◆関西電力 闇歴史◆046◆

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◆関電争議と関電の原発推進政策
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 関西のトップ企業である関西電力は1960年代から「生産性向上運動」と称して、日本共産党員やその支持者と目した労働者に対し差別的な扱いをしてきた。ビラまきへの処分、監視や尾行、盗み取り、職場での孤立化、賃金差別などの攻撃、差別が行われた。これに対し労働者は関電を告訴し、1969年にはビラ処分事件提訴、1971年には人権裁判提訴などの行動に出た。1995年9月5日には、人権裁判の最高裁判決で、「職場における自由な人間関係を形成する自由」という判決が出され、関西電力の労務管理が憲法違反と断罪された。しかし、関西電力は最高裁判決後も差別責任を認めず、原告らの賃金や資格が低いことの理由として能力や成績が悪いことが原因などとして、差別行為への関与を否認した。

 1998年9月には、近畿をはじめ全国からかけつけた人達約5000人が職場での人権侵害や差別の是正等争議の全面解決を求めて「関電争議支援総行動」を行い、中之島から関西電力本店までデモ行進し、本店前での抗議要請行動を行った。その日、関電はシャッターをおろし、門を固く閉ざして対応。15名の要請団を受け入れず、門の前の激しいやり取りの末、やっと7名の要請団を受け入れるというお粗末な対応であった。要請団は「原告への謝罪や、処遇の改善、争議解決のため話し合いのテーブルにつけ」と強い申し入れを行ったが、関電側は話し合いのテーブルには応じないという態度に終始した。

 この「関電争議」は、30年にも及んだ法廷闘争と労働運動の末、1999年12月8日、大阪地裁において、労働者側の全面勝利により解決した。関電は、憲法に従って他の従業員と公平に取り扱うことなどを約束、解決金を支払って和解した。

 このときの関西電力争議団が母体となって、電力労働運動近畿センターが生まれ、関西電力の労働者、OB、支援者らで組織する労働団体として現在まで運動を続けている。

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◆関電争議に見る原発問題の底流
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 関電社内では、関電が原発を推進するとともに、「電力の民主化」を主張していた労働者への弾圧が激しくなった。1971年にマル秘の労務管理資料が見つかった。それは、会社が特殊対策と称し従業員とその妻の日本共産党籍の有無、交友関係など身辺調査の方法や警察からの情報入手、監視者を配置し尾行・盗撮した状況、さらには職場での孤立化・差別等の攻撃手口まで書いたレポートであった。こうした異常な人権侵害の実態は、社会的にも明るみになった。

 争議団の三木谷英男さん…会社は原発建設の前に、地域に狙いをつけて、そこに原発賛成派をつくる工作をします。札束で住民のなかのコミュニティを分断していくわけです。職場の反共労務管理は、「あのようにされてええのか」と私らを見せしめにして労働者をおどし、私らに接近させないようにするわけです。職場の中と外で、まったく同じやり方なのです。→こちら

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関西電力事件…判決。
 独立行政法人労働政策研究・研修機構
 最三小判平7.9.5 労判680-28
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(1)事件のあらまし
一審原告側労働者Xら(被控訴人・被上告人)は、関西を中心に支店営業等を有する発電・送電等を業とする一審被告側使用者Y(控訴人・上告人)の従業員である。Xらは共産党員もしくはその同調者であり、労使協調路線に反対する組合内少数派に属する者である。

Yは、企業防衛のために「特殊対策」を推進し、Xらにかかってきた電話を調査し、ロッカー内の私物を密かに写真撮影し、他の従業員にXらと接触・交際しないように働きかけ、Xらを会社の行事から排除し、Xらの孤立化を図った。Yの内部資料を入手したXらは、上記の対策を知るに至り、不法行為(故意・過失によって他人の権利を侵害し損害を与える行為)に基づく各自200万円の慰謝料と87万1,000円の弁護士費用、ならびに謝罪文の掲示と社内報への掲載を求めて訴えを提起した。

(2)判決の内容
労働者側勝訴

Xら一人あたり80万円の慰謝料と10万円の弁護士費用の支払いをYに命じた第二審の判決を支持した。

Yは、Xらが現実には企業秩序を破壊し混乱させるなどのおそれがあるとは認められないにもかかわらず、Xらが共産党員又はその同調者であることのみを理由とし、その職制等を通じて、職場の内外でXらを継続的に監視する態勢を採った上、種々の方法を用いてXらを職場で孤立させるなどしたというのであった。

これらの行為は、Xらの職場における自由な人間関係を形成する自由を不当に侵害するとともに、その名誉を毀損するものである。また、ロッカー内の私物を写真撮影する行為はプライバシーを侵害するものでもあって、同人らの人格的利益を侵害するものである。これら一連のYの行為は、YのXらに対する不法行為を構成し、YはXらに対して慰謝料等を支払うよう命ずる。

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◆今も関電社員による「ビラ回収」(2020年)
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電力労働運動近畿センターからの訴え

 写真は、過日、関電滋賀支社前にて、当センター機関紙「人権」を配布しているときに、関電社員が配布者の目の前で「ビラ回収」しているさまです。明らかに言論・表現・出版の自由を侵す憲法違反行為であります。原発マネー還流疑惑で世間から批判を浴びている状況下、このような憲法違反行為を平気で行っています。大いに猛省を促すものであります・・・

 みなさまのメル友、フェイスブックなど大きく拡散願えれば幸甚です。宜しく願いします・・・(2020年)

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◆ビラまきへの妨害、2022年6/28 株主総会でも質問
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『2022 年関西電力株主総会ドキュメント』より
NPO法人 エネルギ―未来を考える市民株主と仲間の会
大阪市福島区福島2-8-16 コトブキビル 4F 電力労働運動近畿センタ―内

■ビラまきへの妨害、職場における自由な人間関係を形成する自由の侵害について
Q:(伊藤理事)
社内での活発な議論が、原子力の安全の推進 などに役立つ。先程は国際的な基準に則って社内で取り組むという話があった。しかし、1995年に社内の人権問題について最高裁から、職場における自由な人間関係を作る自由を侵してはならないという判決が下された。その判決は今でも有効で、それは今でも社内で実行していくものだと思っている。しかし、滋賀支社においては、門の前でビラをまいていると、社内から社員が出てきて、ビラの受け取りを監視していたり、ゴミ箱を置いてここに入れろと言っている。さらにひどいのは、ビラを別の社員が取り上げるという人権侵害が行われている。これは関西電力が、その社員に指示して行なっていたものか? お答え願いたい。
A:(宮本常務)
当社では、国際基準に基づく人権尊重に関す る方針を策定して、企業活動に関連する人権への負の影響を防止し、軽減し、当然のこととして人権尊重への責任を果たす。「関西電力グループ行動憲章」には人権尊重の責任果たす旨を表明し、また「ビジネスと人権に関する指導原則」が求める要件を考慮して人権方針を策定たところで、それについて取り組む。ご指摘のような、会社として社員に指示したということはない。

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◆電力労働運動近畿センターとは
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・関西電力の労働者、OB、支援者らで組織する労働団体。その母体となったのは「関西電力争議団」。

・1946(昭和21)年に発電、送電、配電関係労組で結成された産業別組合「日本電気産業労働組合(電産)」は、1950年代前半にかけて日本の労働運動に指導的役割を演じた。しかし、その後の歴史は、企業別連合の電労連(のち電力労連)に至る。1981年、電力労連が中心となり、電工労連、全国検集労連、電保労連の大部分とともに全国電力関連産業労働組合総連合(電力総連)を結成。1989年、総評の解散に伴い、日本労働組合総連合会(連合)に加盟。

・1960年の安保闘争のあと、関西電力の経営は、共産党やその支援者、いわゆる「左派」の労働者を職場から排除するか、考え方を改めさせる「反共労務管理」を進めていく。転向強要、不当配転、職場でのいじめなどが常態化し、人権無視の労務管理の中で、退職に追い込まれる者も多く、中には自殺者も出た。労働組合から締め出され、職場でも孤立させられた「左派」の労働者にとって、自分たちの考えを訴える最後の手段はビラを配って、思いを訴えること。だが、それも許さず、懲戒処分にしてしまう。そして、すべての労働者をしめつける労務政策が、原発推進政策と軌を一にして、強化された。1970年初めて美浜原発が稼働した。

・こうした人権侵害、賃金差別の是正を訴え、101人の労働者が「関西電力争議団」として関電を提訴した。この「人権裁判」では、提訴から25年後の1995年、最高裁が「現実には企業秩序を破壊し、混乱させる恐れがあるとは認められないにもかかわらず、共産党員またはその同調者であることのみを理由にして行われた関電の反共労務管理は、異常で非人間的な不法行為だ」と述べ、「職場での自由な人間関係を形成する自由を侵してはならない」という判断を下した。

・この判決から4年後の1999年、関電は憲法に従って他の従業員と公平に取り扱うことなどを約束。解決金として12億円を支払って和解した。その資金で設立されたのが、電力労働運動近畿センター。

・電力労働運動近畿センターは、働く人々の助けあい、交流と学びをすすめている。
 ●私たちの想い…「環境」、「人権」、「平和」、「格差是正」、「青年の参加」
 ●活動…①働く人々の連帯、②対話と相談活動、③市民との連帯、④政策研究、⑤新しい労働運動
 〒553-0003 大阪市福島区福島2-8-16 コトブキビル401号

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◆関西電力–人権裁判、ネット上の情報
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・関西電力争議、全面勝利解決|京都第一法律事務所
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・関電裁判に見る原発問題の底流|京都第一法律事務所
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・関西電力の人権侵害
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・「関西電力争議」勝利和解から20年|うずみ火
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・『関西電力の誤算 上・下 』(2002年)。徹底した“忠誠”を求める関西電力と、人間の“自由”を求めて闘いつづけた30年にわたる人々の真実のドラマ【推薦・佐高信】。労働旬報社
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