◆関西電力 闇歴史◆026◆

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◆裁判(名古屋地裁)では老朽化の原データ提出を拒否(2020年)
◆ようやく出したデータをみると、ひどい手抜き検査が歴然(2022年)
【付 中性子照射脆化(ぜいか)】
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▲関電の原子力事業本部(美浜町、賄賂の舞台)
「安全を守る。それは私の使命。我が社の使命」

【老朽原発40年廃炉名古屋訴訟(高浜1、2号機、美浜3号機が対象)にて】

 重要な争点の一つが、取り替え困難な原子炉容器の中性子照射脆化(ぜいか。金属が中性子を浴び続けるとねばり強さを失いもろくなること)の問題。関電の評価結果では、脆性遷移温度(ぜいせいせんいおんど。金属は一定の温度以下になるとねばり強さを失いもろくなる、その境界となる温度のこと。中性子を浴び続けると脆性遷移温度は上昇 )が全国の原発の中でももっとも高い温度99℃(60年予測時点)と評価されている高浜1号機 のデータ数が異様に少ない

 そこで、これまで原告は、参加人・関電に対して監視試験片(原子炉容器に同じ鋼材の試験片を入れておいて、中性子を浴びてどのくらいもろくなったかを定期的に取り出して試験をする)の原データを提出するよう求めてきたが、一向に提出されない 。被告・国の方はといえば、関電から受け取っていない、認可に当たって原データを確認しなくても問題ないと開き直っている。 仕方がないので、原告側は、裁判所が提出を命令する手続きを使うこととし、高浜事件の方で手続き(2020年7月13日付)をしている。

【老朽原発40年廃炉訴訟市民の会 8/4 午後の美浜の口頭弁論より】
 露木洋司弁護士が、当訴訟で最も重要な問題の一つとして主張している中性子照射脆化問題のうち、破壊靭性(じんせい)遷移曲線(グラフの左から右に上昇する曲線。緊急時に原子炉容器が冷却水で一気に冷やされ収縮した時に、外面との温度差で強い引っ張り応力がかかる<加圧熱衝撃(PTS)>。この時に内面にひび割れがあると、ひびを広げようとする力を受けるが、原子炉容器の鋼材がこの力に耐えられる靭性=粘り強さを評価した曲線。長年、中性子を浴び続けると粘り強さは低下します)の評価式自体の不合理性などについて、被告・国の反論への反論を行いました。

【上の解説、以下のデッドクロス の図解は 老朽原発40年廃炉名古屋訴訟市民の会Facebook、またはその「デンジャラス君通信 No.17」による】

【破壊靭性遷移曲線(左上)と加圧熱衝撃状態遷移曲線(右下)のデッドクロス】

【中性子照射脆化の著しい(=とくに危険な)原発】
廃炉原発6基を除けば、関電の原発ばかり4基!
その4基のうち3基が40年超えの老朽原発!

【ワーストテンの原発】
(1) 高浜1…脆性遷移温度99℃(試験時期:2009)。
緊急炉心冷却装置の作動などで、99℃より低温になると,割れる可能性。
(2)~(5)廃炉(玄海1,美浜2,美浜1,大飯2)
(6) 高浜4…脆性遷移温度59℃(試験時期:2010)。現在,稼働中
(7) 美浜3…脆性遷移温度57℃(試験時期:2011)。現在,稼働中
(8)~(9)廃炉(敦賀1,福島1)
(10) 高浜2…脆性遷移温度40℃(試験時期:2010)
(『原発はどのように壊れるか 金属の基本から考える』 小岩昌宏・井野博満 著)

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◆「老朽原発40年廃炉訴訟市民の会」より(2022/4/7)
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老朽原発40年廃炉訴訟でようやく関電が提出した監視試験片原データでわかったこと

関電のずさんな試験を見逃した規制委のずさんな審査
老朽原発の評価で重要な直近の試験で、原子炉容器本体である母材の試験をやっていない

・参加人(関電のこと)準備書面(13)の提出により、本件原発においては、破壊靭性試験が各回とも「母材」か「溶接金属」のどちらかしか行われていないこと、最も重要となる直近(第4回)の試験については、「溶接金属」の測定しか行われておらず、原子炉圧力容器本体の状態を把握するための「母材」の測定が行われていなかったことが判明した。これは破壊靱性値(試験データ)の致命的不足というべきもの。

・40年廃炉訴訟の重要な争点の一つである原子炉容器の中性子照射脆化。

原子炉容器は鋼鉄でできていますが、長年、強烈な放射線を浴び続けるともろくなります。
そうすると、配管破断等によって緊急に炉心に冷却水を入れた際に持ちこたえられない恐れが高まります。
そこで、どのくらいもろさの度合いが進んでいるのかを調べる必要があるのですが、関電の評価でも、高浜原発1号機は脆性遷移温度(金属が一定の温度以下になると粘り強さを失って脆くなる境界の温度)が99℃と全国の原発で最も高く、緊急冷却時の破損が心配されていました。

わたしたちは裁判の中で、国と関電に対し、この中性子照射脆化を調べる監視試験片(原子炉容器に同じ鋼材の試験片を入れておいて、中性子を浴びてどのくらい脆くなったかを定期的に取り出して試験をする)の原データの提出を求めてきましたが、一向に提出されないため文書提出命令の申し立ても行いました(裁判所に提出を命じてもらうための手続き)。そこまでしてようやく、裁判所の働きかけにより、命令ではなく任意の形で、前々回2月4日の口頭弁論までに関電から一通りのデータが出されました。

このデータを井野博満さん(東大名誉教授、工学博士、専門は金属材料学)に見ていただいたところ、破壊靭性試験※が非常にずさんでびっくりしたとのこと!
(※試験片にき裂を作り、さまざまな温度下で引っ張ってどこまで耐えられるかを調べる試験)

監視試験片の取り出しは10年ごとで、これまでに4回。試験片には、原子炉容器の母材と溶接金属があり、毎回、両方のデータを取っているものと思っていたのに、1回目と3回目が母材、2回目と4回目が溶接金属という、どちらかしかやっていない手抜きの試験だったのです。しかも、老朽原発の評価で重要な直近の4回目に、原子炉容器本体である母材の試験をやっていないのです。

データ数も、高浜1号機が9個、2号機が10個と極めて少なく、そもそも破壊靭性試験は測定値が大きくばらつくことが知られているので(「倍・半分」と言われるほど)、少ないデータではとても適正な評価はできません。他の原発では、各試験回次ごとに母材と溶接金属の両方を複数個以上試験しています(九州電力玄海1号機、四国電力伊方2号機)。

関電が監視試験片原データの提出をずっと拒んでいた理由には、手抜き試験がばれてしまうということもあったのかもしれません。

原子力規制委員会が審査において監視試験片の原データを確認していないことは、法廷で国の代理人がはっきりと述べています。関電も規制委もずさんすぎます。

どちらも原発を扱う資格はありません。老朽原発はこのまま廃炉に。

【20220407 準備書面(84)破壊靭性値データの不足 →こちら

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◆「老朽原発40年廃炉訴訟市民の会」からの報告(2022年8月)
 手抜き検査で、杉本知事と福井県議会に再稼働の再考を要請
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 老朽原発40年廃炉訴訟市民の会は、関電から監視試験片原データが提出されて判明しました破壊靭性試験の驚くべき手抜きと、規制委がこれを見逃していた事実について、8/2付要請書で福井県の杉本知事と福井県議会にご報告し、老朽原発の運転再開同意について再考を求めました。
 議会閉会中につき、各議員に郵送でもお送りしました。

 昨年、当会は、老朽原発運転再開に同意しないよう求める請願書を福井県議会に提出し、原子炉容器の中性子照射脆化の評価において監視試験片の原データが確認されていない問題についても訴えたところ、県議会では3名の議員が取り上げ、原子力規制庁に対し、関電に同データを提出させ確認するよう求めてくださいました。これを踏まえて、杉本知事にも、この重大な問題をお伝えして、原データの確認を規制委に求めること、運転再開に同意しないことを要請しましたが、残念ながらご対応いただけませんでした。
今度こそ、慎重なご対応・ご判断を!

↓ 要請書はこちらからご覧ください。
2022.8.2 福井県知事・福井県議会あて要請書

<添付資料> 関西電力提出書面より、監視試験片の破壊靭性試験データの内訳の表を抜粋
高浜原子力発電所1・2号機
参加人・関西電力 準備書面(13)p.4

美浜原子力発電所3号機
参加人・関西電力 準備書面(10)p.23

*書面は、当訴訟ホームページに掲載しております。右上の項目の「訴訟資料」よりご覧ください。
高浜事件の原告準備書面(84)「破壊靭性値データの不足」もご参照ください。


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