◆原発は自然を尊ぶ精神からも許されない存在

原告の宮城泰年氏が意見陳述
大飯原発差止訴訟第2回口頭弁論

橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)

救援新聞 京都版No.1197 2013年12月15日[451 KB](PDFファイル 450KB)
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京都などの住民 1107 人が関電大飯原発の運転差し止めと損害賠償を求めて関電や国を相手に起こした訴訟の第2回口頭弁論が、12 月3日午後京都地方裁判所(第6民事部合議係大島眞一裁判長)101 号法廷(大法廷)で開かれました。

原告席も傍聴席も満席(総勢 130 人余り)となり、熱気のこもる法廷では、最初に原告の聖護院門跡・宮城泰年門主が意見陳述をしました。宮城氏は、「大飯原発運転を差し止めることは、地球とそこに生きる私たち人間を含めすべての生物の安全を守ることです」と述べ、宗教者として原子力と共存することはできないこと、とりわけ日本には自然への崇拝、山岳信仰があり、本山修験宗の総本山として、山岳自然を修行道場としてきたこと、そこは多様な生物の共生と命の循環によってみんなが生きているからこそ尊い世界であり、ここに大飯原発3号機を 24 時間フル稼働させると1日で広島型原爆3発分の死の灰がつくられる、この処置のしようのないものを地中に埋めても地殻変動で出てこないとは考えられない、こんなどうしようもないものを生みだす原子力発電所の稼働は絶対認められない、と訴えました。 

つづいて、弁護団(原告代理人)の森田基彦弁護士が第一準備書面の骨子を陳述。森田弁護士は、まず、福島第一原発の事故が、日本の地震と津波に耐えうる強度になかったことと、原子力安全対策が重大な欠陥をもっていたことを明らかにした、と指摘し、準備書面でこの安全対策の遅れと国際水準の対策すらとらずに大飯原発を再稼働させようとしていることについて述べていると説明。その上で、安全確保の「深層防護」(安全な設計、事故拡大の防止、放射能放出防止などいくつもの層にわたって防護対策をとる規準)の考え方で対応してきたが、チェルノブイリ事故で国際原子力機関(IAEA)がこれらの4層を5層に変更、大規模な放射性物質が放出した場合、屋内退避、避難などの緊急防護措置を整備すること、さらにアメリカでは6層(立地)も加えたことを明らかにし、福島第一原発では「放射性物質の異常な放出防止のための格納容器や緊急炉心冷却装置を備えるところまでしか規制の対象としてこなかった」と、「安全神話」にとらわれた規制の甘さを指摘しました。過酷事故対策が必要であったにもかかわらず、これを怠ってきた。が、大飯原発はこれらの対策が整っていないうちに再稼働しようとしている。として、原子力保安院長深野弘行氏に対する参考人質疑のDVDを上映。基準を示さない深野氏に苦笑がもれました。

つづいて立った谷文彰弁護士は、原告第2準備書面の骨子をパワーポイントの図表などを使って陳述しました。世界地図に地震の発生する頻度を示して「日本は世界の地震の 10~20 パーセントが発生する。それにもかかわらず、逆に世界の原子力発電所の 11 パーセントが集中している。近畿地方でも過去 1400 年間でマグニチュード7以上の地震が 21 回、66.47 年に1回の割合で起こっている」と若狭
湾周辺の断層を示し、大飯原発の立地の危険性を解説。関西電力の想定は甘く、地震が発生すれば極めて深刻な被害が発生する。ここでの原発の設置・稼働は許されず、運転は差し止められなければならない、と述べました。

傍聴券の抽選からはずれた人には京都弁護士会館で模擬法廷を設定し、同時進行で 101 号法廷の様子を再現しました。60 人がこれを傍聴、原告代理人弁護士の準備書面の骨子陳述などに耳を傾けました。

 次回、第3回口頭弁論は、2月 19 日(水)午後2時から、
 同じ 101 号法廷で。

「いのちを守ろう」と裁判所周辺デモ

口頭弁論開始前の午前、弁護団、原告団など総勢 70 人は京都弁護士会前に集合 。 横断幕やのぼり を掲げ、 裁判所の周囲をデモ行進しました。楽器も鳴 らして、「いのちを守ろう」「琵琶湖を守ろう」「子どもを守ろう」などと声をそろえて市民や裁判所職員にアピールしました。

856 人が第2次提訴

またこの日は、856 人の原告が同じ関電、国を相手に第二次提訴をしました。これで、大飯原発差止訴訟の原告団は総計 1963 人の大原告団になりました。

裁判後、弁護士会館で開催された報告集会では、裁判内容の解説とともに、福島の避難者が起こした訴訟の仲間とも助け合って裁判を進めることや、今後の運動として他の原発訴訟の原告団との交流も計画していく方針も示されました。