◆関電原子力事業本部(美浜町)での申入書

【2020年9月28日,関電原子力事業本部での申入書】

関西電力株式会社:
 取締役会長 榊原定征 様
 取締役社長 森本 孝 様
 原子力事業本部長 松村孝夫 様

申 入 書

 原発は、事故確率の高さ、事故被害の深刻さ、事故処理や使用済み核燃料の処分の困難さなど、現在科学技術で制御できる装置でないことを、福島原発事故が大きな犠牲の上に教えています。その原発が老朽化すれば、危険度が急増することは多くが指摘するところです。それでも、貴関西電力(関電と略)は、2016年、高浜発電所(高浜原発と略)1、2号機および美浜発電所(美浜原発と略)3号機の40年超え運転の認可を原子力規制委員会(規制委と略)から得て、再稼働準備を進めています。

 しかし、規制委の認可以降に、関電の原発に関連して、下記のように、認可の過程では想定されなかった、あるいは重要視されなかったトラブル、事故、不祥事が頻発しています。原発の40年超え運転が理不尽であることを示しています。

【1】関電の原発での最近のトラブルの例

(1)高浜4号機では、再稼働準備中の1昨年8月、事故時に原子炉に冷却水を送るポンプが油漏れを起こし、また、温度計差込部から噴出した放射性物質を含む蒸気が原子炉上蓋から放出されました。再々稼働準備中の昨年10月には、3台の蒸気発生器の伝熱管5本の外側が削れて管厚が40~60%減少していることが見つかりました。蒸気発生器伝熱管の減肉・損傷は、高浜3号機でも、本年2月に見つかっています。関電は、伝熱管の減肉や損傷は、混入した異物が、配管を削ったためとしました。

(2)大飯3号機では、定期検査中の去る9月7日、原子炉と蒸気発生器をつなぐ1次系配管で深さ約4.3 mm、長さ約6.7 cmの傷があることが明らかになりました。

 上記のトラブルの中でも蒸気発生器伝熱管などの1次系配管の損傷はとくに深刻です。高温・高圧水が流れる1次系配管が完全に破断すれば、原子炉水が噴出し、原子炉が空焚きになる可能性があるからです。実際、1991年に美浜原発2号機で伝熱管破断が起き、緊急炉心冷却装置が作動しています。

 損傷した伝熱管も多数に上ります。例えば、高浜原発3号機では、1昨年9月段階で約1万本の伝熱管中の364本が摩耗による減肉、腐食、応力腐食割れによって使用不能になり、栓がされています。

 蒸気発生器の破損は、取り替えたばかりの蒸気発生器でも発生しています。米国のサン・オノフレ原発2、3号機では、2010年、2011年に蒸気発生器を三菱重工業製の新品に取り替えましたが、2012年、両機ともに3000本以上の伝熱管に早期摩耗が発見され、2013年6月に廃炉となりました。

 このように損傷が進む蒸気発生器ですが、高浜1、2号機、美浜3号機の蒸気発生器は、更新後、約25年も経過しています。それでも、規制委はこれらの原発の運転が認可しているのです。

 蒸気発生器は、「加圧水型原発のアキレス腱」と言われるほど、トラブルが頻発する装置ですが、上記の減肉は、さらに深刻な問題を提起しています。それは、減肉の原因が、規制委の審査では想定されていない「混入した異物による損傷」であることです。「異物の混入」は、人為ミスや腐食、金属疲労によっても起こりますが、炉内での腐食や破損によって発生した固形物によっても起きます。例えば、規制委の審査では、炉内構造物を固定するバッフルフォーマーボルトの応力腐食割れによる損傷数は60年運転時点で全1088本の内の20%以下であるから安全を維持できるとしていますが、破損ボルトが異物として配管、核燃料などを損傷する可能性もあります。

 腐食、減肉、損傷が頻発する蒸気発生器を持ち、運転開始後40年をはるかに超えた老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機の運転などもってのほかです。

【2】原発再稼働準備工事での相次ぐ人身事故

(1)昨年9月、老朽原発・高浜1、2号機の特定重大事故対処施設建設用のトンネル内で溶接作業中の9人が一酸化炭素中毒で救急搬送されました。このトンネルには外気を取り込む送気ダクトが設置されていませんでした。今年3月、高浜原発1、2号機の敷地内にある掘削中の作業用トンネルで、協力会社社員が、後退してきたトラックにはねられて亡くなられました。社員は耳栓をし、トラックに背を向けていたと報道されています。4月には、高浜原発1号機の安全対策工事を行っていた協力会社社員が、脚立から転落し、骨盤を折る重傷を負われました。

 これらの人身事故は、老朽原発再稼働準備作業中に起こりました。老朽原発を無理矢理動かそうとして、安全な労働環境づくりを怠ったために起こった事故です。

(2)美浜3号機では、昨年9月、安全対策工事用の足場が崩れ、2人が重軽傷を負われました。本年8月には安全対策工事中の協力会社社員が足場から転落して重傷を負われました。安全帯を付けていなかったそうです。同様な事故は、大飯原発3号機でも起きています。最近の2件の事故は、2004年8月に美浜3号機で発生した2次冷却水配管の破損により5人が死亡し、6人が重傷を負われた事故の慰霊行事で、森本関電社長が「労災防止」を誓った直後に起こったものです。

【3】老朽原発運転を企む関電幹部の不祥事

 昨年9月、関電が支払った原発関連工事費が、多額の金品として関電幹部に還流されたことが暴露され、今年3月には、電気料金値上げ時にカットした役員報酬や役員が追加納税した税金を、退任後、関電が補填をしていたことが公表されました。しかも、これらの不祥事に関与した関電幹部のほとんどは、原発の推進に奔走した人たちです。原発が、汚れた原発マネーによって推進されたことを示します。

 関電は、この不祥事の後、役員人事を刷新し、旧経営陣を告発していますが、真に信頼回復に努めるのであれば、不祥事の原因となった原発の稼働や再稼働準備を中止して、原発稼働の是非を再考すべきです。

【4】行き場のない使用済み核燃料

 関電は、使用済み核燃料の中間貯蔵施設について、候補地を2018年内に決定すると明言していましたが、この約束を反故にしたまま今に至っています。それでも、使用済み核燃料を増やし続ける原発の運転を継続し、老朽原発の運転まで進めようとしています。人々の安全や安心を顧みない身勝手極まりない関電の姿勢の表れです。許されるものではありません。

 上記【1】~【4】のトラブル、事故、不祥事、約束違反は、原発の安全にとって看過できないものであり、関電が原発を安全に運転できる資質、能力、体制を持ち合わせていないことを物語る証左です。老朽原発の運転などもっての他です。

 なお、昨日(9月27日)の報道は、世界全体の再生可能エネルギーによる発電量は原発を上回ったことを明らかにしています。発電効率も上がり、蓄電法の改良も進み、省エネ機器も進歩してきた現在、危険極まりない原発を動かそうとする姿勢は、時代遅れで、電力会社の私利私欲でしかありません。

 以上の視点に立って、「老朽原発うごかすな!実行委員会」は、貴関西電力株式会社に、以下を申し入れます。

【1】危険極まりない老朽原発・高浜原発1、2号機、美浜原発3号機の再稼働準備を即時中止し、これらの原発の廃炉を決定して下さい。

【2】原発を動かせば、行き場がなく、子々孫々にまで負の遺産となる使用済み核燃料が増加します。全ての原発の停止と、安全な廃炉を検討してください。

【3】使用済み核燃料の安全な保管地と安全な処理・保管法を早急に提示してください。
なお、貴社が、私たちの再三の危険性指摘を無視して原発を稼働して、重大事故が起こった場合、それは貴職らの故意による犯罪であり、許されるものではないことを申し添えます。

2020年9月28日

老朽原発うごかすな!実行委員会
9.28行動参加者一同
(連絡先;木原壯林 090-1965-7102)