◆[第5回原告団総会]世話人会からの報告とアピール

◆2017年6月25日に開かれた第5回原告団総会における「世話人会からの報告とアピール」は,
以下の通りです。

[1] 1万人原告をめざして

(1)京都脱原発原告団の歩みと原発再稼働

①大飯原発

・福島第一原発の過酷事故(2011年3月11日~)のあと,国内の稼動原発はゼロになりました。ところが,福井県にある関西電力・大飯原発は,当時の民主党政権のもと,新しい規制基準もできていない中,2012年7月に再稼働されました。京都脱原発弁護団・原告団は,すべての原発を止める第一歩として大飯原発差止訴訟を提起し,2012年11月に1,107名の原告で京都地裁に提訴しました。

・その後,2013年12月に856名で第二次[追加]提訴,2015年1月に730名で第三次[追加]提訴,2016年1月に393名で第四次[追加]提訴,2017年2月に184名で第五次[追加]提訴をを行いました。その結果,原告総数は3,270名となっています。現在,第六次[追加]原告を募集し,1万人原告をめざしています。

・なお,大飯原発は2013年9月に定期検査で停まり,以来,日本は再び原発ゼロとなりました。2014年5月には,福井地裁の大飯原発運転差止裁判(樋口英明裁判長)での勝訴とその格調の高い判決文により,京都では訴訟団と市民運動の共同の取り組みが進むようになりました。

・裁判は,関西電力の控訴により名古屋高裁金沢支部で審理中ですが,原子力規制委員会は再稼働を認めているので,現状のままなら2017年10月には再稼働されると報道されています。

②川内原発と伊方原発

・自民党・公明党政権のもと,原子力規制委員会は,原発の再稼働をすすめています。九州電力・川内原発1・2号機は2015年8月,四国電力・伊方原発3号機は2016年8月,再稼働されました。

③高浜原発

・高浜原発3・4号機は,2015年4月,福井地裁の仮処分決定で運転できないことになりました(樋口英明裁判長)。しかし,2015年12月には関西電力の主張を認めた異議審決定(福井地裁,林潤裁判長)で覆されてしまいました。

・その後,2016年3月大津地裁の仮処分決定(山本善彦裁判長)により,運転中の原発として初めて停止させられました。この仮処分決定は新規制基準の問題点にも踏み込んでいます。大津地裁では被告関電による執行停止の申し立て,異議審ともに退けられ,審理は大阪高裁にうつりました。しかし,大阪高裁(山下郁夫裁判長)は2017年3月,再稼働を容認したため,5~6月に再稼働されました。

・原子力規制委員会は,40年越えの高浜原発1・2号機まで動かそうというのですから,もはや「規制」どころか「推進」委員会です。

④福井若狭の原発群について

・福井若狭には多くの原発が集中していて,1機が重大事故を起こせば,隣の原発にも近寄れなくなる事態が予想され,多数の原子炉の重大事故に発展しかねせん。

・重大事故の場合,100km圏内の500万人以上が避難対象となる可能性がありますが,そんな数の避難は不可能でしょう。

・さらにこの圏内には「近畿の水がめ」琵琶湖があり,京阪神1,450万人が安全な飲料水を失ってしまいます。

・再稼働された高浜原発は危険性の高いMOX燃料を使用し,すでに30年を越えています。使用済み核燃料の保管,処分の見通しもありません。

⑤脱原発の運動と世論をさらに大きく

・どの世論調査でも,原発再稼働反対の声は,容認する声の倍程度になっています。

・原発再稼働がすすめられているとはいえ,まだ,川内原発1・2号機,伊方原発3号機,高浜原発3・4号機の5基に押しとどめているのは,脱原発の世論と運動の成果です。さらに市民多数の声を目に見える形にし,原発再稼働を阻止する勢力を大きくしましょう。

(2)第六次[追加]原告の募集

・大飯原発差止訴訟に勝利するために,私たちは1万人原告をめざしています。社会的に見れば,原発に不安を持ち,なくして欲しいと願っている市民が多数派です。こうした草の根の広範な願いを,裁判の原告という形に表現して,目に見える大きな社会的な勢力に広げていきましょう。九州の玄海原発訴訟では既に1万人原告を達成しており,決して不可能な目標ではありません。ただ,訴訟の進行の関係から,原告募集は第六次で終了する方向です。

・世話人会では2017年初より第六次 [追加] 原告の募集をすすめています。6/10の世話人会の段階で,30名となっています。

・5,000円ほどの裁判費用を裁判所に納める関係で,最低700人ほどにならないと原告団の赤字になりますが,第四次[追加]提訴以降は,原告の皆さまのカンパでまかなってきています。

(3)身の回りで脱原発の輪を広げてください!

・第六次 [追加] 原告募集では,お一人の原告が,職場やお近くの知人,友人,ご家族などで,お一人の新しい原告を誘っていただくことを,心から訴えます。
・すでに原告になっている方は,本日の配付資料中の「原告募集案内チラシ」をお知り合いなどにお渡しいただき,ぜひさそってください。
・世話人会では,原告募集の集会の設定,いろいろな機会に原告募集案内チラシを配付するなどの活動をすすめています。
・再生可能な自然エネルギーに依拠した新しい社会,エネルギーを過度に使用しない社会のために,市民の共同の輪をいっそう広げ,脱原発の実現をめざしましょう。

[2] これまでの法廷の内容

(1)各期日のくわしい報告

・原告側の陳述書や弁護団による準備書面,被告(関電,国)の答弁書や準備書面は,原告団Webの中の「裁判資料」(「裁判」→「裁判日程」「裁判資料」)にアップしています。

(2)これまでの内容

…1,107名の原告で提訴したのは,2012年11月29日。その後,各期日ごとに弁護団からの準備書面の提出(パワーポイントでのプレゼン)と,原告の意見陳述を行ってきました。

・第1回口頭弁論(2013年7月2日)
…竹本修三・原告団長が「地震国日本で原発稼働は無理」と陳述。
福島敦子さん(福島県南相馬市からの避難者)の陳述。

・第2回口頭弁論(2013年12月3日)
…原告で,聖護院門跡の宮城泰年・門主が意見陳述。

・第3回口頭弁論(2014年2月19日)
…原告の宮本憲一・元滋賀大学学長・大阪市立大学名誉教授(環境経済学)が意見陳述。

・第4回口頭弁論(2014年5月21日)
…裁判官の交代に伴う弁論の更新。
…竹本修三・原告団長と福島敦子さん(福島県南相馬市からの避難者)が再陳述。

・第5回口頭弁論(2014年9月30日)
…原告の意見陳述は萩原ゆきみさん(郡山市からの避難者)と,
都市計画の観点から広原盛明さん(京都府立大学元学長)。

・第6回口頭弁論(2015年1月29日)
…原告の意見陳述は,高浜原発から15キロ,舞鶴湾を臨むところに住んでいる三澤正之さん(京都府舞鶴市在住)。

・第7回口頭弁論(2015年5月28日)
…原告の意見陳述は,菅野千景さん(福島市からの避難者)。

・第8回口頭弁論(2015年10月20日)
…関西電力の主張に対して原告の側から反論するのが,おもな内容。
…関西電力が想定する地震の規模についての見積もりが甘すぎるという点を,竹本修三・原告団長が分かりやすく解説。

・第9回口頭弁論(2016年1月13日)
…原告の意見陳述は,阪本みさ子さん。大飯原発から20キロ地点の東舞鶴に居住。
…弁護団からは,新規制基準の基準地震動の「標準・平均値」は矛盾に満ちていることを主張。

・第10回口頭弁論(2016年3月15日)
…原告の意見陳述は,林(はやし) 森(もり)一(かず)さん。京都市左京区久(く)多(た)に生家。久多は大飯原発から約34km。
…弁護団からは,避難困難性の敷衍(京都市左京区久多について),2015年12月24日の福井地裁異議審決定の問題点を準備書面として提出。

・第11回口頭弁論(2016年5月16日)
…原告の意見陳述は,大飯原発からは約40kmの綾部市に住む斎藤信吾さん。
…弁護団からは,基準地震動以下の地震動でも大飯原発やその電源が損傷し,過酷事故に陥る可能性があること,大津地裁の高浜原発差し止めを命じる仮処分決定(2016年3月)の意義を主張しました。とくに後者は,出口治男・弁護団長が,最近の関経連関係者が語った「一地方の裁判官が勝手に原発を止めるな」のコメントを,人権の上にエネルギー政策があるのかのような不見識さだと,強く批判しました。

(3)この一年間の内容【2016/7/24の第4回原告団総会のあと】

・第12回口頭弁論(2016年9月14日)
…原告の意見陳述は,避難計画の問題点について栢(かや)下(した)壽(ひさし)さん(京都府南丹市)。
…弁護団からは,被告関西電力が反論していない原告の主張について(第24準備書面)指摘。

・第13回口頭弁論(2016年11月28日)
…原告の意見陳述は,池田豊さん(京都自治体問題研究所),吉田真理子さん(京都府宮津市)。
…弁護団からは,高浜原発広域避難訓練から明らかになった問題点(第27準備書面),宮津市避難計画の問題点について(第28準備書面),などを主張。

・第14回口頭弁論(2017年2月13日)
…原告の意見陳述は,福島県から避難してきた宇野朗子さん(現在は京都府木津川市)。
…弁護団からは,第29準備書面で,①コスト的に成り立たない原発事業,②世界各国における原発産業の状況,③原発御三家の東芝,三菱重工,日立,④原発は産業発展の妨げ,⑤裁判官にのぞむこと,などを主張。
(原告団Webでは,とくに「私たち原告の主張:ハイライト」に掲載しています。)

・第15回口頭弁論(2017年5月9日)
…裁判官の交代(藤田昌宏 裁判長,上田瞳,築山健一)に伴う弁論の更新で,竹本修三・原告団長,福島敦子さん(福島県南相馬市からの避難者)が再々陳述。
…世話人の赤松純平さんが,大飯原発の地盤特性や地域特性について意見を陳述。

(4)今後の予定

・第16回口頭弁論(2017年7月21日)
…原告の意見陳述は,市川章人さん(京都自治体問題研究所)で,避難の問題について。
…弁護団からは,上林川断層(FO-A断層,FO-B断層,熊川断層の共役断層)について,前回に続いて大飯原発の地盤特性や地域特性についての書面,および名古屋高裁金沢支部で証言した島崎邦彦さん(元原子力規制委員会委員長代理)の調書を提出する予定。

・第17回口頭弁論(2017年11月1日)以降…残った主張を出して,立証の段階に入っていきます。

・第18回口頭弁論…来年2018年になります。

[3] この一年間の原告団のおもな活動

(1)毎月1回の原告団・世話人会

①原告団・世話人会の成立(2013/2/9)後,毎月1回の世話人会を開催しています(2017/7/15に第55回)。原告の追加募集,世話人会が関係するいろいろな取り組み,裁判期日の内容の確認などを行っています。今年度より,世話人会の終了後は任意参加でランチ会という,おしゃべり会を設けています。

②現在,原告団・世話人会は25名の世話人で構成しています。昨年総会時の世話人は22名でしたので,新しい人が増えています。世話人は,随時,募集しています。原告の皆さまの中から手を上げていただく方をお待ちしています。

③世話人の中から,原告団長(竹本修三),事務局長(吉田明生),事務局次長(山崎正彦,田中善久)をおいています。

④事務局では,新しい原告への訴状の発送,郵送希望原告への裁判期日の案内手紙の発送,原告団総会の案内ハガキの発送(メールアドレスの登録のない人のみ)などを行っています。また,裁判期日には原告席での参加者を募集しています。

⑤世話人会には弁護団から6名が参加しています。

(2)昨年総会(2016/7/24)以降のおもな催し

①2016/10/30。弁護団を中心にした野島断層見学会。淡路島へ。

②2017/2/13。184名で第五次[追加]提訴を行い,原告総数は3,270名となりました。

③2017/3/28~。昨年,大津地裁で出た高浜原発運転差止の仮処分決定が,大阪高裁でくつがえされた3/28より,市民団体による「原発の電気はいらない署名@関西」による署名運動が開始されました。関電あてに原子力発電を止めてくださいと求める署名です。京都脱原発原告団も賛同団体にはいりました。

④2017/4/16。宮津市にて。「原発事故!すわっ!避難なんてごめんです!京都府北部集会」。昨年11/28に京都地裁で陳述されたお二人の原告にお話ししてもらいました。『自然豊かな宮津の暮らしを守りたい』吉田真理子さん(原発なしで暮らしたい宮津の会),『原発事故から逃げられる?』池田豊さん(自治体問題研究所 事務局長)からそれぞれ熱い思いがあふれました。宮津市では,天橋立を世界遺産にしたいという運動をしています。世界遺産とすぐ近くの原発とは共存できません。

⑤ 上記宮津市での集会を機に,このあたりは大飯原発や高浜原発から何kmかという「このあたりプレート」を表示する運動を提起しています。(→p.18)

(3)原告名簿,原告団MLについて

①原告の皆さまへの連絡は,郵送希望の原告(1,000円の実費で登録)のほかは,原告団メーリングリスト(一斉メール送信,ML)で行っています。できるだけメールアドレス(携帯可)の登録をお願いします。また,最近,配信停止となるメールアドレスが増えていますので,携帯の機種変更などでメールアドレスが変更になった場合は,再度,事務局宛にご連絡ください。

②原告名簿,原告団MLの管理につきまして,この一年でかなり改善を図りました。しかし,専従者がいる訳ではなく,あくまでボランティアベースの活動ですので,行き届かない点もあるかと思われます。今後とも,原告の皆さまのご協力を得て可能な範囲で改善していきますので,お気づきの点はご指摘ください。

[4] 財政について

(1)財政の基本

・弁護団と原告団の活動は皆さまのカンパでまかなっています。財政は弁護団財政一つです。
・弁護団は無報酬で活動しています。
・原告団,世話人の活動も,無償のボランティアが基本です。
・訴訟参加費の5000円は,ほとんどを裁判所に納めています。

(2)原告団の活動と財政

・世話人会の会場費,必要不可欠な物品,原告団や世話人会として遠方へ出かける場合などの実費支出は,弁護団財政の中で処理しています。
・いろいろな集会の会場費など,原告団独自の活動は,カンパを募ったり,ボランティアとして進めて,赤字にならないように工夫しています。
・世話人会出席の旅費支給…府北部の世話人のように往復旅費が1回3000円以上かかる場合,旅費を支給することにしました。

・2016年に「脱原発カンバッジ」を制作しました。広く普及したいと思います。2個100円です。
・2015年に「脱原発クリアファイル」を作成しました。500円/5枚で販売中です。

(3)原告参加費用5,000円について

・大飯原発差止訴訟に原告として参加していただくためには,原告参加費用として5,000円のご負担をお願いしています。この大部分は裁判所に提出する訴状に貼る印紙代にあてられます。これ以外にご負担いただく費用はありません。

・判決文で,訴訟費用を原告に負担させる旨言い渡される可能性はありますが,ここでいう「訴訟費用」とは,訴状に貼付する印紙代,証人に支払われる日当や交通費などで,大部分は印紙代のことなので,すでに支払っていただいた5,000円以外に追加で支払義務を負わされることはありません。

・また,大飯原発の運転差し止めが認められた場合でも,関電の損害や被告の弁護士費用などについて,原告が賠償義務を負わされることはありません。

(4)会計の報告

・(2016.4.1~2017.3.31)[略]

[5] 世話人会からのアピール

(1)本日のカンパのお願い

・カンパ袋も配付資料の中にセットにしています。
・経済情勢の厳しい折りですが,当原告団の活動は,皆さまのカンパによって成りたっています。ぜひとも,ご協力いただきますよう,心からお願い申し上げます。

・カンパについて領収書が必要な場合は,袋の表に住所氏名などを記入してください。後日,郵送します。領収書が必要でない場合は,住所や氏名を記入しないでください。(封筒の再利用のため)

・カンパ袋は毎年,再利用しています。カンパが困難な場合でも,袋だけはご返却ください。

・お帰りの際,出口で,ご意見用紙と一緒にお願いします。

(2)いろいろなお願い

・以下,お願いばかりで恐縮ですが,可能な範囲でご協力ください。
・いろいろな運動の形があります。それぞれの人には,得手,不得手のフィールドもありますし,好き,嫌いのフィーリングもあります。しかし,民主主義をめざす,脱原発の社会を実現するという共通点があるのですから,お互いの取り組みを尊重しあいながら,少しずつでも足し算をしていく感覚で多方面に伸びていく運動を期待したいと思います。

①第六次原告募集に協力してください。まわりに知人,友人を原告にさそってください。なお,訴訟の進行の関係から,原告募集は第六次で終了する方向です。

②裁判期日には,原告席や傍聴席にて裁判に参加してください。開廷前には,弁護士会館前を出発して裁判所周辺のデモを行い,市民に脱原発裁判をアピールしています。時間などはその都度,ご連絡します。

③脱原発の思いを陳述書に書いてください。

④書籍,物品販売に協力してください。

⑤「このあたりプレート」を活用してください。
ご自分の土地などに,大型看板を出せる場合,ご連絡ください。

⑥原告の皆さまへの連絡のため,できるだけメールアドレス(携帯可)を登録してください。
携帯の機種変更などでメールアドレスが変更になった場合,事務局宛にご連絡ください。

(3)原告団が協力している署名など

・原発の電気はいらない署名→こちら
・原発賠償京都訴訟の公正判決要請署名→こちら

(4)缶バッジマシンの貸し出し

・缶バッジをつくるための缶バッジマシンは,京都木津川マラソンの東日本震災復興支援に応募して援助を受けたものです。
・マシン本体は他団体への貸し出し(無料)に応じています。パーツを用意されれば,各団体でオリジナルの缶バッジをつくることができます。事務局にご連絡ください。

[6] 訴訟の一覧表

  • 全国 脱原発 訴訟
  • 全国 原発賠償 訴訟

・こちら→ 訴訟の一覧[288 KB]