◆危険すぎる老朽原発

【2020年5月15日,京都キンカンで配付】

原発は現代科学技術で制御できない

◆福島原発事故から 10年目になりました。この事故は、原発が重大事故を起こせば、人の命と尊厳を奪い、職場を奪い、農地を奪い、海を奪い、生活基盤を根底から奪い去ることを、大きな犠牲の上に教えました。原発事故の被害は長期におよびます。避難された方の多くは今でも、避難先で苦難の生活を送っておられます。事故を起した原子炉の内部の様子は、高放射線のため、ごく一部しか分からず、溶け落ちた核燃料の取り出しの目途も立っていません。汚染された土壌の除染法はなく、ごく表層をはぎ取ってフレコンバックに保存する他はありませんが、そのフレコンバックも、放射線と風化によって破損し始めています。トリチウムなどの放射性物質を含む大量の汚染水が溜り続け、太平洋に垂れ流されようとしています。

◆福島原発事故は、原発が重大事故を起せば、放出された放射性物質が風に乗って運ばれ、被害は広域におよぶことを実証しました。事故炉から50 km離れた飯舘村も全村避難になり、200 km以上離れた関東でも高放射線地域が見つかっています。これは、若狭の原発が重大事故を起せば、約260万人が住む京都府、約140万人が住み琵琶湖を有する滋賀県を始め、関西や中部の多くの部分が放射性物質に汚染されかねないことを示します。

原発は、事故を起さなくても、運転すれば、長期の保管を要する使用済み核燃料を残しますが、その行き場はなく、何万年もの未来にまで負の遺産を押し付けることになります。また、トリチウムを含む冷却水を垂れ流します。

福島事故後に再稼働した原発でもトラブル続きです(以下はトラブルの例です)。

  1. 川内原発1号機;2015年8月再稼働、再稼働10日後、復水器冷却細管破損。
  2. 高浜原発4号機;2016年2月、再稼働準備中、1次冷却系脱塩塔周辺で水漏れ。
  3. 伊方原発3号機;2016年7月、再稼働準備中、1次冷却水系ポンプで水漏れ。
  4. 高浜原発4号機;2018年8月再々稼働、再々稼働準備中、8月19日に、事故時に原子炉に冷却水を補給するポンプの油漏れ。20日には、温度計差込部から噴出した放射性物質を含む蒸気が原子炉上蓋から放出される深刻なトラブル。
  5. 玄海原発3号機;2019年3月再稼働、再稼働1週間後、脱気装置からの蒸気漏れ(配管に1 cmの穴)。
  6. 高浜原発4号機;2019年10月、再々稼働準備中、3台設置されている蒸気発生器の伝熱管5本の外側が削れて管厚が40~60%減少していることを発見。関電と規制委員会は、高浜4号機の伝熱管の減肉や損傷は、伝熱管 蒸気発生器 内に異物が混入し、配管を削ったためとしたが、蒸気発生器の1台からはステンレス片の小片が見つかったものの、他の2台の蒸気発生器では、伝熱管が破損した異物は特定できず。それでも、関電は、破損した伝熱管に栓をして、高浜4号機の再々稼働を本年1月末に強行。
  7. 高浜原発3号機;本年2月、再々稼働準備中、蒸気発生器伝熱管の減肉・損傷。関電は、異物の混入のためとし、再々稼働を12月まで延期した。

◆このように、再稼働、再々稼働を進める全ての電力会社がトラブルを起こしています。これは原発の点検・保守や安全維持の困難さを示唆し、配管の腐食や減肉、部品の摩耗などが進んでいることを示しています。また、傲慢で安全性を軽視することに慣れ切り、緊張感に欠けた電力会社が原発を運転する能力・資格を有していないことを実証しています。とくに、蒸気発生器へのたび重なる異物の混入は、原発の保守や点検がずさんな体制で行われていることを示します。さらに、規制委員会が適合とした多くの原発が再稼働前後にトラブルを起こした事実は、原発の再稼働にお墨付きを与えた新規制基準が極めていい加減な基準であり、規制委員会の審査が無責任極まりないことを物語っています。

◆なお、トラブルの中でも蒸気発生器伝熱管の損傷はとくに深刻です。蒸気発生器は、原子炉から出てくる高温・高圧の熱湯によって蒸気を発生させる装置で、伝熱管の内部には、約160気圧、摂氏約320度の高温・高圧水が流れています。もし、この伝熱管が完全に破断すれば、高圧の原子炉水が噴出し、原子炉が空焚きになり、ついにはメルトダウンする可能性があります。実際、1991年に美浜原発2号機でこのような伝熱管破断が起き、緊急炉心冷却装置が作動しています。損傷した伝熱管も多数に上ります。例えば、高浜原発3号機には伝熱管が約1万本ありますが、一昨年9月段階でその3.6%にあたる364本が摩耗による減肉や腐食と引っ張る力の共同作用で生じるひび割れ、いわゆる応力腐食割れによって使用不能になり、栓がされています。

原発は老朽化すると危険度が急増

◆上記のトラブルを起こした原発は、1984年7月(川内1号機)、1985年1月(高浜3号機)、1985年6月(高浜4号機)、1994年3月(玄海3号機)、1994年12月(伊方3号機)に運転を開始していますから、トラブルを起こした時点で、運転開始後21年~35年超えでした。このように、運転開始後40年に満たない原発であっても、腐食や摩耗が進み、また、ずさんな点検・保守によって、重大事故を起しかねない状況にあります。

その原発が、老朽化すると、重大事故の確率が急増します(運転開始後40年を超えた原発を老朽原発と呼びます)。老朽化すれば、例えば、高温、高圧下で大量の放射線(中性子)に曝(さら)され、交換することのできない圧力容器(原子炉本体)などが脆化(ぜいか;もろくなること)し、配管が腐食などによって減肉(やせ細ること)するからです

◆また、40年以上も前に建設された原発では、建設時には適当とされていたが、現在の基準では不適当と考えられる部分が多数あります。しかし、その全てが見直され、改善されているとは言えません。例えば、地震の大きさを過小評価していた時代に作られた構造物、配管の中で交換不可能な圧力容器などです。
さらに、老朽原発では、建設当時を知る技術者は殆ど退職していますので、非常時、事故時の対応に困難を生じます。一方、建設当時の図面などの記録が散逸している可能性があり、原発の安全管理の支障となります。

◆それでも、関西電力(関電)と政府は、今年、運転開始後45年超え、44年超え、43年超えになる老朽原発・高浜1、2号機,美浜3号機の再稼動を画策しています。また、原発の40年超え運転は「例外中の例外」としていた政府は、この約束も反古(ほご)にしようとしています。

老朽原発運転を企むのは、
原発で私腹を肥やす関電

◆昨年9月、関電が支払った原発関連工事費が、多額の金品として関電幹部に還流されていたことが明らかになり、また、今年3月には、電気料金値上げの際にカットした役員報酬や役員が追加納税した税金を、退任後、関電が補填をしていたことが明らかになり、多くの人々の怒りをかっています。

◆このお金は、元をただせば私たちが支払った電気料金です。私たちの電気料金を建設業者などに垂れ流し、汚れた原発マネーとして関電幹部に還流させたのです。

しかも、お金を受けとった関電幹部のほとんどは、原発の推進に奔走した人たちです。この事は、危険極まりなく、喜んで引き受ける場所がない原発を引き受けさせる見返りとして、地域自治体、企業、住民に汚れた原発マネーをバラマキ、「人の命と尊厳」を犠牲にして「経済的利益」を選択することを強いたことを物語っています。関電とその幹部たちは、住民の安心・安全や電力消費者の利益をないがしろにして、私服を肥やしていたのです。とんでもないことです。

◆このように、原発が汚れた原発マネーによって推進されたことは明らかですが、それでも関電は、原発の運転を継続し、危険極まりない老朽原発まで再稼働させようとしています。また、不祥事を反省して役員人事を刷新したと言っていますが、会長に、不祥事の原因である原発の推進を掲げる榊原前経団連会長を就任させようとしています。関電幹部には、人の命と尊厳を大切にするための企業倫理や法令を遵守する姿勢がないことは明らかです。

老朽原発再稼働準備工事で
人身事故多発

◆昨年9月19日、老朽原発・高浜1、2号機の特定重大事故対処施設(いわゆるテロ対策施設)建設用のトンネル内で溶接作業にあたっていた9人が一酸化炭素中毒で救急搬送されました。一人は、滋賀県の病院にドクターヘリで運ばれ、集中治療室で治療を受け、ほかの8人は小浜市の病院に搬送され、3人が集中治療室に入りました。事故の起こったトンネルには外気を取り込む送気ダクトが設置されていませんでした。

◆今年3月13日には、高浜原発1、2号機の敷地内にある掘削中の作業用トンネルで、発破準備作業の安全監視中であった協力会社社員が、発破用の火薬を運ぶために後退してきたトラックにはねられ、病院に搬送されましたが、3時間後に亡くなられました。はねられた社員は耳栓をし、トラックに背を向けていたそうです。このトンネルは、テロ対策施設建設用に掘削されていました。関電は、この死亡事故によって、高浜原発1、2号機で進めている安全対策工事などの行程を見直し、1号機では工事完了時期が4カ月遅れ、9月にずれ込むと発表しました。

◆さる4月11日には、高浜原発1号機の安全対策工事を行っていた協力会社の会社員が、脚立から転落し、骨盤を折る重傷を負われました。

これらの最近起こった人身事故は、老朽原発再稼働のために行われていた作業中のものです。老朽原発を無理矢理動かそうとして、安全な労働環境づくりを怠ったために起こった事故です。経済的利益のみを優先して進められる老朽原発再稼働準備が、悲劇を呼んでいるのです。

◆危険な原発、とりわけ危険な老朽原発再稼働のための工事の即時停止を求め、老朽原発の即時廃止を実現しましょう!

原発のない若狭は
実現できる!

◆今、関電や政府は、45年超えにもなろうとする老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機を再稼働させ、全国の原発60年運転を先導しようと懸命です。人の命と尊厳をないがしろにする原発社会の延命を図っているのです。許してはなりません!

◆いま、脱原発・反原発は圧倒的な民意ですが、老朽原発の運転に反対する声はさらに大きく、運転を認める声などほとんどありません。

原発の40年超え運転を阻止すれば、美浜町からは即時、高浜町からは5年後に、おおい町からは13年後に、原発がゼロになります。2033年には若狭から、2049年には全国から、運転中の原発が無くなります。

◆原発反対の行動が高揚すれば、もっと早く原発をなくすことも可能です。原発のない社会は、すぐそこです。原発ゼロに向けて、大きく前進しましょう!

「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」実行委員会
連絡先:木原(若狭の原発を考える会090-1965-7102)


9月6日(日)
「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」

に総結集し、老朽原発の廃炉を実現しよう!

場所;大阪市内(詳細は決定次第公表します)