◆使用済み核燃料は超長期に危険

【2017年6月2日,京都キンカンで配付。】

人類史より長い未来にまで危険と不安を残す
使用済み核燃料を増やしてはなりません!

高浜原発の再稼働を許さず、原発を全廃して、
重大事故の不安のない社会を目指しましょう!

◆原発を運転すると、次のような原発運転に不都合な事態が生じます。

・核分裂を起こすウランやプルトニウムが減少し、中性子発生数が減少して、核分裂反応が進みにくくなります。

・核燃料の中に運転に不都合な(中性子を吸収し、原発運転を困難にする)各種の核分裂生成物(死の灰)や超プルトニウム元素(プルトニウムより重い元素;アメリシウムなど)が生成します(注1参照)。

・核燃料を閉じ込めておく燃料被覆管の腐食(核分裂によって、余剰となった酸素と被覆管の反応、放射線による腐食など)やひずみが発生します。

◆したがって、核燃料は永久に使用することは出来ず、一定期間燃焼させると、ウランやプルトニウムを使い切っていないにもかかわらず、新燃料と交換せざるを得なくなります。そのため、使用済み核燃料がたまります。

◆現在、日本には使用済み核燃料が17,000 トン以上たまり、原発の燃料プールや青森県六ケ所村の再処理工場の保管場所を合計した貯蔵容量の73%(2016年)が埋まっています。原発が順次再稼働した場合、数年後には満杯になります。

◆国の計画では、全国の使用済み核燃料は六ケ所村に移送し、再処理して、ウラン、プルトニウムを取り出し、再利用することになっていました。しかし、再処理工場の建設はトラブル続きで、すでに2兆2千億円をつぎ込んだにもかかわらず、完成の目途(めど)は立っていません。危険極まりないこの工場の運転は不可能とも言われています。再処理工場にある容量3,000トンの使用済み燃料一時保管場所の98%はすでに埋まっています。

【注1】 使用済み核燃料の組成

使用前のウラン燃料(3% 濃縮ウラン燃料) 1 t 中には、ウラン238が 970 kg、ウラン235が 30 kg 含まれますが、燃焼後、交換が必要になった時点では、ウラン238が 950 kg、ウラン235が 10 kg に減少し、プルトニウムが 10 kg、核分裂生成物生成物が 30 kg が生成しています。

使用済み核燃料の行き場はない

現在科学技術で核燃料再処理は不可能

◆使用済み核燃料は、原子炉から取り出し、原子炉に付置された燃料プールで一定期間(3~5年)冷却して、放射線量と発熱量が空冷保管できるまで減少した後、特殊な容器(キャスク)に入れて保管します。

◆使用済み核燃料の処理・処分には2つの方向があります。

◆一つは、使用済み核燃料を溶解し、核燃料として再利用できるウランやプルトニウムを分離回収して、プルサーマル炉や高速増殖炉で燃料として利用しようとする(核兵器にも利用できる)、いわゆる再処理です。日本はこの方向ですが、後述のように、危険極まりない再処理工場の稼働は遅れに遅れています。

◆他の一つは、使用済核燃料を再処理せず、燃料集合体をそのままキャスクに入れて、地中の施設に保管する「直接処分(ワンスルー方式)」です。「直接処分」の方が安全で、放射性廃棄物量も少ないと考えられ、アメリカはその方向ですが、10万年以上の保管を要し、これにも多くの問題があります。

◆再処理にあたっては、使用済み核燃料を再処理工場サイトにある貯蔵施設に運びます(日本では、青森県六ケ所村)。再処理工程では、燃料棒を切断して、鞘(さや)から使用済み燃料を取り出し、高温の高濃度硝酸で溶解します。溶解までの過程で、気体の放射性物質(希ガスなど)が放出されます。白金に類似した物質は溶け残ります。溶解したウラン、プルトニウム、核分裂生成物(死の灰)などを含む高濃度硝酸溶液中のウラン、プルトニウムは、これらの元素と結合しやすい試薬を含む有機溶媒を用いて取り出し(溶媒抽出)、さらに精製して核燃料の原料とします。この過程で、硝酸の分解ガスが発生し、爆発したこともあります。また、死の灰などの不要物質が、長期保管を要する高レベル(高放射線)廃棄物として大量に発生します。その処理処分法は提案されてはいますが、問題山積です。保管を受け入れる場所もありません。

◆使用済核燃料は高放射線ですから、再処理工程の多くは、流れ系を採用し、遠隔自動操作で運転されます。そのため、再処理工場には、約10,000基の主要機器があり、配管の長さは約1,300 km にも及びます(うち、ウラン、プルトニウム、死の灰が含まれる部分は約60 km:継ぎ目の数は約26,000箇所)。高放射線に曝(さら)され、高温の高濃度硝酸を含む溶解槽や配管(とくに継ぎ目)の腐蝕、減肉(厚さが減ること:溶解槽で顕著)、金属疲労などは避け得ず、安全運転できる筈がありません。長い配管を持つプラントが、地震に弱いことは容易にうなづけます。再処理工場は完成からは程遠い状態にあります。

再稼働が続けば、若狭の原発の燃料プールも7年で満杯

◆上記のように、再処理は不可能に近い状態ですから、使用済み核燃料は蓄積の一方です。若狭にある原発13基が持つ使用済み核燃料貯蔵施設の容量は5,290トンですが、その7割以上が埋まっています。関電の原発内の保管プールの貯蔵割合は、4月末で、大飯と高浜が約71%、美浜が63%に達しています。新規制基準審査未申請の2機を含めた関電の原発9基が運転されれば、年間約370体の使用済み燃料が発生しますから、7年程度で貯蔵限度を超え、原発の稼働は出来なくなります。

高浜原発3号機再稼働を許すな!6日(火) 高浜原発現地集会に総結集しよう!

・12時;高浜原発先の展望所に集合、
・13時;高浜原発北ゲートに向かってデモ、
・13時30分;関電への申入れ、
・17時30分頃まで抗議行動

京都(9時:JR京都駅南バスプール)、大津(9時;JR大津駅・逢坂支所前、9時10分;JR大津京駅前)よりバスを配車の予定。
・バスを利用して、ご参加下さる方は、早めに、090-5676-7068橋田(京都発)、080-5713-8629稲村(大津発)までお申し込みください。

無防備で脆弱(ぜいじゃく)な使用済み燃料プール

◆一般的に、使用済み核燃料貯蔵プールは、沸騰水型(BWR)原子炉では原子炉本体の上部に、加圧水型(PWR)では原子炉本体の横に設置されていて、被曝をせずに使用済み燃料を圧力容器からプールに移送できるようになっています。このプールには、燃料集合体が臨界に達しないように(核分裂連鎖反応を起こさないように)間隔をあけて置かれ、水がはられ(例えば、燃料集合体の上部から7 mの水深)、循環していて、燃料を冷却しています。水は、放射線の遮蔽材の役目も果たします。このプール内には最大で、10炉心分の燃料が保管されています。

◆使用済み核燃料貯蔵プールは、同じく核燃料の容器である圧力容器(原子炉本体)と比べて、無防備と言っても過言でないほど脆弱です。深さ10 m近くのプールが地震などで破壊され、一気に水が抜ければ、お手上げです。このように、冷却水を喪失し、メルトダウンする危険性が高いことは、福島第1原発事故で、4号機の燃料プールから冷却水が漏れ、核燃料溶融の危機にあった事実からでも明らかです。プールに入っている燃料が、原子炉から引き抜いて、かなりの年数(例えば、3~5年)が経ったものであれば、放射線量、発熱量もある程度は減少していますから、燃料溶融(メルトダウン)に至るまで少々はゆとりがありますが、もし、取り出して間もない燃料が露出することになれば、燃料溶融に至ります。

◆一方、燃料集合体間の間隔を隔てているラックが倒壊あるいは崩壊すれば、局所的な温度上昇による水の蒸発(→冷却機能の喪失)や核燃料の再臨界(核分裂連鎖反応の再発)の可能性があります。再臨界に達すれば、急な温度上昇による巨大な水蒸気爆発、水素爆発が起こり、冷却材が供給されない状況下では火災となり、揮発しやすい成分(例えば、セシウム137)が世界中を汚染させます。地震によって、巨大プールの水に周期の長い揺れ(波)が発生し、それが共振して拡大すれば、波の力によるプールの倒壊も危惧されます。

原発を再稼働させれば、新しい使用済み燃料が増え、
使用済み核燃料プールの危険度が急増する

◆福島原発以降、多くの原発が停止しています。したがって、燃料プールにある核燃料の放射線量や発熱量は、かなり減少しています。中には、もう少し冷却すれば、乾式(空冷)保管が出来るようになるものもあります。そうなれば、使用済み核燃料の保管は格段に容易になります(それでも、使用済み核燃料の長期安全保管は至難です)。しかし、原発を再稼働させれば、旧(もと)の木阿弥(もくあみ)で、放射線量と発熱量が多い使用済み核燃料が増え、危険度は急増します。再稼働を阻止し、原発を全廃し、重大事故の不安のない社会をつくりましょう!

安易に乾式中間貯蔵所を作り、燃料プールを空けて、
原発の運転を継続する企(たくら)みは許されない

◆上述のように、原子炉から取り出して間もない使用済み核燃料の保管は、極めて危険です。したがって、原発を運転して、使用済み核燃料を生じさせてはなりません、一刻も早く全原発の廃炉を決意し、使用済み燃料を危険度の低い乾式貯蔵が可能な状態にしなければなりません。また、数万年もの長期間にわたって使用済み核燃料を、安全に乾式貯蔵する技術と体制を整えなければなりません。

◆今、使用済み燃料プールが満杯に近付いています。満杯になれば、原発の運転は不可能になります。そこで、原発敷地内に中間貯蔵所を設けて、そこに使用済み燃料プールから燃料を移し、空いたプールにさらに使用済み燃料を貯蔵できるようにして、原発を運転し続けようとする企みがあります。この企みが拡大すると、際限なく使用済み核燃料が増え、原発敷地内は使用済み核燃料で溢れ、原発の危険度は急増します。

◆なお、中間貯蔵を原発敷地内で行うことを認めれば、使用済み燃料を引き受けてくれる場所のない現状では、原発立地が長期保管地になりかねません。使用済み燃料の保管は、例え膨大な費用を要しても、現存する最高の技術と英知を結集した施設で行わなければなりません。そのような施設の建設を、人の命や尊厳より経済的利益を優先する電力会社に期待することはできません。

プルサーマル炉は発熱量が下がり難い使用済み核燃料を生む

◆高浜原発3、4号機のようなプルサーマル炉は、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)を燃料としていますが、核分裂によってMOX燃料から生じる元素は、ウラン燃料から生じるものとは異なり、使用済み核燃料になったとき、放射線量や発熱量の減少速度も異なります。使用済みMOX燃料の発熱量は下がり難いため、長期にわたってプール内で水冷保管しなければ(使用済みウラン燃料の4倍以上)、空冷保管が可能な状態にはなりません。取り出し後50年~300年の使用済みMOX燃料の発熱量は、使用済みウラン燃料の発熱量の3~5倍です。また、使用済みMOX燃料の発熱量を、50年後の使用済みウラン燃料の発熱量レベルに下げるには300年以上を要します。MOX燃料は、その意味でも、極めて厄介な核燃料です。

最近の経験は、原発はなくても電気は足りることを実証しました。重大事故を起こしかねず、危険極まりない使用済み燃料を生む原発を動かす必要はありません。

原発の稼働は、電力会社の金儲けのためです。

原発事故は自然災害とは異なります。自然災害を止めることはできませんが、原発事故は止められます。原発は人が動かしているのですから、人が原発全廃を決意すれば良いのです。

原子力防災とは、避難計画ではありません。不可能な避難を考えるより、事故の原因である原発を廃止することが原子力防災です。原発全廃こそ原子力防災です。

重大事故が起こってからでは遅すぎます。原発全廃の行動に今すぐ起ちましょう!

2017年6月1日

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)