◆原告第58準備書面
―大阪北部地震と上林川断層―

原告第58準備書面
―大阪北部地震と上林川断層―

2018年11月14日

原告提出の第58準備書面

【目 次】

1 基準地震動算定で上林川断層の延長を拒む被告関電
2 上林川断層の北東延長線は地殻内地震発生機序から当然
3 大阪府北部地震 -「活断層ドグマ」の誤り
4 知られた活断層の延長線上で地震が発生する
5 予想される壊滅的被害



1 基準地震動算定で上林川断層の延長を拒む被告関電

大飯原発の基準地震動は、敷地毎に震源を特定して策定される地震動の震源として、FO-A~FO-B~熊川断層と上林川断層が選定され、算定されている。

その上林川断層は、京都府綾部市付近から北東に伸びる断層である。被告関電は、上林川断層の南西端を綾部市下八田町付近、北東端を京都府福井県県境付近としている。

北東端の延長線上に大飯原発がある。原告らは、活断層としての上林川断層の被告関電の上記評価は過小評価であること、少なくとも「活断層である上林川断層」と、その北東に続いている「地質断層である上林川断層」はもともと一つの断層で「両者が一体として活動する危険性は十分に認められる」から、被告関電が連動を考慮せず、上林川断層を北東方向に延長しないのは重大な誤りであると、被告関電を批判した。

これに対して被告関電は、「地質断層としての上林川断層」は活断層でないから、「活断層である上林川断層」との連動を考慮する理由がないなどと反論している(被告関電準備書面(17)の第6)。

しかし、被告関電の上記再反論は、地殻内地震の発生機序、活断層以外の場所で地震が繰り返されている事実に目を瞑ったものと言うほかない。

被告関電準備書面(3)p51に加筆【図省略】


2 上林川断層の北東延長線は地殻内地震発生機序から当然

 ア 近畿地方は東西方向に主圧力

若狭湾を含む近畿地方で東西方向に主圧力が働いている(国土地理院の観測データ等)。【図省略】

 イ 共役断層

東西方向に主圧力が働いている場合には基本的にその方向とプラス・マイナス45度ずれた方向に、ずれの向きが逆向きになる断層面が走ることとなる。これを共役断層という。【図省略】

 エ 共役断層の典型例

共役断層の典型的な例としては、飛騨高地の北部の富山県南部から岐阜県北部にかけて分布する跡津川断層(北東-南西方向で右横ずれ)と、岐阜県・長野県に跨がる阿寺山地と美濃高原との境界に位置する阿寺断層(北西-南東方向で左横ずれ)や、兵庫県淡路市にあり阪神大震災を引き起こした活断層の1つである野島断層(北東-南西方向で右横ずれ)と、岡山県東部から兵庫県南東部にかけて分布する山崎断層(北西-南東方向で左横ずれ)などが挙げられる。そして、本件大飯原発の西側にある山田断層と郷村断層も共役断層である。共役断層走行は主圧力方向から約90度ずれている。

山田断層と郷村断層は、主圧力の方向が、東から時計回りに25°、西から同じく25°であり、その共役断層は、その主圧力から互いに約45度ずれている。【図省略】

 オ 近畿地方の主圧力が東西方向である事

国土地理院の中部・近畿地方の地殻ひずみ(http://www.gsi.go.jp/cais/HIZUMI-hizumi4.html)によれば、以下のとおりである。「近畿地方:1883年~1994年の約100年間では、紀伊半島を除いた地域においてほぼ東西方向の縮みのひずみがみられます。各種の調査研究結果から1995年の兵庫県南部地震は東西方向の圧縮の力がかかって発生したとされており、ひずみの傾向と調和的です。紀伊半島をみると、南海トラフ沿いの巨大地震(1944,1946年)の影響により最近約100年間では北西-南東方向の伸びのひずみがみられますが、最近約10年間では同じ方向の縮みのひずみがみられるようになります。なお、最近約100年間では、丹後半島に1927年の北丹後地震にともなう影響がみられます。」

つまり、国土地理院の見解によれば、近畿地方の111年間のひずみ変化は、東から日本に押し寄せる太平洋プレートの力が支配的であり、東南から押し寄せるフィリピン海プレートの圧縮力は無視できて、E-W方向の圧縮力を考えればよいというものである。これを被告関電も認めており、大飯原発に最も影響の大きい想定地震としては、FO-B~FO-A~熊川断層が連動して動いた場合のマグニチュード7.8の地震を想定している。これに対して、原告らはFO-B~FO-A~熊川断層と共役関係にある上林川断層の東北延長上でマグニチュード7以上の地震が発生する可能性が高いことを再三指摘してきた。この指摘に対して、被告関電は真摯に対応していない。

 カ 丹後半島から西方の主圧力は、東から時計回りに25°、西から25°

一方、丹後半島から西方に進み鳥取県・島根県までの最近の地震の発生様式を見ると、東南から押し寄せるフィリピン海プレートの影響も無視できなくなる。鳥取県では1943年に鳥取地震(M7.2)、2000年に鳥取県西部地震(M7.3)、2016年に鳥取県中部地震(M6.6)が発生しているし、島根県では2018年に三瓶山の近くで島根県西部の地震(M6.1)が発生している。これらの地震は、東から押し寄せる太平洋プレートに加えて、東南から押し寄せるフィリピン海プレートの影響も考慮して、平均的な圧縮力場の向きをE25°S-W25°N(東から南側へ25°、西から北側へ25°、以下同じ)とすれば、矛盾なく説明できる。すなわち、1943年の鳥取地震(M7.2)の地震断層はN70°E、2000年の鳥取県西部地震(M7.3)の地震断層はN20°W、2016年の鳥取県中部地震(M6.6)は主断層がN20°W、副断層がN70°Eである。また2018年の島根県西部の地震(M6.1)の地震断層はN20°Wである。これらの地震は、圧縮力場の向きがE25°S-W25°Nとして共役関係にある地震断層として説明がつく。この圧縮力場は、前述の山田・郷村断層とも矛盾しない。

 キ まとめ

「FO-B、FO-A及び熊川断層」と「上林川断層」は東西主圧力のもとでの共役断層と考えられるから、大飯原発周辺では、「FO-B、FO-A、熊川断層」の動きを警戒しなければならないことは当然であるが、共役関係にある「上林川断層」にも警戒する必要がある。そして、「上林川断層」は「FO-B、FO-A及び熊川断層」の共役断層であるから、「上林川断層」の北東端を被告のように京都府福井県県境付近とすることは誤りで、「FO-B、FO-A及び熊川断層」まで続き、あるいは、少なくとも延長する。これは、地殻内地震の発生機序からの、論理当然の帰結である。


3 大阪府北部地震 -「活断層ドグマ」の誤り

被告は、「上林川断層」の東北延長部分は活断層ではないとの理由で、「上林川断層」とその東北延長部分は連動しないと言う。

ところで、2018年6月18日07時58分に大阪府北部の深さ約15キロメートルでマグニチュード(M)6.1の地震が発生した。当初は、近くにある活断層の有馬-高槻断層帯、上町断層帯、生駒断層帯のいずれかが動いたと考えられていた。

地震調査委員会、2018年6月18日大阪北部地震の評価添付資料より【図省略】

しかし、気象庁の震央分布図(6月18日~7月24日)によれば、この地震はいずれの活断層が動いたものでもなかった。

気象庁 大阪府北部の地震 地震活動状況(8月19日09時現在)より【図省略】

大阪府北部地震は、近傍に活断層がいくつもあったのに、既存の活断層以外が破壊され震源となった。

原告らは、阪神大震災や鳥取県西部地震の例を挙げて、地殻内地震は活断層の知られていない場所でも起きる、どこで起きてもおかしくないと繰り返し指摘してきた。【図省略】

大阪府北部地震は、地殻内地震は活断層の知られていない場所でも起きるという原告指摘を裏付けるさらなる事実を重ねることとなり、地震は活断層でしか起きない、震源を既存の活断層に限定する考えの誤り、すなわち「活断層ドグマ」の誤りを明らかにした。被告関電は、「活断層ドグマ」に捕らわれている。


4 知られた活断層の延長線上で地震が発生する

既に指摘したとおり、福岡県西方沖地震(M7.0)は、警固断層の延長上で起きた。「上林川断層」の延長上の、大飯原発近傍で同じことが起きないと誰が断言できるであろうか?【図省略】


5 予想される壊滅的被害

「上林川断層」の東北延長上で、M7クラスの地殻内断層地震が起きれば、地震動と津波の影響で大飯原発は壊滅的な被害を受けることになる。安全側にたって、上林川断層とその北東延長部分との連動を考慮しなければならない。

以上