◆若狭、関西各地で配付「危険すぎる老朽原発」

【2020年10月から,若狭,関西各地で配付】

◎福島原発事故は、原発が重大事故を起こせば、人の命と尊厳を奪い、職場を奪い、農地を奪い、海を奪い、生活基盤を根底から奪い去ることを、大きな犠牲の上に教えました。

◎原発事故の被害は長期におよびます。避難された方の多くは今でも、避難先で苦難の生活を送っておられます。事故を起した原子炉の内部の様子は、高放射線のため、ごく一部しか分からず、溶け落ちた核燃料の取り出しの目途も立っていません。汚染された土壌の除染法はなく、ごく表層をはぎ取ってフレコンバックに保存する他はありませんが、そのフレコンバックも、放射線と風化によって破損し始めています。トリチウムなどの放射性物質を含む大量の汚染水が溜り続け、太平洋に垂れ流されようとしています。

◎福島原発事故は、原発が重大事故を起せば、放出された放射性物質が風や海流に乗って運ばれ、被害は広域におよぶことを実証しました。事故炉から50 km離れた飯舘村も全村避難になり、200 km以上離れた関東でも高放射線地域が見つかっています。これは、若狭の原発が重大事故を起せば、約260万人が住む京都府、約140万人が住み、琵琶湖を有する滋賀県を始め、関西や中部の多くの部分が放射性物質に汚染されかねないことを示します。

原発は、事故を起さなくても、運転すれば、トリチウムを含む冷却水を垂れ流します。一方、原発を運転すれば、長期の保管を要する使用済み核燃料を残しますが、その行き場はなく、何万年もの未来にまで負の遺産を押し付けることになります。

原発は老朽化すると危険度が急増

 原発は事故の確率が高い装置ですが、原発を長期間運転すれば、危険度はさらに高くなります。したがって、原子力規制委員会(規制委と略)は、発足直後には、「運転開始後40年を超えた原発の稼働は例外中の例外」としていました。そのため、40年超えの原発は老朽原発と呼ばれています。2020年10月現在、高浜原発1号機(45年超え)、2号機(44年超え)、美浜原発3号機(44年超え)、東海第2原発1号機(41年超え)が老朽原発です。

原発が老朽化すれば、

 交換することのできない圧力容器(原子炉本体)などが脆化(ぜいか;もろくなること;下記注1参照)し、配管が腐食などによって減肉(やせ細る)あるいは応力腐食割れ(腐食と引っ張る力の相乗効果で生じる亀裂)などが生じます。

 また、40年以上も前に建設された原発では、建設時には適当とされていたが、現在の基準では不適当と考えられる部分が多数あります。しかし、その全てが見直され、改善されているとは言えません。例えば、地震の大きさを過小評価していた時代に作られた構造物、配管の中には交換不可能なものがあります(圧力容器など)。

 それでも、関西電力(関電と略)と政府は、原発の40年超え運転は「例外中の例外」としていた約束を反古(ほご)にして、老朽原発・高浜1、2号機,美浜3号機の再稼動を画策しています。

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注1 脆化した圧力容器は緊急時に破裂の危険性  原子炉本体である圧力容器は鋼鉄で出来ていて、加圧水型の場合、運転中は、約320℃、約150気圧の環境で中性子などの放射線に曝(さら)されています。この鋼鉄は、一定温度(脆化温度)以上では、ある程度の軟らかさを持っていますが、温度が下がると、ガラスのように硬く、脆くなります。すなわち、脆化します。

 この硬化温度は、原子炉運転期間が長くなると高くなります。例えば、初期には-16℃以下で硬化した鋼鉄も、40年も中性子に曝され続けると、100℃以上でも硬化するようになり、脆くなります。

 このように脆くなった圧力容器を持つ原子炉から冷却水が失われて、緊急事態に陥ったとき、原子炉内は高温になりますが、ここに冷却水が送り込まれ、圧力容器が脆化温度以下に急冷されますと、破裂し、福島事故以上の事態を招く危険があります。 └─────────────────────────────────

老朽原発の運転認可後に、想定外の トラブル、人身事故、不祥事が頻発

 規制委は、2016年、老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機の40年超え運転を、拙速審議(審議時間、回数は通常の約半分)によって認可しました。  しかし、この認可以降に、関電の原発では、トラブル、死亡を含む人身事故、原発マネーに関わる不祥事などが頻繁に発生・発覚しています。これらは、規制委による審査の過程では想定されていなかったことばかりです。

 原発の40年超え運転が、人の命や尊厳を軽視し、企業倫理をないがしろにして画策され、無責任な規制委がそれを認可していることを示しています。

関電の原発での最近のトラブル(例)

(1)高浜4号機では、再稼働準備中の2018年8月、事故時に原子炉に冷却水を送るポンプが油漏れを起こし、また、温度計差込部から噴出した放射性物質を含む蒸気が原子炉上蓋から放出されました。再々稼働準備中の昨年10月には、3台の蒸気発生器の伝熱管5本の外側が削れて管厚が40~60%減少していることが見つかりました。蒸気発生器伝熱管の減肉・損傷は、高浜3号機でも、本年2月に見つかっています。関電は、これらの伝熱管の減肉や損傷は、混入した異物が、配管を削ったためとしました。

(2)大飯3号機では、定期検査中の去る9月7日、原子炉と蒸気発生器をつなぐ配管から加圧器方向に枝分かれした直径約11 cm、厚さ約14 mmの配管の溶接部に、深さ約4.6 mm、長さ約6.7 cmの亀裂があることが明らかになりました。原因は応力腐食割れとされています。関電は、このまま13ヶ月間の運転を継続しても配管の健全性は保たれるとして、次回の定期検査で交換する方針を示しましたが、規制委は検証は不十分とし、運転停止は長期化する情勢です。

「老朽原発のアキレス腱」・蒸気発生器で多発する 配管の損傷

 頻発するトラブルの中でも蒸気発生器配管の損傷はとくに深刻です。関電の原発のような加圧水型原発の格納容器の中には、圧力容器と蒸気発生器(3~4器)があります(以下の模式図参照)。圧力容器内には核燃料があり、蒸気発生器の中には、外経約2.2 cm、肉厚約 1.3 mm の伝熱管(あるいは伝熱細管)と呼ばれる細管が約 3400 本あります。

 圧力容器で約160気圧、約320℃の熱湯となった1次冷却水は、蒸気発生器伝熱管内を巡って、伝熱管の外を流れる2次冷却水を沸騰させて、約60気圧、約280℃の水蒸気にします。この水蒸気は、発電機に連結されたタービンを回します。

 もし、高温・高圧の熱湯が流れる蒸気発生器の伝熱管等の配管が完全に破断すれば、一次冷却水が噴出し、原子炉が空焚きになる可能性があります。そのため、「蒸気発生器は、加圧水型原発のアキレス腱」と呼ばれています。実際、1991年に美浜原発2号機で伝熱管破断が起き、緊急炉心冷却装置が作動しています。

 破断すれば重大事故を招く蒸気発生器配管の損傷は多数に上ります。例えば、高浜原発3号機では、2018年9月段階で約1万本の伝熱管の内、364本が摩耗によって使用不能になり、栓がされています。

 このように損傷が進む蒸気発生器ですが、老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機の蒸気発生器は、更新後、約25年も経過しています。それでも、規制委はこれらの原発の運転を認可しています。

 蒸気発生器の破損は、取り替えたばかりの蒸気発生器でも発生しています。米国のサン・オノフレ原発2、3号機では、2010年、2011年に蒸気発生器を新品に取り替えましたが、2012年、両機ともに3000本以上の蒸気発生器伝熱管に早期摩耗が発見され、2013年6月に廃炉となりました。  伝熱管の損傷の中でも、昨年10月と本年2月に高浜原発4、3号機で見つかった損傷は、さらに深刻な問題を提起しています。関電と規制委が原因とした「混入した異物による損傷」は、規制委の再稼働審査では全く想定されていなかったことです。

 「異物の混入」は、人のうっかりミスによっても起こりますが、炉内での腐食や破損によっても起こります。例えば、規制委の審査では、原子炉内構造物を固定する約1100本のボルト(バッフル・フォーマーボルト)の腐食による損傷数は、60年運転時点で全体の20%以下であるから、原発を60年運転しても安全を維持できるとしていますが、破損ボルトが異物として炉心や配管内を駆け巡り、核燃料や配管を損傷する可能性も大いにあります

 以上、伝熱管の破損を例に、蒸気発生器が極めて危険な状態にあることを指摘しましたが、本年9月に大飯原発3号機の加圧器近辺の配管で発覚した亀裂は、伝熱管とは比較にならないほど大きな配管の破損であり、さらに深刻です。

 腐食、減肉、損傷が頻発する蒸気発生器を持ち、運転開始後40年をはるかに超えた老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機の運転などもってのほかです。

再稼働を急ぐ老朽原発で 人身事故が多発

 昨年9月、老朽原発・高浜1、2号機の特定重大事故対処施設(いわゆるテロ対策施設)建設用のトンネル内で溶接作業にあたっていた9人が一酸化炭素中毒で救急搬送され、4人が集中治療室に入りました。事故の起こったトンネルには外気を取り込むダクトが設置されていませんでした。

 今年3月には、高浜原発1、2号機の敷地内にある掘削中の作業用トンネルで、発破準備作業の安全監視中であった協力会社社員が、発破用の火薬を運ぶために後退してきたトラックにはねられ、亡くなられました。同社員は耳栓をし、トラックに背を向けていたそうです。

 今年4月には、高浜原発1号機の安全対策工事を行っていた協力会社の会社員が、脚立から転落し、骨盤を折る重傷を負われました。

 美浜3号機では、昨年9月、安全対策工事用の足場が崩れ、2人が重軽傷を負われました。本年8月には安全対策工事中の協力会社社員が足場から転落して重傷を負われました。安全帯を付けていなかったそうです。同様な事故は、本年8月。大飯原発3号機でも起きています。

 これらの内、高浜、美浜の事故は、老朽原発再稼働準備作業中に起こりました。老朽原発を無理矢理動かそうとして、安全な労働環境づくりを怠ったために起こった事故です。

 なお、最近の2件の事故は、2004年8月に美浜3号機で発生した2次冷却水配管の破損により5人が死亡し、6人が重傷を負われた事故の慰霊行事で、森本関電社長が「労災防止」を誓った直後に起こったものです。

老朽原発運転を企むのは、 原発で私腹を肥やす関電

 昨年9月、関電が支払った原発関連工事費が、多額の金品として関電幹部に還流されていたことが暴露され、また、今年3月には、電気料金値上げの際にカットした役員報酬や役員が追加納税した税金を、退任後、関電が補填をしていたことが発覚し、多くの人々の怒りをかっています。

 このお金は、元をただせば私たちが支払った電気料金です。私たちの電気料金を建設業者などに垂れ流し、汚れた原発マネーとして関電幹部に還流させたのです。

 しかも、お金を受けとった関電幹部のほとんどは、原発の推進に奔走した人たちです。この事は、危険極まりなく、喜んで引き受ける場所がない原発を引き受けさせる見返りとして、地域自治体、企業、住民に汚れた原発マネーをバラマキ、「人の命と尊厳」を犠牲にして「経済的利益」を選択することを強いたことを物語っています。

 このように、原発が汚れた原発マネーによって推進されたことは明らかですが、それでも関電は、原発の運転を継続し、危険極まりない老朽原発まで再稼働させようとしています。また、不祥事を反省して役員人事を刷新したとし、旧経営陣を告発していますが、会長に、不祥事の原因である原発の推進を掲げる榊原前経団連会長を就任させました。

 関電幹部には、企業倫理や法令を遵守する姿勢がないことは明らかです。関電が、真に信頼回復に努めるのであれば、不祥事の原因となった原発の稼働や再稼働準備を中止して、原発稼働の是非を再考すべきです。

行き場のない使用済み核燃料

 関電は、使用済み核燃料の中間貯蔵施設について、候補地を2018年内に決定すると明言していましたが、この約束を反故にしたまま今に至っています。それでも、使用済み核燃料を増やし続ける原発の運転を継続し、老朽原発の運転まで進めようとしています。人々の安全や安心を顧みない身勝手極まりない関電の姿勢の表れです。許されるものではありません。

原発のない若狭は実現できる!

 今、関電や政府は、45年超えにもなろうとする老朽原発・美浜3号機、高1、2号機を再稼働させ、全国の原発の60年運転を先導しようと懸命です。人の命と尊厳をないがしろにする原発社会の延命を図っているのです。許してはなりません!

 いま、脱原発・反原発は圧倒的な民意ですが、老朽原発の運転に反対する声はさらに大きく、運転を認める声などほとんどありません。

 原発の40年超え運転を阻止すれば、美浜町からは即時、高浜町からは5年後に、おおい町からは13年後に、運転中の原発が無くなります。若狭の原発は2033年に、全国の原発は2049年にゼロになります。原発反対の行動が高揚すれば、もっと早く原発をなくすことも可能です。

原発のない社会はすぐそこです。 重大事故が起こる前に原発を全廃しましょう! 原発ゼロに向けて、 まず、「老朽原発うごかすな!」の 声を上げましょう!

11月23日(月、休)に 関電本店(大阪)を出発し、 12月9日(水)に 関電原子力事業本部(美浜町)に至る 200 km リレーデモで、 老朽原発を廃炉に追い込みましょう!


老朽原発うごかすな!実行委員会 連絡先;木原壯林(090-1965-7102)