◆大飯原発運転差止訴訟について

富田道男
 (大飯原発差止訴訟 京都脱原発訴訟原告団 世話人)
 (日本科学者会議 京都支部 幹事)

日本科学者会議京都支部ニュース 2013年12月号

Ⅰ.第一次訴訟の第2回口頭弁論

標記口頭弁論は,さる 12 月 3 日(火)午後2時より京都地方裁判所で行われた.今回も第1回の時と同様に,原告側からのみの陳述が3人により行われたが,訴状に対する答弁書をすでに出している被告側は,いまのところそれ以上のことを述べる必要がないのであろうか?原告初体験の私には少し解かり難い進行との印象が残った.

最初に原告の宮城泰念(聖護院門跡門主)さんが意見陳述を行った.草木国土悉皆成仏の心で山岳自然を修行道場とする修験者の一人として,大飯原発が作り出す「死の灰」を地層処理と称して地下深くに埋めるという自然破壊は許しがたいこと,また深く埋めたから安心・安全というのは,「今さえよければ良い」いう草木国土悉皆成仏の心を踏みにじるもので許しがたいと訴えられた.それゆえ処理のしようのない「死の灰」を作り出す原子力発電所の稼働は絶対に認められないと結ばれた.

二番目の意見陳述は,弁護団から森田基彦さんが第一準備書面(これは“訴状の内容を具体的に実証する弁論のために準備した書面”と言う意味だそうである)に基づく弁論を行った.福島第一原発事故が明らかにした「安全神話」の虚構と日本の原子力安全対策の重大な欠陥の指摘の後,事故後にIAEAが行った「深層防護の改定」基準に大飯発電所(大飯原発の正式名称だそうです)の安全対策が不適合であることを示した.そのおり廷内のモニターに映し出された第9回国会事故調査委員会における参考人質疑の様子は,衝撃的なものであった (*) .参考人として出席した当時の原子力安全・保安院長の深野弘行氏は,なんと「世界の基準とはどういうものか」という質問に対してしどろもどろで答えられなかったのである.穿った見方をすれば,知っていたとしても院長の立場では答えられなかった,答えれば日本の安全対策が世界の基準を満たしていないことを認めることになるからであろうか.

三番目に同じく弁護団から谷  文彰さんが原告第二準備書面を基に,大飯原発における地震・津波の危険性について陳述した.世界の地震の 10~20%が発生している日本に世界の原発の 11%が集中している異常なこと,近畿地方でも大地震が過去にあり,若狭湾には多くの断層・活断層があり,今後も大地震が発生する可能性があることから,大飯発電所の運転は差し止められなければならないと主張した.また,津波についても,天正大地震による大津波の記録として,標高 100 メートルにある若狭の関峠の地蔵尊には「これより下に住んではいけない」旨が記されていること,従って津波が高くなる可能性をもつ半島先端部に位置する大飯発電所の対津波対策は不十分であり,運転は差し止めなければならないと主張した.

第3回口頭弁論は,2014 年 2 月 19 日(水)午後2時より.
(*)ビデオはUstream「国会事故調 第9回委員会 2012/04/18」で見ることができます.
是非ご覧ください.

Ⅱ.第二次訴訟の提訴

支部ニュース9月号と 10 月号に第二次訴訟の原告参加の呼び掛け文を掲載して頂きましたが,12 月7 日(土)に開かれた原告団世話人会での報告によると,11 月末に目標の 800 名を超え,12 月 3 日(火)に原告 856 名の訴状が京都地方裁判所に提出されました.これで京都の大飯原発差止訴訟の原告は,一次の 1107 名と合わせて,24 都道府県から合計 1963 名となりました.8次まで募集した九州電力玄海原発差止訴訟(佐賀地裁)の 7137 名と川内原発差止訴訟(鹿児島地裁)に次いで,京都は第三位の原告数となりました.世話人会では,第三次の原告募集活動を進めることが検討されています.

Ⅲ.その他

福島から京都に避難している 33 世帯 91 人の方が,去る 9 月 17 日,国と東京電力に対して損害賠償を求める訴訟を京都地法裁判所に提訴しました.この原告団を支援する「原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会」が結成され,入会の呼びかけが行われています.年会費一口 1000 円で「複数口の会員歓迎」とあります.心ある方がたの入会を訴えます.入会の手続きは,ブログ原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会を参照してください.