◆老朽原発完全廃炉を突破口に
原発のない明日を実現しよう!

原発は、人の命と尊厳を脅かし、
戦争になれば攻撃目標になる

 福島原発事故から 11 年が経ちましたが、被害者の多くは今でも、避難先あるいは被害地・福島で、苦難の生活を続けておられます。事故を起こした原発の内部は、高放射線のため、ごく一部しか分からず、溶け落ちた核燃料の取り出しの目途も立っていません。大量の放射性物質汚染水が溜り続け、太平洋に投棄されようとしています。汚染土壌の処理法はなく、ごく表層をはぎ取って保存する他はありません。東電と政府は、この汚染土壌を全国の公共工事で「再利用」しようとしています。

 一方、2 月に始まったロシア・ウクライナ紛争では、チェルノブイリ原発や欧州最大の原発・ザポリージャ原発がロシア軍に攻撃・占拠されました。

 このように、原発は、人類の手に負える装置でないことは明らかです。また、戦争になれば、原発は格好の攻撃目標になります。

ウクライナ紛争に乗じた原発推進

 今、原発推進派は、ウクライナ紛争に起因するエネルギー逼迫に乗じて、原発稼動を声高に叫んでいます。

 例えば、「日本維新の会」は、3 月 15 日、ウクライナ情勢を受けたエネルギー資源価格の高騰対策として、老朽原発・美浜 3 号機、高浜1、2 号機の緊急稼働を求める要望を政府に行っています。また、自治体として最大の株主である大阪市の松井市長は、関電の株主総会で行ってきた脱原発提案について、内容を改める考えを表明しています。目の前の経済的利益のために「大阪市民だけでなく広域の住民に放射線被曝を強いる原発運転」を容認しようとする背信行為です。

 なお、ウクライナ紛争に関連して、安倍元首相は米国との「核共有」を主張し、高市政調会長をはじめ、自民党の多くがこれに同調しています。また、杉本福井県知事は、自衛隊による迎撃態勢の強化を岸防衛相に求め、福井県嶺南地域への自衛隊配備も要請しています。この機に、核武装の議論を進展させ、自衛隊を増強しようとする、火事場泥棒のような行為です。

地球温暖化防止を口実にした原発推進

 原発推進派は、炭酸ガスを地球温暖化の元凶に祭り上げ、その削減を口実にして、世界的な脱原発の流れへの反転攻勢を強めています。

 EUは、原子力発電を「温暖化ガス排出ゼロに貢献する経済活動」と認める「EU タクソノミー」に追加しようとし、岸田政権も同様な立場で原発を推進しようとしています。

 炭酸ガスが地球温暖化の主原因とする科学的根拠はきわめて希薄で、結論を得るにさらなる議論が必要ですが、よしんば、炭酸ガスが主原因であることを認めたとしても、原発が、炭酸ガスを増加させないとする原発推進派の主張は誤りです。

 原発の運転でも、炭酸ガスは増加します。原発では、原子核に閉じ込められた膨大なエネルギーを解放し、最終的には環境に放出するのですから、原発運転は、海洋を含む地球表面の温度を上昇させます。水への炭酸ガスの溶解度は水の温度が上昇すれば減少しますから、海洋の温度が上昇すれば、海洋に溶解していた大量の炭酸ガスの一部が大気中に放出され、大気中の炭酸ガス濃度が増加します。一方、原発の建設、核燃料の製造、使用済み燃料の保管、重大事故時の対策にも多量のエネルギーを要し、その過程で、炭酸ガスが発生します。また、これらの過程で使用されるセメントの製造工程で多量の炭酸ガスが発生します。

 結局、化石燃料も原発も炭酸ガスを増加させます。炭酸ガスを増やさないためには、太陽から今現在受けているエネルギー以外を使ってはならないのです。また、炭酸ガスを減らす唯一の方法は、植物、とくに樹木を育てて、植物に炭酸ガスを蓄えてもらうことです。

老朽原発運転と原発過酷運転を強いる
エネルギー基本計画

 岸田政権は、昨年 10 月 22 日に、第 6 次エネルギー基本計画を閣議決定しましたが、この計画では、2030 年に原子力を 20~22%にしようとしています。

 原発電力 20~22%を達成するために、政府は、2030 年には 15 基となる老朽原発の再稼働と建設中の 3 原発の稼働を画策し、以下のような、原発利用率の引き上げのための原発過酷運転も行おうとしています。危険極まりない老朽原発運転と原発過酷運転を許してはなりません。

●定期検査間の運転期間の長期化 現在は 13ヶ月ごとに定期検査していますが、18 ヶ月~24ヶ月に変えようとしています。

●検査内容の変更による定期検査の効率的実施と原発酷使 現在の定期検査では、原子炉を停止し、平均 90 日をかけて一斉分解点検していますが、これを、米国の 30 日に倣って短縮しようとしています。短縮のために、「状態監視保全」方式(早めの部品交換をせず、機器ごとに劣化状況に合わせて保守する方式)を導入し、機器を限界まで酷使しようとしています。

●原子炉を止めないでおこなう検査「運転中保全」の導入 「安全上重要な機器」は予備系統で多重化されてはいますが、検査中は予備系統がなくなります。

(以上の検査内容の変更は 2009 年に行われていましたが、変更の実行は福島原発事故で中断されていました。)

老朽原発運転と原発過酷運転を強いる
のは、「巨大資本に奉仕する国造り、
戦争出来る国造り」のため

 政府が、老朽原発の運転、原発過酷運転に固執するのは、

①使用済み核燃料、核廃棄物の保管・処理費や事故による損失を度外視すれば、安上がりな原発電力によって、電力会社や大企業を儲けさせ、

②総括原価方式の下で集めた電気料金を、原発を介して、ゼネコンや原発関連大企業へ垂れ流すためです。さらに、第 6 次エネルギー基本計画では、原発の他に、再生可能エネルギーを拡大するだけでなく、炭酸ガス排出量の多い石炭火力を 19%も残そうとしています。それは、

③戦争になり、天然ガスや石油の輸入が途絶えたときの基盤電力を、国内で調達できる電源である原発、再生可能エネルギー、石炭火力で確保するためです。すなわち、老朽原発の再稼働は、「巨大資本に奉仕する国造り、戦争出来る国造り」のために行われているのです。

老朽原発廃炉を突破口に原発全廃を!

 昨年 6 月 23 日に当初の目論見より約半年遅れて再稼働した老朽原発・美浜 3 号機は、特定重大事故等対処施設(特重施設)の設置が期限・10月 25 日に間に合わず、10 月 23 日に、わずか 4ヶ月間の運転で停止を余儀なくされました。一方、関電が昨年 6 月に再稼働を目論んだ老朽原発・高浜 1、2 号機は停止したままです。

 老朽原発停止の表向きの理由は特重施設が未完成のためですが、全国で展開されたたび重な
る「老朽原発うごかすな!」の行動や裁判闘争が、政府と電力会社の原発推進に向かった暴走に歯止めをかけ、「老朽原発廃炉!」の民意の形成を後押しし、「原発停止」を勝ち取らせたと言っても過言ではありません。

 停止している美浜 3 号機、高浜 1、2 号機の特重施設の完成は早くても本年10月頃、来年5月、6 月頃といわれていますが、これらの老朽原発は、特重施設の完成後に再稼働されたとしても、来年末には停止に追い込まれる可能性が大です。それは、関電が「使用済み核燃料の県外中間貯蔵地を来年末までに探せなければ、老朽原発を停止する」と明言していますが、中間貯蔵候補地探しは至難であるからです。老朽原発停止を突破口に原発全廃に向かって大きく前進する好機です。

 一方、日本原電が再稼働を企む老朽東海第二原発の安全対策工事の完成時期は 2 度目の延期となり、約 2 年遅れて、2024 年 9 月と発表されています。また、30 km 圏の 14 市町村の実効性のある避難計画が出そろう見通しも立っていません。

 老朽原発をこのまま廃炉に追い込み、原発全廃へ前進しましょう!

世界が注目する
「老朽原発うごかすな!」の行動

 今、「老朽原発うごかすな!」の闘いは、国内だけでなく、韓国をはじめ世界の脱原発運動から注目されています。

 現在、川内原発 1、2 号機、高浜原発 3、4 号機が運転開始後それぞれ 37、36、37、36 年超えです。また、韓国の原発 5 基も 35 年を超え、2 基は来年 40 年を迎えます。もし、高浜 1、2号機、美浜 3 号機の再稼働を許せば、国内だけでなく、世界の原発の 40 年超え運転の前例にされてしまいます。

 一方、老朽原発の運転と原発新設を阻止すれば、最悪でも、2033 年に若狭から、2049 年
に全国から稼働する原発が無くなり、世界の脱原発を先導できます。
 

「老朽原発うごかすな!実行委員会」は

5 月 29 日(日)、大阪で
「原発のない明日を‐老朽原発このまま廃炉!大集会 in おおさか‐」を計画し、今までを格段に上回る結集を目指しています。

 また、この大集会を頂点として、ヒトリデモ、アメーバデモ、原発電気不買運動など、創意工夫を凝らした行動を実行します。

皆様のご支援、ご参加をお願いします。

2022 年 4 月 12 日
老朽原発うごかすな!実行委員会
連絡先:木原(090-1965-7102)