橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)
救援新聞 京都版No.1213 2014年6月25日[393 KB](PDFファイル 392KB)
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関西電力と国を相手に福井県の大飯原発再稼働の差し止めなどを求めて京都地裁で裁判をたたかっている原告団(1963人)の第2回総会が、6月7日午後、京都市下京区のキャンパスプラザ京都で約100人の参加者を集めて開かれ、福井地裁の「差し止め判決」を力に裁判に勝利しすべての原発を廃止に追い込む運動への決意を固め合いました。
「原発いらない」「いのちを守ろう」とパレード
総会に先立ち、弁護団、原告団は塩小路公園に集合。出口治男弁護団長、竹本修三原告団長を先頭に、横断幕やのぼり、プラカードなどをかかげてパレードに出発しました。関電京都支店前から烏丸通り、七条通りなどを進みながら市民への訴えやシュプレヒコール、「大飯は危険」「原発いらない」「子どもを守ろう」「いのちを守ろう」などの声を響かせました。
福井地裁の大飯原発差止判決を力に
“万一”が起きることがわかったんだから大飯もだめ
開会の冒頭、竹本修三原告団長があいさつ。「福井地裁の大飯原発差し止め判決は大変すばらしい判決だ。原発差し止め訴訟を審理する他の裁判所でもどう判断するか考えているはず。憲法の人権を保障する考えに立つよう運動をひろげてわれわれも勝訴判決を勝ち取り原発廃止へつなげたい。そのためにも、いまひとまわりの原告を拡大したい。ぜひ、まわりにひろげていこう」と述べました。続いて、出口治男弁護団長があいさつし、福井地裁の原発差し止め判決は、けれんみのない歴史に残る判決、国策に正面から立ち向かって憲法上の人権を尊重する判断をくだした、勇気のある骨太の判決で哲学的思想的にも質が高い、と評価。原告の人たちもこの判決を先取りする意見陳述を法廷で述べてきた。弁護団もしっかりやらないといけない、と決意を語りました。
弁護団の渡辺輝人事務局長が、この間の訴訟の要点と経過について報告。いままで大飯原発がなぜ危険か、準備書面にして提出してきたが、京都府は大飯原発の事故を想定した被害調査の資料を作成しているはずで、これらも提出を迫って行きたいと述べました。
国会事故調委員の田中三彦さんが講演
この後、原子力発電の設計技術者であり、国会事故調査委員会の委員でもある田中三彦さんが「国は福島の原発事故から何を学んだか」―原子力規制委員会はもはや期待できない―と題して講演。田中さんは次のような話をしました。
―最先端の技術にあこがれ、原子力発電の設計に9年間かかわったがおもしろくなくてやめた。自然科学や哲学が好きで、その翻訳や著作をやっていた。そこへ1986年チェルノブイリの原発事故が起こりショックを受けた、かつては専門知識の受け売りで福島第一原発の4号機を設計した。しかし、製造過程でとんでもないミスがあり、圧力容器が歪んでいたのを違法に矯正した。私は危険だからやめた方がいいと警告したが、上司が修正を指示してきた。チェルノブイリ事故以後、日本の原発は安全だとキャンペーンをつづけてきたが、これは大ウソだった。雑誌「世界」に私は「安全神話の虚構」という論文を発表した。シンポジウムでも話した。そのための脅迫やいやがらせを受けた。原子炉の製造をしている日立からは家族がおどされた。技術評論家も圧力を受けた。それらは90年代中ごろまでつづいた。3・11の地震と津波による福島の事故で、電源喪失と聞いてもう駄目だと思った。NHKテレビの解説が間違っていたりした。実は、事故の原因は地震によるものなのか、津波によるものなのか、絶対起きないといわれてきた全電源喪失が何故起きたのかいまもって決着がついていない。1号機は間違いなく地震でやられている。写真データからみて津波の到達する以前に電源が喪失している。電源が失われれば、冷却水を回すポンプが停止し、圧力容器内の燃料棒が溶融しメルトダウン起こす。水素が発生し爆発をして大量の放射性物質が拡散したのが福島の事故。事故原因の解明でもそうだが、われわれは騙されている。今度は新基準でだまされようとしている。福島の際もそうだったが、ひとたび事故が発生すれば職員では手におえない。政府事故調査委員会はこうした現場の事実をつかんでいない調査だ。その上に立って新基準なるものをつくっている。万が一起きても大丈夫だといってきた基準がだめだったのだから大飯原発の稼働もだめだ、と考えるのが道理だ。原子力規制委員会は、委員に規制に必要な知識がない。旧原子力保安院の役員、原子力村のメンバーがそのままで、原子炉メーカーの人もよく知った人たちだ。燃料や放射線の専門家ではあっても原子力発電の危険を知った専門家ではない。まさに「規制の」の復活である。規制をしなければならない側がとりこまれて、電気事業連合会などの思いのままに判定を出すところにされている。今回の人事入れ替えでいよいよ、全員右へならえ、になった。これらを監視し、批判の声をあげて行く責任がわれわれにはある。