◆リレーデモ最終日 2020年12月9日、関西電力宛申し入れ(美浜町の関電原子力事業本部にて)

関西電力株式会社
取締役会長 榊原定征 様
取締役社長 森本 孝 様
原子力事業本部長 松村孝夫 様

申し入れ

 福島原発事故から10年近くになりますが、避難者の多くが故郷を奪われたままです。事故終息は見えず、トリチウムなどの放射性物質を含む大量の汚染水が太平洋にたれ流されようとしています。原発は、事故確率の高さ、事故被害の深刻さ、事故処理の困難さなど、現在科学技術で制御できる装置でないことを、福島原発事故が大きな犠牲の上に教えています。

 その原発が老朽化すれば、危険度が急増します。それは、高温、高圧の下で高放射線(とくに中性子)に長年さらされた原子炉の圧力容器や配管の脆化、腐食、減肉が進んでいるからです。また、老朽原発には、建設時には適当とされたが、現在の基準では不適当な部分が多数あるからです。例えば、地震の大きさを過小評価していた時代に作られた圧力容器などです。

 それでも、貴関西電力(関電と略)は、運転開始後44年、46年、45年を超えた老朽原発・美浜3号機、高浜1、2号機を再稼働し、全国の原発の60年運転を先導しようとしています。また、原子力規制委員会(規制委と略)は、2016年、これらの原発の40年超え運転を、拙速審議によって認可しました。

 しかし、この認可以降に、関電の原発に関連して、高温・高圧(320℃・157気圧)の1次冷却水が流れる蒸気発生器配管の減肉、亀裂をはじめとする各種のトラブル、原発再稼働準備工事中の人身事故、原発マネーに関わる不祥事が頻発しています。これらは、老朽原発運転認可の過程では想定されなかったものです。例えば、本年だけでも、高浜3号機の蒸気発生器伝熱管で減肉・損傷(2月)、大飯3号機の圧力容器と蒸気発生器をつなぐ配管で亀裂(9月)、高浜4号機の蒸気発生器伝熱管で減肉・損傷(11月)が発見され、高浜4号機でケーブル火災(11月)が発生しています。また、高浜原発1、2号機敷地内の掘削中のトンネルでの死亡事故(3月)、高浜原発1号機(4月)、美浜3号機(8月)、大飯原発3号機(8月)での転落事故などが報道されています。この事実は、原発は、運転開始後40年に満たなくても、トラブルや事故を多発させる装置であることを物語っています。

 一方、昨年来の原発マネーに係わる不祥事の調査は,未だに納得できるものではなく、関電が企業体質を抜本的に改善したとするにはほど遠い状態にあることは、原発立地自治体をはじめ、多くが指摘するところです。それでも、関電は、不祥事はなかったかの如く老朽原発の再稼働準備を進めています。

 原発の40年超え運転が、人の命や尊厳、企業倫理をないがしろにして画策され、無責任な規制委がそれを認可したことを示しています。

 なお、原発再稼働に賛成する人たちは、賛成の理由として、「規制委が、世界一厳しい審査基準で審査して、運転を認めているから」、「国策だから」、「経済発展に不可欠だから」などを挙げています。しかし、規制委の認可を得て再稼働した原発で、事故やトラブルが頻発している事実は、「世界一厳しい審査基準」に適合した原発であっても、トラブルや事故は避けえないこと、規制委の審査がいい加減極まりないことを示しています。また、国策で進められた福島原発で大事故が起こり、多くの人々が今でも、苦難の生活を続けておられる事実は、国策にかかわらず、住民に塗炭の苦しみを与える重大事故を起こしかねない老朽原発の再稼働など認めてはならないことを示しています。さらに、もし、原発で重大事故が起これば、経済発展どころか、原発立地自治体はおろか極めて広域が二度と住めない故郷になる可能性があります。重大事故が起こらなくとも、原発を稼働させれば、子々孫々にまで負の遺産となる使用済み核燃料が蓄積します。老朽原発の再稼働は、一時の経済的利益のため、私企業・関電の利益のために画策されているとしか考えられません。

 なお、規制委の審査のいい加減さは、去る12月4日の大阪地裁判決でも指摘されています。規制委は、原発敷地で起こり得る地震規模の推定について、推定に用いる式(経験式)で得られる規模は平均値であり、バラツキを考慮すればさらに大きな地震が発生する可能性があるから、「バラツキを考慮せよ」と規定していました。しかし、この規定にも拘らず、原発運転の認定にあたっては平均値を基準地震動として採用し、平均値に見合った耐震性で可としています。大阪地裁は、これが過小評価であるとして、大飯原発3、4号機の設置許可の取り消しを命じたのです。この判決に基づけば、同様な方法で推定された老朽美浜原発3号機、高浜原発1,2号機敷地の基準地震動も過小評価していることになります。このバラツキに関する議論は、いやしくも科学・技術に携わる者なら、誰しも納得できるものです。関電は、基準地震動の再評価を行い、それに見合った耐震対策を施すべきです。

 ところで、関電は、使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を2018年内に決定すると明言していましたが、この約束を反故にしたまま今に至っています。候補地の一つと目されていたむつ市の宮下市長は、去る11月25日に受け入れを否定しています。このような状況下でも、関電は、使用済み核燃料を増やし続ける原発の運転を継続し、老朽原発の運転まで進めようとしています。人々の安全や安心を顧みない身勝手極まりない姿勢の現われです。許されるものではありません。

 さて、いま、新型コロナウイルス(コロナと略)の感染が拡大しつつあり、11月17日までに、美浜原発でも7人の感染が確認され、美浜町長の同原発視察も急遽中止されました。12月になってからは、さらに1人の感染が確認されています。

 コロナが蔓延する中で原発が重大事故を起せば、集団避難中のバスの中で、避難先で長く続く集団生活の中で、ウイルスの感染を防ぐことは不可能です。大勢の感染者が出ます。医療崩壊が起こります。一方、原発内でコロナが蔓延すれば、検査や点検が行き届かなくなり、原発の安全が保たれなくなります。そのコロナ感染の拡大の中でも関電は、危険極まりない老朽原発の再稼働の準備を継続しています。少なくとも、コロナの終息が宣言されるまでは、原発の運転を見合わせることが、最低限の企業倫理です。

 以上の視点に立って、「12.9申し入れ・抗議行動参加者一同」および「老朽原発うごかすな!実行委員会」は、貴関西電力に、以下を申し入れます。

【1】 危険極まりない老朽原発・美浜3号機、高浜1、2号機の再稼働準備を即時中止し、これらの原発の廃炉を決定してください。

【2】 原発を動かせば、行き場がなく、子々孫々にまで負の遺産となる使用済み核燃料が増加します。全ての原発を停止し、安全な廃炉を進めてください。
原発の即時廃炉が困難である場合でも、少なくとも、以下を実行してください。

【3】 使用済み核燃料の安全な保管地と安全な処理・保管法を早急に提示してください。提示できなければ、原発は稼働させないでください。

【4】 関電の原発で最近起こったトラブル、事故、原発マネー不祥事の原因は解明されているとは言えません。原因が十分解明され、対策が施されるまで、原発を稼働させないでください。

【5】 大阪地裁判決が求めているように、大飯原発、高浜原発、美浜原発の敷地の基準地震動の大きさを見直し、原発の耐震性を再検討してください。

【6】 コロナの終息が宣言されるまで原発を稼働させないで下さい。

【7】 関電の原発が重大事故を起こせば、その被害2020年12月美浜町長申し入れは、若狭をはるかに超えて関西や中部にもおよぶ可能性があります。原発を稼働させようとするのなら、広範な周辺自治体住民の意見にも、十分耳を傾けてください。

2020年12月9日

12.9申し入れ・抗議行動参加者一同
老朽原発うごかすな!実行委員会
(連絡先;木原:090-1965-7102)