◆ 原告第9準備書面
1 本書面の概要

原告第9準備書面
-水素爆発対策の不備について- 目次

1 本書面の概要

福島第1原発事故においては、福島第1原発の第1号機、第3号機、及び、第4号機のコンクリート建屋が水素爆発により破損した。原子力発電所の重大事故時に炉心の核燃料が高温化すると、燃料被覆管の材料成分であるジルコニウムが水と化学反応を起こし水素が発生する。加圧水型原発では格納容器内の雰囲気は空気であるために、仮にその水素が格納容器内に流出して雰囲気中の水素濃度が高まれば水素爆発を起こして格納容器が大規模破損する危険がある。
そこで、新規制基準は水素爆発防止のために、事故時の格納容器内水素濃度の規制を行い、「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の解釈」において、格納容器内の水素濃度最大値を13%以下にすることを定めた。他方、被告関西電力は、大飯原発3、4号機の水素濃度最大値約12.8%として設置変更許可を申請した。
しかし、関西電力の申請内容は、「実用発電用原子炉に係る炉心損傷防止対策及び格納容器破損防止対策の有効性評価に関する審査ガイド」で定めた溶融炉心・コンクリート相互作用(MCCI)による水素の発生を適切に考慮していない。本書面にて詳述するとおり、これを審査ガイドに従って厳格な条件により解析すれば規制基準の13%を超える結果が生じる。
したがって、大飯原発3、4号機は、新規制基準の要件を充たさない。本件訴訟の要件に置き換えれば重大事故時の格納容器水素爆発の具体的危険がある。

大飯原発の構造:燃料ペレット⊂燃料被覆管⊂原子炉圧力容器⊂原子炉格納容器⊂原子炉建屋【図省略】
[甲107:関西電力HPより]