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◆原告第29準備書面[1 MB](2017/2/8)
再生可能エネルギーの可能性と原発の不経済性
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【おもなポイント】
[1]原発の不要性:福島原発事故後、日本国内の原発がすべて停止していたにもかかわらず、電力不足は発生しなかった。再生可能エネルギーの普及によって脱原発は可能である。
[2]原発の危険性:事故時の被害は甚大で、福島原発事故の原因解明や廃炉処理の目途が立っていない。使用済み核燃料の処分方法も確立されておらず、根本的な安全性の欠如がある。
[3]世界的な脱原発の流れ:再生可能エネルギーの設備容量は増加している一方、原子力発電は減少傾向にある。ベトナムや台湾などの国々は原発計画を中止・撤回している。
[4]再生可能エネルギーの技術的進展と経済性:風力・太陽光発電の導入が急速に進んでおり、設備コストも低下している。各国の再生可能エネルギー普及状況を比較すると、日本は導入が遅れている。
[5]原発の経済的非合理性:原発の発電コストは、事故処理や廃炉費用を含めると高く、国民負担が増大している。東芝や三菱重工などの企業が原発事業で損失を抱えており、産業の発展を阻害している。再生可能エネルギーへ移行することが必要である。
[6]裁判官の役割:裁判官は、社会的価値の実現のために積極的に機能し、自ら傍観者ではなくプレーヤーとしてプレーに参加することが求められている。
【目 次】
第1 自然再生可能エネルギー利用で脱原発は可能であり、危険な原発は子孫に残すべきでない
1 原発稼働ゼロの状態でも十分に電力は足りていたこと
2 原発の根本的な問題
3 脱原発への世界的な流れの現状
4 拡大する世界の再生可能エネルギー
5 再生可能エネルギーによる発電の技術的問題は急速に克服されつつあること
6 再生可能エネルギーの急激なコスト低下
第2 原子力発電のコスト・非経済性について
1 はじめに
2 原発のコストの高さについて
3 原発事業自体がその非経済性故に成り立ち得ない事業であることについて
第3 原子力発電の不経済性が産業の健全な発展すら阻害すること
1 2011年3月11日後の世界各国における原発産業の状況
(1) 米国の状況
ア 沸騰水型のGE、加圧水型のWH
イ GE=日立・東芝、WH=三菱重工・アレバ
ウ GE社の原発からの撤退と日立への「押しつけ」の現状
エ WH社を取得し経営破綻寸前の東芝
オ 米国の現状
(2) 欧州の状況
ア ドイツ
イ フランス
ウ 欧州の現状
(3) アジアの状況
ア ベトナムの建設計画白紙撤回
イ 台湾の脱原発決定
ウ トルコの計画の不採算・政情不安
エ メーカーが二の足を踏む日印原子力協定
オ アジアの現状
2 多額の損害賠償請求を受け、負の資産を押しつけられる日本企業
(1) 東芝の粉飾決算の原因は原発部門の不採算でありそれが原因で経営破綻寸前であること
(2) 米国で7000億円の損害賠償請求を受けながらアレバの救済に乗り出す三菱重工
(3) 日立の悲鳴
3 まとめ:原発の不経済性が日本の健全な産業発展すら妨げる
(1) 原発の維持・推進と製造技術の維持は表裏一体であること
(2) 脱原発しなければ「ババを引く」ことになる
(3) 原発の不経済性が日本の産業発展を妨げさらなる原発の危険因子ともなる
第4 傍観者ではなくプレーヤーとして
福島第一原発事故によって露わになった原発事故の本質は、足尾銅山事件以来最大の公害事件であり、筆舌に尽くしがたい途方もない人権侵害事件である。裁判官は、社会的葛藤の舞台において、社会的価値の実現のために積極的に機能し、自ら傍観者ではなくプレーヤーとしてプレーに参加することが求められている