平気でそれをホゴにする、企業倫理のかけらも持ち合わせない企業です。原発を安全に運転できるはずがありません。

自社都合で人々や自治体をもて遊ぶ、
企業倫理に欠ける関電

 関電は、老朽原発・美浜3号機を、6月23日に再稼動させました。一方、特重施設(いわゆるテロ対策施設)の設置が期限の6月9日に間に合わなかった老朽原発・高浜、2号機の当面の再稼動を中止しました。

 この再稼働を巡って、関電は、立地自治体の議会や首長に同意を要請し、苦悩の選択を迫りました。それでも、福井県知事が4月28日に同意を表明した直後の30日、2週間後の5月12日に、突然、高浜2号機、1号機の再稼働断念を発表しました。

 このように、関電は、自社の都合のみで、立地自治体や多くの人々を混乱に陥れているのです。企業倫理に欠け、私利私欲に走る傲慢企業と言わざるを得ません。

 2017年12月、関電は、福井県やおおい町に相談することなく、突然かつ勝手に大飯原発1、2号機の廃炉を決めました。これも関電の傲慢さを示す例です。このような事態が生じるのであれば、原発立地自治体は、その将来設計を描けなくなります。原発立地町は、突然の原発廃止のように、相互信頼を顧みない関電や国であっても、その意向に逆らわず、今でも原発政策を続けています。

トラブル、不祥事を起こし、企業倫理に
欠けるのは関電だけではない

 四国電力の伊方原発では、昨年だけでも、制御棒が誤って抜かれた状態が約7時間続き、使用済み燃料プール内で燃料落下を示す信号が発信し、原発内のほぼ全ての電源が一時喪失するなど、深刻なトラブルが起こり、また、重大事故対応のために宿直していた社員が2年間で5回も無断外出して、会社のガソリンチケットを無断で使っていたことが発覚しています。

 東京電力の柏崎刈羽原発では、テロ対策工事や火災対策工事が多くの箇所で未完了にも拘わらず工事完了と報告していたことが暴露されています。同原発では重要施設への出入りに使用するIDカードの不正使用も行われていました。

 日本原電敦賀原発では、敷地直下を通る活断層に関わるデータの改ざんや記載ミスが明らかになっています。

 このように、原発を運転する電力会社の企業倫理は、救いようがないほど、地に落ちてます。

原発マネーにすがる自治体議員や首長

 翻(ひるがえ)って、関電と政府の意を汲み、原発マネーにしがみつく高浜町、美浜町の議会と町長は、昨年11月から本年2月にかけて、老朽原発再稼働への同意を表明しました。また、杉本福井県知事は、国から5年間で1原発最大25億円の交付金(高浜、美浜の2原発で計50億円)を引きだし、経産大臣の「原子力を持続的に活用する」との言質を取り付け、4月28日、再稼働同意を発表しました。

 結局、原発立地自治体は、「自治体住民の安全・安心の保全が地方自治の基本」であることを忘れ、住民の安心・安全を犠牲にして、原発マネーを得ようとし、政府は、税金によって立地自治体を買収して、老朽原発再稼働を強行しようとしたのです。

避難訓練を行わなければならないほど
危険な施設は原発だけ

 政府や自治体は、原発重大事故を想定した避難訓練を行っています。それは、原発は重大事故を起こしかねないことを、政府や自治体が認めているからです。ただし、政府や自治体で考えている「避難計画」では、わずかの期間だけ避難することになっていて、避難に要するバスの台数も避難する場所も全く足りません。政府や自治体は、原発重大事故では、住民の多くが何年も、何十年も、あるいは永遠に故郷を奪われることをあえて無視して、「避難訓練を行った」とするアリバイ作りをしているのです。

 若狭の原発から100km圏内には、76万人が住む福井県のみならず、257万人、141万人が住む京都府、滋賀県の全域、大阪府、兵庫県、奈良県、岐阜県、愛知県の多くの部分が含まれます。若狭の原発で重大事故が起こったとき、これらの地域の何100万人もが避難対象になりかねません。避難は不可能です。重大事故では、至近にある琵琶湖(美浜原発から28km)が汚染され、関西1400万人以上の飲用水が奪われます。若狭湾が汚染され、観光や漁業が壊滅します。

原発のない若狭は実現できる!

 いま、脱原発・反原発は圧倒的な民意です。老朽原発の運転に反対する声はさらに大きく、運転を認める声などほとんどありません。

 原発の40年超え運転と新設を阻止すれば、美浜町からは即時、高浜町からは4年後に、おおい町からは12年後に、敦賀市からは6年後に、稼働する原発が無くなります。若狭の原発は2033年に、全国の原発は2049年にゼロになります。原発反対の行動が高揚すれば、もっと早く原発をなくすことも可能です。

原発全廃に前進の好機

 6月23日に再稼働した美浜3号機は、特重施設の完成が期限(10月25日)に間に合わず、わずか3ヶ月の営業運転で停止に追い込まれます。美浜3号機、高浜1、2号機の特重施設の完成は早くても2022年9月頃、2023年5月、6月頃といわれています。

 ところで、これらの老朽原発は、特重施設の完成後に再稼働されたとしても、2023年末には停止に追い込まれる可能性が大です。それは、関電が「使用済み核燃料の県外中間貯蔵地を2023年末までに探せなければ、老朽原発を停止する」と明言していますが、中間貯蔵候補地探しは至難であるからです。老朽原発停止を突破口に原発全廃に向かって大きく前進する好機です。

原発ゼロ基本法案を実現し、
原発に依存しない若狭を!

 原発地元の自治体や経済界は、脱原発をしたら地域経済が成り立たなくなると宣伝しています。

 しかし、国会の経産常任委員会に付託された「原発ゼロ基本法案」では、
①全ての原発の速やかな停止→廃止、
②電気需要量の削減、
③再生可能エネルギー電気供給量の増加を謳うとともに、
④原発を停・廃止する「事業者への支援、周辺地域の雇用・経済対策」を行うための「法制上、財政上、税制上、または、金融上の措置」を条文として要求しています。「原発ゼロ基本法案」が施行されれば、原発に頼らない地域の構築に向かって踏み出すことができます。

 3年余りも棚ざらしのこの法案の審議を要求し、経済的不安をも克服して、脱原発社会を目指しましょう!

重大事故が起こる前に
原発を全廃しましょう!

12月5日開催の
「老朽原発このまま廃炉!大集会inおおさか」
に総結集を!


2021年8月30日
老朽原発うごかすな!実行委員会
連絡先;木原(090-1965-7102)