◆老朽原発・美浜3号、高浜1、2号を廃炉に~過酷事故が起こる前に

【2022年8月29日まで、美浜町などで配付】

 原発は現在科学技術で制御できる装置でないことを、発生後11年を経た福島原発事故が大きな犠牲の上に教えています。

 一方、去る2月に始まったウクライナ紛争では、欧州最大の原発・ザポリージャ原発やチェルノブイリ(チョルノービリ)原発が占領され、戦争になれば、原発は格好の攻撃目標になることが実証されました。

 このように、原発は、人類の手に負える装置でなく、人の命と尊厳を脅かします。

 それでも、電力会社、政府、原発立地自治体などの原発推進勢力は、ウクライナ紛争によるエネルギーひっ迫や炭酸ガス削減を口実にして、原発の稼働に躍起です。

岸田首相は「原発依存社会」を画策
説明も議論もなく、政策を転換

 岸田内閣は、昨年10月に決定した「エネルギー基本計画」の中で「原発の新増設やリプレースは想定しない」としていましたが、岸田首相は、決定から1年もたたない8月24日、この基本計画まで無視し、また、原発の運転期間は最大60年とした法律をないがしろにして、唐突に、原子力政策を以下のように転換する意向を示しました。

 岸田首相は、
●次世代原発の建設検討、
●原発運転期間の60年超への延長、
●すでに新規制基準審査に合格している原発17基のうち最大9基を今冬に、残る8基を来年以降の早期に稼働させる方策
を検討するとしています。

 福島原発事故の犠牲と教訓を軽んじ、科学的な説明や議論もなく、原発推進を打ち出したのです。このように原発に前のめりな政策がまかり通れば、急ぐべき再生可能エネルギー活用が後回しにされ、世界の趨勢からも取り残されます。

原発はトラブル頻発の装置
過酷事故を起こしかねない

老朽原発・美浜3号機で相次ぐトラブル

 関電は、運転開始後45年を超えた老朽原発・美浜3号機を昨年6月23日に再稼働させましたが、特定重大事故等対処施設(特重施設)の設置が間に合わず、わずか3ヶ月の営業運転で停止を余儀なくされています。しかも、この短い運転中に二度もトラブルを発生させています。そのうちの一つは、電源が断たれて蒸気発生器中の2次冷却水が失われたとき、緊急給水するポンプに大きな圧力がかかるトラブルです。関電は、「ポンプ入り口にある金属製のフィルターに鉄さびが詰まったことが原因」としています。老朽原発を全国に先駆けて動かすために、10年近く準備してきたにも拘らず、鉄さびによる目詰まりにも気づかなかった関電と原子力規制委員会のいい加減さは許されるものではありません。

 さらに、関電は、特重施設が完成したとして、美浜3号機の再稼動(並列)を、当初予定の10月から8月12日に前倒しすると発表していましたが、再稼働を目前にした8月1日、放射性物質を含む水7トンが漏洩していることが発覚し、再稼動は延期されました。

 関電は、水漏れについて、「昨年6月の定期検査中に、下請け作業員が、容器のふたを閉めるボルトを規定値の5分の1の弱い力で締め付けていたため、隙間を塞ぐ円形のゴム(Oリング:パッキング)に圧力がかかり、破損した」としました。作業員が、誤った規定値の記載された手順書に従ったのです。これは、あきれ返るミスです。このようなミスは、技術者がしっかりしていれば、簡単に気がつくものです。しかし、現在は、下請け任せの上に、責任感と科学的常識のない、関電および下請けの技術者、作業者、監督者、点検者・・・が原発を動かそうとしています。原発を動かそうとする体制自体がたるみ切っているのです。この事態は、一旦、体制全てを解体して、総点検しなければ、改善されません。ただし、体制を根本的に刷新して判断すれば、原発運転は、無理だという結論に至るでしょう。

 美浜3号機では、8月21日にも「運転上の制限の逸脱」が生じました。「アキュムレータの圧力が保安規定に定める運転上の制限値4.04MPa(約40気圧)を下回り、警報が発信した」というものです。原子炉冷却水喪失事故時などで1次冷却系の圧力が低下した際には、原子炉の暴走を防ぐために、ほう酸水を1次冷却系に注入しなければなりませんが、ほう酸水は、逆止弁を介して1次冷却系につながっている蓄圧タンク(アキュムレータ)に蓄えられています。そのタンクの圧力低下が確認されたのです。「アキュムレータ圧力の低下」の原因は明らかにされていませんが、1次冷却水喪失時や、制御棒の挿入に失敗した時に働かなければならない装置のトラブルは、重大事故に繋がりかねず、深刻です。

高浜3、4号機、大飯3、4号機でもトラブル頻発

 美浜3号機と同じ加圧水型原発・高浜3、4号機、大飯3、4号機でも、これらの原発は運転開始後40年に到っていないにも拘らず、たびたびトラブルが発生しています。とくに、320℃、160気圧近くの高温・高圧水が流れる1次冷却系配管(蒸気発生器伝熱管など)の損傷は深刻です。これらの配管が完全破断すれば、1次冷却水が噴出して、原子炉が空焚きになり、メルトダウンに至る可能性があるからです。

 例えば、本年3月、定期点検中の高浜原発3号機では、蒸気発生器伝熱管3本の外側が削れて管厚が大幅に減肉・損傷していることが発覚しています。関電は、伝熱管外側に自然発生した鉄さびの塊がはがれて、伝熱管を削ったためとしています。蒸気発生器の中には、腐食等によって、2トン以上もの鉄さびや鉄イオンが発生しているともいわれています。同様な伝熱管損傷は、一昨年11月、高浜4号機でも起こっています。
 トラブル続きで、過酷事故を起こしかねない原発は、一刻も早く全廃しましょう!

電気は足りています

 今、政府は電力需給のひっ迫を喧伝し、原発の推進に躍起です。しかし、日常的には、電気は足りています(余っています)。一時的に電力逼迫が発生しても、節電によって回避できます。このことは今年3月の、地震と寒波に起因する東北、東京エリアでの電力不足、6月末から7月にかけての猛暑による電力不足を、節電で乗り越えた実績が証明しています。

【節電協力で電力需給ひっ迫を乗り切った例】

 3月22日、東京、東北エリアで、地震による発電所の停止と急激な寒波到来が重なって、電力需給ひっ迫が発生しました。この需給ひっ迫を乗り切れたのは、揚水発電と広域での電力融通に加え、次のような節電が行われたからです。

 当日8〜23時の時間帯で約4000万kW時(W;ワット)、また、需要の大きな17時台の1時間に、約500万kWの節電が実行されています。原発5基分(1基約100万kWとして)もの節電が可能であることを示しています。

 上記は要請に応えた節電の例ですが、「節電で余剰電力を得ることは、発電所を新設することと同じ価値がある」との考えから「発電所ではなくて節電所を」の提案もあります。国民(約1億2500万人)一人ひとりが100W節電すれば、1250万kW(原発10基分以上)の電力需要を抑制できます。

 電力需給ひっ迫時だけでなく、日常からの節電も重要です。電気機器やシステムのエネルギー効率のよいものへの更新、断熱などの「省エネルギー化」も節電です。

電力需要量と供給量を正しく把握し、
適度な節電に心がければ、
大規模停電=ブラックアウトに
なることもありません

 大規模停電は、地震などによって一気・多量の電力供給不足が生じたときに起こります。通常の需要増加で大停電に至った例はありません。原発が重大事故を起こせば、電力の大規模供給不足になり、大規模停電に至る可能性があります。

 電力需給ひっ迫を口実に、人々や環境に放射線被ばくを強い、子々孫々にまで負の遺産となる使用済み核燃料を残す原発の推進を許してはなりません!とりわけ危険な老朽原発の再稼働など、もってのほかです。

「老朽原発依存社会」を招く
政府、電力会社

 原発の運転期間について、2012年6月の原子炉等規制法の改正で「原発の運転期間は40年とし、例外中の例外として20年の延長を認める」と規定しています。

 したがって、運転開始後40年を超えた全原発の運転延長を認めた原子力規制委員会の姿勢は、明らかに法令違反です。なお、「40年」の根拠について、細野原発事故担当相(当時)は、「電力会社が、ほとんどの原子炉の運転年数を40年と想定して認可申請している」からと答弁しています。「40年」は、電力会社が求めたものです。

 それでも、政府、経団連、電力会社は「40年超え運転」を「例外」から「原則」に変えようとし、福島原発事故後の運転停止期間を運転年数から除外し、停止期間分を追加運転しようとしています。さらに、60年超え運転も画策しています。法令違反を公然と行おうとしているのです。

 もし、「40年超え運転」を認めず、原発の新設を阻止すれば、2033年に若狭から、2049年に全国から稼働可能な原発が無くなります。

 一方、「40年超え運転」が「原則」となり、建設中の3基の原発(大間原発、島根原発3号機、東電東通原発)の運転が強行されれば、
8年後(2030年)には、稼働可能な原発36基のうちの15基が老朽原発に、
18年後(2040年)には、稼働可能な原発32基のうちの24基が老朽原発に、
28年後(2050年)には、稼働可能な原発23基のうちの20基が老朽原発
になります。さらに、停止期間分の追加運転を許せば、
2030年には、稼働可能な原発36基のうちの15基が老朽原発に、
2040年には、稼働可能な原発36基のうちの28基が老朽原発に、
2050年には、稼働可能な原発30基のうちの27基が老朽原発
になります。

政府や電力会社は「老朽原発依存社会」を
作ろうとしているのです。
「原発過酷運転(酷使)」を画策する
政府、電力会社

 岸田政権が昨年10月22日に閣議決定した第6次エネルギー基本計画では、2030年の電源構成に占める原子力の割合を20〜22%にしようとしています。(なお、先述のように、岸田首相は、8月24日、この「エネルギー基本計画」を無視し、これを遙かに上回る原発推進政策を打ち出しています。)

 政府は、「エネルギー基本計画」を達成するために、2030年には15基となる老朽原発の再稼働と建設中の3原発の稼働を画策するだけでなく、以下のように、原発の過酷運転を行い、原発利用率を引き上げようとしています。危険極まりない老朽原発運転と原発過酷運転を許してはなりません。

●定期検査間の運転期間の長期化 現在は13ヶ月ごとに定期検査していますが、18ヶ月〜24ヶ月に変えようとしています。

●検査内容の変更による定期検査の効率的実施と原発酷使 現在の定期検査では、原子炉を停止し、平均90日をかけて一斉分解点検していますが、これを、米国の30日にならって短縮しようとしています。短縮のために、
①「状態監視保全」方式(早めの部品交換をせず、機器ごとに劣化状況に合わせて保守する方式)を導入し、機器を限界まで酷使しようとしています。
②原子炉を止めないでおこなう検査「運転中保全」を導入しようとしています。

 以上の検査内容の変更は2009年に行われていましたが、実行は福島原発事故で中断されていました。

 なお、上記は政府の計画ですが、電気事業連合会(電事連;電力10社で構成)は、さらにスザマシイ目標を掲げています。電事連は、2030年の原発比率29%を目標とし、そのために、原発36基全ての早期稼働と稼働率90%を目指しています。原発60年運転の推進、定期検査の効果的な実施、運転サイクルの長期化をかかげ、原発80年運転への法改正も画策しています。

老朽原発を酷使すれば、
重大事故の危険度が急増します。
原発重大事故時、避難は不可能

 政府や自治体は、原発過酷事故を想定した避難訓練を行っています。それは、原発は重大事故を起こしかねないことを、政府や自治体が認めているからです。しかし、政府や自治体で考えている「原発災害時の避難計画」では、わずかの期間だけ避難することになっていて、原発事故では住民全員が、何年も、何十年も、あるいは永遠に故郷を奪われることをあえて無視しています。「避難訓練を行った」とするアリバイ作りをしているのです。

 ところで、政府や自治体の避難計画では、若狭の原発で過酷事故が起こったとき、原発から5km圏内の住民は即時避難となっていますが、それ以外の住民は屋内退避となっていて、放射能汚染レベルが自然放射能の1万倍の500マイクロシーベルトになって、初めて避難を始めることになっています。一斉避難は不可能であるから、原発周辺の住民のほとんどは、大量被ばくするまで待ちなさいと定めているのです。

 避難先も非現実的です。例えば、美浜原発で過酷事故が起こったとき、美浜町の皆さんの避難先は、おおい町または大野市になっています。しかし、人口約8100人のおおい町が、9600人を超える美浜町の皆さんを一週間以上の長期にわたって受け入れることは不可能です。人口約33600人の大野市でも不可能です。

 過酷事故を起こしかねず、事故が起これば大量被ばくを強いる老朽原発再稼働を許してはなりません。原発廃炉こそが、最大の安全対策です。即時廃炉を求めましょう!

処理法も行き場もない使用済み核燃料
それでも老朽原発再稼働まで画策

 関電は、2017年、「2018年末までに、使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を福井県外に探す」と明言しました。西川前福井県知事が、大飯原発の再稼働に同意したのは、この約束を前提としていました。しかし、関電は、この約束をホゴにし、「候補地提示期限を2020年末まで」と再約束して、原発の運転を継続し、使用済み核燃料を増やし続けました。さらに関電は、再約束の期限もホゴにし、昨年2月12日には、候補地提示期限を「2023年末まで」と先送りし、「この期限が守られなければ老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機を停止する」として、福井県に老朽原発再稼働への同意を求めました。これを受けて、杉本知事は、それまでの「中間貯蔵地を示すことが再稼働議論の前提」とした発言を一転させ、再稼働同意へと変節しました。なお、関電が「2023年末を期限」とした拠り所は、青森県むつ市の中間貯蔵施設の共同利用の可能性ですが、宮下むつ市長は、これを否定し、猛反発しています。

 関電は、何の成算も無く「空約束」を繰り返し、平気でそれをホゴにした、倫理のかけらも持ち合わせない企業です。こんな関電に原発を安全に運転できるはずがありません。

老朽原発・美浜3号機、高浜1、2号機の
再稼働を許さず、即時廃炉を!
企業倫理と責任感が欠如した電力会社は
原発過酷事故を起こしかねません

 7月13日、東京地裁は「東電株主代表訴訟]判決で、福島原発事故前の東電幹部の対応には「安全意識や責任感が根本的に欠如していた」と述べ、東電旧経営陣に、原発事故による損害・13兆円の賠償を命じています。

 今、関電経営陣が、多くの危険性指摘を無視して老朽原発を稼働するのは「安全意識や責任感の根本的欠如」のためとしか言いようがありません、圧倒的な「老朽原発うごかすな!」の民意を蹂躙して老朽原発を稼働させ、重大事故に至った場合、それは関電経営陣の故意による犯罪です。
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原子炉空焚き過酷事故の危険性が高い
老朽原発・美浜3号機、高浜1、2
号機の運転を許してはなりません!
老朽原発完全廃炉を目指して、
若狭、関西および全国での
行動に総決起を!

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老朽原発うごかすな!実行委員会
連絡先・木原(090-1965-7102)