◆ 原告第12準備書面
第7 福島原発事故の収束状況と今後の見通し

原告第12準備書面
-福島第一原発事故による汚染状況等 目次

第7 福島原発事故の収束状況と今後の見通し

 1 福島原発事故は未だ収束していない

福島原発事故からまもなく4年が経過するが、原発事故は収束したとは到底いえる状況にない。
原子炉は未だに立ち入ることができず、福島原発事故の原因すら、いまだに解明されていない。
汚染水は流出し続けている。福島県東部を南北に走る阿武隈山地で降った雨は、水を通しやすい地層(透水層)を通り、海や川まで流れる。福島第一原発はその豊富な地下水脈の末端にある。事故直後は1日400トンの地下水が建屋に流れ込んでいたが、現在はうち300トンが建屋に流入する。溶融した核燃料を冷やした水とまざって高濃度汚染水に変わってしまう。すでに敷地内には汚染水などを貯めるタンクが立ち並んでおり、平成25年12月24日時点での汚染水から一部の放射性物質を除去した後の処理水の総貯蔵量は約40万立方メートルであった(甲198 福島第一原子力発電所における汚染水処理とトリチウム水の保管状況)。しかし、他核種除去設備(ALPS)では62種類の放射性物質を除去できるものの、トリチウムは原理上除去できないという意味で、処理水を海洋に流出させることには強い非難の声があり、敷地内にため続けているという状況にある。建屋への地下水流出を防ぎ汚染水の発生量を減らす方法として注目されていた「凍土遮水壁」も目処が立っていない。
平成27年2月24日には、港湾外へつながる福島第1原発の排水路の一つが放射性セシウム等により高濃度に汚染された建屋のトラックなどの出入り口部分の屋上とつながっており、放射能を含んだ雨水が外洋に流出していたことが判明した。屋上部にたまっていた水からは1リットルあたり放射性セシウムが2万9400ベクレル検出された。ストロンチウム90などのベータ線を出す放射性物質も5万2000ベクレル含まれていた。放射能を含んだ雨水が外洋に流出していた。東京電力は汚染水の外洋流出を平成26年4月までに把握し調査を続けていたが、公表していなかった(甲199 時事ドットコムウェブサイト)、なお、福島原発からの汚染水漏れは、それ自体が国際原子力事象評価尺度(INES)の「レベル3(重大な異常事象)」に相当するとされており、非常に重大な被害が生じていることは明らかである。
汚染水だけでなく、放射性物質に汚染されたがれき、汚染水を処理した後に残る残渣などの固体廃棄物が敷地内に蓄積され続けている。その大半が国内で処理や処分の経験がないごみであり、これらのごみからは放射線が発せられている。廃炉の進行に伴い、より放射線濃度の高いごみが増加することとなる。
福島原発1~3号機では、いまだに内部に人が入ることはできず、高濃度に汚染された建屋の解体や溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)取り出しが進んでいない。被ばく線量が法定上限の「5年間で100mmシーベルト」を超え、現場で就労できなくなった作業員が増えることで人員の確保が困難になり、廃炉に遅れが生じるとの問題もある。
安倍晋三首相も、平成27年1月30日の衆議院予算委員会で、福島原発事故について、「汚染水対策を含め、廃炉、賠償、汚染など課題が山積している」とした上で、「今なお厳しい避難生活を強いられている被災者の方々を思うと、収束という言葉を使う状況にはない」との認識を示している(甲200 ロイターウェブサイト)。

 2 結論

福島原発事故は、INESの尺度で七段階中最悪の「レベル7」と評価されている。しかし、原子力規制委員会は、敷地内で汚染水漏れなどの事故が起きた場合、混乱を生むのを防ぐため、国際的な原子力事故評価尺度(INES)による評価をしない方針を決めた。国・原子力規制委員会は、福島原発事故による被害を過小評価しようとしているのである。
しかし、前述したとおり、福島原発事故が甚大な被害を生み出し続けていることは明らかである。福島原発事故の被害の甚大性から目を背けることなく、再び福島原発事故のような惨事が起こることのないよう、大飯原発の稼働は決して許してはならないのである。