◆関電と原発 memo No.19–高浜原発でたびたび蒸気発生器細管の異常

高浜原発3、4号機の蒸気発生器細管で
たびたび傷が発見されるも、原因は不明

◆高浜3号機の蒸気発生器の細管で傷が見つかった問題、傷の元になったと見られる異物(下図)の一部が回収された問題(関電の4/17のプレスリリース)は、深刻な事故につながりかねない。

◆高浜原発では、これまでから稼働中の3号機と4号機で蒸気発生器細管の損傷事故が続いている。
(1) 2018年9月に3号機で1本、
(2) 2019年10月には4号機で計5本の蒸気発生器細管で削れられたとみられる個所が確認された。
(3) 今回、2020年2月、3号機で2本に接触痕が認められた。

これまで原因不明のままで
運転を継続しているが
細管の破裂は
重大事故の恐れが大きい

(1) の3号機の場合は、異物は発見されたが、それは管に傷を付けるほどのものでないということで、原因は不明のまま。作業員の衣服等に付着したものが外部から混入したと決めつけ「分解点検時に使用する機材や内部に立ち入る作業員の衣服等に異物の付着がないことを確認することについて、作業手順書に追記して、異物混入防止の更なる徹底を図る」ことで決着している(2018/9/20)。

(2) の4号機の場合も、傷の元になった異物を見つけられないまま、無理矢理、再稼働している。関電の対策は、原因を作業員の衣服等に付着したものが外部から混入したとして、「作業員が機器に立ち入る際には、作業服を着替えるとともに靴カバーを着用する。垂直配管に取り付けられている弁の点検後、目視による点検が困難な箇所に対してファイバースコープによる異物確認を行う」ことに(2019/11/28)。規制意欲のない規制委もこれを追認した。滋賀県は、関電に対して徹底して調べるように求めた(2019年11月「避難計画を案ずる関西連絡会」の申入に県が回答)が、無視された。

(3) 今回、3号機で細管の傷の元になったと見られるステンレス金属片が見つかったのは良かったが、他にはないのか。それがどうして混入してしまったのか、元はシール材とすればどうして剥がれてしまったのか。剥がれないようにできるのか。

◆また、今回の減肉はB-SGの伝熱管1本とC-SGの伝熱管1本で発生しているのに、異物が発見されたのは、A―SGとC―SG各1個ずつで、B-SGではまだ見つかっていない。
(SG=蒸気発生器。高浜原発では、A~Cの3台の蒸気発生器がある)

すべての異物を見つけ出し
原因究明と対策ができるまで、
再稼働すべきでない!

◆今回のプレスリリース(4/17)を読むと
(→こちら
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高浜3号機で蒸気発生器の細管を傷つけた金属片について。

・C―SGで回収した金属片は、一つが縦約33mm、横約5mm、厚さ約0.2mm、重さ約0.3g、A―SGで回収した金属片は、縦約24mm、横約5mm、厚さ約0.2mm、重さ約0.2gの線形状。
・成分分析の結果、主成分は鉄であり、その他にクロムとニッケルが検出され、ステンレス鋼と推定。
・これらの分析結果から、金属片は配管等に使用されているうず巻ガスケット(幅4.5mm程度。配管の継手部や容器のマンホール部、弁やポンプのボンネット部に使われているシール材。SG外の2次冷却系配管内の部品)の一部である可能性があると推定。
・電子顕微鏡による観察の結果、金属片にはいずれも複数箇所で筋状の擦れ跡や摩耗、打痕が認められた。
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◆関西電力は4/17、高浜原発3号機の定期検査を12/22まで延長し、再起動を12月に延期すると明らかにした。当初は4月上旬を予定していたが、伝熱管の損傷が見つかり、蒸気発生器から異物が発見されたため調査する。3号機は、テロ対策で設置が義務付けられた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)が期限の8/3までに完成できないため、営業運転は3か月程度で停止する見込みだった。定期検査の延長(~12/22)で、関電は「再起動は特重施設の設置後(12/23~)」としている。

▼高浜3号の運転計画(福井新聞より)

美浜原発2号機では、
蒸気発生器の細管破断により
原子炉が自動停止、
緊急炉心冷却装置が作動

◆1991年2月9日、美浜原発2号機の蒸気発生器の細管1本が破断し、原子炉が自動停止、緊急炉心冷却装置 (ECCS) が作動する事故が発生。この事故は日本の原子力発電所において初めてECCSが実際に作動した事故であった。

◆原因は、伝熱管の振動を抑制する金具が設計通りに挿入されておらず、そのため伝熱管に異常な振動が発生し、高サイクル疲労(金属疲労)により破断に至ったものと判明した。この金具は点検対象とされていなかったことも一因とされる。

◆この事故により微量の放射性物質が外部に漏れたが、周辺環境への影響はなかったと発表されている。しかし、美浜沖の海水から、通常なら数Bq/Lより少ないトリチウムが、2月10日に470Bq/L、2月18日にも490Bq/L検出された(Wikipedia)。