◆2018年を原発のない社会創り元年に!

【2018年1月5日,京都キンカンで配付。】

◆新年おめでとうございます。今年が、原発と決別し、過剰なエネルギー消費、物質浪費社会を根底から問い直す年になることを願っています。

◆昨年12月には、嬉しいことが2つありました。

◆第一は、13日の広島高裁での伊方原発運転差止め決定です。この決定は、3.11福島原発事故の大惨事の尊い犠牲の上に、形成された脱原発、反原発の圧倒的民意を反映したものであり、脱原発、反原発の粘り強い闘いの成果です。

◆第二は、関電が、2019年3月と12月に40年越えとなる老朽大飯原発1、2号機の廃炉を発表せざるを得なかったことです(12月21日)。2千億円を超えると言われる安全対策費がこの決断をうながしたことは明らかです。これは、福島事故の大きな犠牲とその後の大衆運動、裁判闘争の高揚によって、安全対策をないがしろにできなくなったためであり、大衆運動、裁判闘争の成果ともいえます。(ただし、喜んでばかりはいられません。関電や政府は、これと引き換えに、原発新設を狙う可能性もあります。注視が必要です。)

◆今年は、脱原発、反原発運動をさらに高揚させ、原発のない社会を展望しましょう!

大飯原発3、4号機再稼働阻止を突破口に、
原発全廃を勝ち取ろう!

 関電や政府は、大飯原発3、4号機の3、5月再稼働を企み、「原発銀座・若狭」の復活を狙っています。若狭の原発には、他の原発に比べて次のような特殊事情があり、福島原発事故以上の被害をもたらす重大事故の可能性が高いと考えられます。
(以下は、昨年5月配布のチラシを改定したものですが、再稼働阻止闘争のさらなる高揚のために再録します。)

若狭の原発が持つ特殊な問題

【1】若狭には原発13 基、「もんじゅ」、「ふげん」が集中

・重大事故の場合、1基に留まらない

◆高浜原発、大飯原発は同じ敷地内に各々4基、美浜原発、敦賀原発、廃炉決定の「もんじゅ」、廃炉中の「ふげん」は近接していて、合計7基の原子炉があります。このように原子炉が近接しているとき、1基が重大事故を起こせば、隣の原発にも近寄れなくなり、多数の原子炉の重大事故に発展しかねないことは、3基がメルトダウンし、3基が水素爆発した福島原発事故が教えるところです。

◆なお、高浜原発が地震や津波に襲われれば、14 km 弱の至近距離にあり、高浜原発と同様に若狭湾に面している大飯原発も同じ被害を被ることは容易に想定できます。

・原発依存度が高く、広域の自治体が原発を推進;脱原発、反原発の声を上げ難い

◆例えば、川内原発では、原発推進の立場をとるのは原発立地の薩摩川内市のみであり、隣接するいちき串木野市、阿久根市、出水市、日置市、さつま町などは、再稼働への地元同意の対象外とされたことへの不満と再稼働への異議は多数です。いちき串木野市での緊急署名では、再稼働反対が市民の過半数を越えました。

◆しかし、若狭ではこの地域の1市、3町が原発立地で、原発推進の立場に立っています。これらの自治体の原発依存度は、薩摩川内市に比べても圧倒的に高く、そのため、脱原発、反原発の声を上げ難いと考えられます。ただし、次のように、若狭でも、顕在化はしていないけれども、脱原発、反原発を望む声は極めて多く、とくに、老朽原発運転反対は大多数です。


コラム「若狭の原発を考える会」の経験から

◆「若狭の原発を考える会」は、アメーバデモと称する行動を、毎月2回(1回2日間)行っています。関西や福井から原発立地の若狭あるいは原発周辺の東舞鶴(京都府)、高島市(滋賀県)に集まり、3~5人が一組になり、徒歩で、鳴り物を鳴らしながら、また、「反原発」の旗を掲げ、肩にかけたスピーカーで呼びかけながら、全ての集落の隅から隅まで、チラシを配り歩く行動です。普通は、2グループ程度ですが、多いときには、全国からの応援を得て、10グループ以上になることもあります。

◆「若狭の原発を考える会」は、アメーバデモを3年以上継続し、お会いした住民1000人以上から、直接お話をうかがってきましたが、その中でも、「原発はいやだ」の声が圧倒的に多数であり、原発推進の声はほとんど聞かれていません。原発立地でも、表には表れていないけれども、脱原発、反原発が多数の願いであり、民意なのです。


【2】100 km 圏内に1千万人以上が住む;避難は全く不可能:1,450 万人の水源がある

◆高浜原発や大飯原発から50 km圏内には、京都市、福知山市、高島市の多くの部分が含まれ、100 km圏内には、京都府(人口約250万人)、滋賀県(人口約140万人)のほぼ全域、大阪駅、神戸駅を含む大阪府、兵庫県のかなりの部分が含まれます。このことと、福島原発から約50 km離れた飯舘村が全村避難であったことを考え合わせれば、若狭の原発で重大事故が起こったとき、500万人以上が避難対象となる可能性があり、避難は不可能です。

◆しかし、政府や自治体が行う避難訓練では、そのことが全く考えられていません。この圏内には琵琶湖があり、1,450万人の飲用水の汚染も深刻な問題です。

◆さらに、避難訓練には、原発事故での避難は極めて長期に及ぶ(あるいは永遠に帰還できない)という視点がありません。福島およびチェルノブイリの事故では、今でも避難された10数万人の大半が故郷を失ったままです。

◆1昨年8月27日に高浜原発から30 km圏の住民179,400人を対象にして行われた避難訓練は、最大規模と言われながら、参加者数は屋内退避を含めて7,100人余りで、車両などでの避難に参加したのはわずか約1,250人でした。それも県外への避難は約240人に留まりました。この規模は、重大事故時の避難の規模とはかけ離れた小ささです。

◆車道などが使用不能になったことを想定して、自衛隊の大型ヘリによる輸送訓練も予定されていましたが、強風のために中止されました。また、悪天候のために、船による訓練は全て中止されました。老人ホームなどへの事故に関する電話連絡は行われましたが、実際行動の必要はないとされました。

【3】高浜、大飯、美浜原発は加圧水型(PWR):沸騰水型(BWR)より安全とは言えない

◆原子力規制委員会や政府は、加圧水型原子炉(PWR)は、沸騰水型原子炉(BWR)より安全であるとして、PWRである川内、高浜、大飯、伊方、泊などの原発の再稼働を先行させようとしていますが、これは、「事故を起こした福島原発とは型が異なるから安全」とする国民だましです。以下に述べますように、過酷事故はBWRよりPWRの方が起こりやすく、起こると急激です。

スリーマイル島(TMI)原発事故が教えるPWRの危険性

◆福島原発事故の32年前(1979年)に炉心溶融事故を起こしたTMI原発はPWRでした。

◆高浜原発(PWR)の炉内圧力は約150気圧で、福島原発(BWR)の約70気圧の倍であり、配管が破断したとき、噴出する冷却水の量と勢いは格段に大です。出力密度がBWRの約2倍で、それだけPWRの方が炉心溶融しやすく、事故発生から炉心溶融まで、PWRでは1時間程度(TMIの例)、BWRでは5~12時間(福島事故の例)と推定されます。

◆PWRの方が、中性子照射量が多いため、材料の照射劣化がより早く進行します。加圧熱衝撃を受けると、高圧と相まって、原子炉容器の破裂事故(最悪の事故)を招きかねません。この危険性は、中性子などの放射線照射量に応じて大きくなるため、原発老朽化は大問題です。なお、高浜1号機は43年、2号機は42年、3号機は33年、4号機は32年、大飯1号機(廃炉決定)は39年、2号機(廃炉決定)は38年、3号機は36年、美浜3号機は42年を経過した、何れも老朽原発です。

◆過酷事故時の挙動が福島原発より複雑です。例えば、PWRでは、運転中に生成したプルトニウムの偏りが起こり易く、炉内での核分裂挙動が複雑となり、進行している事態の評価や判断を誤らせる一因となります。

◆PWRでは、格納容器内でも水素爆発が起きます。BWRでは格納容器内に窒素を充填しているため、格納容器内では水素爆発は起こりません(福島事故での水素爆発は全て格納容器外)。

【4】ウラン―プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料プルサーマル炉・ 高浜3、4号機

◆既存原発のプルサーマル化では、元々ウラン燃料を前提とした軽水炉のウラン燃料の一部をMOX燃料で置き換えて運転するので、技術的な課題が山積です(全MOX炉も制御困難)。なお、原子力規制委員会審査における重大事故対策の有効性評価の解析対象は、ウラン炉心のみであり、MOX炉心については何ら評価されていません。過酷事故を起こしたときには、猛毒のプルトニウムや超プルトニウム元素が飛散して、深刻な内部被ばくを起こす危険性も大です。

重大事故の確率が大きい

◆燃料被覆管破損の危険性が大です。例えば、MOX燃料中に酸素と結合し難い白金族元素が生成しやすく、余剰酸素が被覆管を腐食します。また、核分裂生成物ガスとヘリウムの放出が多く、燃料棒内の圧力が高くなり、被覆管を破損させかねません。

◆核燃料の不均質化(プルトニウムスポット)が起こりやすく、燃料溶融の原因になります。

◆ウラン燃料と比べて燃焼中に核燃料の高次化(ウランより重い元素の生成)が進みやすく、特に中性子吸収確率の大きいアメリシウム等が生成しやすくなります。核燃料の高次化が進むと、原子炉の運転や停止を行う制御棒やホウ酸の効きが低下します。さらに進むと、核分裂反応が阻害され、臨界に達しなくなり、核燃料として使用できなくなります。

◆中性子束(密度)が大きく、高出力ですから、MOX燃料装荷によって 運転の過渡時(出力の増減時)に炉の制御性が低下します。(1/3程度しかMOX燃料を装荷できない。)

◆一部の燃料棒のみをMOX燃料にすると、発熱量にムラが生じます。温度の不均衡が進行すると、高温部の燃料棒が破損しやすくなります。

使用済みMOX燃料の発熱量は、ウラン燃料に比べて、下がり難い:長期の水冷保管が必要

◆発熱量が下がり難いため、長期にわたってプール内で水冷保管しなければ(使用済みウラン燃料の4倍以上)、空冷保管が可能な状態にはなりません。使用済み燃料保管プールが、脆弱で、冷却水を喪失しやすいことは、福島原発4号機のプールが倒壊寸前であった事実からも明らかです。

◆取り出し後50年~300年の使用済みMOX燃料の発熱量は、使用済みウラン燃料の発熱量の3~5倍です。

◆使用済みMOX燃料の発熱量を、50年後の使用済みウラン燃料の発熱量レベルに下げるには300年以上を要します。

MOX燃料にするためには、使用済み燃料再処理が必須

◆再処理を行うと、使用済み燃料をそのまま保管する場合に比べて、事故、廃棄物など全ての点で危険度と経費が膨大に増えます。(再処理費までMOX燃料の製造コストの一部と看做すと、MOX燃料の使用は経済的にも引き合わない。)

【5】関電や政府は、40年越え老朽原発・高浜1,2号機、美浜3号機の再稼働も企む

◆原発は事故の確率が高い装置ですが、老朽化すると、重大事故の確率が急増します。次のような理由によります。

◆高温、高圧、高放射線に長年さらされた圧力容器、配管等の脆化(ぜいか:もろくなること)、腐食は深刻です。中でも、交換することが出来ない圧力容器の脆化(下記注を参照)は深刻です。電気配線の老朽化も問題です。

◆建設時には適当とされたが、現在の基準では不適当と考えられる部分は多数ありますが、全てが見直され、改善されているとは言えません。例えば、地震の大きさを過小評価していた時代に作られた構造物、配管の中で交換不可能なもの(圧力容器など)です。最近は、安全系と一般系のケーブルの分離敷設の不徹底なども指摘されています。

◆建設当時の記録(図面など)が散逸している可能性があり、メンテナンスに支障となります。

◆建設当時を知っている技術者は殆どいないので、非常時、事故時の対応に困難を生じます。

◆とくに、ウラン燃料対応の老朽原発でMOX燃料を使用することは、炉の構造上、大きな問題です。


(注)老朽原発圧力容器の脆性破壊
原子炉本体である圧力容器は鋼鉄で出来ていて、運転中は、約320℃、約150気圧の環境で中性子などの放射線に曝(さら)されています。この鋼鉄は、高温では、ある程度の軟らかさを持っていますが、温度が下がると、ガラスのように硬く、脆(もろ)くなります。圧力容器は原子炉運転期間が長くなると、硬化温度(脆性=ぜいせい=遷移温度)が上昇します。例えば、初期には‐16℃で硬くなった鋼鉄も、1年、18年、34年と炉内に置くとそれぞれ35℃、56℃、98℃で、40年を超えると100℃以上で硬化するようになり、脆くなります。原子炉が、緊急事態に陥ったとき、冷却水で急冷すると、圧力容器が脆化していれば、破裂する危険があります。初期(未照射)の鋼鉄は、水冷では破壊されません。とくに、不純物である銅やリンの含有量が多い鋼鉄で出来た老朽圧力容器の脆化(ぜいか)は著しいと言われています。


福島原発事故以降の経験は、
原発はなくても電気は足りることを実証しました。
重大事故を起こしかねない原発を動かす必要はありません。
原発の稼働は、電力会社の金儲けのためです。

原子力防災とは、避難計画ではありません。
不可能な避難を考えるより、
事故の原因=原発を廃止することが原子力防災です。
原発全廃こそ原子力防災です。

重大事故が起こってからでは遅すぎます。
原発全廃の行動に今すぐ起ちましょう!

2018年1月5日

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)

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