◆老朽原発・美浜3号、高浜1、2号を廃炉に

【2023年1月5日。アメーバ用チラシ、京都キンカンで配付】
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老朽原発・美浜3号、高浜1、2号を廃炉に
過酷事故が起こる前に
岸田政権の「原発依存社会」への暴走を許すな!

 原発は現在科学技術で制御できる装置でないことを、発生後12年になろうとする福島原発事故が大きな犠牲の上に教えています。一方、昨年2月に始まったウクライナ紛争では、戦争になれば、原発は格好の攻撃目標になることが実証されました。このように、原発は、人類の手に負える装置でなく、人の命と尊厳を脅かします。

 それでも、電力会社、政府、原発立地自治体などの原発推進勢力は、ウクライナ紛争によるエネルギーひっ迫や炭酸ガス削減を口実にして、原発の稼働に躍起です。

岸田政権は「原発依存社会」を画策

 政府は、1昨年10月に決定した「エネルギー基本計画」の中で「原発の新増設や建て替えは想定しない」としていましたが、岸田首相は、決定から1年もたたない昨年8月24日、この基本計画まで無視し、また、原発の運転期間は最大60年とした法律をないがしろにして、「原発依存社会」への方向転換を表明しました。

 岸田政権は、原発の停止期間を運転期間から除くことで、原発の60年超え運転への道を開こうとしています。しかし、原発の老朽化は、停止中であっても進行します。

 一方、廃炉になった原発の代わりに革新型原子炉、新型小型原子炉を建設するとしていますが、これらの原子炉は、過酷事故の危険性や何万年もの保管を要する使用済み核燃料を残す点では、従来の大型原子炉と変わるところがありません。「革新」や「小型」の言葉遊びで人々をだまそうとしているのです。

 さらに、岸田政権は、「もんじゅ」の廃炉によって破綻が明らかになった高速炉、60年以上も膨大な研究予算を投下し続けたにも拘らず、いまだに実用の兆候も見えない高温ガス炉や核融合を新しいテーマのごとく取り上げて、さらに膨大な予算を投下しようとしています。

 岸田政権は、原子炉システム、原子炉材料、放射性廃棄物の処理処分、安全対策などの科学・技術に何ら進歩がないにも拘らず、「原子力ムラ」の救済のために、自民党のポスターにあるように、原発推進を「決断と実行」しようとしているのです。福島原発事故の犠牲と教訓を軽んじ、人の命と尊厳を蹂躙するものです。岸田首相がどう願望しようとも、政治的判断で科学・技術が急に進歩することはありません。

7年後(2030年)に15基もの老朽原発

 原発の60年運転が認められ、停止期間分の追加運転が認められれば、国内の原発15基(高浜1~4号機、敦賀2号機を含む)が2030年に、28基(若狭の全原発を含む)が2040年に超危険な老朽原発になります。過酷事故が起こりかねません。一方、「40年超え運転」を認めず、原発を新設しなければ、2033年に若狭から、2049年に全国から稼働可能な原発が無くなります。

原発はトラブル頻発の装置

 老朽原発・美浜3号機で相次ぐトラブル

 関電は、運転開始後45年を超えた(当時)老朽原発・美浜3号機を1昨年6月23日に再稼働させましたが、特定重大事故等対処施設(特重施設)の設置が間に合わず、わずか3ヶ月の営業運転で停止を余儀なくされています。しかも、この短い運転中に二度もトラブルを発生させています。そのうちの一つは、電源が断たれて蒸気発生器中の2次冷却水が失われたとき、緊急給水するポンプに大きな圧力がかかったものです。関電は、「ポンプ入り口にある金属製のフィルターに鉄さびが詰まったことが原因」としています。老朽原発を全国に先駆けて動かすために、10年近く準備してきたにも拘らず、鉄さびによる目詰まりにも気づかなかった関電と原子力規制委員会のいい加減さは許されるものではありません。

 さらに、関電は、特重施設が完成したとして、美浜3号機の再稼動を、当初予定の昨年10月から8月12日に前倒しすると発表しましたが、直前の8月1日、放射性物質を含む水7トンの漏洩が発覚し、再稼動は延期されました。

 美浜3号機では、次の再稼動を目論んだ8月23日の直前・21日にも、「緊急時に1次冷却系に注入するほう酸水を蓄えている蓄圧タンク(アキュムレータ)」の圧力が低下していることが確認され、再稼働はさらに延期されました。原子炉から冷却水が失われ、1次冷却系の圧力が低下した時や、制御棒の挿入に失敗した際には、原子炉の暴走を防ぐために、ほう酸水を1次冷却系に緊急注入しなければなりませんが、そのほう酸水は、逆止弁を介して1次冷却系につながる蓄圧タンクに蓄えられています。このタンクの異常は、重大事故に繋がりかねず、深刻です。

 関電は、8月1日の水漏れの原因は、下請け作業員が容器のふたを閉めるボルトを規定の5分の1の弱い力で締めていたため、21日の蓄圧タンクの圧力低下の原因は、近傍で行われた足場設置作業の資材が同タンクの安全弁に接触したためとしています。以上のような、美浜3号機で1昨年来発生したトラブルの原因は、あきれ返るほど稚拙なミスです。このようなミスは、技術者がしっかりしていれば、簡単に気がつくものです。

 しかし、現在は、下請け任せの上に、責任感と科学的常識の乏しい、技術者、作業者、監督者、点検者などが原発を動かそうとしています。原発を動かそうとする体制自体が腐敗し、たるみ切っているのです。この事態は、一旦、体制全てを解体して、総点検しなければ、改善されません。ただし、体制を根本的に刷新して判断すれば、原発運転は、無理だという結論に至るでしょう。

高浜3、4号機、大飯3、4号機でもトラブル頻発

 美浜3号機と同じ加圧水型原発・高浜3、4号機、大飯3、4号機でも、これらの原発は運転開始後40年に到っていないにも拘らず、たびたびトラブルが発生しています。とくに、320℃、160気圧近くの高温・高圧水が流れる1次冷却系配管(蒸気発生器伝熱管など)の損傷は深刻です。これらの配管が完全破断すれば、1次冷却水が噴出して、原子炉が空焚きになり、メルトダウンに至る可能性があるからです。

 例えば、昨年3月、定期点検中の高浜原発3号機では、蒸気発生器伝熱管3本の外側が削れて管厚が大幅に減肉していることが発覚しています。関電は、伝熱管外側に自然発生した鉄さびの塊がはがれて、伝熱管を削ったためとしています。蒸気発生器の中には、腐食等によって、2トン以上もの鉄さびが発生しているともいわれています。同様な伝熱管損傷は、高浜4号機でも発生しています。

 関電は、去る10月21日、定期点検中に伝熱管多数の損傷が発覚した高浜4号機の再稼慟を目指しましたが、さらにトラブルを発生させ、再稼慟を延期しました。(再稼動は、11月4日に強行されました。)

 高浜4号機で新たに発生したトラブルは『1次冷却系の加圧器に設置されている「圧力逃し弁」の異常』です。原子炉で緊急事態が発生したとき、1次冷却系に緊急給水しなければなりませんが、1次冷却系の圧力が高すぎると、水が入りません。「圧力逃し弁」は、このようなとき、1次冷却系の圧力を逃がすための弁で、この弁が正常に働かなければ、緊急給水できなくなる場合があります。

 高浜4号機は、運転開始後40年に至っていない(37年超え)にも拘らず、上述のようにボロボロです。46年を超えた老朽原発・美浜3号機、48年、47年超えの高浜1、2号機の運転など、もっての他です。なお、関電は、高浜1、2号機の再稼働を来る6月、7月に画策しています。
 トラブル続きで、過酷事故を起こしかねない原発は、一刻も早く全廃しましょう!

電気は足りています

 今、政府は電力需給のひっ迫を喧伝し、原発の推進に躍起です。しかし、日常的には、電気は足りています(余っています)。一時的に電力ひっ迫が発生しても、節電によって乗り切れます。このことは昨年3月の、地震と寒波に起因する東北、東京エリアでの電力不足、昨夏の猛暑による電力不足を、節電で乗り越えた実績が証明しています。

【節電協力で電力需給ひっ迫を乗り切った例】

 昨年3月22日、東北、東京エリアで、地震による発電所の停止と寒波の到来が重なって、電力需給ひっ迫が発生しました。このひっ迫を乗り切れたのは、揚水発電と広域での電力融通に加え、次のような節電が行われたからです。

 当日8~23時の時間帯で約4000万kW時(W;ワット)、また、需要の大きな17時台の1時間に、約500万kWの節電が実行されています。原発5基分(1基約100万kWとして)もの節電が可能であることを示しています。

 なお、「節電で余剰電力を得ることは、発電所を新設することと同じ価値がある」との考えから「発電所の代わりに節電所を」の提案もあります。国民(約1億2500万人)一人ひとりが100W節電すれば、1250万kW(原発10基分以上)の電力需要を抑制できます。

 電力需給ひっ迫時だけでなく、日常からの節電も重要です。電気機器やシステムのエネルギー効率のよいものへの更新、断熱などの「省エネルギー化」も節電です。

電力需給量を正しく把握し、適度な節電に心がければ、
大規模停電になることもありません。

 大規模停電は、地震などによって一気・多量の電力供給不足が生じたときに起こります。通常の電力需要増加で大規模停電に至った例はありません。

 原発が重大事故を起こせば、電力の大規模供給不足になり、大規模停電に至る可能性があります。

 電力需給ひっ迫を口実に、人々や環境に放射線被ばくを強い、子々孫々にまで負の遺産となる使用済み核燃料を残す原発の推進を許してはなりません!とりわけ危険な老朽原発の再稼働など、もってのほかです。

「原発過酷運転(酷使)」を画策する政府、電力会社

 岸田政権が1昨年10月22日に閣議決定した第6次エネルギー基本計画では、2030年の電源構成に占める原子力の割合を20~22%としています。(なお、先述のように、岸田首相は、8月24日、この「エネルギー基本計画」を無視し、これを遙かに上回る原発推進政策を打ち出しています。)

 政府は、「エネルギー基本計画」を達成するために、2030年には15基となる老朽原発の再稼働と建設中の3原発の稼働を画策するだけでなく、以下のように、原発の過酷運転を行い、原発利用率を引き上げようとしています。

●定期検査間の運転期間の長期化
 現在は13ヶ月ごとに定期検査していますが、18~24ヶ月に変えようとしています。

●手抜き検査による定期検査の効率的実施と原発酷使
 現在の定期検査では、原子炉を停止し、平均90日をかけて一斉分解点検していますが、これを短縮するために、

①「状態監視保全」方式(早めの部品交換をせず、機器ごとに劣化状況に合わせて保守する方式)を導入し、機器を限界まで酷使しようとしています。また、
②原子炉を止めないでおこなう検査「運転中保全」を導入しようとしています。

原発を酷使すれば、
重大事故の危険度が急増します。
危険極まりない老朽原発の運転、
原発過酷運転を許してはなりません。

原発重大事故時、避難は不可能

 政府や自治体は、原発過酷事故を想定した避難訓練を行っています。それは、原発は重大事故を起こしかねないことを、政府や自治体が認めているからです。

 政府や自治体の「原発災害時の避難計画」では、わずかの期間だけ避難することになっていて、原発事故では住民全員が、何年も、何十年も、あるいは永遠に故郷を奪われることをあえて無視しています。「避難訓練を行った」とするアリバイ作りをしているのです。

 ところで、政府や自治体の避難計画では、若狭の原発で過酷事故が起こったとき、原発から5km圏内の住民は即時避難となっていますが、それ以外の住民は屋内退避となっていて、放射能汚染レベルが自然放射能の1万倍の500マイクロシーベルトになって、やっと避難を始めることになっています。一斉避難は不可能であるから、原発周辺住民のほとんどは、大量被ばくするまで待ちなさいと定めているのです。

 避難先も非現実的です。例えば、美浜原発で過酷事故が起こったとき、美浜町の皆さんの避難先は、おおい町または大野市になっています。しかし、人口約8100人のおおい町が、9600人を超える美浜町の皆さんを一週間以上の長期にわたって受け入れることは不可能です。人口約33600人の大野市でも不可能です。

 過酷事故を起こしかねず、事故が起これば大量被ばくを強いる老朽原発再稼働を許してはなりません。原発廃炉こそが、最大の安全対策です。即時廃炉を求めましょう!

処理法も行き場もない使用済み核燃料
それでも老朽原発再稼働まで画策

 関電は、2017年、「2018年末までに、使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を福井県外に探す」と明言しました。西川前福井県知事が、大飯原発の再稼働に同意したのは、この約束を前提としていました。しかし、関電は、この約束をホゴにし、「候補地提示期限を2020年末まで」と再約束して、原発の運転を継続し、使用済み核燃料を増やし続けました。さらに関電は、再約束の期限もホゴにし、1昨年2月12日には、候補地提示期限を「2023年末まで」と先送りし、「この期限が守られなければ老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機を停止する」として、福井県に老朽原発再稼働への同意を求めました。これを受けて、杉本知事は、それまでの「中間貯蔵地を示すことが再稼働議論の前提」とした発言を一転させ、再稼働同意へと変節しました。なお、関電が「2023年末を期限」とした拠り所は、青森県むつ市の中間貯蔵施設の共同利用の可能性ですが、宮下むつ市長は、これを否定し、猛反発しています。

 関電は、何の成算も無く「空約束」を繰り返し、平気でそれをホゴにした、倫理のかけらも持ち合わせない企業です。こんな関電に原発を安全に運転できるはずがありません。

老朽原発・美浜3号機、高浜1、2号機の
再稼働を許さず、即時廃炉を!

企業倫理と責任感が欠如した電力会社は
原発過酷事故を起こしかねません

 昨年7月13日、東京地裁は「東電株主代表訴訟」判決で、福島原発事故前の東電幹部の対応には「安全意識や責任感が根本的に欠如していた」と述べ、東電旧経営陣に、原発事故による損害・約13兆円の賠償を命じています。

 今、関電経営陣が、多くの危険性指摘を無視して老朽原発を稼働させるのは「安全意識や責任感の根本的欠如」のためとしか言いようがありません。「老朽原発うごかすな!」の民意を蹂躙して老朽原発を稼働させ、重大事故に至った場合、それは関電経営陣の故意による犯罪です。

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原子炉過酷事故の危険性が高い
老朽原発・美浜3号機、高浜1、2号機の
運転を許してはなりません!
老朽原発完全廃炉を突破口に、
原発全廃を実現し、
過酷事故の心配のない、
人の命と尊厳が大切にされる街づくりを!
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老朽原発うごかすな!実行委員会
連絡先・木原(090-1965-7102)