以下、大飯原発差止訴訟の弁護団の浅野則明弁護士が、Facebookに投稿された内容を転載します。
—————-
大飯原発差し止め判決(福井地裁)についての社説を比較してみた。
朝日、毎日、京都は、概ね司法の役割を果たした画期的な判決として高く評価している。しかし、読売だけは、不合理な推論が導く不当な判決であるとこき下ろしている。
<朝日新聞>
・東京電力福島第一原発事故の教訓を最大限にくみ取った司法判断だ。電力業者と国は重く受け止めなければならない。・原発は専門性が高く、過去の訴訟では裁判所は事業者や国の判断を追認しがちだった。事故を機に、法の番人としての原点に立ち返ったと言えよう。高く評価したい。
・事業者や国、規制委は、判決が投げかけた疑問に正面から答えるべきだ。上級審での逆転をあてに、無視を決め込むようなことは許されない。
<毎日新聞>
・住民の安全を最優先した司法判断として画期的だ。
・司法判断を無視し、政府が再稼働を認めれば世論の反発を招くだろう。
・いったん原発事故が起これば、多数の住民の生命を脅かす。判決が「万が一の場合にも放射性物質の危険から国民を守るべく万全の措置を取らなければならない」と電力事業者側に強く求めたことも納得できる。
・安倍政権は、震災を忘れたかのように、なし崩し的に運転再開しないよう慎重な判断をすべきだ。
<京都新聞>
・原発の安全性は何ものにも優先されねばらない。そんな当然の感覚を反映した判決と言える。
・福島事故から3年余。政治が再稼働容認へ傾斜する中だけに、画期的な司法判断を評価したい。
・関電は判決を真摯に受け止めるべきだが、言い渡しの法廷に関電関係者が誰も出席していなかったのは理解に苦しむ。・原発は電気を生み出す一手段にすぎないのに、いったん大事故を起こせば大勢の生活基盤と人生を根底から覆してしまう。それほどのリスクを私たちは抱えきれるのであろうか。-判決の問いかけを重く受け止めたい。
<読売新聞>
・「ゼロリスク」に囚われた、あまりに不合理な判決である。
・昨年7月に施行された原発の新たな規制基準を無視し、科学的知見にも乏しい。
・判決がどれほどの規模の地震が起きるかは「仮設」であり、いくら大きな地震を想定しても、それを「超える地震が来ないという確たる根拠はない」と強調した点も、理解しがたい。
・非現実的な考え方に基づけば、安全対策も講じようがない。
・(大阪高裁が)規制委の安全審査が続いていることを考慮し、「その結論の前に裁判所が差し止めの必要性を認めるのは相当でない」という理由からだ。常識的な判断である。
・(伊方原発最高裁判決は)原発の審査に関し、司法の役割は抑制的であるべきだとした妥当な判決だった。福井地裁判決が最高裁の判例の趣旨に反するのは明らかである。