◆再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース会議~第7回、第8回の要点

再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース会議(第7回、第8回の要点)
再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース会議
→ こちら。https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/conference/energy/e_index.html
┌─────────────────────────────────
このタスクフォースの4名の構成員
(タスクフォースとは、緊急性の高い課題に関して一時的に構成される組織)

・大林ミカ…公益財団法人自然エネルギー財団事業局長。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)、原子力資料情報室などを経て、駐日英国大使館で気候変動政策アドバイザーを務めたことも。
・川本 明…経済企画庁、資源エネルギー庁、内閣府、企業再生支援機構などをへて、2012年に経産省を退官。その後、慶應義塾大教授など。
・高橋 洋…公益財団法人自然エネルギー財団特任研究員。2018年より都留文科大学地域社会学科教授。経産省、内閣府、農林省などの委員を歴任。
・原 英史…2009年に経産省を退官、株式会社政策工房を設立、その代表取締役社長。大阪府や大阪市の特別顧問、規制改革推進会議の委員などを務める。
└─────────────────────────────────
┌─────────────────────────────────
第7回:2021(令和3)年3月29日
・出席者
(内閣府)河野大臣、藤井副大臣、山田参事官(司会・進行)
(構成員)大林ミカ、川本明、高橋洋、原英史
(ヒアリング対象者)
議題1:風力発電に関する環境影響評価について…略
議題2:電力(容量市場、系統、価格高騰問題、需要家の選択肢の拡大)について…資源エネルギー庁電力・ガス事業部、電力・ガス取引監視等委員会
・会議資料
→こちら。https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/conference/energy/20210329/agenda.html
・「容量市場、系統制約、スポット価格高騰の問題に対する意見」(構成員提出資料)
→こちら。https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/conference/energy/20210329/210329energy09.pdf
└─────────────────────────────────
┌─────────────────────────────────
第8回:2021(令和3)年4月27日
・会議資料
→こちら。https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/conference/energy/20210427/agenda.html
・「電力システム改革に対する提言」(構成員提出資料)
→こちら。https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/conference/energy/20210427/210427energy07.pdf
└─────────────────────────────────
┌─────────────────────────────────
◆第7回、議題2の「電力(容量市場、系統、価格高騰問題、需要家の選択肢の拡大)について」で、おもな資料、注目すべき論点などの要点を、以下の[1]~[3]に抜き書きしています。
◆第8回の重要な資料の要点を、以下の[4]に抜き書きしています。

[1] 容量市場、系統制約、スポット価格高騰の問題に対する意見(構成員 提出資料)
[2] 電力・ガス取引監視等委員会からの説明資料
[3] 在日米国商工会議所意見書
[4] 電力システム改革に対する提言(構成員 提出資料)
└─────────────────────────────────

[1] 容量市場、系統制約、スポット価格高騰の問題に対する意見

(第7回再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース会議)
…タスクフォース構成員(大林ミカ、川本明、高橋洋、原英史)
総論:公正な競争環境の未整備が共通の背景要因

・日本の電力市場は、公正な競争環境が十分に整備されていない。発電市場でも小売市場でも、大手電力会社が8割以上の市場シェアを握り、これらは一体経営の場合が多く、かつ独占が続く送電事業は十分に中立化されていない。それが、特に再生可能エネルギー関連が多い新規参入者の事業活動を大きく制約し、消費者にも不利益をもたらしている。

・新規参入者に圧倒的に不利な競争環境の改善が急務と考えるが、規制当局は競争環境を妥当と考えているようであり、支配的事業者や既存電源への配慮が感じられる。

・発送電分離が十分に徹底されず、先着優先などのルールが残っているため、再エネ発電事業者は送電網を適切に利用できない。発電市場が寡占的で、グロスビディングは表面的な効果しかなく、先物市場も未成熟な中で、新電力にとって予測困難なスポット価格の高騰が続いた。このような状況下で、必要性に疑義のある容量市場を導入すれば、大手電力会社の柔軟性に乏しい集中型電源への補助となり、カーボンニュートラルの実現を妨げるだろう。

・規制当局は、現時点で不当な行為は見つかっていないとしているが、不当な行為がないのに異常事態が生じたとすれば、市場制度の不備が最大の要因ということになる。

各論1:容量市場の問題

・容量市場の必要性からゼロベースで再検討を。柔軟性の低いベースロード電源への補助や火力発電の延命への寄与になってはならない。

各論2:系統制約の問題

・再エネ発電事業者に系統の合理的な利用を保障すべき。ノンファーム型接続(電源を新たに系統へ接続する際に空き容量が足りない状況であっても出力制御などを条件に接続を認める制度。実送電量に応じて空き容量を変動させるので、再エネ拡大のカギを握る送電ルール)が1/13に全国展開されたが、接続検討の受け付けの97%が東京電力パワーグリッド管内に偏っている。

各論3:スポット価格高騰の問題

・規制当局や大手電力は、全国的な需給に関わる外部要因を挙げる状況が続いている。

・発電事業における非対称規制の必要性)
・現状の大手電力会社は支配的事業者であり、総論の通り、競争促進策は不十分であることに鑑みれば、LNG調達のあり方やその情報公開に対して、非対称規制を課すべきである。

・大手電力会社の買い越し)
・大手電力会社はスポット市場の売り入札を急減させ、一方で自社需要のために買い入札を増やした結果、12月末から1カ月近くの間、基本的に買い越し(売り入札総量<買い約定総量)の状態に陥った。新電力は常時買い越しが基本であるため、スポット市場では売り切れに至り、価格高騰が続いたのである。

・グロスビディングの効果への疑問)
・大手電力会社に課された数少ない競争促進策と位置付けられてきたグロスビディングの効果への疑問が、明らかになった。自主的取り組みであったため、関西電力、中国電力、北陸電力は、自社の売り玉を確保するため、グロスビディングを取り止めた。また、大量の高値(999円/kWh)買い入札から分かる通り、グロスビディングは、需給曲線を右側にシフトさせるだけで、実質的な意味で市場の流動性を増やしてきたのか、疑問と言わざるを得ない。市場取引の規模を実質よりも大きく見せる効果しかないとすれば、むしろ市場を混乱させる危険性もあり得る。
・本来自主的であったとしても、グロスビディングは、発電事業者と小売事業者がそれぞれ独立した立場から合理的な入札行動を取る場合に、需給を反映した価格形成や実質的な流動性の拡大などの効果があると考えられる。取り止めても約定価格への影響がないようなグロスビディングだとすれば、発電・小売間の情報遮断を前提とした透明性の高いルール整備した上で、一定量の義務的な玉出しに変更すべきである。

・インバランス料金の問題)
・スポット価格高騰の要因として、規制当局による不足インバランスへの指導が厳しく、かつインバランス料金がスポット価格の上昇とともに果てしなく高騰する算定方法を採っていたことも、指摘できる。
・インバランス料金の制度改定は、2022年4月を目処に進められているが、前倒しを検討すべきである。
・また、インバランス料金も高騰したことによって、送配電事業者は大きな差益を得た可能性が高い。実際のインバランス収支を早急に公表の上、後述の通りその新電力への還元を行うべきである。

・送配電事業者と小売事業者の情報管理の問題)
・大手電力会社の売り入札不足の背景には、送配電事業者の需給調整の影響がある。送配電事業者は、調整力が不足したため、調整力を持つ発電事業者(多くが同じエリアの大手電力会社)に対し、調整電源の発動を求めたり、市場に供出せず燃料を温存していた部分を調整力として予約したりした結果、燃料不足を加速させた面もあった。
・大手電力会社は送配電事業者からの情報でひっ迫状況を知る一方、他の発電・小売事業者には情報がなく、市場に影響を与える情報の格差が生まれることになる。また、送配電事業者とグループの発電・小売会社との間で行われる「協調」も、情報格差の源となる。

・義務的・構造的措置を含めた制度改革の必要性)
・より強力な競争促進策によって公正な競争環境を整備する制度改革が必要。
・まずは、先物・先渡し市場やデマンドレスポンス(電力の供給側である電力会社が需要家側に電力の節約をしてもらうよう促すこと、ネガワット)の拡充、市場情報の適切な公開などの対策を、徹底的に講じるべきである。同時にその大前提として、旧卸電気事業者等の電源の義務的な切り出し、大手電力会社の一定量の義務的な市場玉出し、発販分離、送配電事業の所有権分離といった義務的・構造的な措置は不可欠であり、速やかに検討すべきである。

・新電力等の緊急支援)
・価格高騰の最大の要因が市場制度の不備であれば、新電力の損失の大半を自由競争下の自己責任とするのは、公正でない。インバランス料金など不適切な差益を還元することが求められる

[2] 電力・ガス取引監視等委員会からの説明資料

(第7回再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース会議)
「今冬のスポット価格高騰に関する電力・ガス取引監視等委員会における分析について」
(電力・ガス取引監視等委員会事務局提出資料)

(1)スポット市場価格の高騰について

(これまでと同じ公式見解のくり返し)

(2)発販分離に係る指摘と内外無差別な卸売に向けた取組について

・発販一体会社を含む旧一電の卸売に関して本質的に問題となり得る点は、旧一電の発電部門が自社・グループの小売部門に対して、不当に優遇された条件で電源を供給する(換言すれば、不当な内部補助を行う)ことにより、小売市場の競争が歪曲されることである。

・上記の観点からは、旧一電の発電部門がグループ内の小売りとグループ外の新電力とを取引条件において差別しないことを確保することが重要。
・このため、昨年7月、旧一電各社に対して、社内外の取引条件を合理的に判断し、内外無差別に卸売を行うことのコミットメントを要請。これに対し、各社より、コミットメントを行う旨の回答を受領しているところ。特に、発販一体の各社からは、2021年度からの運用開始に向け、社内取引価格の設定や業務プロセスの整備を進めると回答を受けている。
・上記のコミットメントを踏まえ、今後、旧一電各社の内外無差別な卸売に関する実施状況を確認し、公表していく。
・これに加えて、今般の価格高騰に際し、グロス・ビディングについて、その透明性が確保されていないとのご意見があった。このことも踏まえて、旧一電の内外無差別な卸売をより実効的にするため、今後のスポット市場への売り入札については、原則として発電部門が行うこととすることについても検討を開始。

・発電・小売が一体の旧一電(8社)は、具体的な方策について、2021年度目途の運用開始に向けて、社内取引価格の設定や業務プロセスの整備に着手する、と回答した。また、「卸取引は小売部門から独立した組織で実施する」と回答した会社もあった。

・発電・小売が分社化されている旧一電グループ(東京、中部の2グループ)は、要請についてはコミットメントを表明した上で「コミットメントを確実に実施するための具体的方策はすでに存在する」、「事業会社間の電力取引は電力受給契約に基づいており、発電・小売間の取引価格が存在する」と回答した。
↑関電などでは発電・小売間の取引価格がないのか!
・旧一電の内外無差別な卸売の確保をより実効的にするためには、今後のスポット市場への売り札については、原則として発電部門が行うこととして、透明化に向けた体制整備を図るべきではないか。こうした体制整備は、旧一電における発電利潤の最大化の確保や、相対卸や先物・先渡市場等の活用も含めた合理的なリスク管理にも資すると考えられるのではないか※。

※過去の審議会(第46回制度設計専門会合)においても、発電利潤を最大化する観点から、社外への卸供給や、スポット市場等への入札(グロス・ビディング含む)について、発電部門が自社小売部門から独立した意思決定の上で実施することが望ましいとの考え方が示されている。

(3)電源表示関係で委員からの指摘

・電力の小売販売において、現状は電源構成表示は望ましい行為とされているが、表示を義務化すべき。
・表示にあたっては、基本的な環境情報としてCO2排出量や放射性廃棄物の量についても明記させるべき。

[3] 在日米国商工会議所意見書

日本の卸電力市場規制に関する提言
(第7回再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース会議)

(1)圧倒的な市場支配力を持つ事業者の監視を強化する

・市場支配的な大手電力会社の発販分離を加速させる。

・大手電力会社の発電部門を含むすべての市場参加者に対して、相対取引の価格設定について透明性のある適時の情報開示を行うことを義務付ける。

・大手電力会社の発電部門がスポット市場を介して電力を販売することを義務付ける割合を20%から40%以上に引き上げ、定期的に上方修正する。

・公正で一貫性・透明性のある電力供給を確保するために、大手電力会社の発電部門が市場に売り入札を行う際のトリガー、タイミング、その他の条件を明確に義務化する。

(2)新電力の公正な扱いと存続性を確保するための具体的な行動を検討する

・今回の市場価格の高騰期間において大手電力会社が取った行動を調査し、その行動が競争を規制する法令を遵守したものであり、かつ効率的な市場を確保する上で齟齬がなかったかを慎重に見極める。電力市場の競争規制におけるグローバル・ベストプラクティスとの合致を図るためには、特に売り惜しみや価格吊り上げにつながる行動について分析し、反競争的な意図や影響あるいは商品市場の価格操作がなかったかを精査する必要があるだろう。そのような形跡が見つかった場合には、法令に基づく制裁措置を科すことに加え、他の市場参加者に、取引上の不正な偶発的利得を回収・再分配するために民事上の損害賠償を請求する権利を認めるべきである。

・今回の異常事態において一般送配電事業者が買取価格を上回る売電価格でFIT電気を販売したことによって生じた想定外の利得について調査する。FIT制度によって毎月の電気料金の一部として再生可能エネルギー発電促進賦課金を負担している消費者に、そのような利得を還元することを検討する。FIT電気の販売が一般送配電事業者の利益源になるべきではない。

・ヘッジ期間全体を通した卸売市場への新電力の参加を増やす。また、今回の価格高騰で不透明な発電状況や規制・監督によって影響を受けた小売事業者に補償するための是正措置を検討する。これによって発電事業者がJEPXにおいて合理的なコストベースで入札することを図る。

[4]「電力システム改革に対する提言」

(第8回再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース会議)
…タスクフォース構成員(大林ミカ、川本明、高橋洋、原英史)

Ⅰ.再生可能エネルギー主力電源化を実現するための3原則の確立を

1:再エネ最優先の原則

・再エネは、経済性、環境負荷、エネルギー自給などの観点から総合的に最も価値が高い。エネルギー自給率や原発の過酷事故の経験という日本の状況を踏まえれば、まずは最も実現性の高い再エネの導入を、他のエネルギーに先んじて集中的に進めるべき。再エネと省エネがエネルギー転換の2本柱

2:柔軟性を重視したエネルギーシステム改革の原則

・変動性再エネへの対応が不可欠であり、このために近年重要性を増しているのが、電力システムの柔軟性。火力発電の出力調整運転、揚水発電、送電網の広域運用、デマンドレスポンス、電気自動車を含む充電池など、発電側だけでなく系統側、需要側も含む多様な柔軟性を拡大させることが急務。ベースロード重視では柔軟性に逆行する。

3:公正な競争環境を前提とする原則

・新規参入者や新規電源は、競争上極めて不利な立場に置かれており、再エネ主力電源化の最大の障壁となっている。系統制約はその典型例であり、また今般の延岡市の新電力への営業妨害や電力販売のカルテルの疑いも、同根。新規参入者が既存事業者と切磋琢磨できる公正な競争環境が必要。

Ⅱ.公正な競争環境の整備を徹底すべき

1)市場玉出し、グロスビディング

・大手電力の発電電力量の3割程度の義務的なスポット市場への玉出しを行う。その際、大手電力の発電部門・小売部門間(グループ会社を含む)における、市場取引に関する情報遮断措置を講じる。

2)内外無差別のコミットメントと発販分離

・大手電力の内外無差別原則のコミットメントの具体化(社内部門間の情報遮断・取引条件の明示・会計分離等)を、速やかに行う。合わせて、組織や資本関係を含めた発販の法的分離のあり方を検討

3)系統制約の解消

・送配電網の開放。ノンファーム型の系統接続を、基幹系統だけでなくローカル系統、更に配電系統へ拡大。

4)構造的措置

・送配電事業の所有権分離(発電部門や小売部門の会社との資本関係も解消)の必要性や発動条件を検討。送配電事業者の統合の方策も検討
・OCCTOの専門性・中立性。送配電事業者のみの集合体に改組
・電取委のマンパワー・専門性・中立性や権限の強化

Ⅲ.容量市場問題

・公正な競争環境が整備されていない日本において、これを導入すれば、老朽電源の過剰な延命をもたらし、競争を阻害する上、再エネ時代の安定供給にも寄与せず、国民負担のみが高まる結果となる可能性が高い。このため、現在の容量市場は凍結する。

Ⅳ.スポット価格高騰問題

・規制当局は責任を痛感すべき。
・健全な市場競争が確保されていない中での価格高騰による、新電力等の巨額の負担に対して、遡及的措置を含む還元策を講じるべき。
・特にインバランス料金については、2020年12月から本年1月にかけて、送配電事業者に1,400億円前後もの収益が生じたが、新電力等に対する還元の原資にすべきである。

Ⅴ.非化石証書にかかる問題

(・再エネ価値取引市場、非化石価値取引市場など。略。)