◆弁護団から,京都地裁所長あてに申入書を提出

申 入 書

2019年3月28日

 「開かれた裁判所」、さらには市民の司法参加や司法アクセスの拡大がさけばれて久しい。「開かれた裁判所」は、市民が自らの権利を守るために、いつでも裁判所にかけ込むことができるという裁判を受ける権利を保障した憲法32条に由来する重要な理念・原則である。しかし、いま京都地裁でこの理念に逆行する事態がおこっている。

2018年12月、京都地方裁判所は、裁判所にある5つの出入口のうち、北側入口のみを残して他の出入口を全て閉鎖し、そのうえで裁判所の入庁者に一斉に所持品検査を行うことを決め、本年4月1日から実施するとを発表した。

大飯原発の運転差止等を求める裁判は、2012年12月に提訴され、原告数は現在3000人をこえて、裁判期日には、毎回100人をこえる原告、支援者が集まり、京都地裁で一番大きな101号法廷を埋めている。また、法廷が終った後には、裁判所の東側の出入口から出て東側にある弁護士会館に移動して報告集会を開催している。

しかし、北側以外の入口の出入りを全て禁止して、利用者の多い南側や東側の入口までも閉鎖してしまうことは、入庁者に対して不便を強いるものであって、閉鎖的との批判をまぬがれないものがある。そのうえ、北側入口だけで所持品検査を行うとすると、大飯原発差止訴訟など入庁者が多いときには渋滞が生じ、開廷時間までに法廷に入れないといったことも予想され、また法廷終了後、弁護士会館への移動がスムーズに行われないなどの混乱が生じるのではないかと懸念される。

そもそも、裁判所の出入口を一個所に限定して、そこで所持品検査を行うことは、対立当事者の待ちぶせ等を誘発し不測の事態をひきおこす危険があることが指摘されており、つい最近、東京家裁で女性の当事者の殺傷事件が発生していることはそのことを具体的に裏付けるものである。こうした問題があることから、2019年1月24日京都弁護士会から、京都地裁に出入口を北側に一本化すべきではないなど入庁方法の変更を求める要望書が提出され、また大飯原発差止原告団も同様の申入れを行っている。しかし、裁判所はこうした要望を聞き入れることなく、4月1日からさきに述べた入庁方法を実施しようとしている。

これは裁判を受ける権利の当事者である市民や弁護士会の意見に耳を貸すことなく、裁判所の都合だけを優先して、入庁方法を利用者の不利益に変更するものであって、「開かれた裁判所」の理念に反するものといわなければならない。また、これではたして裁判所が国民の権利保護の砦としての役割を本当にはたせるのかについても疑問をもたざるをえないものがある。

以上から、私たちは、京都地裁が北側入口以外の全ての出入口を閉鎖するという形で市民に対する門を狭めることは「開かれた裁判所」の理念に反し、さまざまな弊害を生むおそれがあることから、裁判所が4月1日から予定している入庁方法の実施を見合せ、少くとも2つ以上の入口を確保するなど必要な再検討を行うことを強く求めるものである。

以 上