◆原発の現状と将来に関わる公開質問状

【2018年7月18日,若狭の3町長に提出】

「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」は、
野瀬 豊 高浜町長、
中塚 寛 おおい町長、
山口 治太郎 美浜町長に、
原発の現在および将来に関する下記のような公開質問状を提出しました。回答期限は、8月15日です。回答が得られた場合、チラシにして配布します。原発についての原発立地自治体首長のお考えに注目しましょう。

原発の現状と将来に関わる公開質問状

質問者…原発うごかすな!実行委員会@関西・福井

◆質問者である「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」は、「オール福井反原発連絡会(原子力発電に反対する福井県民会議、 サヨナラ原発福井ネットワーク、 福井から原発を止める裁判の会、 原発住民運動福井・嶺南センター、 原発問題住民運動福井県連絡会で構成)」、「若狭の原発を考える会」、「ふるさと守る高浜・おおいの会」の呼びかけで、昨年8月に結成された「大飯原発うごかすな!実行委員会」を本年6月に改称して設立された団体です。

公開質問する理由

◆福島原発事故から 7年になりますが、この事故は、原発が重大事故を起こせば、人の命と尊厳を奪い、職場を奪い、農地を奪い、海を奪い、生活基盤を奪い去ることを、大きな犠牲の上に教えました。

◆一方、福島事故以降の経験によって、原発は無くても何の支障もないことが実証されました。そのため、脱原発、反原発は圧倒的な民意となっています。

◆私たちは、原発立地・若狭で、長期にわたって住民の方々から、原発に対するご意見をお聞きしてきましたが、若狭でも、「原発は不要」、「原発は不安」の声が大多数で、原発賛成の声はわずかでした。原発立地でも、表に出てはいないけれども、脱原発、反原発が民意なのです。

◆それでも、関西電力は高浜原発3、4号機、大飯原発3、4号機を再稼働させ、老朽でさらに危険な高浜原発1、2号機、美浜3号機まで再稼働させようとしています。

◆これらの原発については、次のような問題があることは、原発への賛否を問わず、多くの人々が認めるところです。

①原発の安全性について:

◆福島原発事故は、原発が重大事故を起こした時、被害は、広域かつ長期におよび、悲惨を極めることを教えています。したがって、原発は事故を起こしてはならないのです。

◆しかし、重大事故が起こることを想定して制定された「新規制基準」も、原子力規制委員長が再三にわたって指摘するように、安全を保証するものではありません。「新規制基準」は、福島原発事故の検証もほとんど進んでいない2013年7月に施行されたものです。(事故炉の内部は、今でも、ほとんど分からず、事故処理の方法も未定ですから、現在でも、事故原因や事故拡大の理由が解明されたとするにはほど遠い状況にあります。)したがって、「新規制基準」に適合とされたから原発は安全とする考え方は、無責任な原発推進の意見と言えます。

◆とくに、老朽原発が危険極まりないことは自明で、したがって、老朽原発の安全対策費は高騰し、老朽原発の廃炉が相次いでいます。老朽な高浜原発1、2号機、美浜3号機の再稼働は許されないことです。

②使用済み核燃料について:

◆使用済み核燃料プールは、原子炉本体・圧力容器に比べても格段に脆弱です。その使用済み核燃料プールについて、若狭の原発では、すでに70%以上が埋まっています。もう数年で満杯になります。今、大地震でプールが倒壊すれば、福島事故以上の大惨事になりかねません。使用済み核燃料プールは、一刻も早く空にしなければなりません。空になったプールに新しい使用済み燃料を入れるなどはもっての他です。とくに、使用済みMOX燃料の発熱量と放射線量は下がり難く、長期の水冷保管が必要です。MOX燃料プルサーマル炉は、使用済み燃料の保管の視点からも、危険極まりないのです。

◆一方、使用済み核燃料は、ある程度冷却されて、空冷保管が可能になったとしても、保管を引き受けるところはどこにもありません。現在の科学技術では再処理工場の安全運転は困難で、使用済み核燃料の処理法もなく、きわめて長期の保管が必要です。放射性物質の消滅など荒唐無稽の話です。

③重大事故時の避難について:

◆政府や自治体は、若狭の原発で重大事故が起これば、住民を避難させるとしていますが、重大事故では、原発立地自治体だけでなく、京都府、滋賀県などの広域が放射性物質で汚染される可能性もあり、そうなれば、数100万人以上の避難になり、避難は不可能です。

◆福島原発事故では事故炉から30~50 km の距離にある飯舘村も全村避難を強いられました。また、約 200 km 離れた東京や千葉にも高濃度の放射性物質が飛来しました。このことは、若狭の原発で重大事故が起こった場合、原発のある若狭だけでなく、約259万人が暮らす京都府や、約141万人が暮らす滋賀県の全域が永遠に住めない放射性物質汚染地域になりかねないことを示しています。京都市は、大飯原発や高浜原発からおおよそ30~75 km の距離にあり、京都府全域が100 km 以内にあります。琵琶湖が汚染されれば、関西 1,450 万人の飲料水がなくなります。

◆若狭で福島級の重大事故が起これば、若狭や京都北部の地形や交通事情からして、これらの地域からの避難は著しく困難です。さらに、京都や滋賀も避難地域に加われば、数百万人の避難となり不可能であることは明らかです。1昨年8月に行われた最大級といわれる避難訓練で、ちょっとした強風のために、ヘリコプターは飛ばせず、船すら出せなかったことも避難の困難さを裏付ける事実の一つです。

④脱原発に向かう世界の趨勢について:

◆今、世界は脱原発に向かっています。スイス・ドイツ・イタリア・リトアニア・ベトナム・台湾・韓国が脱原発の動きを加速しています。アメリカでさえ、経済的にも成り立たない原発を縮小しようとする動きが広がっています。

◆一方、国内でも、脱原発、反原発の圧倒的な民意に押されて、原発を動かそうとするとき、電力会社は多額の費用を要する安全対策を施さざるを得なくなり、安全対策費のかさむ老朽原発の廃炉を決意せざるを得なくなっています。昨年末からでも老朽大飯原発1、2号機、伊方原発2号機の廃炉が決定し、福島第二原発1~4号機の廃炉が表明されました。これで、福島事故時に54基あった原発の19基が廃炉になります。

◆さらに、国際的な安全対策費の高騰は、原発産業を成り立たなくさせています。破綻した東芝が米国での原発新設計画から撤退し、伊藤忠商事がトルコの原発建設計画から撤退すると報道されています。日立が政府と一体となって英国で進める原発建設計画にも暗雲が立ち込めています。

以上のように、原発は現在の科学技術で安全に運転できる装置ではなく、重大事故が起これば、原発立地の内外を問わず、大きな被害を受けかねません。したがって、原発に関して大きな発言力を有する原発立地自治体の姿勢は、立地自治体の住民だけでなく、広域(例えば、若狭の原発では関西一円)の住民の大きな関心事であり、生存権をも左右する問題です。そのために、私たちは、立地自治体の長である貴殿に、裏面の事項を公開で質問します。

質 問

原発は、①「近い将来なくなる、または、なくしたほうがよい」とお考えですか、あるいは、②「原発は存続する、または、存続させたい」とお考えですか。

①の場合、以下の質問【A】に、②の場合、質問【B】にご回答下さい。
ご回答は2018年8月15日までにお願いします。

【A】「原発はなくなる」あるいは「原発をなくしたほうがよい」とお考えの場合

【1】原発廃止は、いつごろになるとお考えですか。

【2】原発廃止に向けて町はどういう行動をされますか。県、国、関電にどういう働き掛けをされますか。

【3】廃炉前や廃炉中に生じた使用済み燃料、放射性廃棄物は、誰が、どこで、どう処理し、処分するのがよいとお考えですか。

【4】原発廃炉に向けて、町はどのような準備をされますか。

【5】原発をなくした後の町の発展のために、どんな政策を実現したいと考えていらっしゃいますか。産業(雇用)、福祉、教育、人口(過疎化対策)など、できるだけ具体的にお願いします。例えば、現在でも、「原発はない方がよいが、雇用不安から存続に賛成せざるを得ない」という住民の声があります。原発をなくした後の雇用を確保するために、お考えはありますか。

【6】原発後の町の建設に向けて、町は現在どのような準備をされていますか。今後どういう準備をされますか。

【7】現在、町の財政の多くの部分を原発交付金・補助金や原発関係税で賄われていますが、別の交付金や税金を獲得することは十分可能で、それによって、財政運営ができます。早急に、「原発マネー」からの撤退を決意するお考えはありませんか。(【B】【9】をご参照下さい。)

【B】 原発は存続する、または、存続させたい」とお考えの場合

【1】原発は、いつまで存続する、あるいは、存続させたいとお考えですか。

【2】運転開始後40年を超える原発について、20年の運転延長は妥当とお考えですか。あるいは運転延長は避けるべきだとお考えですか。その理由もお示し下さい。
(なお、原発の運転期間は、「40年原則」および例外規定により、最長でも60年と定められています。老朽原発がとくに危険であることは多くが指摘するところです。)

【3】60年の期限で現存の原発が廃炉になった後も原発を存続させることを望まれるなら、どのようにして存続させるのですか(老朽原発の運転延長あるいは原発新設やリプレース?)。
また、存続に向けて、町はどういう行動をされますか。県、国、関電にどういう働き掛けをされますか。
(なお、高浜原発1号機は2034年、2号機は2035年、3、4号機は2045年、大飯原発3号機は2051年、4号機は2053年、美浜原発3号機は2036年、敦賀原発2号機は2047年に運転開始後60年を迎えます。)

【4】原発重大事故時に、町は、町民およびさらに広域(例えば、関西一円)の周辺被害地域住民を安全に避難させ、その後の生活の安寧を保証できるとお考えですか。また、そうお考えのとき、根拠をお示しください。

(なお、福島原発事故では、事故炉から50 km 近くも離れた飯館村も全村避難になりました。このことは、原発重大事故時の避難区域は30 km 圏・UPZをはるかに超え、避難者も数100万人になる可能性があることを示しています。また、避難は、きわめて長期に及びかねないことは、事故から7年以上たった今でも、福島から避難された十数万人のうちの5万人以上が、故郷を奪われたままであることが教えています。)

【5】立地自治体として稼働に同意した原発が重大事故をおこしたとき、貴職および町は、被害を被る町民および周辺被害地域住民にどのように謝罪し、責任を取るお考えですか。

【6】原発を存続させれば、原発から発生する使用済み核燃料や放射性廃棄物は増え続けます。使用済み核燃料や放射性廃棄物の処理、保管について、町としてどのような対応をお考えですか。
(なお、使用済み燃料プールは、現在でも満杯に近く、廃棄物の保管場所も限られています。また、使用済み核燃料や廃棄物を引き受ける場所はありません。)

【7】原発を存続させれば、町はどう発展するとお考えですか。

【8】原発に頼らない社会の創造についてお尋ねします。
若狭には、原発以外にも資源、産業基盤は沢山あります。交通、情報、通信が発達した現在、若狭と関西などの都市圏との距離は縮まっています。都市生活に不安を持つ人(特に子育て世代の女性)は多数いて、Uターン、Iターン希望者も多いといわれています。
この人たちを受け入れることができれば、町は過疎化を避けて発展します。しかし、彼らが原発立地を選ぶとは考えられません。原発を止めて、Uターン、Iターンを促進するお考えはありませんか。

【9】現在、町の財政のかなりの部分を原発交付金・補助金や原発関係税で賄われていますが、別の交付金や税金を獲得することは十分可能で、それによって、財政運営ができます。早急に、「原発マネー」からの撤退を決意するお考えはありませんか。

(なお、原発立地は、原発にかかわる交付金や補助金があるから発展しているといわれます。しかし、原発導入前と近年の「製造品出荷額の伸び率」、「観光客の入込数の伸び率」の比は、原発のない福井県嶺北部が、原発のある嶺南部に比べて格段に高いことは明らかです。嶺北部は、原発以外の産業や観光の振興に努力しているのです。

また、福井県と人口数が類似している徳島県の財政を2010年度を例にして比較しますと、原発のある福井県の県税収入+国庫支出金+普通交付金の合計額は2856億円です。この中には「原発マネー」である電力会社からの法人県民税、法人事業税、核燃料税の合計118億円(県税収入)と国からの電源三法交付金69億円(国庫支出金)が含まれています。

一方、原発のない徳島県の県税収入+国庫支出金+普通交付金の合計額は2854億円で、福井県より2億円少ないに過ぎません。これは、徳島県は、「原発マネー」の代わりに、普通交付金を多く獲得しているためです。この事実は、原発の有無に関らず、地方自治体は、努力次第で、財政運営できることを示します。)

以上の質問へのご回答をお待ちしています。
回答期限;2018年8月15日

2018年7月18日

「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」担当・木原壯林(090-1965-7102)