◆大飯原発再稼働を許すな!

【2017年2月24日,京都キンカンで配付。】

22日、規制委が新規制基準適合の「審査書案」を了承

再稼働ありきの出来レース・国民だましの審査

・原子力規制委員会(規制委)は、2月22日の定例会合で、関西電大飯原発3,4号機が新規制基準を満たしているとする「審査書案]を了承した。事実上の再稼働検査合格である。これで、規制委は、関電が審査を申請した全ての原発を合格としたことになる。なお、大飯原発3,4号機の再稼働審査は大幅に遅れた。その理由の一つは、老朽原発高浜1、2号機、美浜3号機の審査を優先させたためである。老朽原発は、運転開始から40年になる前に規制委の正式認可を受けなければならないので、規制委は、老朽原発審査を優先したのである。この一事からも、どんな手段を用いても申請された全原発の再稼働を進めようとする規制委の姿勢が見て取れる。

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大飯原発3,4号機の「審査書案」の概要

基準値振動は最大加速度856ガル
耐震重要施設付近の断層は将来活動する可能性はない
重要施設がある敷地の高さは9.7 m で津波は流入しない
炉心損傷防止対策や格納容器破損防止対策として複数のケースを審査した結果、関電の対策は何れも有効と判断
水素爆発による原子炉建屋の破損を防ぐため水素排出設備を整備
敷地外への放射性物質の拡散を抑えるため、放水銃などを設置
緊急時対策所を中央制御室とは離れた別の建屋に設置
航空機衝突テロなどに備え、休日にも発電所内に対応要員を確保
3、4号機は新規制基準に適合
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大飯原発3,4号機の「審査書案」の問題点

「基準値振動を最大加速度856ガル」としているが、地震学者(元日本地震学会会長、元地震予知連絡会会長、前原子力規制委員長代理)の島崎邦彦氏は「基準地震動が過小評価されている可能性がある」という。島崎氏によれば、再計算した推定では、「不確かさ」も加味(かみ)すれば1500ガル超になり、福島事故後の安全評価(ストレステスト)で「炉心冷却が出来なくなる下限値」として関電が示した1260ガルをも大きく上回る。(なお、基準地震動のようなあいまいさを含む数値を、856ガルなど、3桁の精度で議論することも、科学的でない。)

「耐震重要施設付近の断層は将来活動する可能性はない」としているが、大地震が発生する時期や規模を予知することの困難さは、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本・大分大震災が教えている。若狭にも、分かっているものだけでも多数の断層があり、これらの断層が動いて大地震が発生する可能性もあるが、過去の大地震の多くが、深層にあって「未知の断層」と呼ばれる断層に起因している。大地震は、何時、何処で起こるか分からない。それでも、電力会社や規制委は地震の可能性や大きさを過小評価して、原発運転を強行しようとしている。本来、地震の多発する国に原発があってはならない。

「重要施設がある敷地の高さは9.7 m で津波は流入しない」としているが、地震の規模の予測が困難であるように、津波の大きさを簡単に想定できないことも、東日本大震災が教えている。若狭でも、1586年に発生した天正地震で、「町全体が山と思われるほどの大きな津波に覆(おお)われ、家屋も男女もさらってしまい、塩水で覆われた土地以外には何も残らず、全員が海中で溺れた」とする記録があり、海岸から500 m の水田で津波跡を発見したという報告もある。

「炉心損傷防止対策や格納容器破損防止対策として複数のケースを審査した結果、関電の対策は何れも有効と判断、

「水素爆発による原子炉建屋の破損を防ぐため水素排出設備を整備」、

「敷地外への放射性物質の拡散を抑えるため、放水銃などを設置」としているが、福島事故で、どのように、どの規模の水素発生したかも確証されていない段階で、水素除去対策ができる筈がない(触媒で水素を除去するなどは机上の空論である)。また、空中に放出された放射性物質は、放水銃で撃ち落とし、海に流れでた放射性物質は、これを吸着する蚊帳のようなシルトフェンスで食い止めるとしてるが、このような子供だましの仕掛けで、放射性物質の拡散が防げるのなら、福島の汚染を今すぐくい止めてほしい。

「緊急時対策所を中央制御室とは離れた別の建屋に設置」としているが、本来、免震重要棟の建設が望まれ、当初はその建設を予定していたが、免震重要棟は止めて、免震性が小さく、経費のかからない耐震構造のものとしている。

「航空機衝突テロなどに備え、休日にも発電所内に対応要員を確保」としているが、航空機衝突テロを軍備も持たない対応要員で防げる筈がない。

この他、以下のような重要な問題もある。

①地震、津波、火山噴火、テロによる重大事故は想定しても、人為ミスや施設老朽化に起因する重大事故についても触れていない。なお、チェルノブイリ事故、スリーマイル島事故など、ほとんどの原発事故は、自然災害ではなく、人災や老朽化に起因する不具合によって発生している。

②重大事故時の住民避難の問題には全く触れていない。

・なお、福島原発事故では事故炉から30~50 km の距離にある飯舘村も全村避難を強いられた。また、約 200 km 離れた東京や千葉にも高濃度の放射性物質が飛来した。このことは、若狭の原発で重大事故が起こった場合、原発のある若狭だけでなく、約150万人が暮らす滋賀県や約250万人が暮らす京都府の全域が永遠に住めない放射性物質汚染地域になりかねないことを示している。琵琶湖が汚染されれば、関西 1,450 万人の飲料水がなくなる。重大事故時の避難の困難さだけでなく、一旦避難したら、帰ることが出来ない故郷ができることは、福島やチュエルノブイリが教える所である。数百万人の原発被害難民が生まれる。避難者の自殺が事故後4年経った1昨年より急増している現実も直視しなければならない。

関電は、大飯原発3,4号機のプルサーマル化も企(たくら)んでいる

・昨年2月、関電の八木社長(当時)は、MOX燃料使用のプルサーマル発電に関して、具体的な計画は未定であるが、「大飯原発も」と強調している。一方、規制委は、「厳しい新規制基準の下ではMOX燃料かどうかは議論にはならない」としている。しかし、プルサーマル炉は、ウラン燃料炉に比べて格段に危険である(詳細は別途述べる)。とくに、既存原発のプルサーマル化は、元々ウラン燃料を前提とした軽水炉でプルトニウムを燃すので、技術的な課題が多い。

再稼働反対の民意を踏み躙(にじ)る規制委

・規制委は、原発の「審査書」の案や正式決定を発表するたびに、「あくまでも新規制基準に適合か否かを判断しただけで、安全性を保証したわけでもなく、再稼働を許可したものでもない」と述べている。しかし、この新規制基準適合判断が、原発の安全性と大きく関わり、実質的に、国による再稼働許可となることは明らかである。本来、国の機関は、国民の民意を実行し、国民の安全と安心に奉仕すべきものであって、私企業や財界の経済的利益への貢献が任務ではない。

・今、国民の大多数が原発再稼働に反対していて、脱原発。反原発が民意である。例えば、一昨年、伊方町で行われた住民アンケートでは、原発再稼働反対が53%で賛成の約2倍であった。昨年の鹿児島県、新潟県の知事選では、脱原発を掲げる候補が圧勝した。昨年末には、高浜原発の「地元中の地元」音海地区の自治会が、老朽原発運転反対を決議した。今月の朝日新聞の世論調査でも、原発再稼働反対が57%で賛成のほぼ2倍であった。また、周知のように、この民意の後押しの中で、大津地裁は、昨年3月、高浜原発の運転を差し止めたのだと考えられる。なお、国際的にも、ドイツ、イタリアに続いて、リトアニアが脱原発に向かい、昨年11月にはベトナムが原発建設計画を白紙撤回し、今年1月には台湾が脱原発法を成立させた。米国でさえ、原発の発電コストの高さが際立つようになったため、原発からの撤退が相次いでいる。

・規制委は、このような民意や国際的潮流に逆らって、原発再稼働に加担しようとしている。許してはならない。

「新規制基準」および適合性審査は、安心、安全を保証するものではない

・規制委は、これまでに5原発10基を、安全とは縁遠い「新規制基準」で審査し適合とした。また、今回、大飯原発3,4号機の審査書案を出した。

・審査では、福島原発事故の原因調査も進んでいないにもかかわらず、福島事故に学んだと偽り、原発やその周辺の簡単な改善は要求しても、電力会社に大きな負担となる変更は要求していない。したがって、原発の危険性は取り除かれていない。そのことは、次のように、再稼働を行った全ての電力会社が再稼働の前後に重大事故に繋がりかねない深刻なトラブルを起こしたこと(トラブル率100%)からも明らかである。すなわち、1昨年8月に再稼働した川内原発1号機は、再稼働10日後に早速、復水器冷却細管破損を起こし、高浜原発4号機は、再稼働準備中の昨年2月20日,1次冷却系脱塩塔周辺で水漏れを起こし、2月29日には、発電機と送電設備を接続した途端に警報が吹鳴し、原子炉が緊急停止し、伊方原発3号機は、再稼働準備中の7月17日、1次冷却水系ポンプで水漏れを起こした。

・電力会社にとって、原発再稼働は命運をかけた作業であったはずである。それにも拘らず、一度ならず四度も起こったトラブルは、原発の点検・保守や安全維持の困難さを示唆し、配管の腐食や減肉などが進んでいることを示すとともに、傲慢で、安全性を軽視することに慣れ切り、緊張感に欠けた九電、関電、四電が原発を運転する能力・資格を有していないことを実証している。

規制委審査は科学とは縁遠く無責任;国民を愚弄(ぐろう)する規制委審査

・規制委の田中俊一委員長は、1昨年11月の定例会合後の会見で「福島のような事故を二度と繰り返さないために新規制基準を作り、原発の適合性を厳密に見てきた」と、さも住民の安全を考えて審査したかのような発言をしながら、再稼働については「地元がどう判断するか規制委が関知することではない、地元の安心と審査は別の問題」と責任回避している。また、老朽高浜原発1,2号機の再稼働審査にあたっては、「あくまで科学的に安全上問題ないかを判断するのが我々の使命だ」と述べる一方「お金さえかければ、技術的な点は克服できる」と、未解明課題が山積する現代科学技術の水準を理解できず、人間としての謙虚さに欠け、思い上がった発言をしている。全てのことが「お金で解決できる」のなら、福島事故からの復興をいち早く成し遂(と)げて頂きたい。

・ここで、科学とは、実際に起こった事実を冷静に受け入れ、丁寧に調査し、検証・考察して、その上に多くの議論を重ねて、結論を導くものである。ところが、規制委の審査はこの過程を無視しており、したがって、科学とは縁遠いものである原発に関して、実際に起こった最も重大な事実は福島原発事故である。福島事故に関して、事故炉内部の詳細は今でも分からず、事故の原因究明が終わったとするには程遠い状態にある。「科学」を標榜するのなら、福島事故の原因を徹底的に解明して、その結果を参照して、原発の安全性を議論・考察するのが当然であり、大津地裁での運転差止め仮処分決定でもそのことを指摘しているが、規制委はこの指摘を無視している。

・上記のように、「原子力ムラ」の一員と言っても過言でない規制委は、福島事故を招いたことを反省するどころか、国民を愚弄し、何が何でも原発再稼働に突っ走ろうという態度を露骨(ろこつ)にしている。その規制委の委員長が、今回の大飯原発審査では、地震学者・前規制委員長代理の島崎邦彦氏による「基準地震動が過小評価されている可能性がある」という警告を「根拠がない」と一蹴(いっしゅう)している。規制委に、真理探究を旨(むね)とする研究者の姿勢は全くない。

・なお、川内原発、高浜原発、伊方原発の再稼働に関して、再稼働した全ての原発でトラブルが起こった事実は、再稼働にお墨付きを与えた新規制基準が極めていい加減な基準であり、規制委の審査が無責任極まりないことを物語っている。

再稼働すれば、行き場のない使用済み核燃料が蓄積:貯蔵プールは満杯に近い

・原発を運転すると、核燃料の中に運転に不都合な各種の核分裂生成物が生成する。したがって、核燃料は永久に使用することは出来ず、一定期間燃焼させると、新燃料と交換せざるを得なくなる。そのため、使用済み核燃料がたまる。現在、日本には使用済み核燃料が17,000 トン以上たまり、原発の燃料プールや青森県六ケ所村の再処理工場の保管場所を合計した貯蔵容量の73%が埋まっている。原発が順次再稼働した場合、数年後には満杯になる。

・福井県にある原発13基が持つ使用済み核燃料貯蔵施設の容量は5,290トンであるが、その7割近くが3,550トンの使用済み燃料で埋まっている。高浜、大飯、美浜の原発が再稼働されれば、7年程度で貯蔵限度を超え、原発の稼働は出来なくなる。なお、使用済み核燃料貯蔵プールは脆弱(ぜいじゃく)で、冷却水を喪失し、メルトダウンする危険性が高いことは、福島第1原発4号機の燃料プールから冷却水が漏れ、核燃料溶融の危機にあった事実からでも明らかである。

・一方、日本には、低レベルおよび高レベル放射性廃棄物が200リットルドラム缶にしてそれぞれ約120万本および約1万本蓄積されているが、その処分は極めて困難で、永久貯蔵はおろか中間貯蔵を引き受ける所もない。

・数万年を超える長期の保管を要する使用済み核燃料、放射性廃棄物の蓄積の面からも、原発は全廃しなければならない。

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原発全廃の大きなうねりを!

◆次の原発重大事故は、明日にも起こりかねません。重大事故が起こる前に、原発を全廃しましょう! 使用済み核燃料や放射性廃棄物の安全保管の在り方を早急に検討しましょう!

◆原発全廃こそが「原子力防災」です。不可能な避難の計画に費やす時間と経費を原発のない社会創りに使いましょう!

◆今、大阪高裁で、高浜原発再稼働差止め仮処分決定(大津地裁)抗告審の決定が出されようとしています。本来、司法は社会通念=民意を反映しなければならない所です。あらゆる知恵を絞った行動によって、司法に脱原発、反原発の民意を示しましょう!

◆民意を踏み躙る関電を徹底糾弾しましょう!

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若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)