◆新電力や原発をめぐる状況~2022年4月

【Memo】2020年12月~2021年1月、卸電力市場の暴騰

◆2020年12月~2021年1月の冬は、日本卸電力取引所の電力価格が暴騰
・通常価格… 8~10円/kWh
・高くなる時間帯でも…50円/kWh程
・これまでの最高価格…75円/kWh程
・2021/1/6…100円/kWhを記録
・2021/1/15のピーク…251円/kWh!

◆ほぼ1年前のことですが、2021/3/25に、新電力大手の「F-Power(エフパワー)」が倒産
F-Powerは、新電力の大手として知られ、2018年4月には電力販売量で一時、新電力のトップにもたったことがある。その倒産の理由は、その後、現在に至る新電力の苦境の典型となっている。

◆倒産の理由(1) 逆ざや
2020~21年の冬は、日本卸電力取引所の電力価格の暴騰により、150円で仕入れた電気を20円で売るという状況で、売れば売るほど赤字になる事態であった。

◆倒産の理由(2) インバランス料金
小売電力会社は、自社が契約を取った顧客に対する電力の供給については、全量を確保する責任を負っていて、それができなかった場合、不足電力を補ってもらうことになる送配電会社にインバランス料金という罰金を支払う仕組みになっている。このインバランス料金は、市場全体で需給バランスが不足したときには、市場価格よりかなり割高になる。
◆実際にインバランス料金の推移の一例をみると、
・2020年12月1日時点では最高価格は7.91円/kWh
・2021年1月 1日には100.25円/kWh
・    1月 5日には190円/kWh
・    1月 7日には400円/kWh
・    1月11日には511.3円/kWh

◆ 経済産業省 資源エネルギー庁は2021年1月15日、卸電力市場価格が高騰していることを受け、インバランス等料金単価の上限を200円/kWhとする措置を1月17日の電力供給分から適用すると発表。2022年4月からの導入が検討されていた料金単価の上限設定を、前倒しで導入した形だ。
……が、しかし、深手を負った新電力にとっては、とき既に遅し!

◆ 帝国データバンクは2021年5月21日、新電力会社706社の経営実態調査に関する調査結果を発表した。調査によると、インバランス料金の支払い猶予措置を受けている新電力会社は、全体の4分の1にのぼる。

【Memo】2021年秋~2022年現在まで、卸電力市場で高値が継続

◆2021年秋から高騰して継続
・7.9円/kWh(9月)→12.1円/kWh(10月)→18.5円/kWh(11月)→17.3円/kWh(12月)→21.9円/kWh(1月)→20.6円/kWh(2月)→27.8円/kWh(3月)と推移
・2022年3月には64円を記録。地震で火力発電所が停止、ウクライナ戦争で燃料不安と価格上昇
・2022年1~3月の間に、北海道電力、東北電力、JERA、関西電力、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力において燃料制約(燃料不足として発電機の運転を抑制)が発生

◆【新電力の苦境…低圧】テラエナジー 竹本了吾社長……「実際のところかなり電力小売り会社は厳しい状況ですね。一般家庭だと約25~30円の単価で販売しているんですね。普段の仕入れだと10円とかそれくらいで仕入れているんですけれども、ここ数か月は時間によっては40円とかで仕入れないといけないようなことになっているので、本当に売れば売るほど赤字が出てしまう。」

◆2021年度1年間で、過去最多となる計31社の新電力会社が廃業や事業撤退などに追い込まれ、そのうち14社が倒産。4月6日現在、日本で登録されている新電力の事業者数は752社。このうち200社は、現時点では販売を行っていない。残りの事業者の中で大手電力の1割程度の販売量を持つ企業は数十社。
新電力が販売電力量に持つシェアは、21年12月で、全国平均21.7%。家庭用中心の低圧では23.8%。

◆【新電力の倒産や撤退など】
【2020年以前】
・2016/ 4、日本ロジテック協同組合が破産
・2017/11、大東エナジーの「いい部屋電気」が電力事業からの事実上撤退
・2018/ 8、福島電力が電力事業からの撤退、破産
・2020/ 1、エレトス合同会社が破産
・2020/ 2、AKUBIでんきおよびgreen energyが破産、電気契約の廃止
【2021年~】
・2021/ 3、ピタでんを運営するF-Power(エフパワー)が会社更生
・2021/ 5、パネイルが民事再生を申請
・2021/ 6、JBR(ジャパンベストレスキューシステム)、電力小売り撤退
・2021/ 7、フェニックスエナジーが破産開始決定
・2021/ 8、ファミリーエナジーが破産
・2021/ 9、アンフィニが民事再生を申請
・2021/12、グリーナでんき(自然エネルギー100%の電気を販売)が
低圧小売事業をTGオクトパスエナジーに事業譲渡
・2022/ 3、ホープエナジーが破産
・2022/ 3、エルピオが電力小売事業を停止
・2022/ 3、熊本電力が撤退。エビス電力へ契約を移すよう利用者に連絡
・2022/ 4、AGエナジー(AG Energy)が小売電気事業を終了

【Memo】高圧、特別高圧、自治体の電力調達

◆【高圧、特別高圧の料金値上げ】ウクライナ情勢で燃料高騰。大手の新電力は、調達困難、法人向け電気料金の引き上げを続々と通知

◆【自治体の電力調達】新電力切り替えが裏目、市施設の電気代高騰、従来契約より5000万円増加……静岡県掛川市が支払う公共施設の電力料金が高騰している。市が中心となって設立し、2021年4月に稼働した自治体新電力「かけがわ報徳パワー」に切り替えたため、従来より、電気代が約5000万円増加。

◆【高圧、特別高圧の小売から撤退】三井物産などが資本参加する中堅新電力のシン・エナジー(神戸市)が4月末をめどに、特別高圧・高圧分野の小売事業から撤退。ハルエネ(東京・豊島)、リケン工業(神戸市)など、中堅クラスの新電力も、企業向けの高圧電力販売から撤退を決めている。

◆【大手電力も新契約を停止】大手電力が法人(高圧、特別高圧)の新契約を停止。新電力から大手電力に戻ろうとする利用者が、行き場をなくしている。一方、どの電力小売り事業者とも契約が成立しない場合に備えたセーフティーネットとして「最終保障供給」と呼ばれる仕組みがあり、主に法人向けであれば大手電力の送配電部門に供給義務が課せられている。最終保障供給の料金は標準メニューの約1.2倍と割高だが、足元では市場価格の高騰を背景にこの料金よりも高いプランしか提示できない「逆転現象」も起きている。

【Memo】原発をめぐる最近の状況

◆【電力価格の高騰、エネルギー供給の不安】
・CO2削減 →火力発電の縮小が続いてきた。
・地震で火力発電所が停止 →東京などで電力供給不安
・ウクライナ戦争 →石油、天然ガスの価格高騰、エネルギー供給不安、エネルギー多消費型社会に限界

→ 原発再稼働(大阪市松井市長)、小型原発など「新技術」の開発

◆【太陽光など再エネの系統制約】再エネ受け入れ停止……四国電が4/9、東北電が4/10。中国電が4/16予定。これまで九州電でも。

◆【原発は技術力低下と人材減少のダブルパンチ】4/15(金) 産経……東日本大震災後、原発の新設が進まないことなどを理由に、一部の事業者が撤退を決めた。設計図やノウハウの譲渡などサプライチェーン内での自助努力は重ねられる。それでも、原子炉内に挿入される核燃料をカバーし放射性物質の漏出を防ぐ被覆管の製造メーカー(*)が解散し国内調達が不可能になるケースも生じるなど、体制の維持は年々難しくなっている。
部品だけでなく人の不足も深刻だ。日本電機工業会のまとめでは、大手メーカーで、大型設備の製造に不可欠な溶接や組み立て、機械製造に携わる技術者は平成22年度からの10年で、45%減少。原子力事業者の就職説明会「原子力産業セミナー」でも、専攻が原子力関連でない学生の参加数は大幅に落ち込む。
将来が見通せず、社会的な風当たりも強い中、技術継承は綱渡りを余儀なくされ、さらに人材も減少していく構図だ。

(*)沸騰水型を中心としたジルカロイ被覆管を神戸製鋼所が製造し、加圧水型は旧住友金属が製造していたが、この両社が合同出資し合併させた新会社(2000年)が、ジルコプロダクツ。以後国内原発の被覆管すべてはこの会社で製造されてきたが、2017年に解散。