◆関電が老朽原発推進チラシを福井で配布

【2019年3月29日,京都キンカンで配付】

関電は、老朽原発推進のチラシ(下の緑色枠内)を、
福井で新聞折込み配布しています。

【かんでんトピックス(第54号、2019年3月16日発刊)
「40年を超える原子力発電所ってどうして必要なの?」】
→ こちら
【注意】上記「こちら」のリンク先「かんでんトピックス第54号」は
元サイトから削除された模様で、
エラーになり、リンクは削除済みです。
同様の内容は「同 第58号」→こちらに、掲載されています。

関電は、何の根拠もない理由を並べ立てて、
老朽原発再稼働を正当化しようとしています。
住民を愚弄するものです。

以下、関電の主張の欺瞞性を指摘します。

①関電は、高浜原発1、2号機、美浜原発3号機の60年までの運転期間延長について、「原子力規制委員会(規制委)から認可を得た」としています。(チラシの前文)

しかし、規制委の審査は、単に「新規制基準」へ適合するか否かの審査であり、規制委員長も繰り返すように「原子炉の安全を保証するもの」ではありません。

「新規制基準」について、政府や電力会社は「福島原発事故から学んで作成された」としていますが、この基準は、事故から2年余りで、事故収束の目途も立たず、事故炉の内部もほとんど分からず、事故原因も確証されていなかった(今でも事故原因については異論が多数ある)、2013年7月に施行されたものです。こんな短期間で、事故の原因。経過、事故防止対策などを検討し尽くせるはずがなく、「科学的に安全を保証するもの」とはほど遠いものです。

原発の再稼働にお墨付きを与えた「新規制基準」が極めていい加減な基準であり、規制委の審査が無責任極まりないことは、下記のように、規制委が適合とした原発の多くがが再稼働前後にトラブルを起こした事実からも明らかです。

◆2015年8月に再稼働した川内原発1号機は、再稼働10日後に復水器冷却細管破損を起こし、高浜原発4号機は、2016年2月の再稼働準備中に1次冷却系・脱塩塔周辺で水漏れを起こし、発電機と送電設備を接続した途端に警報が鳴り響き、原子炉が緊急停止しました。さらに、伊方原発3号機は、再稼働準備中の2016年7月、1次冷却水系ポンプで水漏れを起こしました。昨年3月に再稼働した玄海原発3号機は、再稼働1週間後に脱気装置からの蒸気漏れを起こしました(配管に穴が開いたため)。昨年8月末に再々稼働した高浜原発4号機は、8月19日に、事故時に原子炉に冷却水を補給するポンプの油漏れを起こし、20日には、温度計差込部から噴出した放射性物質を含む蒸気が原子炉上蓋から放出されるという、深刻なトラブルを起こしました。

しかも、老朽原発再稼働審査の杜撰(ずさん)さは目に余るものでした。高浜1、2号機審査を例に紹介します。

  • 関電は、高浜1、2号機の新規制基準への適合審査を申請したのは2015年3月ですが、2016年4月に設置許可、6月10日に工事計画認可、6月20日に運転延長認可と、他の原発の審査に比べて、異例の短期間で審査を終えています。審査会合も27回と川内、高浜(3、4号機)、伊方原発審査時の約半分です。しかも、先に申請し、終盤を迎えていた他原発の審査を止めての拙速審査です。規制委からの認可取得期限が2016年7月7日に設定されていたために、規制委が審査を早めて、この期限に間に合わせたのです。
  • 審査の手抜きも目立ちます。例えば、蒸気発生器の耐震性は美浜3号機の実証データで代用し、通常なら審査段階で行う耐震安全性の詳細評価を審査後で可とし、実証試験を使用前検査時に先延ばしにしました。

②関電は、「2030年に原子力発電の比率を20~22%としようとする安倍政権のエネルギー基本計画を実現するために原発を進める」としています。(チラシのQ1)

しかし、今、節電・省エネは世界の潮流です。再生可能エネルギーなど、様々な発電法がますます発展し、安価になっています。蓄電法も急ピッチで改良、開発されています。一方、福島原発事故を機に、過剰なエネルギーに依存する生き方を見直そうという流れも大きくなっています。今、原発に依存しようとすることこそ、時代に逆行しているのです。

◆なお、エネルギー基本計画では「脱炭素化」といいながら、CO2排出の多い石炭火力を26%(2030年)にしようとしています。この基本計画が環境に配慮したものでないことは明らかです。

③関電は、「安定的、低炭素の電気を造るためには、将来にわたって、安定供給性・経済性・環境性に優れた原発を一定程度活用することが必要」としています。(チラシのQ1)

しかし、原発はトラブル続きで、長期間かかる定期点検も必要です。何万年もの保管を要する使用済み核燃料や放射性廃棄物を生み出します。運転すれば、事故がなくても、トリチウムなどの放射性物質を環境に放出します。どの点からも、安定供給性・経済性・環境性に優れているとは言えません。

原発では、原子核に閉じ込められていたエネルギーを解放するのですから、地球を温暖化させます。海洋を温暖化させれば、溶解していたCO2 が大気中に放出され、さらに温暖化を加速します。温排水によっても、海の温度は上昇します。核燃料の製造過程でもCO2 が大気中に放出されます。

しかも、原発はなくても電力不足にならないことは、福島事故以降の経験から明らかなのです。

これらのことは、多くの人々が認めるところであり、そのため、脱原発・反原発は民意となり、原発を進める電力会社からの顧客離れが進んでいます。関電からは、すでに小口顧客の約2割が離れています。

④関電は、「関電の責任と判断において安全対策工事を進めている」と述べています。(チラシの前文とQ3)

しかし、前述のように、再稼働を進める全ての電力会社がトラブルを起こしています。これは、原発の点検・保守や安全維持の困難さを示唆し、配管の腐食や減肉、部品の摩耗などが進んでいることを示しています。また、傲慢で安全性を軽視することに慣れ切り、緊張感に欠けた電力会社が原発を運転する能力・資格を有していないことを実証しています。

④-1 関電は、「大型機器やポンプ、配管など取り換えられるものは積極的に取り替え、老朽原発の安全性を確保している」としています。(チラシのQ2)

しかし、取り替えられないもの(原子炉容器、原子炉格納容器、一次系の伝熱細管など)こそ、高放射線にさらされている部分で、最も老朽化が進んでいる部分です。これらの部分は、高放射線ですから、点検も困難です。

④-2 関電は、「老朽原発の交換が難しい部分について、特別点検を行い、規制委から運転延長の認を得たから、安全性は確保できている」としています。

しかし、先述のように、規制委のお墨付を得て再稼働した原発の多くが、再稼働の前後にトラブルを起こしています。電力会社が最も緊張するはずであり、世間も注目している原発再稼働時にトラブルが頻発している事実は、原発の細部にわたる点検は極めて困難であり、見落とし箇所が多数あり、規制委の認可が極めていい加減であることを実証しています。しかも、規制委の審査の多くは、電力会社の自己申告のデータに基づいて行われ、規制委自身が確認したものではありません。

一方、1昨年1月の高浜原発でのクレーン倒壊、度重なる関連会社のヘリコプターからの資材の落下のように、関電の事故・トラブルの原因は、通常では考えられないほどお粗末です。傲慢さに慣れ切った関電は、すでにトラブルを防止する体制を喪失しているとしか考えられません。

◆なお、関電は、老朽原発を今年9月から来年にかけて再稼働させようとしていましたが、2月4日、半年から9カ月遅れると発表しました。1昨年のクレーン倒壊事故などのトラブルによる工事の遅延のためとしています。高浜原発1号機では、去る3月6日にも火災を発生させています。まともに工事予定を立てることもできず、トラブル続きの関電が老朽原発を安全に運転できるとは考えられません。

④-3 関電は、安全対策工事として、「高浜1、2号機では。重大事故時に格納容器からの放射線量を低減するため、格納容器上部外側にドーム状の遮蔽を設置する工事を実施しています」としています。

しかし、福島原発事故では、原子炉建屋が破壊され、膨大な量の放射性物質が建屋外に放出されたのですから、この遮蔽が、重大事故の防止に役立つとは考えられません。(事故後作業の被曝低減には役立つかもしれませんが。)

◆なお、今までの40数年間もこのドーム状の遮蔽がないままだったことが問題です。隣にある1985年に運転を開始した3、4号機はこの遮蔽をつけているのですから、関電は、必要性を認識しながら少なくとも30年以上放置していたことになります。

④-4 関電は、安全対策工事として、「美浜3号機では、使用済み燃料を保管しているラックの耐震性向上のための工事を実施しています」としています。

しかし、使用済み燃料のラックを取り替えたところで、「むき出しの原子炉」ともいわれる使用済み燃料プールの危険性は若干軽減されるだけで、プール本体の倒壊など、重大事故の危険性があることには変わりはありません。

プールに使用済み核燃料を保管しないこと(原発を運転しないこと、使用済み燃料をつくらないこと)以外に、危険を避ける方法はありません。


◆電力会社や原発を推進する政府は、チェルノブイリ原発の事故の後にも「日本の原発は、厳重な安全管理をしているから、事故を起こすはずがない」という「安全神話」で人々を欺いていました。スリーマイル島、チェルノブイリ、福島の原発事故は、それぞれ事故原因や事故の経緯が異なります。原発事故の原因は多様で、福島の事故も、その原因が確定されているとは言えません。事故炉の内部が分かっていないのですから、確定しようがないのです。現在科学技術は、原発の事故原因の全てに対応できるほど進歩していないのです。次の原発重大事故は別の原因で起こる可能性が高く、事故が起これば、原発推進派は「想定外」であったと開き直るでしょう。

◆原発は、万が一にも重大事故を起こしてはならないのですから、人類の手に負えない原発は即時全廃しなければならないと考えます。

◆原発重大事故は、職場を奪い、農地を奪い、漁場を奪い、生活の基盤を奪い去ります。人の命と尊厳を蹂躙(じゅうりん)します。

若狭を第2の福島にしてはなりません!

「5.19老朽原発うごかすな!関電包囲全国集会」で、
関電と政府に若狭の原発全廃を決断させましょう!

【5月19日(日)13時より、「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」主催】


2019年3月発行
若狭の原発を考える会 連絡先;木原壯林(090-1965-7102)


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