◆大飯原発における地震・津波の危険性(第62準備書面、2019/4/26)

┌─────────────
原告第62準備書面[227 KB](2019/4/26)
大飯原発における地震・津波の危険性
└─────────────

【おもなポイント】

[1]司法の役割と人権:司法は人権救済の役割を持つべきであり、原発事故は大規模な人権侵害につながる。問題解決にイニシアティブをとるべき司法が、原発の安全性を適切に評価せず、社会通念を理由に原発の危険性を軽視している。
[2]耐震性の問題:一般の建築物では震度7以上の地震にも耐える設計がされている例もあるが、原発の耐震性はそれを大幅に下回る。「強固な地盤の上にあるから大丈夫」という考え方は誤りであり、過去の地震の実例からも根拠がない。
[3]地震の予測不可能性と政府の対応:政府の調査機関も地震の発生時期や規模を正確に予測することは困難であると認めている。南海トラフ地震への防災策では「あらゆる可能性を考慮し最大級の地震を想定」しているが、原発ではそうした考慮がされていない。

【目 次】

第1 司法の役割は人権救済にあること
 1 はじめに―人権とは
 2 原発事故が多大な人権侵害をもたらすこと
 3 司法は人権問題の判断を回避してはならないこと…アール・ウォレン米国連邦最高裁長官のウォレン・コートは、最も困難な問題の解決に、行政部や立法部ではなく、司法部がまずイニシアティブをとった
 4 この間の司法判断は人権を尊重すべき司法の役割を放棄したものであること…原発再稼働を容認した諸判決の特徴は、原発に一定の危険性を認めながら「社会通念」という法概念として極めて曖昧な文言を使って再稼働を容認するという論理構造を有している。しかし、それはさきに述べた人権をないがしろにし、全くかえり見ようとしないものである
第2 一般建築物に求められる耐震性との比較でも原発の安全性は社会通念にすら達していないこと
 1 原発の耐震性を遙かに上回る耐震性を一般建築物でさえ具備していること
  (1) 一般建築物が備える最高レベルの耐震性
   ア 三井ホームの耐震住宅(甲第491号証[1 MB]
   イ 住友林業の耐震住宅(甲第492号証[1 MB]
   ウ 積水ハウスの耐震住宅(甲第493号証[2 MB]
   エ 新幹線(甲第494号証[5 MB]
   オ 小括。一般建築物がこのように高い耐震性を有しているのは,「あらゆる可能性を検討」「想定外を想定」「かつて体験したことのない巨大地震を想定」することによって最大級の安全・安心を確保し,万が一にも重大な事態とならないようにするために他ならない。では,原子力発電所は「あらゆる可能性を検討」し,「想定外を想定」する必要がないのであろうか。それらをしていない原発の損座は許容されるであろうか
  (2) 一般建築物の耐震性を大幅に下回る耐震性しか有していない原子力発電所の存在は許容されないこと
  (3)「強固な地盤の上に建っている」という幻想
 2 耐震性について科学的な検証がなされていないこと
第3 我が国の行政でも原発以外の分野では「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震・津波」を想定するようになっていること
 1 南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平成25年)に至る経過
 2 政府の調査部会が地震が予測不可能であることを認めたこと
 3 まとめ

【私たち原告の主張:ハイライト 案内ページへ】