◆重大事故の不安のない社会を!

【2017年5月19日,京都キンカンで配布。高浜原発4号機再稼動前に若狭でのアメーバデモでも配布】

現在科学技術で原発の安全確保、
使用済み燃料の処理は不可能です。
原発は、経済的にも成り立たない装置です。

福島原発事故以降の経験は、原発はなくても
電気は足りることを実証しました。

高浜原発の再稼働を許さず、原発を全廃して、
重大事故の不安のない社会を目指しましょう。

◆3月28日、大阪高裁は、高浜原発3.4号機の運転停止仮処分の抗告審で、関電の主張のみを追認し、高浜原発運転差止め決定をくつがえしました。圧倒的多数の脱原発、反原発の民意を踏み躙る決定です。関電の主張では、原子力規制委員長までもが「安全を保証するものではない」と言う“新規制基準”を「安全基準」とし、原発に「絶対的安全性を求めるべきではない」とし、「原発は安全であるから、“新規制基準”に避難計画は不要」としています。「新しい安全神話」を作ろうとするものです。関電や原発産業の利益のために、人の命と尊厳をないがしろにするものです。

◆今、ほとんどの世論調査で、脱原発、反原発の声は原発推進の声の2倍を超えています。国際的にも、イタリア、ドイツに続いて、リトアニア、ベトナム、台湾が脱原発を決意し、アメリカも原発縮小に向かっています。それは、スリーマイル島、チェルノブイリ、福島の大惨事を経験して、原発は、科学技術的に人類の手に負えるものでなく、経済的にも成り立たないことを悟ったからです。

関電は、大阪高裁の決定を受けて、高浜原発4号機を5月17日、3号機を6月上旬に再稼働させようとしています。これらの原発は、約31年を経過した老朽原発で、しかも、事故の可能性が高いウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)を燃料としています。再稼働を許してはなりません。

原発は、現代科学技術で制御できない(そう考える根拠)

高浜原発再稼働の風雲が急を告げる今、原発は現代科学技術で制御できず、人類の手に負える装置でないと考える理由を以下のように整理してみました。ご参考にされて、原発について考えていただければ幸いです。

1. 核反応エネルギーは化学反応エネルギーの100万倍

◆人類の生存している環境は化学反応で維持されています。この化学反応はeV(エレクトロンボルト)という単位のエネルギーのやりとりによって生じます。例えば、石油を燃すと最高で数1000℃を得ることが出来ますが、これがeVの世界です。生物の体内で生じる化学反応はさらに低いエネルギーで進み、生体内反応の多くは0.1 eV 以下の世界です。すなわち、100℃までの世界です。したがって、100℃を越えて生きる生物はまれです。

◆一方、核反応ではMeV[M(ミリオン)=100万)]という単位のエネルギーがやりとりされます。例えば、プルトニウムは約4 MeVのエネルギーを持つアルファ線を出しますが、原理的には、これによって数100万℃以上の温度が得られます。これがMeVの世界です。

◆このことは、核反応1反応によって100万に近い化学反応が生じることを意味します。核反応は爆発的に起こり、化学反応によって簡単に制御できない理由です。したがって、原子炉は大量な水で冷やし続けなければならず、水がなくなると、あっという間に核燃料や原子炉構成材料が溶融します。体内に取り込まれた放射性物質から出る放射線による内部被曝では、1000万に近い体内の化学結合が切断されることになります(実際には、核反応エネルギーの一部しか結合切断に使われないので、もっと少ない)。

◆以上のような理由で、核反応エネルギーを閉じ込めて置くことは極めて困難です。一つ間違えば、大惨事になります。原発の重大事故時には、膨大なエネルギーに起因する熱(核反応熱;核分裂で出る熱、崩壊熱;放射線を出して別の物質に変わるときに出る熱)によって核燃料や被覆材などの原子炉材料が溶融し、水素ガスの発生・爆発あるいは水蒸気爆発(高温での水の爆発的蒸発)を引き起こし、大惨事(メルトダウン、メルトスルー)に達しかねません。

◆化学反応エネルギーでは、このような事態にはなりません。

2. 原発事故の特徴;瞬時に進行し、時間的にも、空間的にも通常事故とは桁違いに深刻な被害

◆前項で述べましたように、核反応は膨大なエネルギーを出しますので、原発で冷却水が途絶えると、瞬時に(火災などとは比較にならない速度で)重大事故に至ります。そのように瞬時に進行する事故への対応は至難で、進み始めた事故を止めることは極めて困難です。例えば、海水の原子炉への大量注入は何千億円もする原子炉を使用不能しますが、重大事故に際して、海水の大量注入行ってメルトダウンを防ぐ判断を会社の上層部や政府に仰いでいる暇はありません。事態を把握し、議論している間に、原子炉が深刻で取り返しのつかない状況になるからです。なお、今までの全ての重大事故では、事故を深刻でないとする判断(願望も含めて)を行い(例えば、計器の指示ミスと判断)、事態をより深刻にしています。

◆放射性物質による被害は長期におよびます。火事は長くても数十日で消火できますが、放射性物質は、半減期に従って消滅する[放射線を出して他の物質(核種)に変わる]まで放射線とそれによる熱を発生し続けます。代表的な放射性物質の半減期は、プルトニウム239で2万4千年、ネプツニウム237で214万年、セシウム137で30.7年、ストロンチウム90で28.8年、ヨウ素131で 8.02 日です。放射性物質は、1半減期で1/2に、半減期の10倍で約1/1000、13.3倍で約1/10000、20倍で約1/100万に減少します。例えば、プルトニウム239を1/10000に減少させるには約32万年かかります。それでも、安全なレベルになるとは限りません。なお、半減期の短い物質は早く崩壊しますから、物質の量が同じであれば、時間当たりにすれば、多くの放射線を出します。

◆放射性物質による被害は長期におよびますから、原発事故では長期の避難を強いられ、住民は故郷を奪われ、家族のきずなを断たれ、発癌の不安にさいなまれます。通常の災害では、5年も経てば、復興の目途はある程度立ちますが、原発事故は、生活再建の希望も奪い去ります。福島事故では、4年経った1昨年から、絶望のために自ら命を絶たれる避難者が急増していると報道されています。

◆放射性物質は長期にわたって放射線を出し続けますから、高放射線のために事故炉の廃炉は困難を極めます。また、放射線による熱発生のため、冷却水が途絶えると、核燃料が再溶融し、再び核分裂を始める可能性もあり、長期間冷却水を供給し続けなければなりません。福島原発では、事故から6年経っても、溶け落ちた燃料の位置も一部しか分かっていません。完全廃炉には、50年以上を要するとの見解もあります。

◆重大事故によって放出された放射性物質は、事故炉近辺を汚染させるだけでなく、風によって運ばれた後、雨によって降下するのですから、汚染地域は極めて広範囲に広がります。福島事故でも、約50 km 離れた飯舘村も全村避難になり、約200 km 離れた東京や千葉にも高濃度の放射性物質が降下しました。チェルノブイリ事故では、日本でも放射性物質が検出されています。海に流出した放射性物質は海流に乗って広範囲の海域を汚染します。福島の放射性物質はアメリカ西海岸にも到達しようとしています。
若狭の原発の重大事故では、関西はもとより、中部、関東も高濃度放射線で汚染される可能性があります。汚染水は日本海にたれ流されますが、日本海は太平洋に比べて比較にならないほど狭い閉鎖海域ですから、極めて高濃度に汚染されます。若狭湾の汚染はさらに深刻です。

3. 原発は、長期保管を要する使用済核燃料、放射性廃棄物を残す

◆原発を運転すると、核燃料の中に運転に不都合な各種の核分裂生成物が生成します。したがって、核燃料を永久に使用することは出来ず、一定期間燃焼させると新燃料と交換せざるを得なくなり、そのため、使用済み核燃料がたまります。現在、日本には使用済み核燃料が17,000 トン以上たまり、原発の燃料プールや六ケ所村の再処理工場の保管場所を合計した貯蔵容量の73%が埋まっています。原発が順次再稼働した場合、数年後には満杯になります。使用済み核燃料を消滅させる方法はありません。

◆ところで、国の計画では、全国の使用済み核燃料は再処理して、ウラン、プルトニウムを取り出し、再利用することになっていました。しかし、再処理工場の建設はトラブル続きで、すでに2兆2千億円をつぎ込んだにもかかわらず、完成の目途(めど)は立っていません。危険極まりないこの工場の運転は不可能と言われています。

◆福井県にある原発13基が持つ使用済み核燃料貯蔵施設の容量は5,290トンですが、その7割近くがすでに埋まっています。高浜、大飯、美浜の原発が再稼働されれば、7年程度で貯蔵限度を超え、原発の稼働は出来なくなります。なお、使用済み核燃料貯蔵プールは脆弱(ぜいじゃく)で、冷却水を喪失し、メルトダウンする危険性が高いことは、福島第1原発4号機の燃料プールから冷却水が漏れ、核燃料溶融の危機にあった事実からでも明らかです。

◆一方、日本には、低レベルおよび高レベル放射性廃棄物が200リットルドラム缶にしてそれぞれ約120万本および約1万本蓄積されていますが、その処分は極めて困難で、永久貯蔵はおろか中間貯蔵を引き受ける所もありません。

◆数万年を超える保管を要する使用済み核燃料、放射性廃棄物の蓄積の面からも、原発は全廃しなければなりません。

4. 高浜原発の重大事故では、若狭のみならず、京都、滋賀の全域も故郷を失う可能性が大

◆高浜原発から50 km圏内には、京都市、福知山市、高島市の多くの部分が含まれ、100 km圏内には、京都府(人口約250万人)、滋賀県(人口約140万人)のほぼ全域、大阪駅、神戸駅を含む大阪府、兵庫県のかなりの部分が含まれます。このことと福島原発から約50 km離れた飯舘村が全村避難であったことを考え合わせれば、高浜原発で重大事故が起こったとき、500万人以上が避難対象となる可能性があり、避難は不可能ですが、政府や自治体が行う避難訓練では、そのことが全く考えられていません。この圏内には琵琶湖があり、1,450万人の飲用水の汚染も深刻な問題です。さらに、避難訓練には、原発事故での避難は極めて長期に及ぶ(あるいは永遠に帰還できない)という視点がありません。福島およびチェルノブイリの事故では、今でも避難された10数万人の大半が故郷を失ったままです。

◆昨年8月27日に高浜原発から30 km圏の住民179,400人を対象にして行われた避難訓練は、最大規模と言われながら、参加者数は屋内退避を含めて7,100人余りで、車両などでの避難に参加したのはわずか約1,250人でした。それも県外への避難は約240人に留まりました。この規模は、重大事故時の避難の規模とはかけ離れた小ささです。車道などが使用不能になったことを想定して、陸上自衛隊の大型ヘリによる輸送訓練も予定されていましたが、強風のために中止されました。また、悪天候のため、船による訓練は全て中止されました。老人ホームなどへの事故に関する電話連絡は行われましたが、実際行動の必要はないとされました。

5. 高浜原発3,4号機は、危険極まりない老朽原発(31~32年を経た原発)

◆原発は事故の確率が高い装置ですが、老朽化すると、重大事故の確率が急増します。次のような理由によります。

◆原発の圧力容器、配管等は長期に亘って高温、高圧、高放射線にさらされているため、脆化(ぜいか:金属が軟らかさを失い、硬く、もろくなること)、腐食(とくに、溶接部)が進んでいます。中でも、交換することが出来ない圧力容器の脆化は深刻です。事故時に原子炉を急冷すると、圧力容器が破裂します。電気配線の老朽化も問題です。

◆老朽原発には、建設時には適当とされたが、現在の基準では不適当と考えられる部分が多数あります。しかし、全てが見直され、改善されているとは言えません。例えば、地震の大きさを過小評価していた時代に作られた構造物、配管の中で交換不可能なもの(圧力容器など)です。

◆老朽原発では、建設当時の記録が散逸している可能性があり、メンテナンスに支障となります。また、建設当時を知っている技術者はほとんど退職しているので、非常時、事故時の対応に困難を生じます。

今、原発は動いていないけれども、電気は足りています。
重大事故の危険性をおかして
運転するのは愚の骨頂です。電力会社の金儲けのためです。

原発事故は自然災害とは異なります。
自然災害を止めることはできませんが、
原発事故は止められます。
原発は人が動かしているのですから、
人が原発全廃を決意すれば良いのです。

原子力防災とは、避難計画ではありません。
不可能な避難を考えるより、
事故の原因である原発を廃止することです。
原発全廃こそ原子力防災です。

重大事故が起こってからでは遅すぎます。
原発全廃の行動に今すぐ起ちましょう!

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)