◆政権の奴隷と化した名古屋高裁、最悪の不当判決

【2018年7月6日,京都キンカンで配付。】

司法の役割を自ら放棄し、
政権の奴隷と化した名古屋高裁
大飯原発3、4号機運転差止請求
控訴審で最悪の不当判決

◆関電大飯原発3、4号機運転差止め請求訴訟の控訴審で、名古屋高裁金沢支部は、7月4日、差止めを命じた2014年5月の1審・福井地裁判決を取り消す不当判決を行いました。福井地裁での1審(樋口英明裁判長)では、

①「人の生命と尊厳を守る人格権が全ての法分野で最高の価値を持ち、人格権が最優先されなければならない」とし、

②基準地震動について、「各地で想定を超える地震が到来しており、大飯の想定だけが信頼に値するとする根拠は見出せない」、「地震大国日本において、基準地震動を超える地震が来ないとするのは、根拠のない楽観的な見通し」とし、「自然の前における人間の能力の限界」にも言及しました。さらに、

③大飯原発の安全性について、「安全技術や設備は確たる根拠に基づかず、脆弱(ぜいじゃく)である」として、大飯原発3、4号機の運転を差止めていました。

控訴審判決で、内藤正之裁判長は、おどおどとした様子で、全く自信なさげに、しどろもどろに判決要旨を読み上げました。あたかも、国家権力、関電あるいは最高裁に後ろから拳銃や匕首(あいくち)を突きつけられて、脅迫されながら朗読しているようでした。朗読が始まった直後から、法廷内では、抗議の怒号が飛び交いましたが、裁判長はこれを制止するゆとりすら持たず、朗読が終わるや否や背後の扉から逃げ去りました。

◆以下に、「判決要旨」の全文と本チラシ作成者の【コメント】を示します。

判決要旨

1 原子力発電所の設備等について事故を起こす欠陥があり,周辺の環境に対して放射性物質の異常な放出を招く危険かあるのであれば,どの範囲の住民が運転の差止めを求め得るのかはともかく,人格権を侵害するとして,当該原子力発電所の運転差止めを請求することができる。その一方で,現在の我が国の法制度は,原子力基本法,原子炉等規制法などを通じて,原子力の研究,開発及び平和利用の推進を掲げ,原子力発電を一律に有害危険なものとして禁止することをせず,原子力発電所で重大な事故が生じた場合に放射性物質が異常に放出される危険などに適切に対処すへく管理・統制がされていれば,原子力発電を行うことを認めている。このような法制度を前提とする限り,原子力発電所の運転に伴う本質的・内在的な危険があるからといって,それ自体で人格権を侵害するということはできない。もっとも,この点は,法制度ないし政策の選択の閤題であり,福島原発事故の深刻な被害の現状等に照らし,我か国のとるべき道として原子力発電そのものを廃止,禁止することは大いに可能であろうが,その当否を巡る判断は,もはや司法の役割を超え,国民世論として幅広く譲論され,それを背景とした立法府や行政府による政治約な判断に委ねられるへき事柄である。

【コメント】
司法の義務を果たさず、憲法の下の三権分立を自ら否定しています。司法府は立法府や行政府の僕(しもべ)となる宣言をしたことなります。また、「本質的・内在的な危険があるからといって,それ自体で人格権を侵害するということは出来ない」という判断は、人の命と尊厳を経済的利益の犠牲にしても構わないとするものです。

2 原子力発電所における具体的危険性の有無を判断するに当たっては,その設備が,想定される自然災害等の事象に耐えられるだけの十分な機能を有し,かつ,重大な事故の発生を防ぐために必要な措置が講じられているか否か,すなわち,原子力発電所の有する危険性が社会通念上無視しうる程度にまで管理・統制されているか否かが検討されるべきである。そして,原子炉等規制法の下,高度の専門的知識と高い独立性を持った原子力規制委員会が,安全性に関する具体的審査基準を制定するとともに、設置又は変更の許可申請に係る原子力発電所の当該基準への適合性について,科学的,専門技術的知見から十分な審査を行うこととしているのであって,具体的審査基準に適合しているとの判断が原子力規制委員会によってされた場合は,当該審査に用いられた具体的審査基準に不合理な点があるか,あるいは具体的審査基準に適合するとした原子力規制委員会の判断に見過ごし難い過誤,欠落があるなど不合理な点があると認められるのでない限り,当該原子力発電所が有する危険性は社会通念上無視しうる程度にまで管理され,周辺住民等の人格権を侵害する具体的危険性はないものと評価できる。

【コメント】
原子力規制委員会が「新規制基準」に適合としたときには、原発の危険性は無視でき、人格権を侵害する危険性はないとしています。「新規制基準」が、福島原発事故から2年少ししか経たず、事故原因の究明も進んでいない(今でも解明には程遠い)2013年7月制定されたものであり、この「新規制基準」に適合とされて再稼動した原発の大半が再稼動時や再稼動直後にトラブルを起こしていること、「新規制基準」について前規制委員長までもが「この基準に適合としたからといって、安全を保証するものではない」と繰り返していることも無視しています。

3 本件発電所の安全性審査に用いられた新規制基準は,各分野の専門家が参加し,最新の科学的・専門技術的知見を反映して制定されたもので,所定の手続も適切に踏んでいるのであって,手続面でも実体面でも原子炉等規制法を始めとする関係法令に違反していると認めうる事情はなく,また,内容において不合理な点も認められない。

【コメント】
2に対するコメントで述べたとおり、「新規制基準」は、安全を保証するものではありません。この判決は、解明されていないことが山積する現在科学技術の水準を全く理解していない裁判官の人間としての思い上がりと傲慢さを表すものです。

4 本件発電所の基準地震動及び基準津波は,最新の科学的知見及び手法を踏まえて策定されたものであり,そこで用いられた各種パラメータは安全側に配慮して保守的に設定され,性質や程度に応じて不確かさが考慮されているほか,計算過程及び計算結果に不自然,不合理な点は見当たらず,年超過確率も極めて低い数値になっていることからすれば,これらが新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断に不合理な点があるとは認められない。

なお、基準地震動の策定に当たり,地震モーメントを求めるに際し用いられた入倉,三宅式について,地震動の事前予測に用いると地震モーメントが過小評価される旨の専門家の証言があるが,対象となる活断層の長さや幅を保守的に大きく見積もり,断屑面積を地表地震断層の長さそのものから求めた数値より大きく設定することなどによって過小評価を防ぐことが可能であると考えられ,本件においても対象となる活断層の断層面積は,詳細な調査を踏まえて保守的に大きく設定されているから,1審被告の策定した基準地震動が過小であるとはいえない。

【コメント】
地震の規模や時期の予知が困難であることは、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本大分大震災あるいは先日の大阪北部を震源とする大震災が全く予知されていなかったことからも明らかです。万が一にも重大事故を起こしてはならない原発は、地震大国、火山大国にあってはならないのです。

5 本件発電所の安全上重要な設備の耐震性,対津波安全性,、異常の発生・拡大防止対策及び重大事故等対策(火山灰対策を含む),テロリズム対策等は,最新の科学的知見及び手法を踏まえて講じられており,地震,津波を始めとした外部事象による共通要因故障のみならず,偶発的な設備の単一故障を仮定しても設備の安全性が確保されているほか,重大事故等対策の有効性も科学的手法によって検証されるなどしており,IAEAの国際基準等に反するともいえないのであって,これらが新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断に不合理な点は認められない。

【コメント】
最新の科学的知見によっても、原発重大事故を完全に防ぐことは不可能です。最新の科学的知見がそこまで進歩していないことは、地震や火山噴火の予知も出来ず、福島原発事故から7年経った今でも、事故を起こした原発の内部も分からず、汚染水の垂れ流しを防げず、使用済み核燃料を保管・処理する有効な方法もないことを考え合わせれば明らかです。さらに、原子力規制委員会のような限られた分野から集められた少人数の委員会での評価は、現在の科学的知見すら集積して行われたものとはいえません。この名古屋高裁の判断は、福島原発事故前に「日本の原発が事故を起こすはずがない」としていた「原子力ムラ」の体質を受け継ぐもので、福島原発事故の反省が全く見られないものです。

6 以上によれば.本件発電所の安全性審査に当たって用いられた新規制基準に違法や不合理の点はなく,本件発電所が新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断にも不合理な点は認められず.本件発電所の危険性は社会通念上無視しうる程度にまで管理・統制されているといえるから.本件発電所の運転差止めを求める1審原告らの請求は理由がない。

【コメント】
政府、関電の意を受けて「原発運転ありき」の裁判を行い、このような判決を下した裁判官は、原発で重大事故が起こったとき、万死に値する責任を取らなければなりません。また、自らの利害のために、三権分立の上に成り立つ民主主義を蹂躙し、司法府を立法府、行政府の奴隷にしようとする策略は許されるものではありません。


8.25高浜原発このまま廃炉!
関電包囲全国集会

日  時;8月25日(土)15:00から16:00
場  所;関西電力本店前(大阪市北区中之島)
(集会終了後うつぼ公園に移動して、同公園から御堂筋デモ)
主  催;原発うごかすな!実行委員会@関西・福井
呼びかけ
(1)オール福井反原発連絡会(原子力発電に反対する福井県民会議、サヨナラ原発福井ネットワーク、福井から原発を止める裁判の会、原発住民運動福井・嶺南センター、原発問題住民運動福井県連絡会で構成)
(2)若狭の原発を考える会
(3)ふるさと守る高浜・おおいの会
連 絡 先
宮下正一(原子力発電に反対する福井県民会議、0776-21-5321)
木原壯林(若狭の原発を考える会、090-1965-7102)


定期点検中の高浜原発4号機を
このまま廃炉にしよう!
電力消費地での「原発電気NO!」の声を
拡大しよう!
関電に原発を断念させよう!

◆原発は、事故の多さ、事故被害の深刻さ、使用済み燃料の保管や処理の困難さなど、あらゆる視点から、人類の手におえる装置ではありません。一方、福島事故以降の経験によって、原発はなくても何の支障もないことが実証されています。

◆それでも関電は、前原子力規制委員長までもが「安全を保証するものではない」と公言してはばからない“新規制基準”に適合とされたことを拠り所にして、昨年来、高浜原発3,4号機、大飯原発3,4号機を再稼働させたのみならず、40年越え老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機の再稼働も画策しています。関電の目先の利己的利益のために、人の命と尊厳をないがしろにしようとするものです。また、脱原発に向かう世界の潮流に逆らうものです。

◆若狭の原発が重大事故を起こせば、若狭のみならず、原発電気の消費地・関西も、高濃度の放射性物資で汚染されかねません。福島事故では、約50km離れた飯舘村も全村避難になり、約200km離れた関東にも高濃度の放射性物質が降下しました。高浜原発、大飯原発は、京都駅から60数km、大阪駅から80数kmの位置にあります。100km圏内には都府、滋賀県、福井県のほほ全域、大阪府、兵庫県の大部分、奈良県、岐阜県、三重県の一部が含まれます。避難対象になっても、避難は不可能です。琵琶湖の汚染は、1,450万人の飲用水を奪います。

◆そのような原発重大事故が起こっても、関電も政府も責任を取らない、取りようがないことは、福島原発事故が示すところです。

◆原発はなくても電気は足ります。不要な原発を動かして、事故の恐怖に怯える必要はないのです。節電に努め、「原発電気はNO!」の声を拡大し、原発を推進する関電を糾弾し、原発全廃を勝ち取りましょう。とくに、5月18日より定期点検中の高浜原発4号機はこのまま廃炉にしましょう。4号機は、プルサーマル炉で、ウラン原子炉に比べても、危険極まりなく、長期保管を要する使用済み核燃料を残します。

◆「8.25高浜原発このまま廃炉!関電包囲全国集会」と御堂筋デモへの大結集とご支援をお願いします。

原発うごかすな!実行委員会@関西・福井


2018年7月6日

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)