◆伊方2号機も廃炉決定、運動と裁判の成果

【2018年10月9日,京都キンカンで配付。】

大飯原発1、2号機に続いて、伊方2号機も廃炉決定

脱原発・反原発運動、裁判闘争の成果

◆四国電力(四電)は27日、老朽伊方原発2号機[出力57万kW:1982年3月営業運転開始(36年越え)]の廃炉を決めました。36年越えで設計基準が古い2号機を、2011年3月の東日本大震災後にできた新規制基準の下で再稼働させるには、タービン建屋の耐震補強、非常用海水取水設備の造り替えなどの大規模工事が必要で、これらの工事に「3号機の場合の1900億円に近い負担が想定された」(四電佐伯社長談)ためです。また、老朽原発である2号機を運転したとしても、稼働できるのはたかだか20年で、採算が合わないと判断したためです。なお、伊方原発1号機(出力57万kW:1973年6月営業運転開始)は、2016年5月10日に廃炉か決定されています。

◆四電は、かつて、伊方に原発3基を持ち、この3基で域内電力の4割をまかなっていましたが、2号機の廃炉で、3号機[出力89万kW:1994年12月営業運転開始(23年越え):MOX燃料]1基を残すのみとなりました。その3号機も、昨年12月の広島高裁仮処分決定で運転差し止め中です。この仮処分決定では、阿蘇山の巨大噴火による被災の恐れを指摘し、伊方は原発立地に適さないとしました。四電は、異議を申し立てていますが、この他にも、運転差し止めや損害賠償を求める裁判は、松山、大分、高松などでも起こされています。四電にとって、「司法リスク」が続いています。

◆伊方原発は、中央構造線断層帯上にあり、地震による重大事故の可能性もあります。重大事故が起これば、閉鎖水域である瀬戸内海全域が汚染されます。伊方原発3号機も、廃炉に追い込みましょう。地震大国、火山大国に原発があってはならないのです。

◆今回の伊方2号機の廃炉で、福島の事故以降に廃炉が決まった原発は、福島第一以外では、以下のように商用原発9基と「もんじゅ」になりました。

  • 美浜原発1号機(出力34万kW:2015年4月27日廃炉決定:廃止までの運転年数44年)、2号機(出力50万kW:2015年4月27日廃止決定:廃止までの運転年数42年)
  • 敦賀原発1号機(出力36万kW:2015年4月27日廃炉決定:廃止までの運転年数45年)
  • 玄海原発1号機(出力56万kW:2015年4月27日廃炉決定:廃止までの運転年数39年)
  • 島根原発1号機(出力46万kW:2015年4月30日廃炉決定:廃止までの運転年数41年)
  • 伊方原発1号機(出力57万kW:2016年5月10日廃炉決定:廃止までの運転年数38年)、2号機(出力57万kW:2018年3月27日廃炉決定:廃止までの運転年数36年)
  • 大飯原発1号機(出力118万kW:2017年12月22日廃炉決定:廃止までの運転年数38年)、大飯原発2号機(出力118万kW:2017年12月22日廃炉決定:廃止までの運転年数38年)
  • もんじゅ(出力28万kW:2016年12月21日廃炉決定:廃止までの運転年数25年)

◆廃炉が決定された商用原発9基のうちの7基は出力が比較的小さい老朽原発ですが、稼働して40年近くになっった昨年暮れに廃炉となった大飯原発1、2号機は、大きな出力を持ちます(両機とも出力は117.5万キロワット)。大飯原発1、2号機の廃炉について、関電は「これから2千億円を超えるとも言われる安全対策費を投じても、採算が取れない恐れが出ているため」と発表しています。このことは、大型原発でさえ、安全対策費を考えれば、経済的に成り立たないことを示しています。(使用済み核燃料や放射性廃棄物の処理・処分費を含めれば、原発には、無限大ともいえる経費が掛かることは自明です。)

◆福島原発事故は、原発が重大事故を起こせば、人の生命と尊厳を奪い、職場を奪い、農地を奪い、漁場を奪い去ることを教え、福島原発事故以降の経験は、原発はなくても電気は足り、何の支障もないことを実証しました。また、、私たちは工夫すれば、節電も容易であることを体験しました。省エネルギー機器、原発以外の発電法や蓄電法の研究も進んでいます。そのため、脱原発、反原発が民意となり、この民のゆえに、電力会社は、膨大な経費を要する安全対策を施さなければ、原発再稼働の認可を得ることができなくなりました。一方、電力自由化の流れの中で、原発電力に頼らない新電力への移行が進み、原発推進の電力会社の経営は危機へと追い込まれています。原発は、経済的にも破綻しているのです。

そのような視点に立つとき、近年の原発廃炉の決定は、福島原発事故の大惨事の尊い犠牲を踏まえて形成された脱原発、反原発の圧倒的民意を反映したものであり、粘り強い脱原発、反原発運動と裁判闘争の成果であるともいえます。また、脱原発、反原発の運動や裁判は、原発重大事故を防いでいると考えることもできます。

老朽原発高浜1、2号機、美浜3号機の廃炉も勝ち取ろう!

◆上記のように、老朽原発の廃炉決定が相次ぐ一方で、原子力規制委員会(規制委)は、高浜原発1号機(出力83万kW:1974年11月運転開始:現在43年越え)、2号機(出力83万kW:1975年11月運転開始:現在42年越え)について2016年6月20日に、美浜原発3号機(出力83万kW:1976年3月運転開始:現在42年越え)について2016年10月5日に、新規制基準を満たしているとする「審査書」を正式決定しました。これらの原発は、運転開始から40年以上経過し、世界的に見ても老朽な原発ですが、その運転延長を認めたのです。これらの原発が、すでに廃炉決定された原発より安全であるとする根拠はありません。規制委や関電は、彼らの都合だけで、福島原発事故後に導入された運転期間を原則40年に制限する制度・「40年原則」を骨抜きにしようとしているのです。許されるものではありません。伊方原発2号機に引き続いて、老朽高浜原発1、2号機、美浜3号機を廃炉に追い込みましょう!

新規制基準はデタラメで、規制委の審査は無責任で、科学とは縁遠い

◆高浜原発1,2号機運転延長認可の発表にあたって、当時の規制委員長・田中俊一氏は、「あくまで科学的に安全上問題ないかを判断するのが我々の使命だ」と述べています。

しかし、科学とは、実際に起こった事実を冷静に受け入れ、丁寧に調査し、検証・考察して、その上に多くの議論を重ねて、結論を導くものです。規制委の審査は、この過程を無視しており、科学とは縁遠いものです。

◆実際に起こった最も重大な事実は福島原発事故です。福島事故に関して、事故炉内部の詳細は今でも分からず、事故の原因究明が終わったとするには程遠い状態にあります。「科学」を標榜するのなら、福島事故の原因を徹底的に解明して、その結果を参照して、原発の安全性を議論・考察するのが当然です。大津地裁での運転差止め仮処分決定でもそのことを指摘していますが、規制委はこの指摘を無視しています。

◆しかも、規制委の老朽原発再稼働適合審査では、下記の審査結果(骨子)からも明らかなように、ケーブル、コンクリート、目視可能な鉄筋など、簡単に点検や補修できる箇所については審査しても、点検が困難な冷却細管、点検・交換が不可能な圧力容器については、十分審査しているとは言えません。このように、調査や改修の困難な部分については手抜きする審査は、「科学的」に安全を保証するためのものではありません。

◆なお、科学の基本は実証ですが、規制委による検証のほとんどは、実験結果ではなく、コンピュータによる机上模擬計算(シミュレーション)の結果に立脚しています。しかし、コンピュータシミュレーションの結果は、計算概念(プログラム)と入力データに大きく依存しますので、計算概念が完全でなく、入力データが不適当であれば、大きな意味を持ちません。原発事故の推移をコンピュータシミュレーションできるほど現代科学は完璧ではありません。


規制委発表の高浜原発1,2号機審査結果(骨子)

  1. 工事計画の確定を確認。
  2. 特別点検は運用ガイドに基づき実施。欠陥は見つからず。
  3. ケーブルの絶縁低下まで運転後60年未満のものもあるが、低下前の取換え方針を策定済み。
  4. 熱によるコンクリートの強度低下は制限値を超えない。
  5. 目視確認で鉄骨に腐食は確認されず。
  6. 耐震安全性は延長期間において審査基準の要求に適合。
  7. 津波による影響が有意な機器構造物は抽出されず。
  8. 1、2号機の運転延長を許可する。

老朽高浜原発1,2号機、美浜原発3号機の再稼働審査は、さらに無責任

老朽原発再稼働審査の杜撰(ずさん)さを、高浜1、2号機審査を例に紹介します。

  • 関電は、高浜1、2号機の新規制基準への適合審査を申請したのは2015年3月ですが、2016年4月に設置許可、6月10日に工事計画認可、6月20日に運転延長認可と、他の原発の審査に比べて、異例の短期間で審査を終えています。審査会合も27回と川内、高浜(3、4号機)、伊方原発審査時の約半分です。しかも、先に申請し、終盤を迎えていた他原発の審査を止めての拙速審査です。規制委からの認可取得期限が2016年7月7日に設定されていたために、規制委が審査を早めて、この期限に間に合わせたのです。規制委には、特に慎重であるべき老朽原発審査に対する誠意は感じられません。
  • 審査の手抜きも目立ちます。例えば、蒸気発生器の耐震性は美浜3号機の実証データで代用し、通常なら審査段階で行う耐震安全性の詳細評価を審査後で可とし、実証試験を使用前検査時に先延ばしにしました。さらに、20年延長評価は初めてにも拘らず、パブリックコメントなど、広く意見を求めることもしていません。

◆なお、再稼働審査にあたった田中規制委員長は、「お金さえかければ、技術的な点は克服できる」と述べています。未解明の課題が山積する現代科学技術の水準を理解できず、人間としての謙虚さに欠けた、思い上がった発言です。このような「原子力ムラ」体質が、福島事故を招いたことへの反省は全く感じられません。

原発重大事故は明日にも起きかねません
原発全廃運動の大きなうねりを!

◆老朽原発の再稼働や原発新設を阻止すれば、最悪でも、国内の原発は2030年に13機に、2046年にはゼロになります。原発のない社会を実現できます。とくに、事故の確率が高い老朽原発の廃炉は急務です。

◆しかし、原発事故は明日にも起こりかねません。2046年まで待ってはいられません。また、老朽でない原発も安全ではありません。一日も早く原発を全廃し、事故の不安のない希望溢れる町づくりを考えましょう!

◆地震や火山噴火のような自然災害を止めることはできませんが、原発事故は止められます。原発は人が動かしているのですから、人が原発全廃を決意すれば良いのです。事故が起こる前に、原発を全廃しましょう!


「大飯原発うごかすな!」
4月22日(日)、関電包囲全国集会と御堂筋デモに大結集を!


4.22関電包囲全国集会と御堂筋デモ

主  催:大飯原発うごかすな!実行委員会
呼びかけ
(1)オール福井反原発連絡会(原子力発電に反対する福井県民会議、サヨナラ原発福井ネットワーク、福井から原発を止める裁判の会、原発住民運動福井・嶺南センター、原発問題住民運動福井県連絡会)、
(2)ふるさとを守る高浜・おおいの会
(3)若狭の原発を考える会


関電は、大飯原発3号機を3月14日に再稼働させ、
5月中旬には、4号機を再稼働させようとしています。
断固抗議、阻止する行動にたちましょう!

お問い合わせは右記まで;090-1965-7102(木原)、090-2741-7128(宮下)
ご参加、ご支援、カンパをお願いします。


カンパ郵便振込先;

  • 加入者名:若狭の原発を考える会
  • 口座記号と番号:00930‐9‐313644
  • お振込みにあたっては、通信欄に「大飯原発うごかすな!実行委員会へのカンパ」とお書きく
    ださい。

2018年3月30日

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)