◆危険すぎる老朽原発うごかすな!重大事故が起こったとき避難は困難

【2021年1月~,京都キンカンなど各地で配付】

原発は現在科学技術で制御できない

◎福島原発事故から 10 年を超えましたが、この事故は、原発が重大事故を起こせば、人の命と尊厳を奪い、職場を奪い、農地を奪い、海を奪い、学校を奪い、生活基盤を根底から奪い去ることを、大きな犠牲の上に教えました。

原発が重大事故を起せば、放出された放射性物質が風や海流に乗って運ばれ、被害は広域におよびます。福島原発事故では、事故炉から 50 km 離れた飯舘村も全村避難になり、200 km 以上離れた関東でも高放射線地域が見つかっています。

原発事故の被害は長期におよびます。福島原発事故で避難された方の多くは今でも、避難先で苦難の生活を送っておられます。事故を起した原子炉の内部の様子は、高放射線のため、ごく一部しか分からず、溶け落ちた核燃料の取り出しの目途も立っていません。汚染された土壌の除染法はなく、ごく表層をはぎ取ってフレコンバックに保存する他はありません。

 トリチウムなどの放射性物質を含む大量の汚染水が溜り続け、太平洋に垂れ流されようとしています。

◎原発は、事故を起さなくても、運転すれば、トリチウムを含む冷却水を垂れ流します。

 以上のように、原発は現在科学技術で制御できる装置でないことは明らかです。

原発が老朽化すれば危険度が急増

 原発は事故の確率が高い装置ですが、長期間運転すれば、危険度はさらに高くなります。したがって、政府は、福島原発事故後 4~5 年間は、「運転開始後 40 年を超えた原発の稼働は例外中の例外」としていました。そのため、40 年超えの原発は老朽原発と呼ばれています。2021 年 4 月現在、高浜原発 1 号機(46 年超え)、2 号機(45 年超え)、美浜原発 3 号機(45 年超え)、東海第 2 原発 1 号機(42 年超え)が老朽原発です。

 原発が老朽化すれば、交換することのできない圧力容器(原子炉本体)などが脆化(ぜいか;もろくなること)し、配管が腐食などによって減肉(やせ細る)あるいは応力腐食割れ(腐食環境にある金属に力が加わって生じる亀裂)などが生じます。

 また、老朽原発では、建設時には適当とされていたが、現在の基準では不適当と考えられる部分が多数あります。例えば、地震の大きさを過小評価していた時代に作られた構造物、配管の中には交換不可能なものがあります(圧力容器など)。

 それでも、関西電力(関電)と政府は、原発の 40 年超え運転は「例外中の例外」としていた約束をホゴにして、老朽原発・高浜 1、2 号機,美浜 3 号機の再稼動を画策しています。

老朽原発の運転認可後に、想定外の
トラブル、人身事故、不祥事が頻発

 原子力規制委員会(規制委)は、2016年、老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機の40年超え運転を、拙速審議によって認可しました。しかし、この認可以降に、関電の原発では、トラブル、死亡を含む人身事故、原発マネーに関わる不祥事などが頻繁に発生・発覚しています。規制委による審査の過程では想定されていなかったことばかりです。

 原発の40年超え運転が、人の命や尊厳を軽視し、企業倫理をないがしろにして画策され、無責任な規制委がそれを認可していることを示しています。なお、規制委審査のいい加減さは、昨年12月4日の大阪地裁判決が端的に指摘しています。大阪地裁は、規制委が推定した原発敷地で生じる地震の大きさ(基準地震動)が過小であるとしたのです。

蒸気発生器で多発する配管損傷はとくに深刻

 頻発するトラブルの中でも蒸気発生器配管の損傷はとくに深刻です。関電の原発のような加圧水型原発の格納容器の中には、圧力容器と蒸気発生器(3~4 器)があります(図参照)。

 圧力容器の中には核燃料があり、蒸気発生器の中には、外経約 2.2 cm、肉厚約 1.3 mm の伝熱管と呼ばれる細管が約 3400本あります。圧力容器で 157 気圧、320℃の熱湯となった1次冷却水は、伝熱管内を巡って、伝熱管の外を流れる 2 次冷却水を沸騰させて、約 60 気圧、約 280℃の水蒸気にします。この水蒸気が、発電機に連結されたタービンを回します。

 もし、高温・高圧の一次冷却水が流れる蒸気発生器配管が完全に破断すれば、冷却水が噴出し、原子炉が空焚きになる可能性があります。そのため、「蒸気発生器は、加圧水型原発のアキレス腱」と呼ばれています。

 最近では、高浜 4 号機(1 昨年 10 月)、3 号機(昨年 2 月)で、蒸気発生器伝熱管の外側が削れて管厚が 40~60%減少していることが見つかりました。関電は、混入した「異物(金属片)」が、配管を削ったためとしました。また、大飯 3 号機では、昨年 9 月、原子炉と蒸気発生器をつなぐ配管か枝分かれした直径約 11 cm、厚さ約 14 mm の配管(加圧器スプレー菅)の溶接部に、深さ約 4.6 mm、長さ約 6.7 cm の亀裂が発覚しました。原因は応力腐食割れ(前述:しばしば未熟な溶接技術によって生じる)とされています。関電は、次の定期検査まで運転を継続しようとしましたが、規制委は運転停止を命じました。さらに、高浜 4 号機では、昨年 11 月にも蒸気発生器伝熱管の外側からの減肉・損傷が発覚しました。関電は、伝熱管外側に自然発生した鉄さびの塊(スケール)がはがれて、伝熱管を減肉・損傷させたと発表しました。

 人がうっかりミスで持ち込んだ「金属片」、自然発生した鉄さびの塊、腐食で脱落したボルトなどが、冷却水の流れに乗って高速でかけ巡って、配管を損傷させているのです。

 破断すれば重大事故を招く蒸気発生器配管の損傷は多数に上ります。例えば、高浜原発 3 号機では、2018 年 9 月段階で約1 万本の伝熱管の内、364 本が摩耗によって使用不能になり、栓がされています。

 蒸気発生器の破損は、取り替えたばかりの蒸気発生器でも起こっています。米国のサン・オノフレ原発 2、3 号機では、2010年、2011 年に蒸気発生器を新品に取り替えましたが、2012 年、両機ともに 3000 本以上の蒸気発生器伝熱管に早期摩耗が発見され、2013 年 6 月に廃炉となりました。

 このように損傷し易い蒸気発生器ですが、高浜 1、2 号機、美浜 3 号機の蒸気発生器は、更新後、約 25 年も経過しています。それでも、規制委はこれらの原発の運転を認可しています。腐食、減肉、損傷が頻発する蒸気発生器を持ち、運転開始後40 年をはるかに超えた老朽原発・高浜 1、2 号機、美浜 3 号機の運転を許してはなりません。

原発重大事故時、避難は不可能

避難訓練を行わなければならないほど
危険な施設は原発だけです

 政府や自治体は、原発重大事故を想定した避難訓練を行っています。それは、原発は重大事故を起こしかねないことを、政府や自治体が認めているからです。ただし、政府や自治体で考えている「原発災害時の避難計画」では、わずかの期間だけ避難することになっていて、避難に要するバスの台数も避難する場所も全く足りません。政府や自治体は、原発事故では住民全員が、何年も、何十年も、あるいは永遠に故郷を奪われることをあえて無視して、「避難訓練を行った」とするアリバイ作りをしているのです。(大規模で長期の避難訓練は不可能であるからです。)

 原発が重大事故を起こせば、原発近辺だけでなく広範な周辺地域も放射性物質で汚染されます。高浜原発から福井県庁は 88 km 離れていますが、京都府庁は 59 km、滋賀県庁は64 km の地点にあります。若狭の原発から 100 km の圏内には、76 万人が住む福井県のみならず、257 万人が住む京都府、141 万人が住む滋賀県の全域、大阪府、兵庫県、岐阜県、奈良県の多くの部分が含まれます。福島事故では、事故炉から約 50 km 離れた飯舘村が全村避難であったことを考え合わせれば、若狭の原発で重大事故が起こったとき、何 100万人もが避難対象になりかねません。避難は不可能です。琵琶湖は、高浜原発から 50~72 km、美浜原発から 28~80 kmにあり、汚染されれば、1400 万人以上が飲用水を失います。

 なお、水戸地裁は、3 月 18 日の判決で、老朽東海第 2 原発の運転差し止めを命じました。「避難計画が不十分で、重大事故を起こしたとき、避難が困難であるから原発を運転してはならない」とした、圧倒的な民意に支えられた判決です。

処理法も行き場もない
使用済み核燃料を増やし続ける関電

 原発を運転すれば、処理法がなく、何万年もの長期保管を要する「負の遺産」・使用済み核燃料を残しますが、その処分地どころか中間貯蔵すら引き受けるところがありません。

 それでも、関電は、使用済み核燃料中間貯蔵候補地を県外に探すとした約束を何度もホゴにして、原発の運転を続け、使用済み核燃料を増やし続けています。その上、老朽原発再稼働まで画策し、使用済み燃料をさらに増加させようとしています。

 なお、関電は、それまで 2020 年末としていた中間貯蔵候補地提示期限を2023年末へとさらに先送りしました(本年2月)。むつ市の中間貯蔵施設の共同利用の可能性を拠り所にした先送りですが、宮下むつ市長はこれを否定し、猛反発しています。

 関電は、何の成算も無く「空約束」し、平気でそれをホゴにする、企業倫理のかけらも持ち合わせない企業です。

原発マネーにしがみ付く
立地自治体の議会や首長

 昨年 11 月から本年 2 月にかけて、関電と政府の意を汲み、原発マネーにしがみつく高浜町、美浜町の議会と町長は早々に老朽原発再稼働への同意を表明しました。

 一方、経産相、資源エネルギー庁長官、関電社長との 4 者会談(2 月 12 日)で、老朽原発再稼働への同意を求められた福井県の杉本知事は、それまでの「中間貯蔵候補地提示が前提」とする発言を一転させ、県議会に老朽原発再稼働に向けた議論を要請しましたが、県議会は、知事の変節を納得せず、老朽原発に関する議論は一旦中断しました。しかし、この中断は、国からさらなる見返りを得るための作戦であり、県知事は国から1原発最大 25 億円の交付金(2 原発で計 50 億円)を引き出し、梶山経産大臣の「原子力を持続的に活用する」との原発推進に前のめりな姿勢を強調する言質を取り、4月28日、再稼働同意を発表しました。

 結局、原発立地自治体は、「自治体住民の安全・安寧の保全が地方自治の基本」であることを忘れ、住民の安心・安全を犠牲にして、原発マネーを得ようとし、政府は、税金によって立地自治体を買収して、労協原発再稼働を恐々仕様としているのです。

 このように原発を推進する人たちは、その理由として、「国策だから」、「規制委が、世界一厳しい基準で審査して、運転を認めているから」、「町の経済発展に不可欠だから」などを挙げています。

 しかし、国策で進められた福島原発で大事故が起こり、多くの人々が今でも、苦難の生活を続けておられます。自治体住民の安全・安寧を保全することが地方自治の基本であることに鑑みれば、国策にかかわらず、住民に塗炭の苦しみを与える重大事故を起こしかねない老朽原発の再稼働など認めてはならないことを示しています。

 また、規制委の認可を得て再稼働した原発で、事故やトラブルが頻発している事実は、「世界一厳しい審査基準」に適合した原発であっても、トラブルや事故は避けえないこと、規制委の審査がいいかげん極まりないことを示しています。

 さらに、もし、原発で重大事故が起これば、地域の経済発展どころか、地域は 2 度と住めない故郷になる可能性があります。老朽原発の再稼働は、一時の経済的利益のため、私企業・関電の利益のために画策されているとしか考えられません。

老朽原発運転を企むのは
原発で私腹を肥やす関電

 1 昨年9 月、関電が支払った原発関連工事費が、多額の金品として関電幹部に還流されていたことが暴露され、また、昨年3 月には、電気料金値上げの際にカットした役員報酬や役員が追加納税した税金を、退任後、関電が補填していたことが発覚し、多くの人々の怒りをかっています。

 関電は、不祥事の発覚後も、原発の運転を継続し、危険極まりない老朽原発まで再稼働させようとしています。また、不祥事を反省して役員人事を刷新したとしていますが、不祥事の調査は不十分で、関電が企業体質を抜本的に改善したとするにはほど遠い状態にあります。例えば、関電は、去る 2 月 10日、「競争入札を経ない発注(特命発注)などにより、地元企業の活用に努める」として、戸嶋美浜町長の美浜 3 号機再稼働への同意を取り付けました。これは、関電の経営体質は、原発マネー不祥事後に行った「人事刷新」によっても全く変わっていないことを物語るものです。関電幹部には、企業倫理や法令を遵守する姿勢がないことは明らかです。

原発ゼロ法案を実現し、
原発に依存しない若狭を!

  原発地元の自治体や経済界は、脱原発をしたら地域経済が成り立たなくなると宣伝しています。

 しかし、国会の経産常任委員会に付託された「原発ゼロ法案」では、
①全ての原発等の速やかな停止→廃止、
②電気の需要量の削減、
③再生可能エネルギー電気の供給量の増加をを謳(うた)うとともに、
④原発を停・廃止する「事業者への支援、周辺地域の雇用・経済対策」を行うための「法制
上、財政上、税制上、または、金融上の措置」を条文として要求しています。
「原発ゼロ法案」が施行されれば、原発に頼らない地域の構築に向かって踏み出すことができます。

 2 年余りも棚ざらしされているこの法案の審議を要求し、経済的不安をも克服して、脱原発社会を目指しましょう!

原発電気を拒否しよう!

 原発延命に奔走し、電気料金の高い関電については、今、小口顧客の 30%以上(本年 2 月末現在)が見切りをつけ、離脱しています。老朽原発を運転すれば、顧客の減少はさらに加速するでしょう。老朽原発再稼働は、関電にとっても危機となるのです。原発電気 NO の行動に起ちましょう!

┌─────────────────────────────────

原発ゼロに向けて、

「老朽原発うごかすな!」の声を上げよう!

「老朽原発うごかすな!大集会in おおさか」

に結集しよう!

6 月 6 日(日)13 時 うつぼ公園

└─────────────────────────────────


老朽原発うごかすな!実行委員会 (連絡先:木原 090-1965-7102)
2020年2月発行