◆関電と原発 memo No.16–テレビから消された「福島原発事故」

◆2019年に、元号が平成から令和に変わったとき、テレビでは「平成を振り返る」という企画があふれた。
◆しかし、その中では「福島原発事故」は消されてなかったことにされていた。
◆以下、「テレビに関する話題……本と雑誌のニュースサイト/リテラ」2019.04.30 より→[こちら

テレビから消された「福島原発事故」
広告漬けと政権忖度で
原発事故はなかったことに

◆原発事故は当事者である吉田昌郎・福島第一原発の所長(当時)がいったんは「東日本壊滅を覚悟した」と回想したくらいの危機的な状況だった。そして、いまも4万人以上の人々がこの原発事故の影響で故郷を追われ、避難生活を強いられている。

◆そんな重大事故をテレビの“平成振り返り企画”が不自然なくらいに避けまくっているのだ。これはいったいなぜなのか。

東京五輪を控えて強まる忖度、そして原発広告の復活

◆もちろんその理由のひとつは安倍政権に対する忖度だろう。現在、安倍政権は、原発被災者への支援打ち切りと強引な帰還政策を推し進める一方で、まるで事故などなかったかのように、原発再稼働を推し進めている。また、東京五輪を来年に控えて、原発事故の影響などないことをアピールしようと必死になっている。

◆「直接的な現場への圧力というのはないが、局の上層部には、『五輪を前に日本の安全をアピールする必要がある。協力してほしい』というプレッシャーがかかっているようです。そのためか、原発事故をクローズアップしようとすると、上から『風評被害を助長するのはどうか』とクレームがつく。振り返り企画でも、そういう空気を忖度したということでしょう」

◆さらに、もうひとつメディアが原発事故を取り上げない理由がある。それが電力会社によるメディアへの“原発広告”の復活だ。

◆事故以前、東京電力をはじめとする電力各社やその司令塔・電力事業連合会(電事連)は新聞、テレビ、週刊誌などのマスコミに広告を大量出稿することで、原発に批判的な論調を封じ込めてきた。しかし原発事故が起こされると、安全神話を作り出してきたマスコミ、そして広告に出演していた芸能人や学者たちにも批判が高まり、電力会社からの広告は一時なりをひそめたかに見えた。

◆ところが事故から3、4年が経った頃から、メディアでは“原発広告”が完全に復活。さらに、原発再稼働政策を推し進める安倍政権と歩調を合わせるように、電力業界は広告費を増やし、再びマスコミを“カネ”で漬け込んで“原発タブー”を作り出しているのだ。

◆実際、電力業界の広告宣伝費は総じて右肩上がりだ。日経広告研究所が毎年発行している『有力企業の広告宣伝費』によれば、大手電力10社のうち、東京電力ホールディングスこそ福島原発事故以降の広告費は下降基調だが、他9社は全体として上昇の傾向にある。

関西電力、九州電力の広告費は3倍増に!
広告漬けでマスコミが再び
原発安全神話に加担し、原子力ムラと一体化

◆たとえば、関西電力は美浜、大飯、高浜の3原発を擁するが、年間広告費は2015年度の31億円から翌16年度に92億円と実に3倍増。2017年の大飯、2018年の高浜再稼働とリンクしていると考えられるだろう。

◆川内原発、玄海原発を持つ九州電力も露骨だ。専門家から火山のリスクなどが散々指摘されながら2015年に川内原発を再稼働し、昨年は玄海原発も続いた。前後の年間広告費を見てみると、2014年度に12億円だったものが、17億円(2015年度)、30億円(2016年度)、41億円(2017年度)と3年で3倍に膨れあがった。

◆また、浜岡原発をかかえる中部電力は2014年度に36億円まで下がったが、2015年度は76億円と倍以上伸ばし、2016年度が約80億円、2017年度が76億円。これは福島原発事故前の2010年度(80億円)と同じ水準まで広告費を回復させたことを意味している。

◆他にも、東北電力は2016年度に66億円、2017年度に64億円と2年連続で60億円台を記録(2010年度=85億円)、中国電力は2017年度に35億円(2010年度=42億円)、四国電力は2017年度に24億円(2010年度=30億円)まで上昇しており、いずれも福島事故前の水準に迫ろうという勢いだ。

◆非公開の電気事業連合会(電事連)や原子力発電環境整備機構(NUMO)など関連団体の広告予算もかなりの水準で上昇しているのは間違いない。事実、新聞や雑誌の広告だけでなく、すこし前からはテレビでも電事連のCMがごく普通に垂れ流されるようになっている。

◆こうした“原発広告漬け”の中、メディアの原発事故関連の報道は激減し、原発再稼働に対する批判も行われず、そして今回のように「平成の終わり」という大イベントでの振り返り特番でも、原発事故は「なかったこと」にされてしまったのだ。

◆おそらく本日(2019/4/30)から明日(2019/5/1)にかけて大量に流される各局の「即位特番」や「平成振り返り特番」でも、福島原発事故が正面から取り上げられることはないだろう。

◆安倍政権への忖度、原子力ムラによる大量の広告出稿によって、マスコミは再び原発安全神話に加担し、原子力ムラと一体化しつつある。

◆平成の最大の人災でもあり、世界でも未曾有の原発事故を平成の終わりとともに「なかった」ことにされてしまうのだろうか。

非公開の電事連や原子力発電環境整備機構(NUMO)など
関連団体の広告予算もかなりの水準で上昇か