◆原発に関わる最近の出来事

【2018年10月9日,京都キンカンで配付。】

人類の手に負えない原発の即時全廃を!

「エネルギー基本計画(改定案)」公表

-脱原発の民意を蹂躙し、原発に固執する計画-

◆経済産業省は5月16日、総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会で、国のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の改定案をとりまとめました。パブコメを求めた後、今夏に閣議決定するといわれています。

◆この計画では、再生可能エネルギーを「主力電源化」する方針を新たに打ち出す一方で、原発については、「依存度は可能な限り低減していく」としつつも、「重要なベースロード電源」とする従来の方針(2015年7月に策定)を維持して、2030年度時点の発電電力量に占める原発の比率を20~22%とする目標は据え置きました。

◆この目標の達成のためには、30基以上の原発が必要となり、運転開始後40年を越える老朽原発の稼働も必要になります。しかし、全老朽原発の稼働を延長したとしても、これらの原発の多くが2050年までに60年越えで廃炉になるため、2050年に稼働中なのは20基に満たないことになります。したがって、中長期で一定の原発活用を見込むのであれば、新増設や建て替えは避けて通れないことになりますが、この基本計画では世論の批判を恐れて、その議論は避けています。

◆なお、今回の計画では、2015年12月に採択された地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」を踏まえ、2050年を見据えた長期のエネルギー戦略を新たに盛り込んでいます。再生エネルギーや原発、火力に加え、水素や蓄電池など次世代技術も含めた「あらゆる選択肢の可能性を追求する」と強調しましたが、将来の技術進歩やエネルギー情勢を正確に予測するのは困難として、電源構成の具体的な目標設定は見送っています

◆今回の改定案では、2030年度の発電電力の電源別構成比の目標を次のように定めています。
(比較のために、2015年度および震災前の2010年度の電源構成も併せて示します。)

  • 2030年度(計画)…… LNG27%、石炭26%、再生可能エネルギー22~24%、原子力20~22%、石油3%
  • 2015年度(現状)…… LNG40%、石炭32%、再生可能エネルギー15%、原子力1%、石油12%
  • 2010年度(震災前)… LNG29%、石炭26%、再生可能エネルギー10%、原子力25%、石油10%

問題なのは、「原発依存度は可能な限り低減する」としながら、「原発ゼロ」を目指さないことです。

◆福島原発事故は、多くの人の命を奪い、故郷を奪い、職場を奪い、農地を奪い、海を奪い去りました。事故から7年たった今でも、5万人以上が避難生活を強いられ、事故炉廃炉の見通しも立たず、汚染水が垂れ流され続けています。そのような中でも、政府は、避難された人々に、除染が進んだとするには程遠く、高放射線でインフラも整備されていない故郷への帰還を強要しています。

◆原発は、事故の多さ、事故被害の深刻さだけでなく、使用済み燃料の処理や保管の困難さなど、あらゆる視点から、人類の手に負える装置ではありません。一方、福島事故以降の経験によって、原発は無くても何の支障もないことが実証されました。したがって、原発を運転する必要性は全く見出せません。不要な原発を稼働させて、事故のリスクに怯える必要は全くないのです。そのため、最近のほとんどの世論調査でも、原発反対は賛成の2倍以上となっています。脱原発、反原発が多数の願いであり、民意であることを示しています。

原発は不要なのですから、「原発ゼロ」は可能で、当然のことです。
なぜ、危険極まりない原発とCO2排出量の多い石炭を「ベースロード電源」にするのでしょう?

◆それは、
①使用済み核燃料や事故による損失を度外視すれば、安上がりな原発電力、熱量当たりの単価が化石燃料の中で最も低い石炭での発電によって、電力会社や大企業を儲けさせるためであり、
②原発輸出によって、原発産業に暴利を与えるためであり、
③戦争になり、石油や天然ガスの輸入が途絶えたときの基盤電源を、国内で調達できる原発電力、石炭火力電力で確保するためであり、また、
④核兵器の原料プルトニウムを生産するためです。

◆すなわち、この「エネルギー基本計画」は「巨大資本に奉仕する国造り、戦争出来る国造り」のための計画です。

原発推進の策動を許してはなりません。

◆今回の「エネルギー基本計画」の改定案の公表に関して、原発を推進してきた自治体の首長らは不信感を述べ、原発の建て替えや新設を促すかのような発言をしています。民意を蹂躙する原発推進の策動は、断固として拒否しましょう。

◆高浜原発立地の高浜町の野瀬豊町長は5月31日の会見で「(原発を)やめるなら、やめるで、はっきりしてほしい」と国に注文し、エネルギー基本計画の改定案には原発の建て替えなどが盛り込まれず、中長期的な原子力政策を明らかにしない国に不信感を示しています。改定案では、2030年度の目標とする原発の電源構成を従来通り20~22%に据え置いていますが、目標達成に必要とされる新増設などを先送りしており、野瀬町長は原発を軸とした町内産業の将来を念頭に「(現状のままでは)出口戦略を考えざるを得ない」と指摘しています。

◆総合資源エネルギー調査会の委員でもある西川一誠福井県知事は、「原子力も再生エネルギーもはっきりしない。国民に分かりづらく、各エネルギーへの信頼が低下しかねない」として16日の会議で計画案を批判しています。

◆上関原発(山口県上関町)建設計画への影響について、上関町内の推進派団体でつくる「上関町まちづくり連絡協議会」の古泉直紀事務局長は、改定案が原発の新増設に踏み込まなかったことに関して、「原子力の電源構成を維持していくならば、いずれ新増設が議論されていくのではないか」と分析し、「町は高齢化による人口減少で厳しい。原発建設は一つの選択肢だ」と語りました。一方、予定地対岸の祝島の「上関原発を建てさせない島民の会」の清水敏保代表は「(新増設の不明記は)予想通り。反対派、推進派とも原発は見通しが立たないということで一緒に町づくりに取り組んでいくところだ。計画が白紙撤回されるまで反対を訴える」と強調しています。なお、予定地の公有水面埋め立て免許は来年7月に期限を迎えます。基本計画が原案通りに閣議決定されれば、県は、原発の新増設についての国の方針が不透明なまま、免許延長の可否を判断することになりかねません。村岡嗣政山口県知事は、免許の延長については「中国電力の申請を踏まえて対処する」と述べるにとどめ、基本計画が許可に影響するかどうかについては明言を避けました。

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政府が旗を振るも、
原発輸出計画からの撤退相次ぐ

トルコの原発新設計画から伊藤忠は離脱、三菱重工業は参画も実現は疑問

◆三菱重工、伊藤忠などと日本政府が、トルコ北部の黒海沿岸シノップで、2023年稼働を目指して進めていた原発4基の建設計画から伊藤忠が離脱することが、4月23日、明らかになりました。計画当初(2013年)4基で2.1兆円程度とされていた総事業費が、三菱重工が主体となって行った調査で、2倍以上に膨らむことが判明したためです。政府は、事業費の増加を受けて、トルコ政府に資金面での負担を求めていますが、交渉は平行線をたどっています。伊藤忠が離脱すれば、事業費を負担する企業が減り、事業の実現性はさらに厳しくなります。

東芝、米原発新設から撤退

◆東芝は5月31日、米テキサス州での原発新設計画の取り止めを発表しました。子会社であったウエスチングハウスが昨年3月に経営破綻したのを機に、海外での原発新設から撤退する方針に転じていました。東芝本社は、2009年にテキサス州で原発2基を受注していましたが、電力価格の下落や、福島原発事故後の安全基準の強化に伴う建設費の高騰で採算が取れなくなって撤退を余儀なくされたのです(投じた862憶円は損失として計上済み)。

◆東芝は、英国でも、子会社が原発3基の新設計画を進めていましたが、これも撤退に向け、すでに損失450億円を計上しています。子会社は、韓国電力公社に売却するといわれています。東芝は、今後、新設に比べてリスクの少ない、部品の輸出(ウクライナなどへ)に力を入れるといわれています。

日立製作所が英国で進める原発建設計画にも暗雲

◆日立は、英西部のアングルシー島に、2020年半ばの運転を目指して、原発2基を建設する計画を進めています。しかし、安全基準が厳しくなったことで、当初、1.5兆~2兆円とされていた総事業費は、3兆円程度に高騰しています。目算の狂った日立は、公的支援がなければ事業の継続は困難と判断して、5月3日、中西宏明会長(経団連会長)がメイ首相に、撤退もちらつかせながら直談判して、総額3兆円の中の2兆円を英政府と英金融機関から直接融資する案を引き出しています。残りの1兆円分は、日立、日本の政府系金融機関と電力会社、英政府と現地企業がそれぞれ3000憶円を出資する形で賄う計画ですが、工事遅延などで、巨額損失が発生すれば、深刻な影響が出かねないだけに、思惑通りに日本企業が参画するかどうかは見通せません。

◆また、英議会には過度な支援への反対意見も根強く、一度事故が起これば住民の多くが島に取り残され、美しい自然も失いかねないアングルシー島住民や英消費者の大きな反発もあります。(なお、アングルシー島住民は、5月下旬に福島県を視察し、事故も収束していないのに原発を輸出しようとする日本の姿勢を強く批判しています。)

◆さらに、日英両政府が、原発の新設に絡む債務を保証するために、税金が使われる可能性があることへの両国民の反発もあります。したがって、安倍首相と親しい中西会長を擁する日立は、英原発事業を成長戦略の柱であるインフラ輸出の目玉に据えたい安倍政権の強い期待を感じながらも、慎重な最終判断をせざるを得なくなっています。

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フランスが高速炉計画の縮小を検討

◆日本がフランスとの共同研究を進める高速炉実証炉*「ASTRID(アストリッド)」(2023年に着工し、2030年代の運転開始を目論む)について、フランス政府が、計画の縮小を検討していることを日本側に伝えました(5月31日報道)。開発費の高騰が理由で、出力規模を当初予定の60万キロワットから10万~20万キロワットに縮小する案を検討しています。

◆高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の廃炉を決めた日本は、アストリッド計画を当面の高速炉開発の柱にしたい考えでしたが、計画が縮小されれば、日本の高速炉開発計画も、抜本的見直しを迫られることになります。出力規模を大幅に縮小すれば、将来の商用化に必要な実証データが得られなくなる可能性もあります。
(*「実証炉」は「原型炉」より一つ進んだ原子炉で、実用化(商業炉)の一歩手前と位置付けられているもの。)

◆なお、以下は、日本政府が高速炉に固執する理由です。

①原発で出た使用済み燃料全量を再処理して、取り出したプルトニウムでMOX 燃料を再利用する核燃料サイクルを維持するためです。MOXを燃料とする「高速炉」は核燃料サイクル実現の要なのです。(しかし、液体ナトリウムを使う高速炉は技術的に不可能に近く、再処理工場運転も困難を極めることは、すでに実証されています。)

②制御しやすい原爆を作るためには、質量数239のプルトニウムの純度が高いプルトニウムが必要ですが、普通の原発(熱中性子炉)では高純度プルトニウムを得られず、高速炉が必要になります。すなわち、高性能原爆を得るために高速炉が必要なのです

稼働わずか250日の「もんじゅ」に
経費1兆1313億円

◆会計検査院は、5月11日、廃炉が決定している「もんじゅ」に関する検査結果を公表しました。概略は次のようなものですが、現代科学・技術では手に負えず、原発の中でも最も危険な高速増殖炉を、多くの反対意見を踏みにじって運転した政府や科学者(原子力ムラ)の責任については言及していません。

①「保守管理の不備が廃炉につながった」と総括。
②約半世紀にわたり、研究開発に少なくとも1兆1313憶円を投入。
③稼働日数は250日。研究の達成度は16%。
④廃炉費用は国が試算した3750億円を超える可能性。

安倍政権は、それでも高速炉開発を継続しようとしています。「もんじゅ」廃炉で手綱をゆるめることなく、「核燃料サイクル」からの完全撤退を求めましょう!

[注]以前、2011年にも会計検査院はもんじゅにメスを入れていますが、そのときはもんじゅ関連施設として「RETF(リサイクル機器試験施設)」の費用835億円をれて計算していました。今回、なぜかこの費用が入っていません。また、固定資産税は96年度~98年度のものは含まれていません。96年度は70億円を敦賀市が課税したと報道されています。3年分で200億円近くになるとみられています。そうすると、実態は1兆2300億円を超えるものとみられます。

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7原発12基中央制御室ダクト腐食、穴も

◆原子力規制委員会は、島根原発2号機の中央制御室ダクトに腐食による穴(最大で横約100 cm、縦約30 cm)が複数見つかった(2016年12月)ことを受けて行った全国の原発の空調排気系ダクトに関する調査結果を発表しました(5月23日)。ダクトに穴が開いていると、原発事故時に放射性物質が中央制御室に流入し、運転員が被曝する可能性があります。ダクトは鉄や亜鉛メッキ鋼でできています。腐食の原因は、結露、雨水の侵入、塩分の付着です。

◆腐食や穴が確認された原発は、女川原発3号機、東海第2原発、福島第1原発6号機、柏崎刈羽原発3、4、5、7号機、浜岡原発3~5号機、志賀原発1号機、島根原発1号機です。柏崎刈羽原発3号機の穴は横約5 cm、縦約13 cmで、3、7号機では穴や亀裂が計9ヵ所みつかっています。

このように多数の腐食や穴が一挙に見つかった事実は、原発施設の老朽化が深刻であり、原発稼働にお墨付きを与える規制委の調査・検査が、これまで、極めていい加減であったことを物語っています。

新設島根原発3号機の稼働を許すな!

◆日本で唯一の都道府県庁所在地に立地する原発。1号機は2015年に廃炉が決定したものの、建設中の3号機(沸騰水型:福島事故以前に建屋、設備はほぼ完成)の稼働審査が原子力規制委員会に申請されようとしています。この原発が稼働すれば、原発新増設に道を開くことになります。

原発が新増設されなければ、最悪でも、2049年には原発ゼロになります。原発新増設を許してはなりません!

高浜原発4号機の再々稼働を許すな!

◆高浜原発4号機は5月18日、3号機は8月3日に定期検査に入り、4号機については8月下旬から9月初旬に再稼働されようとしています。定期点検入りの高浜原発をそのまま廃炉に追い込みましょう!

老朽高浜原発1,2号機、美浜原発3号機を廃炉に!

◆40年を超えた標記原発が危険極まりないことは、言を待ちません。老朽原発の安全対策費は高騰を続けていますから、廃炉実現の可能性は大です。廃炉実現のために、断固とした大衆運動や裁判闘争を高揚させましょう!

新潟県知事選挙、池田候補に勝利を!

◆6月10日投開票の新潟県知事選挙が戦われています。人類の手に負えない原発の再稼働を許さず、嘘と欺瞞の上に大企業のみに奉仕し、戦争できる国づくりを進める安倍政権を打倒するために、池田千賀子候補を勝利させなければなりません。全国から熱いエールを送りましょう!

2018年6月8日

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)