◆原告第57準備書面
-避難困難性の敷衍(病院における問題点について)-

原告第57準備書面
-避難困難性の敷衍(病院における問題点について)-

2018年(平成30年)8月24日

原告提出の第57準備書面pdf)

【目次】

第1. 病院・特養の沿革と現在の状況
第2. 入院患者、特養入所者の施設内外での移動方法
第3. 職員の避難について
第4. 院患者・入所者の高齢化の状況
第5. 入院患者、施設入所者の家族構成


原告第6準備書面において、避難困難性について述べたが、本準備書面で病院において理事などを務める西川政治の体験をもとに病院における避難困難性に関する個別事情について述べる。


第1. 病院・特養の沿革と現在の状況

 1 丹後ふるさと病院の状況

丹後ふるさと病院は、1983年8月に52床で開設された。2003年には、160床に規模を拡大し、その後、2012年に60名規模の特養を建設、さらに、2016年に同規模の増設を行った。

丹後ふるさと病院は、現在、病院の許可病床160床、特養は120名の収容規模で運営している。職員は、7月末現在で、非正規雇用含めて318名、常勤換算では258.7名である。7月末現在の病院の入院患者数は158名、特養の入所者数は112名の合計270名である。

 2 丹後ふるさと病院・特養ふるさとの位置など

丹後ふるさと病院・特養ふるさとは、京都府の最北端、丹後半島の京丹後市網野町に位置し、2施設の南に国道178号線が通り、京都府で一番大きな湖である離湖、離湖古墳公園があり、裏側にあたる北方面に小高い林があり防風林の役目を果たしている。

病院の標高は5m弱、離湖は3m弱、海水逆流防止の可動式の防潮堤が設置されているが、北風が吹くと海抜0mになる。離湖から日本海への水路の距離は約500mである。日本海側で地震が発生すれば離湖の水位は、一気に上昇する危険性がある。北側も500m前後で日本海の沿岸になる。その間に40m~100mの丘がある。津波が発生すると、この丘以外に避難する場所は、無い。病院・施設前の国道178号線は、海抜約3~4mであるために自動車は通行不可能になる危険性がある。これは網野町の50~60%が4~5mの海抜の範囲に入り町全体が機能不全に陥る危険性がある。

丹後ふるさと病院・特養ふるさとは、大飯原子力発電所とは直線距離で58.1km、高浜原子力発電所とは46.3kmの位置にある。京丹後市と高浜原発との最短距離は30.2km,大飯原発とは41.9kmとなっている。


第2. 入院患者、特養入所者の施設内外での移動方法

 1 丹後ふるさと病院における避難困難性

丹後ふるさと病院の患者が、避難する場合には、国道178号線を利用することになる。しかし、地震や・津波の影響で、国道178号線が、通行止めとなった場合、避難することは出来ない。2018年5月15日、16日時点の調査によれば、入院患者の内、ストレッチャーを必要とする者は91名、車椅子を必要とする者は155名、自分で動ける者が16名の合計262名であった。仮に、国道178号線が通行できるとしても、ストレッチャーを乗せる救急車と、車椅子を乗せる事の出来るリフト車が必要な患者・入所者数の合計は246名である。

ストレッチャーや車椅子を運ぶ事が可能な車の数も僅かであり、移動にあたっては、ストレッチャー移動の方には、職員2名、車椅子は1名が付添う必要があり、緊急時に、そのような人員を確保することは極めて、困難である。

 2 避難先の問題

仮に、避難先が、兵庫県北部となった場合、兵庫県北部に位置する豊岡病院は、丹後ふるさと病院から約35km、離れており、通常の道路事情でも移動に1時間は必要である。事故発生時には、数時間必要になることも想定される。

自動車や人員の確保、装備等の備蓄状況を踏まえると、自動車で避難することは、難しい。丹後ふるさと病院が保有する車両台数だけでは、1回7名の避難で246名の避難を完了するためには36往復が必要となる。大型バス等が確保できたとしても、バスに乗せ換える事も当然、不可能である。又自分で歩行可能な方も一人で移動することは困難で、必ず付き添いが必要である。


第3. 職員の避難について

丹後ふるさと病院、特養「ふるさと」は大飯原発から58.1km、高浜原発から46.3kmの距離にあり、京丹後市は、高浜原発の事故に際しては、京都府の指導は無く、独自に避難計画を作成している。しかし、国、京都府の予算が付かないために、実施には時間がかかりそうである。丹後ふるさと病院、特養ふるさとでは、火災時の避難訓練は年2回実施しているが、原発事故に対する対策は立てていない。

職員は、2018年7月末日時点で、実数で病院227名、特養91名、合計318名、常勤職員換算で病院173.8名、特養84.9名、計258.7名、週日の日勤113名、特養52名、土曜日の午後と日曜日の日勤は病院46名、特養38名、夜勤は病院17名、特養7名である。避難の場合その勤務状態での対応となる。

職員の家族構成、勤務時間制限、病院、特養の事故に対する認識等により、職員の対応は様々であり、決して強制することはできない。


第4. 院患者・入所者の高齢化の状況

ふるさと病院における入院患者の状況は、100歳以上が12名、80歳以上では221名、70歳以上で見れば262名中248名となる。施設内行動さえも介助が必要であり、このような年齢構成での避難行動は、非常に困難である。

また、京丹後市は、高齢化が、進んでおり、お互いに助け合いながら避難する事など到底考えらない。


第5. 入院患者、施設入所者の家族構成

2017年10月15日と2018年5月23日の調査によれば、入院患者・入所者の家族構成は、高齢者独居世帯が87名で33.5%、高齢者夫婦世帯が51名で19.6%%、2~3世代世帯が121名の46.5%となっている。高齢者独居世帯・高齢者夫婦世帯を合わせれば138名、53.1%に達する。この様な状況では家族による避難の援助も不可能である。

京丹後市で見ると(2015/4/1国勢調査)20.469世帯の内・高齢者独居世帯2.795世帯13.6%、高齢者夫婦帯2,825世帯13.8%の計5.620世帯27.4%になる。65歳以上のいる世帯は12,377世帯60.5%となっており、避難時に家族からの援助は、不可能である。

以上